世界を救う英雄を育てた英雄


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作:スカイハーツ・D・キングダム
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第9話 決戦の前 ある姉の胸の内


 

一夏がオラリオを離れたその日から翌日にかけ

 

オラリオの最大戦力がオラリオから離れたことを察した闇派閥がこれを機にオラリオの勢力図を変えようと襲撃を活発化させた

 

が、これを予期していた一夏とオラリオ全体を指揮する立場にあるフィンはあらかじめ敵の襲撃先に高レベル冒険者を配置させ迎え撃つ

そのさなかエレボスにより辛い選択を迫られたリューだったが、アストレア・ファミリアの救援と市民の掛ける声により立ち上がり、アーディを失った辛さに耐えながらも自らも果たさなければならない本懐を出す為に戦う

 

彼女達の元へ向かおうとしたガレスとアイズとリヴェリア

 

それを止めに割って入るザルドだった

 

圧倒的な武力で第一級冒険者をも凌駕するゼウス・ファミリア最後の生き残り

 

とある事情により全盛期から離れてしまった程度の力しか発揮できないが、それでも一夏と六月を除けば最強だったオッタルをもくだす程の実力を先日見せつけた

 

そんなザルドが相手ではレベル5のガレスとリヴェリアでは身が持たないだろうとはこの戦いを見る者達は皆が思うだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最も 彼という例外を除いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレボス「それで…ここまでやられたわけか?」

 

ザルド「あぁ─あの美の女神率いるファミリアを陥落させた片割れにも興味があった。少し味見感覚で挑んだらこのザマだ」

 

彼らが拠点にしている廃教会の中   

 

邪神エレボスと片腕のあった場所に包帯を巻いているザルドは壁にもたれながら話していた

 

ザルド「あいつに一切手を出せずに敗れたと聞いた時は少しガッカリしたが、蓋を開けてみればアレは獣。敵と判断した相手に容赦なく喰らいつく牙と爪を持った狂犬の様なガキだ。随分とよく育てたなアルフィア」

 

アルフィア「……」

 

同じく教会内のベンチに目を瞑りながら座りこんでいるアルフィアに声をかけたが無言を貫く

 

エレボス「だがマジか…片腕を亡くした今のお前…これから先控えている決戦、どう立ち回るつもりだ?」

 

ザルド「なに…片腕を亡くした程度、もう片方の腕が残っていれば十分だ……これでも負けるようならあの猪小僧は俺の見込み違いだっただけだ」

 

エレボス「……まぁ…今更計画の変更はできるわけないし、もうこのまま決着させるしかないか…今のままのザルドと戦って勝ったとしてもランクアップできるかは半々だが」

 

ザルド「ああ…いっそ俺から片腕を奪ったあの小僧に跡を託すべきか」

 

アルフィア「………(六月……一夏…)」

 

しみじみとした口調で話すザルド

 

そんなザルドを僅かに開いた片眼で見て

この先、自分達が迎えるであろう顛末を思い浮かべながら、来る決戦に備えるよう身体を休ませるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「んで、この馬鹿は傷が完全に癒えてないうちにアルフィアの所へ行こうとしてたまたま遭遇したザルドと一戦殺りあってこのザマか?」

 

ライラ「ああ…だがあんま六月を責めないでやってやれ…こいつ居なかったらロキんとこの増援がこっちに駆けつけられなかったから結果的に助かった」

 

一夏「だからって、こいつ自分が一応このオラリオで貴重な最大戦力の自覚あんのか?傷も癒えてねえうちにアルフィアどころかザルドと殺りあうとか自殺行為にも程があんだろ」

 

六月「ぐぁ」

 

アストレアのホームにて、全身を包帯に巻かれた六月を軽く叩きながら言う一夏

それに痛みで悶える六月

それ近くで看病する面々達は気持ちは分かるが怪我人にする対応じゃないことについつい顔を顰めながら注意する

 

マリュー「い、一夏、あ、あんまり怪我人に鞭打つようなことは…」

 

一夏「こいつの場合はただの自業自得だ。アルフィアと殺りあって生きているだけでも儲けもんだっていうのに、その上ザルドとやって…よくその状態で生き延びた上に片腕奪ったな……そこだけは感心する」

 

大抗争3日目の朝にオラリオを離れ、戻って来るのに約二日

 

アスフィの懸念通り、タラリアは目的を果たしオラリオへと帰還する途中で壊れ、そこから走り込み

大抗争四日目の夜が訪れる寸前に都市へと帰還した

一夏がオラリオを離れている間、大抗争4日目にザルドと遭遇した傷を残した六月が殺りあい、結果六月の敗走となったがザルドの片腕を奪う結果となった

 

一夏「……お前ほんとアルフィア以外なら誰でも殺りあえるなぁ…仕方ないが…」

 

そう呟くように言うと一瞬ビクッと反応してしまう六月

 

一夏「あぁいい、いい…お前がアイツを想うが故にどうしても全力出せないのはもう分かった…俺はお前の決断を責めるつもりもなければ俺がお前にどうして欲しいかなんて無理強いもするつもりはねえ……だからこそ…お前には言っておかなきゃなんねえことがある」

 

そう言うとその場のアストレアの眷属達にふたりだけにするよう目を向け、退室させふたりだけの空間を作った

 

それから約20分と、長くも短い時間

ふたりの間に交わされた会話を知るものは、当人達を除き誰もいなかった

 

そして

 

この時の会話が後のふたりの命運をわける事へと繋がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは大抗争開始から5日目へと日付が変わった深夜の出来事だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「……静かだな」

 

5日目早朝

 

それまで闇派閥がオラリオ中で虐殺と破壊を繰り返し常に都市中で破壊音や新しい血の匂いばかりが都市を巡っていたが

この日のオラリオはそれまでと打って変わり静かだった

 

まるで嵐の前の静けさのように

 

一夏「(次だ…次で全てにケリが着く……皆それまでにやっておく事に集中してんな)」

 

オラリオの静けさの中

珍しくできた時間の中で、都市中の冒険者達は今のうちにやり残したことを遂げようと朝から都市をまわっていた

 

一夏「──あれは…」

 

オラリオを一望できる高台に見知った人影がいたのでそこへ足を向ける一夏

 

そこにいたのは

 

ガレス「む、おお…一夏か!」

 

アイズ「お兄ちゃん!!」

 

ガレスとアイズ、そしてリヴェリアの3人が都市を見下ろしていた

 

一夏は飛びかかったアイズを抱きとめると頭を優しく撫でる

 

一夏「災難だったな。聞いたぞ、お前らザルドと殺りあったらしいな」

 

リヴェリア「あぁ…だが六月が乱入したおかげで、どうにか命拾いできた。その上あのザルドの片腕を奪うとは…お前と言いアルフィアと言いやはりヘラの眷属は皆怪物揃いだ。それであの男は…」

 

一夏「あの馬鹿負傷してんのに無理に身体動かしたから現在療養中だとよ…ポーションぶっかけて寝かせたから明日までには完治するはずだ」

 

ガレス「……ザルドとやりあった傷だけでなくアルフィアとも戦った傷もあるというのにそれを短い期間で癒すとは、あやつの身体はどうなっておる」

 

一夏「頑丈なのが取り柄だからな…アイズも色々大変だったらしいな…よく五体満足でいられたよ」

 

アイズに目を向けながら言うと、アイズはどこか言いづらそうにしつつも口を開く

 

アイズ「ねえ…お兄ちゃん……どうして…私達は人と戦っているの?」

 

一夏「……」

 

アイズ「人を傷つけるのはモンスターなんだよね?でもなんで人が人を傷つけるの?」

 

モンスターに対し強い敵意を持つアイズからすれば、本来そのモンスター達から傷つけられ、時には命すら奪われる人がまるでモンスター達の様に傷つけ殺す様を、この大抗争の期間中ずっと見続けてきたことで、自分の中である種の疑問が生まれていた

 

その問いに対する答えに、どう答えるかを内心ハラハラするリヴェリア

 

一夏「……いいかアイズ。……世の中にはな…平気で人を傷つけ、殺し…それを楽しいと感じ笑う様な快楽殺人肯定派の屑どもが数多くいる…中には自分なりの考えや思想で人を殺すことを救済と履き違えるような奴らだっている」

 

アイズ「……」

 

一夏「お前はモンスターを憎んでいるが…敢えていうが、今この状況においては、モンスターの方がまだマシですらあるからな?」

 

アイズ「──なんで…?」

 

突然のモンスター肯定発言にアイズは戸惑う

 

一夏「モンスターが人を殺すのはなんでだと思うか?……答えは生きる為だ。俺達が動物の肉を喰らうように、モンスター達も食べて生きる為、或いは自分達を殺しに来た奴らから身を守る為に人と争う。でもこれら全ては人間だってやっている行為だろ?そもそもモンスターには人間と違って善も悪もない…生きるってことはな…増えることであり、食べることだ。モンスター達は動物と同じで基本そういう本能のもとで動いている…逆に人間は、モンスター達と違って、思考…考える力と相手を理解する為の協調性っていうモンスター達にはないものを持って生まれてきた…結果、モンスターや動物達と違って増えて食べる以外の生き方を考えて実行に移す者が多く出てきた……今この都市を攻めている闇派閥達はそのうちの数に数えられる……本来同族の人間を、身を守る為でも食べる為でもない…殺しを楽しむ為、死こそ救いなんて考えのもとで動いている」

 

敢えて言葉を選ばずに長い話をする一夏

それに対しアイズは黙って話を聞いていた

 

そして思う

なら自分はどうなのか…もう何人も闇派閥を殺した

自分はモンスターよりも酷いのか

モンスターを憎む自分の考えは間違っているのか

 

アイズ「……じゃあ…人を殺す人は…モンスターよりも酷いの…?」

 

一夏「勘違いするなよ?俺はモンスターを憎むお前の考えを否定するつもりはない…モンスターに家族を奪われたお前がモンスターを憎むのは最もだ………なあアイズ…お前はなんで人と戦うんだ?フィンに命じられたからか?」

 

アイズと目線を合わせるために膝を曲げながら言う一夏

 

アイズ「……違う……リヴェリア達が…傷ついているから…」

 

一夏「…つまり、お前は自分のまわりにいる誰か……家族を守る為に剣を握っている……それでいい……ガキのお前が人を斬るのは俺個人としてはあまり認めたくないが…少なくともお前は闇派閥みたいな自分本位な理由で他人を傷つける奴らとは違う……忘れるなよ…人が心無い怪物に堕ちるのは、いつだって他者との繋がりや想いを忘れて自分本位な理由で戦うようになってからだ…」

 

そういいアイズの頭に手を乗せ撫でる

 

一夏「今はまだ幼いし、こんな難しい話…わからん所もあるだろうけど…それはこれから生きて、大きくなっていくうちに自分の中で答えを見つけて決めていけばいいよ…だからアイズ……今は生き延びる事だけ考えろ。いいな?」

 

そう言うと一夏は予定があるからとその場を後にした

 

一夏との会話を思い浮かべながらアイズは考えていた

恐らくこれはアイズ自身にとって長いテーマになるだろうと

 

リヴェリア「……アイツ…私達よりも親代わり向いていないか?」

 

ガレス「……気持ちはわかるぞ」

 

なお横にいた大人2名は自分達よりもアイズを教え導いている一夏に少しの焦りを見せるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇派閥との戦いで亡くなった者達に用意された急造の墓地

 

この地には多くの死者は眠っておらず、ほとんどは遺体が見つからず形だけの墓標だけが存在していた

 

そんな形だけの墓標が並ぶこの地にて

 

ガネーシャ「アーーーーーーディーーーーーっっ!!うああああああああああああああんっっ!!」

 

神の一柱が大声で涙を流していた

 

シャクティ「……貴方は、本当に、やかましい神だな」

 

その横で、大泣きしている神 ガネーシャの眷属

シャクティ・ヴァルマがその姿に呆れつつも笑みを浮かべていた

 

一夏「……この場所で泣くのはいいが、お前の場合普段のやかましさに涙追加しただけで、この地に眠る魂達も飛び起きる勢いだな」

 

シャクティ「一夏……」

 

背後からの声に振り返ると耳を防ぐ仕草をする一夏がいた

 

一夏「ホームに戻ってもお前が居なかったからアストレアのホームに行ったらちょうど入れ違いになって、お前の魔力の残穢辿ったらここに辿り着いた」

 

シャクティ「……便利な眼だな」

 

無言でアーディと名を刻まれた墓標の前に立つシャクティの隣に立つ一夏

 

そんなふたりの様子を見ていたガネーシャは空気を読んでその場を去る

 

一夏「……アイツの最後は知ってるか?幼い子供を助けようとして死んだんだとよ…ある意味誰にでも優しさを向け見捨てないアイツらしい最後だ」

 

シャクティ「……あぁ…」

 

一夏「お前、団員達にアーディのやった事を愚行と言って敢えて反面教師にした上であいつらを死なせないよう鼓舞してたのを見ていたが…姉の立場として見て…アーディのやった事をどう考えていた……本音は?」

 

派閥のまとめ役としてではなく、一人の妹を持っていた姉としての言葉を聞こうと問う一夏

 

それに少し答えづらそうにしつつも口を開くシャクティ

 

シャクティ「あの子は昔からそうだった……」

 

一夏「……」

 

シャクティ「英雄譚が好きで…特にアルゴノゥトが大好きで、よく私に読み聞かせて欲しそうにせがんで来たな……英雄が人々を救い、笑顔にしていった話を聞いて育ったからか…いつも誰かを助けたい…誰かに手を差し伸べしてあげたい…皆に笑顔でいて欲しい…そう願って生きていた。うちは、早くに親を亡くして…アーディとは10歳以上年も離れていた……だから私が親代わりに接してきた…アーディには両親に育ててもらった記憶がない…姉の私が言うのもなんだが、よくまっすぐに歪まず育ってくれたと私の密かな自慢だった」

 

何かを思い浮かべるように言うシャクティの表情はどこか明るく、そしてどこか切なそうだった

 

シャクティ「あの子の…他者を想う気持ちは…優しさは…きっと多くの人を救ってくれる。暗黒期を迎える前まではそう思っていた」

 

一夏「……」

 

シャクティ「今は、人を傷つける悪魔が微笑む時代…アーディの様な、悪魔にも優しさを向ける者が損を…いや、傷つく時代だと考えた私は…アーディに何度も忠告した……だが、アーディは辞めなかった……それが、アーディが決めた生き方だったのだろうと、今にして思う」

 

話すシャクティは自身の拳を強く握り震える

 

シャクティ「そして…あの子は死んだ……最後まで優しさを捨てずに……先ほど和解したが、リオンは…アーディの優しさを否定するようなことを言った私を非難した……きっと、多くの者は、アーディのやった事を愚行ではなく、善行と呼ぶだろう……対して、切り捨ててでも生きるようまわりに呼びかけた私を、心の無い愚か者と罵る」

 

一夏「シャクティ…」

 

シャクティ「褒めるべきなのだろうな……こんなご時世…優しさを捨てず、救うことを諦めなかったあの子のことを…だが…褒めない…褒めきれないんだよ…私は…」

 

声が震える

 

手が震える

 

それでも口を止めない

 

シャクティ「死んだら…死んでしまったら…その優しさは…無意味に終わってしまう!!その優しさは!生きている時だからこそ、人の心を響かせてくれる!!例え子供を見殺しにしてでも、お前は…生きるべきだった!!この先お前なら、きっと多くの人々を…優しさで救う、私に無いものを持つ、力と規律を重んじる事しか脳のない私と違う、万人に求められる物を持っているお前だからこそ、生きてて欲しかった!!」

 

声を 口調を荒げながらもアーディへの想いの全てを吐き出すシャクティ

 

それでも涙だけを流さないよう堪える

 

シャクティ「……駄目だな…あの子の事になるといつもそうだ…仮にも都市の番人である私が…都市の民衆ではなくあの子一人の未来を想う様な事を口走るのは…きっと…自分のやることなすこと口酸っぱく言う私をあの子は疎ましく思っていただろうな…」

 

全て言い切りどこかスッキリした様子を浮かべながら自虐めいた事を言うシャクティに一夏は

 

一夏「それの何がいけない」

 

否定した

 

シャクティ「──」

 

一夏「お前は都市の治安を守る者の前に、一人の妹を持つ姉……なぜ自分の家族の未来を重んじる事がいけないことだ。そんなの姉なら…家族なら当然のことだろ。それにアーディがお前を疎ましく思うだって?なわけあるか馬鹿」

 

罵倒しながらも一夏はシャクティに詰め寄る

 

シャクティ「い、いち」

 

一夏「前にアーディが言っていた。お前が罪人に鞭を打つから自分は少しの飴を…優しさを振り撒いて更生させる事に一役買えやすくしたって…規律を重んじるのも、誰にでも厳しくするのは、お前なりに誰かの未来を脅かされない様自ら嫌われ役を買って出ていたことも……そんなお前を、アイツは」

 

アーディ『いつも厳しくて、時々怖いけど 私よりも先を見ていて、沢山の人を守ろうと頑張るお姉ちゃんは、私にとって尊敬する、大好きな自慢の家族だよ』

 

シャクティ「──っっ」

 

一夏「アイツの最後の行いを愚行と否定してもいい…だが…アイツに生きていて欲しかった…アイツの生きたであろう未来まで否定なんてしないで欲しい…たった1人の血を分けた家族のお前がさ…」

 

そう言いながら、一夏はポケットから小さな袋を取り出して見せた

 

シャクティ「……これは…」

 

見せてきたそれに疑問を投げるシャクティに答える一夏

 

一夏「アーディの遺灰だ

 

シャクティ「──っ」

 

一夏の言葉に一瞬頭が真っ白になるシャクティに言葉を続ける

 

一夏「遅くなったが…アリーゼ達から、アーディの最後の場所を教えてもらって、今日…かき集めてきた。遺体はだいぶ腐敗していて、爆発であちこちに飛び散っていて、アイツの魔力の残穢が見えてなかったら、もう判別ができなかっただろうってぐらいグチャグチャだった……本当は身内のお前のいる場で火葬すべきだっただろうが…見せられない姿だったから、勝手ながら俺一人でかき集めて火葬した…できるだけ早くお前に…家族のもとに、アーディを帰してやりたかった…」

 

アーディの遺灰を納めた小袋をシャクティに渡した

 

シャクティ「───」

 

アーディの遺灰を納めた小袋を両手に乗せると

無言で遺灰の入った小袋へ目を向けた

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャクティ「───っっ!!」

 

震える手でアーディの遺灰()を抱き締めながら堪える

 

一夏「シャクティ……ここにはお前の所の団員は居ねえ…ここに居るのは、お前とお前の派閥の団員じゃない野郎一人…団員や主人の前で弱い所を見せないなら、せめて俺の前でくらい…弱い所さらけ出したっていい……泣いてもいいんだ」

 

シャクティ「──!」

 

シャクティの肩に手を置いたかと思えば、そのままシャクティを抱き締める一夏

 

一夏「……俺も…アイツの為に…我慢せず泣くことにする……オラリオ出できた…ダチのあいつの死にな」

 

シャクティ「───っっっっっっ」

 

その言葉を皮切りに、とうとうシャクティは

堪えていた全てを吐き出した

 

アーディ──アーディ──!帰ってきてくれた──もう会えないと思っていた──ありがとう──ありがとう──一夏!──あの子を──私のもとに連れて帰って来てくれて──!!

 

一夏「……あぁ…」

 

泣き続けるシャクティを抱き締める腕に更に力をこめ、静かに涙を流す一夏だった

 

この日

粗末に作られた墓地

この地で

 

眷属を亡くした一柱の神は

 

妹を亡くした姉は

 

そして 

 

友を亡くした鬼は泣いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────アーディ

 

────お前と初めて出会った時を 俺は忘れない

 

────人間不信だった 

 

────ヘラの眷属でまわりから恐れられ 警戒されていた俺を

 

────お前はちっとも恐れず 笑顔で語り掛けてきた

 

────そんな無警戒で 

 

────まるで無邪気な子犬みたいに距離をつめて来た

 

────お前の存在に毒気が抜かれて 俺も関わるようになった

 

────そんな俺を見て 多くの奴らが近寄り 警戒しなくなり

 

────多くの人とつながりを持てた

 

────お前のおかげだ

 

────感謝するよ お前と出会えてよかった

 

────お前はもう十分頑張った お前の言葉

 

────正義は巡る

 

────きっとそれは紡がれる

 

────どれだけの時が経とうとも 

 

────どれだけの終わりを迎えようとも

 

────紡がれた意志 願い 想いは託されるだろう

 

────お前は想いは 確かに託された

 

────きっと お前の想いは あの正義馬鹿どもが継承する

 

────俺はお前のようにはできない

 

────だが お前の想いを忘れることはない

 

────俺も お前の姉も ダチ達も

 

────全て出しきってから 生き抜いてからそっちに行く

 

────だから 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──俺達を見守ってくれアーディ

 

──甘くて優しい正義を持った──俺のダチ

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