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女性スペースを守る制度的アプローチの意義と誤読の危険性

女性スペースを守る制度的アプローチの意義と誤読の危険性

― イギリス最高裁判決・制度否定派(法的性別を認めない立場)の誤解・日本の法案から考える ―

【1】イギリス最高裁判決(2025年4月)

項目

内容

対象法

Equality Act 2010(平等法)における「女性」の定義

判決内容

「女性(woman)」はこの法の文脈では生物学的女性を指すと全会一致で判断

補足

GRC([*1]性別認定証)を持つトランス女性は、「gender reassignment([*2]性別適合 ※手術の有無は問わない)」という別の保護特性の対象[A]

副長官の発言

「この判決は制度の解釈の問題であり、特定の集団への勝敗ではない」

意図

制度的区別と人権保障の両立を図る、文脈ごとの定義分離

【2】制度否定派(法的性別を認めない立場)の反応と誤読の構造(日本)

制度否定派(法的性別を認めない立場)の特徴

問題点

「身体が男なら男」

法的性別の変更すら否定し、特例法に基づく制度を理解しようとしない

判決の誤読

イギリス判決を「手術しても男は男とされた」と拡大解釈する恐れ

結果的影響

制度に則って安全対策を講じようとする取り組みまで「差別」と断定し、議論を封殺

リスク

本来の女性・子どもの保護活動が、制度否定派(法的性別を認めない立場)と同一視され萎縮・孤立化するおそれ

【3】日本の『女性スペースを守る法案(2024.12.19案)』の趣旨と制度設計

条文の主旨

内容

第1条(目的)

衣服を脱ぐ等の状況にある施設で、女性が安心して利用できる環境を確保する

第2条

公衆浴場・旅館共同浴室において男女別利用の措置を明記

第3条

通常男女別で使われる施設(更衣室・トイレ等)では、女性の安全確保のために管理者が対策を講じる努力義務

「男女」の定義

身体的特徴による区別と明記(法的な明確性)

補助規定

国・所管省庁がガイドラインを作成、助言や相談支援を行う

除外される対象

自認のみや身体的男性(外国人含む)に限定した制限であり、除外対象は施設管理者によって異なります。性別適合手術および性同一性障害特例法によって法的性別を変更した人を排除する趣旨ではない

【4】三者の位置づけ比較

観点

イギリス最高裁

制度否定派(法的性別を認めない立場)

女性スペース法案

性別の定義

文脈に応じて定義を区別

生物学のみを絶対視

法制度に即し、「身体的特徴」で定義

トランスの扱い

GRC保有者は他の保護枠で保障

トランス女性を法的にも否定

手術済・特例法による変更者は対象外

目的

法的整合性と個別文脈の調整

規範の一元化・信念による全否定

現実の安全・安心の確保(特に女性・子ども)

社会的影響

定義の明確化で制度安定へ

過激化すれば公共議論の破壊

現場の秩序と信頼回復の礎に

【5】共通の論理構造

イギリス最高裁判決(2025)

日本の女性スペース法案(2024)

Equality Actの「女性」は生物学的女性を指すと解釈

「男女」は身体的特徴により区別されると明記

特定の保護目的の文脈(平等法)で定義が限定される

特定の利用状況(裸・更衣中など)で女性の安全を守る目的

トランス女性は別の保護特性(gender reassignment)で保護

特例法での性別変更者は排除しない設計

「排除」ではなく、「制度的適正」

同上。公共の場の秩序と安全を守るための措置

イギリスの最高裁判決も、そして日本の『女性スペースを守る法案』も、本質的には同じ趣旨に基づいています。

身体的性差に基づく「女性」カテゴリーを、特定の文脈(安全・プライバシー・尊厳が関わる場)で制度的に保護するための合理的な区別


翻訳での用語注記

 本稿では、イギリス法制度における用語を日本語に訳すにあたり、以下のとおり訳語の選定方針を定めています。正確性と一般読者の理解の双方を考慮し、必要に応じて原語を併記しています。

[*1]「性別認定証(GRC)」および「性別認定法(GRA)」について

 イギリスの「Gender Recognition Certificate(GRC)」および「Gender Recognition Act(GRA, 2004)」については、本文中では「性別認定証」「性別認定法」と表記しています。

 本来 “gender” は「ジェンダー」として訳すのがより制度的に厳密とされることもありますが、本文では読者の理解を優先し、「性別」という訳語を使用しています。
 これは日本語における法制度上の実際の用例(戸籍上の性別変更など)にも即した表記であり、制度の目的を伝えるうえで適切な表現と考えます。

[*2]「性別適合(gender reassignment)」について

 “gender reassignment” は、イギリス平等法(Equality Act 2010)において、医療的措置の有無にかかわらず、性別の変更を意図し、社会的・生活的に移行している人々を対象とする保護特性です。

 翻訳にあたっては、正確さを重視する文脈では「ジェンダー適合」などの訳語が適していますが、専門用語としての普及度や一般読者の理解を考慮し、日本語として定着している「性別適合」を本文中で用いています。誤解を避けるため、適宜原語を併記しています。


参照

[A]イギリスのEquality Act 2010において、「gender reassignment」という保護特性の対象となるのは、性別の変更を意図し、医療的措置の有無にかかわらず社会的・生活的に移行している人々です。​この定義は、Gender Recognition Certificate(GRC)の有無に関係なく適用されます。​つまり、GRCを取得していないトランスジェンダー女性も、この保護特性の対象となります。​この点については、Equality and Human Rights Commission(EHRC)の公式ガイダンスに明記されています。

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Wikipedia

また、2025年4月16日のイギリス最高裁判所の判決では、Equality Actにおける「女性(woman)」の定義が生物学的女性を指すとされましたが、同時に、gender reassignmentの保護特性に基づくトランスジェンダーの人々の差別からの保護は引き続き維持されることが強調されています。

​​AP News