「ついのすみかが…」介護サービス突然停止、職員も解雇 山ノ内町のサ高住、委託の事業者が破産
下高井郡山ノ内町のサービス付き高齢者住宅(サ高住)「メディカル志賀」に併設の指定訪問介護事業所を運営する「ヘルスケアセンター・メディカルタウン」(岡谷市)が今月、前触れもなく破産し、サービスを受けられなくなった入居者に不安が広がっている。県には、介護保険法で義務付けられている事業停止1カ月前までの届け出はなかった。職員も解雇に追い込まれた。
県建築住宅課などによると、メディカル志賀は2012年10月にサ高住として登録。10階建て88戸で約70戸が入居し、約30人の入居者が介護サービスを受けていた。メディカル志賀を所有する同町の「湯田中メディカル」は、入居者の介護サービスや食事、生活相談、安否確認などをヘルスケアセンター・メディカルタウンに委託していた。
■事業は引き継がれず、食事の提供も滞る
破産管財人や入居者らによると、メディカルタウンは4日に破産手続きの開始が決まった。同日、書面で入居者に業務停止を通知し、事業所職員に解雇通知書を配布してサービスを停止した。介護サービスを受けていた約30人について、県と町は担当のケアマネジャーと対応。県内の社会福祉法人が支援に入り、元職員2人を緊急雇用して一部の業務を続けているが、食事などのサービスは滞っている。
メディカルタウンを経営していた男性は8日の取材に、昨年9月までに経営権を引き継ぎ、金融機関の融資を受け黒字化を目指したが想定より建物の家賃が高く、「人件費や水道、光熱費の高騰により立ちゆかなくなった」とした。事業停止の通知が遅れたことは、「急になってしまい申し訳なかった」と話した。
県介護支援課は「事業を引き継ぐことなく停止した事業者は前例がなく驚いている。現在、介護サービスの利用者が次の事業所を見つけることを最優先に対応中」とする。湯田中メディカルを経営する男性は8日の取材に、「次の事業者を早急に見つけるよう努めたい」とした。
■「全財産を処分してきたのに」 先行き不安な入居者、職員の給与は未払い
高齢者に介護サービスや食事などを提供する指定訪問介護事業所が突然、事業を停止した山ノ内町のサ高住「メディカル志賀」。入居者は先行きに不安を募らせ、解雇された職員も怒りに震えている。
「ついのすみかと決めて、1年近く前に入ったばかり。やっと慣れてきたのに…」。入居者で、車いすで生活する女性(90)は嘆いた。「ここに住み続けられないなら他に行きたい。これからどうなるのか早く決めてほしい」と訴える。
80代の男性は、中信地方にあった自宅や財産を処分して約7年前に入居した。食事のサービスが停止したままで、「スーパーは遠くて買い物に行けないし、自炊の元気もない」と困り顔。「全財産を処分して入居した人は少なくない。どうなるのかちゃんと説明してほしい」と求める。
同事業所でヘルパーとして働いていた女性によると、約20人いた職員の3月分の給与は未払いだという。女性は県内の社会福祉法人に緊急雇用され、サ高住に残って一部サービスの提供を続けている。入居者の家族から「どうなってるんだ」と怒鳴られても、「入居者をそのままにはできない」と我慢している。女性は「何でもっと前に状況を説明してくれなかったの」と憤る。
■事業所運営者と建物所有者、責任の所在は曖昧
一方、同事業所を運営していた男性は、破産理由の一つに「建物の賃貸料が当初聞いていた額より高かった」と主張し、建物の所有会社の男性経営者は「『空き室に医療機関などを入れればもうかる』と聞いていた。土地と建物を貸しているだけ」とした。建物の所有会社とサービスを提供する事業者が異なる仕組みで、責任の所在が曖昧な実態も浮かぶ。
特養の施設長を務めた経験がある長野大(上田市)の元特任教授、萱津公子さん(68)は、事業継続が厳しくなった時点で行政に相談し、事業の引き継ぎや入居者らの処遇を検討すべきだった―と指摘。「人の命を預かり、社会的責任が大きい福祉サービスの提供者として、事業者は最後まで責任を持つべきだ」とする。行政や地域包括支援センターについては、入居者の現状把握を急ぎ、近隣の福祉事業所への協力依頼といった調整役も求められる―としている。
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