偏った選手起用で求心力低下 マリノスの監督解任、フロントの責任は
サッカーJ1横浜F・マリノスが18日、スティーブ・ホーランド監督(54)の解任を発表した。
リーグ戦11試合を終え、1勝5分け5敗の18位タイと降格圏に沈んでいたとはいえ、開幕からわずか2カ月。名門クラブに何があったのか。
14日、強化責任者の西野努スポーティングダイレクター(SD)は朝日新聞の単独インタビューに応じていた。
まず尋ねたのは、26日(日本時間27日)に行われるアジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)準々決勝は、ホーランド監督の体制のまま臨むのかという点。
「はい、そう思っています」
西野SDは即答した。
状況が大きく変わったのは、16日の清水エスパルス戦だ。
後半立ち上がりまでに2点をリードしたものの、その後、選手たちの運動量が落ち、防戦一方に。3点を奪われ、逆転負けした。
6戦未勝利となった試合後、DF松原健ら複数の選手は涙を流した。シーズン序盤としては、異例の光景だった。
西野SDが示した「監督交代」の基準
この試合で特に問題視されたのが、選手起用だ。
先発をほぼ固定して連戦を戦っている中、清水戦で途中交代したのは2人のみ。先発選手に疲れが見えるのは明らかなのに、交代できる5人の枠を三つ余らせた。
試合後、ホーランド監督は「代えればいいということではない。(投入する選手の)状態も見ないといけない」と語った。
横浜F・マリノスは今季に向けた監督選考で、数千人の候補者から監督経験の乏しいホーランド氏を選びました。2年連続でシーズン途中に監督を解任。フロントの責任も問われています。
だが、以前から交代の少なさや遅さが指摘されていただけに、選手たちはこの日、取材エリアで不満を隠さなかった。
先発を外れた選手は「なぜ自分が出場できないのか疑問」と率直に言った。フル出場した選手も「自分たちも(控えの選手に)出てきてほしかった。もっと早く交代してほしい」と口にした。
西野SDは10日の囲み取材で、監督交代の判断基準について「数値的なボーダーラインは今話すものではない」。その上で、「監督の言葉に力が無くなったり、誰も反応しなくなったりしたら終わり」と話していた。
清水戦後のチームの空気感は、そのときが来たことを物語っていた。
経験乏しかったホーランド監督
今季を迎えるにあたり、新監督の選定を主導したのは西野SD。昨春まで浦和レッズのテクニカルダイレクタ―を務め、今季からマリノスで強化の責任を担うことになった。
世界各地でクラブ経営を展開し、マリノスが提携するシティ・フットボール・グループ(CFG)の幹部らとともに、選考にあたった。
関係者によると、CFGが示した最初の候補者は数千人いたという。西野SDは十数人と面談。中山昭宏社長も参加した最終面談で、数人からホーランド氏を選んだ。
候補者の中にはマリノスが主体的に選んだ人もいれば、CFGが薦める人もいた。ホーランド氏は前者だった。
懸念されたのは、監督経験の乏しさだった。
英国出身のホーランド氏はイングランド代表や同1部チェルシーでコーチを歴任したが、トップチームでの監督経験はほとんどなかった。それでも、西野SDは「異国の地である日本に来て、監督としてチャレンジしたいという強い思いを感じた」と監督を託す決断をした。
クラブは当初、日本人のヘッドコーチを置くことを検討していた。だが、監督選考でも終盤まで残り、CFGが強く推薦したパトリック・キスノーボ氏(44)を、そのポストに起用することを決定。オーストラリアなどで監督経験が豊富なため、サポートに適しているという判断だった。
ホーランド氏がまず取り組んだのは守備の再構築だった。昨季はリーグで4番目に多い62失点。3年ぶりのリーグ優勝と初のアジア制覇を目指す上で、守備の改善は避けて通れない。
練習ではホーランド氏が守備、キスノーボ氏が攻撃と大まかに役割を分担した上、開幕前後は守備の練習に大半の時間を割いた。
ただ、守備の決まり事を増やしたことで、攻撃の自由度が失われた。開幕から8試合で4得点6失点。守備は改善したものの、看板だった攻撃力が影を潜めた。
選手たちからは「攻撃的なサッカーに戻してほしい」という声が徐々に出ていた。9日の川崎フロンターレ戦からは、前線から積極的に守備をし、攻撃に人数をかける昨季までの戦い方に戻すような形となった。そこからの3試合は6得点8失点。ゴールは奪えるようになったが、今度は守備が崩壊。経験の少ない監督には、手の施しようがない状況だった。
シーズン移行控え、降格に危機感
このタイミングでの監督交代となった理由の一つは、準々決勝から決勝までサウジアラビアで集中開催されるACLEを今月下旬以降に控えていること。そしてもう一つが、J2降格への危機感だろう。
2026年から8月に開幕するシーズン(26~27年シーズン)に移るため、来年は2月から6月にかけて「特別大会」と称してリーグ戦が開催される。この大会は昇降格がなく、今季J2降格が決まると、短くても1年半はJ2で過ごすことになる。1993年のJリーグ開幕から33シーズン、一度もJ2に落ちたことがないマリノスにとって、経営面を考えても、降格は絶対に避けなければならない事態だ。
クラブがシーズン途中に監督を解任するのは昨季のハリー・キューウェル氏に続いて2年連続。キューウェル氏も監督経験の少なさが当初から懸念されていただけに、同じような失敗を繰り返したフロントの責任も大きい。
18日の練習からはキスノーボ氏が暫定的に指揮。新体制でACLE前最後のリーグ戦となる20日の浦和戦に臨む。
「デジタル版を試してみたい!」というお客様にまずは月額100円でお試し体験
- 【視点】
サッカーの監督人選は本当に難しいものである。 野球だったら、チームの元々の戦力が100として、監督の手腕によってチーム力が変わるのは、せいぜい80~120の範囲くらいだろう。しかし、サッカーでは、監督次第で、元々の100が、50にも200にも変わってしまう怖さがある。 私は清水サポなので、水曜のホーランド横浜FMのちぐはぐさには、本当に救われた。クラブの底力からして、マリノスの降格危機云々を語るのは時期尚早だが、監督の人選を間違うと、そしてそれによってチーム戦術が迷走したりすると、名門ですらここまで崩れてしまうのが、サッカーの難しいところだ。 ただ、これも先日我が軍が対戦した相手だが、川崎などは、前任者とはかなり色の違う長谷部新監督を迎え入れなかがら、早速結果を出している。ロドリゲス監督の柏なども、もっと時間がかかるかと思いきや、今季ロケットスタートを切った。 長谷部氏やロドリゲス氏に共通しているのは、ホーランド氏とは違い、すでにJリーグの監督として実績を残している人ということだろう。手腕を実証済みの名将であれば、たとえ戦術変更を伴ったとしても、リスクは少ない。 もっとも、そのようなリスクを避けるため、Jリーグは同じような顔ぶれの監督をグルグルと使い回す傾向があり、新味が乏しくなる弊害も生じている。ただ、今回のホーランド氏のような失敗を目の当たりにすると、リスク回避を優先するのもやむなしかと思えてくる。
…続きを読む