政府は1日、災害に強い国づくりを目指す国土強(きょう)靱(じん)化(か)の次期計画(2026~30年度)の素案を公表し、事業規模は20兆円強と明記した。21~25年度の計画は約15兆円で、対策加速や物価高に伴う工事費上昇のため大幅に積み増す。能登半島地震など大規模な災害が相次ぐ中、国土強靱化の予算はこれで十分なのか。

 今回の計画では「防災庁設置に向けた検討を進めるとともに、令和6年能登半島地震や令和7年1月に埼玉県八潮市において発生した道路陥没事故などの教訓を踏まえつつ、国土強靱化施策の更なる加速化・深化を図る必要がある」と書かれている。

 その中で大規模地震による被害想定として南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震が掲記され、人的被害(死者)、資産などの直接被害、生産・サービス低下による被害を含めた場合の被害額が掲げられている。南海トラフ巨大地震はそれぞれ約29・8万人、約224・9兆円、約270・3兆円、首都直下地震は最大2・3万人、約47・4兆円、約96・3兆円、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震は最大19・9万人、約25・3兆円、約31・3兆円とされている。

 本コラムで「埼玉県八潮市陥没事故」「東日本大震災から14年」を書いた記事において、公共投資を抑制している要因として、国土交通省が公共投資の費用と便益を分析する際に使う「社会的割引率」が4%とあまりに高すぎることを指摘した。今の国債金利であれば1~2%に収まるはずなので、採択できる公共事業は今の6兆円から2倍以上になるだろう。

 今回の計画では、今後5年間で公共事業は30兆円程度であるが、そのうち20兆円強を国土強靱化に割り当てるというものだろう。しかし、社会的割引率を見直すだけで、今後5年間の公共事業可能額は60兆円以上になる。となると、国土強靱化に割り当てられる金額は50兆円以上となる。

 社会的割引率を市場連動とすることは、市場から見た適切な公共事業量を算出することでもある。市場から見て、今の国交省が考える倍以上のものが求められているのに、それを国交省が無視するのはおかしい。

 できる限り公共事業を行い、大規模地震による被害をできるだけ少なくするのは国の責務であるはずだが、恣意(しい)的に公共事業を絞り、対策を出し惜しんでいる。国民の生命と財産を守るのが政府の役割のはずだ。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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