アストルティアの冒険者、異世界へ


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作:何でもない
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第3話 神との対面




特発性執筆欲肥大化症候群の発作が収まらなかったので(ry





 

 

 

 ──【ギルド】

 

 

 「迷宮(ダンジョン)にファミリア、下界に降りてきた神に【恩恵(ファルナ)】……。迷宮はアストルティアでいうところの"不思議の魔塔"とか"謎の遺跡島"に近いのかな? で、ファミリアは何というか"職人ギルド"っぽい感じかあ。恩恵は"職業"で……って恩恵を受けてないと職業が無いってことになるのか?」

 

 オラリオにおいて、実質的な行政を担うこの施設の一室にエックスは待機していた。部屋に1人残されたエックスはオラリオにおいては子供でも知ってる基本知識を纏めた書物を読みふけっていた。

 

 【アストレア・ファミリア】の2人によってギルドへ連れてこられたエックスであったが、聴衆の面前であの騒動を治めたため、ギルドにもその情報が届いていた。そのため、野次馬などによる余計な混乱に繋がることを避けるために到着後速やかにこの部屋に送られたのだ。

 

 部屋に到着した後、余りにも非常識っぷりを見せたエックスを見かねたアリーゼとリューの提案により、時間潰しも兼ねて彼の元に先の資料が送られた。彼はそれをジッと読んでこの世界の知識を身に着けようとしていた。

 

 「って、今更だけどボクってこんなにスラスラ共通語(コイネー)なんて読めたっけ? アイツから少しは教えてもらったけど、アイツもそんなに共通語に詳しかったってわけじゃないし──」

 

 「エックスー、起きてるー? アストレア様をお連れしたわよー。」

 

 「あっ、はーい。どうぞお入りくださーい。」

 

 トントントン、とドアをノックする音と共にアリーゼが呼びかける。エックスが返事をするとドアが開かれ、そこには3人の女性が立っていた。

 そのうちの2人はリューとアリーゼで、残りの1人が薄い茶色の長髪に空のように澄んだ青色の瞳で白のドレスを着用した女性だった。

 

 (あの人がアストレアって人、いや主神って話だから神様か。偶に人とは違う気配がすることがあったけど、あれって神様だったのか。)

 

 この部屋にたどり着くまでに、様々な人とすれ違った中で人間とは異なる気配を所々から感じ取っていたエックスは、アストレアと直接対面することでその疑問が腑に落ちた。

 

 「あなたがエックスね? アリーゼたちから話は聞いているだろうけど、改めて自己紹介するわ。私はアストレア。【アストレア・ファミリア】の主神を勤めているわ。」

 

 「はい、始めまして。ボクの名前はエックスです。多分ご存じないかとは思いますが、アストルティアで冒険者をやっているものです。」

 

 2人は互いに挨拶を交わすと対面になるように席につく。その後、アリーゼとリューもアストレアに隣り合う席に座った。

 

 「エックス、貴方には色々と聞きたいことが色々ありますが、先ずは先に1つ。あなたが助け出した男性も子どもたちも無事です。子どもたちも目立ったケガは無く、男性の方も快復に向かっているとのことです。」

 

 「本当ですか! あーっ、良かった。即興の策だったから不安だったんですよ。」

 

 助け出した人たちは無事だというアストレアの報告にエックスは胸を撫で下ろす。

 

 「ああ、あの口調が崩れてたのってやっぱりそういうことだったのね。あの体躯に丁寧な言葉使い、一部の神様が『これは新時代のギャップ萌えじゃないのか!?』って騒いでたわよ。」

 

 「体躯が変わった、といえばあの鏡状の魔道具も相当な代物ですね。それにその魔道具を出し入れしていた袋も魔道具の一種ですね? あの魔道具を閉まっているには袋の膨らみが小さい気がします。」

 

 「ああ、【妖精の姿見】と【どうぐかばん】のことですね。」

 

 エックスは袋を机の上に置くと、その中から姿見を取り出して3人に見せた。

 

 「【どうぐかばん】はお察しの通り、見た目以上に色んな物が入る袋です。ただ、無制限に入るわけじゃなくて地味に中の整理整頓が必要になります。【妖精の姿見】は自分の見た目をある程度操作出来るものです。ただ種族から変わるほどの変化はこの鏡を使うだけじゃ駄目なんですけど……それはちょっと秘密ということで。」

 

 別種族に変わるというのはエックス自身の体質、もっと言うなら数奇過ぎる運命の中で彼が手に入れた手法なのだが、それに関しては口を閉ざすことにした。

 

 「……どうぐかばんの有用性は言うまでもないけど、姿見の方も凄い性能をしてるわね。見た目だけを変えられるとしても、犯罪行為で尻尾を掴むのは難しくなるわ。」

 

 「ええ。もっと言うなら、気に食わない相手そっくりに変装する手もあるでしょう。そうすれば、対象に冤罪をなすり付け放題になりますから。」

 

 アリーゼとリューは治安維持に関わるものとして、姿見の恐ろしさにも言及する。もし、エックスが悪意ある人物であればその底知れぬ実力と合わせて幾らでも破壊工作を行えたであろうという意味でも、彼が善性ある人物であって良かったと思うのであった。

 

 「私からはその魔道具の性能に関してアレコレ言うつもりはないわ。だけど、これだけの代物をあなたはどこで手に入れたのかしら? 例えば、【ヘルメス・ファミリア】の【万能者(ペルセウス)】がこれだけの物を作れば、オラリオで何かしらの話題に挙がるわ。」

 

 「いえ、彼女が提供した線はあり得ないかと。彼は私たちが始めて会ったとき、オラリオのことを知らない様子でしたので。」

 

 「!! そういえば貴方は始めて私たちと会ったとき、ここがオラリオだと知らなかったような素振りを見せていた。闇派閥の襲撃で後回しになっていましたが……結局、貴方はどうやってここまで来たのですか?」

 

 アストレアの疑問にアリーゼが答えたことで、リューはエックスの初対面時の不審点を思い出した。彼女がその点を改めて問いただすとエックスもまた思い出したかのように答え始めた。  

 

 「ああー、そういえばそうでしたね。いえ、ボクも何で来たのかは分かってないんです。自宅でうたた寝した……んだっけな?」

 

 「……この期に及んでふざけているのですか? 人が普通に生活してる中でいつの間にか転移してるなどあり得るわけないでしょう。」

 

 「えーっと、信じてもらえるかは分からないんですけど、実は自分はこういう転移は始めてじゃないんです。前も戦いに巻き込まれたときに、深傷を負って意識を失ってる間に全く別の場所に転移してたことがありまして。」

 

 「……アストレア様、彼の言っていることは?」

 

 「残念ながら嘘はついてないわ。どうやら唐突な転移に巻き込まれた経験が彼にはあるようね。」

 

 アストレアの答えにアリーゼとリューは再び困惑に陥ることになる。オラリオ広しといえど、いきなり遠い何処かから転移してきた、などという事例は存在したことがない。しかし、それは事実であると断言されてしまった。しかも、自分たちが最も信頼し敬愛する主神のお墨付きだ。

 

 「嘘をついていない……? もしかして、こちらの神様は嘘を見抜く能力をお持ちなのですか?」

 

 「()()()の神様? 神様が嘘を見抜けるのは共通している権能よ? 多分、貴方がお会いした神様は嘘を見抜いていた上で態とそれを隠していたのだと思うわ。」

 

 エックスの疑問にアリーゼは頭に疑問符を浮かべながら答える。この世界の神々は自身の権能に紐付く特技や才能などを持っているが、嘘を見抜くという能力に関しては一律に持ち合わせているものであるのはオラリオに生きる人々には常識であった。

 

 「……なるほど。あなたと私たちの認識の齟齬もそれなら説明がつくわ。」

 

 「アストレア様? 何かお気づきになられたのですか?」

 

 「ええ。アリーゼ、リュー。悪いけど席を外してもらえるかしら?」

 

 「お待ち下さい、アストレア様。確かにこの男(エックス)が悪意ある人物である可能性は低いでしょう。しかし、彼に関しては未だ謎が多いです。危険性が無いと断じるには早計かと。」

 

 2人に退室を命じたアストレアの命令にリューは待ったをかけた。しかし、アストレアは首を横に振ってそれを拒んだ。

 

 「リュー、あなたの心遣いは嬉しく思うわ。でも、私の予想が当たっているとしたら、あなたたちだろうとこれは秘匿されなければならないの。」

 

 「……リオン。私たちは外に出て、入り口で盗み聞きする人が現れないか見張るわよ。アストレア様、それでよろしいですね。」

 

 「アリーゼ!?」

 「ありがとう、アリーゼ。」

 

 何かに勘づいたのか、アリーゼは立ち上がってリューに退室を促す。リューはアリーゼの判断の早さに驚き、アストレアはそれに感謝を示した。

 

 「リュー、あなたの気持ちは分かるわ。だけど、これはエックスの秘密にも関わってくるはずよ。"余所の冒険者やファミリアの内情に不必要に介入すべきではない"。そうでしょ?」

 

 「それは…………分かりました。ではアストレア様、私たちは部屋の前で待機していますのでご用があればお呼びください。」

 

 こうして2人は退室し、エックスとアストレアの2人が残された。アストレアは部屋の戸締まりが成されていることを改めて確認してエックスと向き合った。

 

 「さて、エックス。ここの部屋は重要な取引に使われることもあるから、傍聴対策は十全に取られているわ。つまり、ここでの話は他所に漏れ出す可能性は限りなく低いわ。」

 

 「つまり、今から話す内容は親密な相手だとしても他言無用の話をする、というわけですね?」

 

 エックスの問いにアストレアは静かに首肯して返答する。

 

 「理解が早くて助かるわ。では、単刀直入に聞くわ。あなた、こことは異なる世界、俗に言う"異世界"からやって来たわね?」

 

 「!! ………いえ、正直に話しましょう。アストレア様がお考えの通り、ボクが来たアストルティアとこのオラリオが存在する世界は異なる世界にある可能性が極めて高いかと。」

 

 「……そう。まさかとは思ったけど、そのまさかが的中することになるとはね。エックス、これからの話は恐らくこのオラリオだけに留まらず、この世界の未来に関わる話になるわ。だから、包み隠さず話しなさい。」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 「人間(ヒューマン)を含めて6つの人種が共に暮らす大地"アストルティア"、それが、あなたがやって来た元の世界なのね。」

 

 「はい。正確にいえばそれ以外の異世界も存在しますが、それらはいずれもアストルティアに由来を持っていたり派生したりする世界です。でも、ここはそういう感じがありません。ボクもここはアストルティアと縁もゆかりも無い世界だと思います。」

 

 エックスはアストレアに自分が元いた世界の話を事細かに告げる。アストレアは彼の言葉を茶化したり遮るようなことをせず、その言葉に真摯に耳を傾ける。

 

 「あなたの世界の話も色々と興味深いけれど……今はこの辺りにしておきましょう。今1番重要なのは何故貴方がこちらの世界へ転移してきたのか、ということよ。もっと言うなら、転移という現象が発生するに値するような重大な事件や事故の情報ね。」

 

 彼女の言葉を聞いて、エックスはこうなった手がかりが無いか自分の過去の記憶を遡った。しかし、残念なことに手掛かりに繋がりそうな出来事は見つからなかった。

 

 「申し訳ございません。特にアストルティアでそんな話はありませんでした。寧ろ、あのときはその重大な事件を乗り越えて、平穏が訪れた頃でした。」

 

 「そう……。なら、まずはそれの究明が第1になるわね。貴方という生身の人間が意図せずに世界を飛び越えたということは、世界を跨ぐほどの大事が水面下で起きている可能性が高いわ。貴方も協力してもらえるかしら?」

 

 「はい。ボクの力がどこまでお役に立てるかは分かりませんが、精一杯頑張ります。」

 

 「そう謙遜しないで。貴方が転移してきたのも、その"異変"に抗う力を持っているからのはずよ。」

 

 エックスとアストレアは、転移してきた現象そのものよりも、転移という異変を呼び起こした"ナニか"を探るのを優先する、という目標を互いに確認し合うのだった。

 

 「はあー、一時はどうなるかと思いましたけどこれで……!!すいません。もしかして、こちらでもその"重大な事件や事故"って過去にありましたか?」

 

 今後の道筋が見えてきてホッとしていたエックスであったが、ここで何かに気づいたかのようにエックスはアストレアに質問を切り出す。

 

 「? いいえ、直近のオラリオも決して平穏とは言い難い状況ではあったけれど、ここ数十年で1番動乱しているのは残念なことに今現在よ。何か気になることでもあったのかしら?」

 

 「はい。ボクの知り合いなんですけど、こっちの生まれかもしれない人がいまして。」

 

 「! まさか、向こうにも今のあなたのような境遇の人が居るの?」

 

 「はい。共通語(コイネー)、でしたっけ? その言語をアイツは使えたんですよ。確か故郷の文字だって言ってました。」

 

 アストレアにとっては寝耳に水であった。仮にその人物とエックスの転移が同じ"異変"を元にしているのであれば、今回の異変は非常に根深いものになり得るからだ。話は、そのアストルティア側に転移した人物のものにシフトしていった。

 

 「その子の境遇は? どんな感じで転移してきたか話を聞いたことは?」

 

 「いえ、アイツも詳しいことは分かってなかったみたいです。畑仕事が一段落したから木陰で居眠りして、気づいたときにはレンドア、ああ、アストルティアにある港町ですなんですけど、そこの路地に居たって話くらいです。」

 

 「彼は特殊な力を持っていたりした? もしくは特別な出自だったりって話は?」

 

 「いえ、そのような話は何もありませんでした。故郷は名前も無いような山奥の小さな村で、両親は生まれたときから居なかったから祖父が親代わりだった、って話くらいで特別な感じは見受けられませんでした。ああ、でも…」

 

 「でも?」

 

 何かを思いついたかのようなエックスに、アストレアは食いついて話を促した。

 

 「見た目は相当に変わってましたね。降ったばっかりの雪みたいな綺麗な白い髪に、ルビーみたいに真っ赤というか深紅というか、とにかくそんな感じの目をしてました。生まれつきだって聞いたときはすごく驚きました。」

 

 「白い髪に赤い目……。確かに、風変わりな見た目ではあるけれど、それだけじゃ何もわからないわね………そうだ。」

 

 変わった見た目以上の手掛かりが無く、推測も暗礁に乗り上げたアストレアだったが、ふとあることに気づきそれをエックスに尋ねた。

 

 「そういえば、その子の名前を聞いていなかったわね。なんて名前なの?」

 

 「名前ですか? アイツの名前は──」

 

 今回の対面の中で、長い時間エックスの顔を見ていたアストレアであったが、その人物の名前を語るときの彼の表情は今までの考え込んだり悩んだりしていた彼の表情とは打って変わって、自信に満ち溢れた笑顔であったという。

 

 「ベル・クラネルっていいます。アイツと一緒なら、どんな相手にも負けないって自信を持って言える最高の戦友であり相棒です。ボクにとっての最高の出会いでした。」

 

 

.







Q:この単調な会話パートどうにかならなかったの?

A:プロット通りなら次回も丸々1話会話パートの予定です。



◯戦いに巻き込まれて──
ドラクエ10のバージョン5の導入の話。なお、作中では深傷を負ったという発言で済ませているが、実際は魔族に転生しなければならなかったほどの致命傷である




◯アイツ=ベル・クラネル
殆どの人が察していたかと思いますが、エックスが言及していた相手とはベルのことでした。
何故転移したのか、転移後の顛末は一応プロットがあるので執筆欲が続けばそこに触れることもあるかもしれません。








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