「あの日、私は見た。『英雄』を」
「あぁ、お前の隣に居たからな。覚えてる」
流れ出た大量の血液が、その死を刻一刻と刻んでいく。
しかし、不思議と男には恐怖という感情がなかった。
自身とまったく同じ顔が目の前に存在しても、笑みを浮かべるのみである。
「ヴァルゼライド閣下は、正しい。ゼファー…お前は何故受け入れられない」
立っているのはゼファー・コールレイン。
そして、倒れているのが、軍事帝国アドラー第七特務部隊・裁剣天秤所属の軍人〘メルビン・コールレイン〙。
ゼファーの双子の兄である。〘英雄〙ヴァルゼライドの戦いを目撃し、光へと覚醒(堕ちた)一人の兵士。
「…ゼファー……俺と…おまえは…英雄…に」
それはメルビンの観ている幻覚だろうか、ゼファーは同じ軍服を来ていた。そして、ヴァルゼライドの前で跪いている。
「兄貴」
「お…と……おま……で……閣下を」
二人で閣下を支えるのだ、閣下を、軍事帝国アドラーを。
国民を護るのだ。うわ言の様に続けようとするが、力は出ない。
「何処までも……ヴァルゼライド閣下!ヴァルゼライド閣下かよ!なんで……なんで……自分の」
朽ちる寸前だが、最後の最後に言葉が響く。
「ゼファー…コール、レイン。進め、己が道を……選んだのなら!最期まで!」
それは光の奴隷ではなく、ゼファー・コールレインの兄としての言葉である。男自身、何故敵対した弟に言葉をかけたのか分からなかった。だが、不思議と安心感がある。
しかし、それでもヴァルゼライドの勝利を、ヴァルゼライドが存在する未来をずっと信じている。
「……閣下…あぁ……俺は……貴方に……成りたい」
メルビンは自分の主君の勝利を信じ、そして弟の敗北を信じて力尽きた。だが、根底にあるのはたった一つの願望。
〘英雄〙に、ヴァルゼライドと同格になる。ソレだけなのだ。
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キャラクター(主人公)
メルビン・コールレイン
「俺は閣下と同じ道を征く。英雄(ヴァルゼライド)になる為に」
ゼファー・コールレインとは違い、光という存在に憧れ、折れず、ただ進んでいった男。
姉をヴァルゼライドに殺害された事を知りつつ、ソレを受け入れて尚、ヴァルゼライドを盲信し、英雄となるべく歩んだ。
ギルベルト・ハーヴェスとは親友にして理解者。
誰もが英雄と同じに進めば成れる、至れると信じている。
ヴァルゼライドからはギルベルトと同じ言葉を言われた事がある。
創生せよ天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星
例え堕ちようとその光を喪わず、絶えず輝き続けよう。
闇夜を照らし、全てを拾い、掬う英雄の姿を今、刮目せよ。
汝、光を夢見る者なら渇望せよ。
汝、闇を生きる者達ならば救いを求めよ。
汝、悪に生きるものなら断罪を受け入れよ。
群衆よ、神をも降し、悪魔も屠ろう。今、英雄は此処にある。
我は今、正義也!
超新星 ーー輝ける正義の天秤は今、傾いた
Metalnova shine Libras leaning
能力はたった一つ。絶対的な光(正義)。
強すぎる太陽光は人間の皮膚を焼き、者を燃やし、人を殺す。
ヴァルゼライドという英雄に魅せられ、光という裁きと救済を与える星辰光〘アステリズム〙。
斬撃に光が乗り、斬撃を光として飛ばす。また、光という存在ではなく、概念としてもある為、相手の光源や光を放つ物を奪いとり、自分と仲間を強化し、自分と仲間の傷を癒すことができる。
つまり、光を持った攻撃をすればするほど男とその配下は強化回復され続けるというチート。何処かの騎士のように昼に戦えばほぼ無敵だが、吸収する光を選別できない。更に強力すぎる光を吸収すると肉体が逆に崩壊する。つまり、総統閣下の光を受けた場合即座に……
基準値AVERAGE:A
発動値DRIVE:A
集束性:C
拡散性:AAA
操縦性:AA
付属性:A
維持性:B
干渉性:B
収束性は低いが、
超新星 ーー輝ける正義の天秤は今、傾いた
Metalnova shine Libras leaning
の本質は大群に対する制圧能力と自身と仲間の強化回復能力である。1対1でも、この男、負けそうになれば英雄と同じように
「まだだ!」と覚醒する。しかし、その場合次の言葉が続く。
「ヴァルゼライド閣下ならできた!なら、俺達凡人にできないはずがない!そうだ、俺は勝つ!」
①格上相手時には、ステータス1.3倍
②時間経過で継続してレベルアップ
③敵からダメージを受ける度にレベルアップ
④相手が覚醒した瞬間に自分自身も覚醒
⑤瀕死時「まだだ!」の台詞と共に覚醒
しかし、どう足掻いてもヴァルゼライド閣下には絶対に届かない。
ーーーーーーーー
「ねぇ……ねぇ……」
男は息をしていない、天に召され、何れ来るだろう弟を待つつもりだった。今度こそ、逆襲劇等ではない。
英雄譚の一つとなり、共に英雄を見届けるはずであった。
「ねぇってば!」
「……なんだ、君は」
軍服は変わらず血が滴り落ち、目を開けば麗しい少女が此方の顔を覗き込んでいる。弟よりも身嗜みは整えてあると自覚しているため、女性と話す事も多く慣れている。
「良かった……酷い怪我だけど」
「…侵入者に……ゼフ…侵入者にやられた。そうだ、閣下は…ヴァルゼライド閣下に……閣下にお会いしなければ」
「駄目だよ!酷い怪我なのに!動かないで!!」
「……すまない」
軍服とは見えない風貌だが、所々に鎧(アーマー)がある。
何処かの傭兵だろうか、怪我人の手当等をしているのだろうか。
「……ありがとう、私は第七特務部隊・裁剣天秤所属。
メルビン・コールレイン中佐だ。君は…何処の所属か。それとも、傭兵か?」
「天秤?もしかして、アストレア様の配下ですか?」
「……そうだ、嫌な名前だがな」
男いや、メルビンにとってヴァルゼライドに反する事も厭わない
チトセ・朧・アマツは目の上のたん瘤であった。
しかし、ヴァルゼライドに信頼され軍事帝国アドラーの実質的なナンバー2であり、有能な上官かつ尊敬に値する人物と相反する感情がある。最も、弟に敗北した時点で壊れた女という評価に変わったが。
「あの、アストレア様の眷属なら助けていただけませんか?」
「眷属という言い方は好まんが、助けるとは?」
「実は、仲間と逸れてしまい…自分の医療品等は」
口を濁す少女にメルビンは驚きを隠せない。
メルビンには人の悪意が感覚として理解できる。
中央とスラムという闇の中で過ごした為、人の悪意には敏感だった。そして、その感覚を絶対的に信頼している。
(間違いない…この少女。自分の生命よりも他者を救おうとする聖女だ。あぁ、実に…素晴らしい)
「わかった、民間人を護るのは軍人の務めである。君を仲間の下まで護衛しよう」
「あ…ありがとうございます!」
少女の感謝を受け入れ、言葉を続ける。
「お嬢さん、君の名前は?」
「はい、クリスティーナ・ヴァルゼライドです!」
(あぁ、運命だ)
ヴァルゼライドに家族がいたという話はない。
それはヴァルゼライド自身の言葉からも聞いたことがあった。
つまり、コレは自分にとっての運命なのだと理解する。
クリストファーと、クリスティーナ。
共に、クリスと略せる。ソレだけでない、同じヴァルゼライドという家名。
「……行こうか、クリス」
「はい、あの」
「メルビンと呼んでくれ」
「はい!メルビンさん!」
メルビンとクリスは少しずつ歩き出した。
そして、メルビンは理解する。ここは帝都ではない事を。
アドラーの地理は理解している、だからこそこのような場所は知らないのだ。そう、モンスターが現れる場所など。
「……悪鬼羅刹、地獄から来た魑魅魍魎共か」
しかし、メルビンにとってモンスター達は所謂雑魚であった。
メルビンは星辰光を剣へと為、光の刃で鏖殺する。
「アレ程の傷が……」
「あの、メルビンさん大丈夫ですか?」
「問題ないさ、傷口はこの程度では開かんよ」
モンスターの蔓延る迷宮を進み、階段を上がる。
そして、ソレは現れた。
「そんな……ウダイオス?!私は、38階層に落ちて」
悲鳴をあげるクリスにメルビンは喝を入れる。
「慄くな!巨大な骸骨、だがソレがどうした!」
メルビンにはわかる、クリスはまだ英雄には至らない。
しかし、きっかけが必要なのだ。そう、同じように、誰かの英雄という存在が。
「……こい、骸骨。この、断裁者ーJUDGEMENTORー
メルビン・コールレインが相手をしてやろう」
ウダイオスの振るった巨腕が大地を抉る。
ソレはメルビンを狙った物であるのは確実だったが、メルビンにとっては遅すぎた。
「舐めているのか?餓者髑髏よ」
ソレはかつて日本に存在した妖怪。埋葬されずに放置された骸骨達の怨念の集合体。メルビンにはソレと目の前のコレが同じにしか感じない。
「星辰光いや…俺の光の刃にてお前を裁こう(救おう)」
クリスは目の前の光景が信じられなかった。
ウダイオスはオラリオでも難敵、少なくとも一人で相手をするような相手ではない。38階層に居た事からもクリスにはメルビンがレベル6相当の実力者である事は理解できた。
あの傷からきっと激しい戦闘が繰り広げられたのだと。
でも、どうだろうか。目の前の男は、ウダイオスの攻撃を容易く避け、剣で切り裂いている。骨が砕け、地面に落ちる。
たった一人で強敵を翻弄し、勝利を刻もうとしている。
「…ほぉ、勝てないと踏むと数で押すか」
ウダイオスが骸骨兵を召喚する。もう、逃げ場はない。
でも、クリスは目の前のメルビンを見捨てれば助かるだろう。
そう考えてしまう、出会ったのはついさっき。確かに助けてもらっているが、治療したのは自分だと。
「…駄目よ、クリス。戦うの、せめて……せめて骸骨ぐらいは」
クリスのレベルは3である、今回はあくまでポーター。荷物持ちとして仲間と共に居るだけだった。
「私も……私も戦います!骸骨兵士は任せてください!」
「そうか!」
レベル2だろうと、そんなのは関係ない。
勝てないじゃない、勝たないといけない。
「私だって……私だって!へラ・ファミリアの一員だから!」
(その光は、まだ幼い。しかし、その光は…確かに君の中に)
メルビンは見抜いていた。クリスの勇気を、確かな決意を。
きっと骸骨兵士にすらクリスは勝てないだろう。だが、彼女はそんな事は気にせず今、戦っている。
「きゃぁぁぁぁ!」
だからこそ、死なせない。この少女はきっと、ヴァルゼライド閣下と同じなのだから。
「無事だな、クリス」
「ごめんなさい……任せて下さいって言ったのに」
「いや、俺は確かに見た。君の勇気を、君の決意を。ならば、見せよう。俺の本気を。君は自分が傷付くことも恐れた、しかし折れなかった。君は英雄足り得る存在だ!」
メルビンの周囲に極光が集まり、そして、始まる。
光による断罪と救済が。
「創生せよ天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星
例え堕ちようとその光を喪わず、絶えず輝き続けよう。
闇夜を照らし、全てを拾い、掬う英雄の姿を今、刮目せよ。
汝、光を夢見る者なら渇望せよ。
汝、闇を生きる者達ならば救いを求めよ。
汝、悪に生きるものなら断罪を受け入れよ。
群衆よ、神をも降し、悪魔も屠ろう。今、英雄は此処にある。
我は今、正義也!
超新星 ーー輝ける正義の天秤は今、傾いた
Metalnova shine Libras leaning」
光が乱反射し、全てを飲み込む。すべてを魅了する確かな光。
味方には温もりと癒しを与える優しき光が。
敵に断罪と絶望を与える極光が。
「……英雄」
そして、クリスティーナ・ヴァルゼライドは今確かに見たのだ。
誰にも負けない完全無欠な英雄『ヒーロー』を。
全てを救い、導こうとする英雄『メルビン・コールレイン』を。
そして、確かに得たのだ。強い、光への渇望を。