「DNA的なところに響いてくる」ゆずが語る郷土芸能へのリスペクト
フォークデュオ「ゆず」の北川悠仁さんと岩沢厚治さんが3月26日、富山市のオーバード・ホールで開かれた「わっかフェス」(三菱商事・朝日新聞社主催、北陸朝日放送特別協力)に出演した。富山と石川の郷土芸能や大学生とコラボした2人に、終演後に話を聞いた。
――わっかフェスを終えていかがですか。
北川 15年ぶりの富山でのコンサートだったので、やっと富山でできたというのはとてもうれしかったです。
岩沢 まず無事に終えることができて安心しています。
北川 (わっかフェス前半で出演した)郷土芸能、伝統芸能の皆さんからたすきを受けついで、(後半の)自分たちのパフォーマンスがあったので、自分たちだけではなく、その全部が盛り上がるようにと思ってやりました。お客様が本当に素晴らしくて、最高の夜になりました。
岩沢 フェスっていうのは自分たちだけが良ければ良いというわけじゃなくて、オープニングから最後までの流れが大事な気がしていて。今回はまた特殊なフェスで、いろんな(ジャンルの)方々がいる。皆さんの長所を生かすためにゆずがどう関われるか構想を練ってきた結果が出て良かったです。
生命力も恐怖も感じた
――印象に残ったものはありますか。
北川 (舞台の)袖で皆さんのパフォーマンスを見ていました。この地域の風土とか、食べ物とか、風とか、地形とか、そういうもの全てが混ざり合って出来ているんだろうなと思った。自然の中で生まれてきたものなんだろなって思わされる、生々しい命の力みたいなもの。生命力や、逆に恐怖も感じました。
前回のわっかフェスでは秋田の伝統芸能に触れましたが、富山で生まれている伝統芸能も独特でした。音楽からは日本の景色が見えつつ、どこか大陸的なものを感じました。
御陣乗太鼓さんは、袖に帰ってくると倒れ込んで肩で息をして、命をむき出しにしてやっているような感じでした。本当に胸を打たれましたね。
獅子の皆さん(新湊・二の丸町獅子方若連中)は、年配の方からたくさんの子どもたちまでが一つになっていて、つないでいくということの大切さを学びました。
他のみなさんも素晴らしかった。いろんな流行のものとかがある中で、郷土芸能を選んでくれたことがうれしいし、伝えていってほしいし、僕らも応援したいです。
岩沢 歌っているときに真後ろを獅子が通ってどきどきしました。「絶対に後ろに下がらないで!」と事前に言われていて、「なんだろう」って思っていたら、その理由が分かりました。
あと、音楽にはボーダーがないと感じた。やっているジャンルは全然違うけど、ひとくくりに「音楽」のお祭りが楽しくて、歌って踊っている。そういう原点を感じられました。
前日はおとなしくて「大丈夫かな」
――郷土芸能とのコラボレーションはいかがでしたか。
北川 僕が中心に演出をやらせてもらっているんですけど、本当に悩みました。秋田は「なまはげ」の分かりやすいキャッチーさがあった。富山の郷土芸能も、興味深いものがたくさんある。その魅力をどうやってコラボして出せばいいのかなっていうのは悩みました。
前日の夜に会場に来て演出をつけていたんですけど、最初はおとなしくて「大丈夫かな」って思った。でも本番では、みんなの盛り上がりに僕らも圧倒されちゃった。舞台に何度も立っているから(慣れている)。本当にうまくコラボレーションできたんじゃないかなって思っています。
岩沢 出番のときに袖をちらっと見ると、みんな、緊張して待機していらっしゃった。でも出てきたらやっぱり舞台に立つのが嫌いじゃない人が多いというか、表現したい人たちなんだって感じました。
縦や横でなく輪になってつながっていく
――わっかフェスの魅力は。
北川 縦や横じゃなく円、輪っかになる。石を投げ込んで波紋がだんだん広がっていくような、輪の力みたいなものを感じますね。僕らがやっている大衆音楽と、伝統芸能が出会うことで起こる化学反応。波紋が大きく広がっていって、お客さんに届いて、お客さんにも色んな思いを抱いてもらえる。そうやって輪がつながっていくものだと思っているし、僕らも感じたこの郷土芸能の魅力が広がっていくことを本当に望みます。
岩沢 みんなで刺激を分け与えるイベントだと思っています。僕らも彼らから刺激をもらって終えられたし、みなさんもゆずのステージを一緒に体感することで思うことがあったんじゃないかなという。相乗効果で広がっていければいいのかなと思います。
北川 ここまでつないできたものに敬意を払って、大切に届けていくことを、地道に1歩ずつやることが大事だと思っています。このイベントは長く続いてほしい。毎年毎年、いろんな地域で行われて、知る機会になり続けていく。
岩沢 やっているということを知ってもらうことがまず大事。僕たちのフィルターを通して知ってくれた人も、伝統芸能を通じてこういうイベントがあるんだって知ってくれることもある。その連鎖がずっと続いていけばいいのかなあって思います。
「北陸のみんな」として一つになっていた
――地元・横浜の大学生(横浜国立大学の民謡研究会合唱団)も活躍しました。
北川 正直ね、もうわかんない。っていうのは、もうあまりにもなじみすぎてた。彼女たちはこの地域に来てみなさんと(おわらを)やっているうちに、どの子が横浜の子でどの子が富山の子なんて分からないくらい一緒になっていた。伝統を感じて、受け取って、溶け込んでいる。全員が「北陸のみんな」として一つになっていましたね。
岩沢 日々きっとお勉強もお忙しいでしょうに。
北川 距離感(笑)。
岩沢 勉強もお忙しいでしょうに(笑)、その中で文化を学んでいる。その姿勢は大事だなと思いますね。
――コラボして郷土芸能について感じたことはありますか。
北川 DNAレベルで知っているんだなって感じることが多いです。初めて見る形、スタイルでも、どこか必ず懐かしさを感じる。自分って日本人なんだなーって思うんです。日本の素晴らしさみたいなものも呼び起こすし、またそれが日本だけではなくいろんな場所に届いたらいいなあと思いますね。
岩沢 ちょっと似ているかもしれない。理屈じゃないっていうか、詳しくはみんな知らないんだけど、何か心に響く。太鼓の音一つとっても、揺さぶられる。それがきっと魅力だと思います。初めて見たのにすごいぞ、この音楽、この音、この踊り。そうしてDNA的なところに響いてくるんだと思います。
悲しみの後に晴れ間が出てくるようなエールを
――「雨のち晴レルヤ」も歌いました。
北川 あの曲のメッセージ性が、時を超えて、とか、変遷とかで。このイベントには合うんじゃないかなと思いました。北陸、特に石川は災害があったので、悲しみの後に晴れ間が出てくるようなエールを、石川、北陸に送りたいという思いも込めています。
――曲中の「遠き山に日は落ちて」のメロディーも印象的です。
北川 おもしろい曲だなと思っています。元はドボルザークが作った曲で、ボヘミア楽派だったものが、日本に流れてきて童謡化されて、帰る時間に街で鳴るものになった不思議な存在。受け入れて、それを自分たちのもののようにしてしまう、日本の強みとずうずうしさみたいなものが好きです。ゆずの中にも時々潜んでいることがあります。
100年後、200年後も
――被災地の郷土芸能へエールを。
北川 昨年の4月に能登の被災地に行きました。避難所にいらっしゃるみなさんと、ちっちゃいライブだったんですけど、すごくいい時間を過ごせた。あれから石川への思いはすごく深まっていて、また行きたいと思っているんです。何か石川の皆さんに届けられることをみんなで企画して、お力になれないかなと思っています。
郷土芸能を大事に思っている年配の方から、ちびっ子、若い子たちを応援したい。これからも守り続けてほしいなと思います。微力ながら応援したいし、僕らを媒体にして伝えたい。
岩沢 はやり廃りとかじゃない世界なので、ぜひ継承してほしい文化だと思います。100年後、200年後に(郷土芸能が)現存している世界であってほしいですね。
4月20日、1日限定で無料配信
わっかフェスは4月20日(日)に1日限定でオンライン無料配信します。申し込みはhttps://stagecrowd.live/8837729125/へ。締め切りは同日午後9時(受け付け状況により早く締め切る可能性があります)。視聴可能時間は同日午前0時~午後11時59分です。
ステージの模様はBS朝日で5月4日午後1時~同55分に放送する予定です。
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