「ヘラはいるか?」
慣れた感覚でへラ・ファミリアのホームに入る。しかし、居たのは
「あら、メルビンさん」
「メーテリア嬢、アルフィアがまた」
「もう、メルビンさんもお姉ちゃんと同じで私を」
「生憎だが、俺は貴女の家族ではない。仲間意識もなければあくまでも知人として心配しているに過ぎない。…なんだその顔は」
メーテリアはメルビンの真面目すぎる回答に笑ってしまう。
「いえ、なんというか……堅物というか……すみません」
「いや…良い、では知人としていう。歩き廻るのなら暇人を連れて歩け。倒れれば大多数に迷惑がかかるぞ」
「…ごめんなさい」
「そうか、まぁ良いが……仕方ない。俺に付き纏う害虫の排除の許可をと思ったが………」
メルビンはメーテリアを守る様に剣を抜く。
この剣はスラム出身のヘファイストス・ファミリア所属である鍛冶師見習い達が初めて作り上げた逸品である。
一人ではできない、ならば仲間や先輩鍛冶師と共にと作り上げメルビンに献上したのだ。その様な剣をメルビンは襲撃者達に向ける。
「……何者だ、等とは聞かん。貴様らは今ここで終わるのだ」
「……忌まわしいな。貴様らには感情が無いのか?」
斬っても痛みも、声もない。まるで生き人形。そこにあるのは人ではない。人の尊厳すら無くし、何者かの
「自己で選択すらできず、この俺と戦うか」
「そんな…この人達はただ操られているだけなんでしょう!どうにか」
「…やってみる価値はあるか」
メルビンは剣をしまい、拳を構える。
軍人として対人制圧術は学び習得している。相手は人間ではなくモンスターを生業にしている者達。生身の人間相手は慣れていないと踏んだのだ。星辰光のまとった肉体での肉弾戦。
振り下ろされだ剣は容易くカウンターを決め、相手のボディへと重い一撃を与える。
「メーテリア嬢!」
「大丈夫です!でも……」
赤羅様に数が増している、それどころか民間人もいる気がする。
「……くそ」
関節を外し、組み付かれれば背負投で数人を吹き飛ばす。
このような事をしていれば聞き覚えある声がする。
「無事か!メーテリア!!!」
「アルフィアか、お前の妹は無事だ!それよりも、制圧に協力してほしい!言うが、殺しは無しだ!メーテリア嬢からの御達しだ!」
「判っている!」
アルフィアも混じっての攻防戦、むしろ一方的な蹂躙になりえないのは二人が手加減をしているからである。
本気を出せばメルビン1人で終わるのだ。
「くそ……」
「ふん」
アルフィアの呼吸が上がるのに対し、メルビンの呼吸は止まることがない。まるで流れ作業の様に気絶させていく。
「すまない、俺は…お前達の後ろにいる存在を今の今まで気付けなかった」
「何を言っている!」
「…悪しき神は俺の光によって必ずや倒す。すまない」
光を背負う英雄は剣を抜いた。否、鞘には収まっている。
しかし、その一撃は無慈悲である。一撃で意識を刈り取る攻撃達。死んでもおかしくないその攻撃で襲撃者達は殲滅される。
「……やはり、神という存在は傲慢だ」
英雄は自分を見つめる存在を消す為に動き出した。
「馬鹿はよせっ!オラリオで神殺しなど」
アルフィアが止める前に既に英雄の姿はない。
アルフィアはどうにかせねばと動き出す。
という時、天の恵みいや主神が姿を見せた。
「くそ……」
「あら、アルフィアどうかし」
「ヘラ、メルビンが神殺しをしようとしている!止めるのを手伝え!」
「まさか……この気配、確かに神の力の残滓。…ゼウスの所へ。流石の彼奴も娘が殺されるとなれば全力で動く」
ヘラの言葉に絶句したが、アルフィアは共にゼウスの下へと向かう。
「……ヘラ、なんじゃワシは」
「カリスの三姉妹がメルビンに殺されるわ」
ゼウスは座っていた椅子から転がり落ち、焦る。
「何故?!あの娘達はまだ」
「降りたのは知らなかった様子ね、でも私のファミリアが襲撃された。美の女神特有の魅力で。フレイヤでも、イシュタルでもない。アフロディーテに近い力、でも彼女は今オラリオに居ないわよ。ねぇ、ゼウス。マキシムを貸しなさい、貴方の娘が首を落とされても良いの?」
「待てヘラ!さすがメルビンでも」
「…メルビンは英雄としての精神を持っているわ。それは他者のため、自分の魂も全てを犠牲にできる魂、そしてアレのスキルを忘れたの。メルビンは絶対正義。つまり、悪には堕ちない。」
メルビン・コールレインは自他ともに認める英雄と呼ばれる存在である。だが、本質は普通の人間と変わりなかった。
絶滅光に出会い、光に出会い、光を目指す過程を乗り越えただけのただの人間である。しかし、その中で芽生えた価値観のため、変わることはあり得ない。
オラリオの一区画、普段誰も居ないような場所に女神達が居た。
「来たのね、異界より来たりし英雄」
「その在り方は人間ではない」
「その存在はこの世界にとって毒となる」
ソレは三美神。カリテス、美と優雅を司る女神達。
アグライア、エウプロシュネ、タレイアの三女神である。
武器は持たず、ただ、メルビンの前に立っている。
誰もが魅了されるだろう、美しさ。だが、メルビンは剣を構えるのみである。
「何故、無垢なる民達を」
「私達は悪人を利用するのみ。あの者達はどうあれ、悪人だ。犯罪を犯し、殺されることは無いが投獄は間違いないほどの犯罪者達。ソレを利用した。お前の、その正義に誓って。私達は無垢なる民を貴様にけしかけはしていない」
「……私達は美の女神アフロディーテ様に仕える三美神。
美しさとは、魂の美しさ。美貌もそうだ、しかし魂が、心が醜い者は本当に美しいとは言えない」
「だが、貴方は違う。貴方の魂にあるのは光のみ」
「当たり前だ、俺は光を目指し、進む者」
「……破綻者、やはりその価値観、そして存在は危険すぎる」
「…ほぉ、武器を持つか」
「私達は美術、そして技術を志す者にも信仰される存在。そして、父はゼウス。女神だからと、戦えない通りはない」
「…戦いとなればアテナの領分。しかし、私達もできる」
「英雄、貴方は危険すぎる」
三美神はそれぞれ、剣を構えるとメルビンに切り掛かる。
ヘラから「神は力の大半が使えない」と聞いていたが、目の前の三美神は力は使っていない。己の技術でメルビンを倒そうとしている。
「くっ……」
「やはり、止めるか」
「お前が神なら、我等の伴侶となれる存在であろう。神々だけでなく、人すら導き全てを統べる英雄に」
「……光だけ、何故?他の物を何処に置いてきた」
メルビンが負けることはない、太陽が出ている限り自己再生能力は発揮され、永久に回復している。そして、強化されている肉体だからこそ、理解できない。
「…わからん。その肉体、その腕、其れ等は剣を振るうものでは無い。なぜ、カリスト。三美神よ、なぜ俺に拘る」
「激しすぎる光は影すら残さない」
「お前は前に進む過程で、全てを掬おうとしている」
「お前はスラムを変えた。しかし、全てを掬おうとするなんて出来はしない」
「お前の在り方は、人間ではない」
「……人間?そんなの、
ソレは怒り、自分の在り方を否定された怒り。
かつて、弟にされたように、今三美神から同じことをされている。
だが、同じである。ゼファーも悪だ、ヴァルゼライド閣下を狙う悪である。そして、目の前の三美神は悪である。
「創生せよ天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星
例え堕ちようとその光を喪わず、絶えず輝き続けよう。
闇夜を照らし、全てを拾い、掬う英雄の姿を今、刮目せよ。
汝、光を夢見る者なら渇望せよ。
汝、闇を生きる者達ならば救いを求めよ。
汝、悪に生きるものなら断罪を受け入れよ。
群衆よ、神をも降し、悪魔も屠ろう。今、英雄は此処にある。
我は今、正義也!」
超新星 ーー輝ける正義の天秤は今、傾いた
Metalnova shine Libras leaning
極光が三美神を仕留めんと、天から無数の光が降り注ぐ。
これこそ、メルビンの星辰光の真骨頂。敵と認識した者達をロックオンし、雨のように降り注ぐ大軍制圧攻撃。ウダイオスに放った一撃は其れ等を収束し、消費エネルギーを絞った物だが収束性が低い為に威力はより下がってしまう。しかし、収束する必要がなく、昼間という光が大量に溢れている時間かつ、地上という莫大な空間ならば収束する必要もなく無限に光を放てるのだ。
オラリオを滅ぼす事もできるその攻撃が三美神に迫る。
彼女達に戦う力があっても、守る力はない。光に貫かれ、血を吐き、まるで生贄の様な様になっているが、その瞳は、その顔は決して折れてはいない。
「……その顔、ソレが出来るなら何故俺と敵対したのか」
カリストの一柱であるアグライアの頭を優しく撫でる。だが、光は変わらず降り注がんとしていた。
「お前たちの美を、世界に対するその自己犠牲を、俺は決して忘れない。…カリストよ、さらば」
「止めろ」
カリストを貫く筈だった無数の光はゼウスの肉体を貫く。
「娘の危機に現れる父親か、だが、ソレが無意味だとなぜわからない。既にカリストは時間の問題だ」
「それでも……家族を…娘を護るのに理由など」
「…やはり悪神の親も悪神か、ヘラは何も思わんだろう。ゼウスの血こそが悪神の血という訳か」
「お前、何を」
メルビンの星辰光の光が増していく。
「
その言葉と同時にメルビンの星辰光が溢れ出した。