邪眼の愛し子


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作:じょうじょうじ
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贈り物Ⅱ


一周回って綺麗な笑顔のアストレアと正座で泣いている邪神

そしてそんな主神たちをよそに眷属たちで魔導書を囲む

 

震える手で魔導書(グリモア)をもつサウィル

 

「これで俺も魔法が…?」

 

「落ち着けサウィル!?今ならまだ返品できるかもしれない!」

 

魔導書(グリモア)なんて一級武装も真っ青な値が付きますよ!」

 

 

「いいや限界だ!読むね!無理そうなら売ればいい!」

 

「いや魔導書(グリモア)は────

 

制止される前に魔導書(グリモア)を開きパラパラとめくるサウィル

『魔法は─』

ビッシリ斗書かれたページが次々にめくれていき─────顔が現れた

『じゃあ、始めようか』

文字のインクで編まれたようなその顔は紛れもなく俺の形をしていた

『お前にとっての魔法とは?』

 

俺にとっての魔法…?最初に思いついたのはリオンが使っていたルミノス・ウィンドだ

 

『それはお前にとっての魔法じゃなく初めて見た魔法ってだけだ』

 

クレームを貰ってしまった

 

『お前にとっての魔法とは?』

 

魔法は…力だ。理不尽を打ち砕く力。人の身では届かない者を砕く、はめられた枷を打ち破る力

 

『お前にとっての魔法はどんなものだ?』

 

俺にとっての魔法がどんなものか…?それは風──じゃないな。それはリオンの魔法が風の翠玉だったからだ。しかし俺にとって魔法とはそれ以外は─────いや、一つあった。

あれは雨の日だった。俺が枷に繋がれたまま雨で渇きを癒しているとそれは降ってきた。閃光と轟音、気づけばエルフ少し離れた大木は炎に包まれていて村人たちが大慌てで家から飛び出し火を消そうとしていた。

あの光と轟音───落雷を見て俺は、確かに感動していたんだと思う。その光がもたらす破壊と胸に響く轟音に───魔法を感じていた

だから俺はソレになりたい。光に、音に、雷になりたい。

『魔法に何を求める?』

─────全てを。ただ全てを打ち砕く力を

『欲張りすぎだな』

知ってるさ

『だがそれでこそ「────ストーーップ!」』

「痛い!?」

答える途中で脇腹への衝撃で現実が追いついてくる

「間に合った?ギリセーフ?」

 

とっさに蹴り飛ばしたアリーゼが効いてくる

 

「いってぇ!?」

 

「今のセーフ!?ギリギリセーフ!?」

 

「落ち着きなさいアリーゼ!サウィルとの距離が近すぎる!」

 

主賓を差し置いててんやわんやの大騒ぎである

 

 

「じゃあどうやって確かめる?神聖文字(ヒエログリフ)読める人いないよね?」

 

「神バロールに恩恵を更新してもらえばよいだろう」

 

「それだ!」

 

というわけで正義の説教で真っ白に燃え尽きた自称邪神の出番となる

 

「フムフム…うん?」

 

書き写し中のバロールの手が一瞬止まり首をかしげる。

 

「これは…まあよいか」

 

「まあよいか?それ本当にまあよいのかな?」

 

うつぶせになったサウィルとアリーゼが不安がる中書き写し終えたバロールが立ち上がる

 

「うむ!間違いなく魔法が発現しておる!」

 

「覚えてたら問題なのよ!」

 

「じゃが…この魔法は使えぬ!」

 

「じゃあ蹴られ損じゃん…」

 

バロールから手渡された紙をみる

 

 

サウィル・エスリン

Lv.1

力 :A806

耐久:A895

器用:C612

敏捷:A855

魔力:I 0→I 50

 

「魔力が増えてる!」

 

《魔法》

【████】

・付███

・██性

・███に高█正

・詠█式【█████】

 

《スキル》

天呼地吸(マントラ)

・理外の呼吸による肉体への干渉権限を得る

妖精夜想(フェアリー・ノクターン)

・暗所での精神力の回復速度上昇

闘争輪廻(バトル・フォー・バトル)

・負傷時に精神力を回復、一時貯蔵する

・耐久に高補正

 

 

「あの、主神様?読めないんですけど」

 

「ウム!妾も読めん!」

 

「いや胸を張られても困るが?結局俺は魔法を発現できたののか?」

 

「目、目が怖いぞサウィル…」

 

うるさい、こっちは真剣なんだ

 

「あーーーーっ!!」

 

叫び声に振り向くと魔導書(グリモア)を取り落としてワナワナと震えるアリーゼ

そして取り落とした魔導書(グリモア)には何も書かれていない白紙のページが続いていた

 

魔導書(グリモア)が…推定ウン億ヴァリスの魔導書が…」

 

「えっもしかして…それもう売れない?俺の魔法なんか初期不良あるんだが文句言えば返品できない?」

 

「効果が消失した魔導書(グリモア)はもう売れないんだ…ただの白紙の本だから」

 

「さ、最悪だ…」

 

魔導書(グリモア)が消えたのに魔法が発現できたか分からないとは…

 

「さ、最悪じゃと!?せっかく妾が下賜したプレゼントを…!!」

 

「バロール様?」

 

「ちょっと見せてもらうわよ」

 

アストレア様が俺の背中を覗き込む

しばらく見つめた後微笑んだ

 

「安心してサウィル。恐らくだけど魔法は発現しているわ」

 

「やったぜ」

 

「けどまだ使えないみたいね」

 

「なん…だと…」

 

「途中で中断されたから…なんて言えばいいのかしら、魔法の…解凍作業?みたいなものがまだ終わってないみたいなの?いわば半ナマの魔法ね」

 

なるほどな

 

「訳が分からない」

 

「うーん子供たちに分かるよう表現するのが難しいのよね」

 

「妾も訳が分からん!」

 

「「いやお前(貴方)は分かれよ」」

 

思わずアストレア様も言葉が汚くなっていた

 

「つまり、しばらく放っておけば勝手に読めるようになっているし使えるようにもなっていると思うわ。恩恵を更新しなくてもね」

 

「なるほど理解した!迷宮行ってきます!」 

 

「あっ待って──行っちゃったわね」

 

迷宮なら使えるようになればすぐ魔法が試せる、名案だ!

 

「使えるようになっても更新しないと詠唱が分からないのだけれど…」

 

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

「や、やめてください…」

 

「ええ?何がァ?オレたちは仲良くお酒を飲んでるだけだろ!?」

 

怯える女の腰に強引に手を回して抱き寄せ酒を煽る男

その足元には血と…倒れ伏す男

 

 

「こいつ高そうな指輪を持ってましたぜ!」

 

 

「おう、じゃあありがたーく頂戴しておけェ」

 

「了解団長」

 

「男はどうします?」

 

「あー?うーん、使い道が思いつかねぇから殺していいぜ」

 

「そ、そんな…!!」

 

「おっと姉ちゃんは別室に行こうか、色々仕込んでやるよ」

 

「──もうよい」

 

「…アスラ様」

 

「うん、なんというかね、君たちのやるちゃちな悪事に飽きてきた」

 

「またそれですかい…そんなこと言われましてもねぇウチの戦力じゃあコレが一番なんでさぁ。どうしても暇を潰したければ神様のお力ってやつで何とかしてくださいよ」

 

 

「おいおい、神は敬いな?しかも俺はお前らには名前までくれてやってるんだぜ」

 

男はうんざりしたように嘆息する

 

「くれたからなんだってんですかね。皆アスラだからアスラ様も呼ぶ時困ってたでしょう…で、何か新しいシノギでも思いついたんですかい?」

 

 

 

「お、何だかんだ言って興味ある感じだ」

 

男…アスラ・テュルクは無言で口封じ…女の首をへし折ってから目線で続きを促す

 

神アスラは嗤う

 

「オラリオの一つでも終わらせてみないか?」

 

 

 

 

「まったく誰も妾に感謝せんとは何たる世の中じゃ…もう終わりじゃよこのオラリオ」

 

 

「アリガトー主神サマ」

 

「感情を込めよ感情を!」

 

主神をなだめながらオラリオを歩く

アストレア様におつかいを頼まれた我が主神は一人でほっつき歩かせると当然のごとく迷子になったり余計奈出費をしたりするので荷物持ち兼道案内役兼財布役がいるのだ、もう俺一人でいい

 

「テメェさっきから何様のつもりだ!?」

 

「言いがかりも大概にしやがれ!」

 

「…妙だな」

 

しかし街の様子がどうもおかしい

言い争いや喧嘩が増えているような気がする

オラリオに来たばかりの頃は闇派閥に怯えてはいてもここまでピリピリした雰囲気ではなかったはずだが

 

 

「なんじゃ喧嘩か?見物にいこうぞ!」

 

「首を突っ込むんじゃない」

 

「俺が!!ガネーシャだ!!!」

 

「そうだ、俺がガネーシャ…は?」

 

 

振り返ると象の面を被った変人…いや変神がいた

 

「喧嘩はやめなさい!」  

 

なおも争うオラリオ住民にガネーシャ・ファミリアの冒険者たちが割って入る

さすがに冒険者を相手にしようとするほど頭に血が上ってはいなかったようで憎まれ言を吐き捨てて去っていった。

騒ぎが収まったことで野次馬も自然解散する。

混乱を収束させた人物には見覚えがあった

 

「【象神の詩(ヴィヤーサ)】…アーディ・ヴァルマ」

 

最近レベル2にランクアップしたガネーシャ・ファミリア期待の星だ

しかしそんな彼女にさえ忌々しげな視線を投げかけるオラリオ住民がいるということはますますこの都市に何かが起きていることを示していた。

 

「なんかオラリオ最近おかしいよね?」

 

「そうじゃのう」

 

「そうだな…なんで一緒についてくるんだ?」

 

あれから買い出しを続けようとその場を離れた際なぜかアーディもついてきていた

 

「もしや大邪神たる妾専属の監視か!?ムムム…悪くない!」

 

「君がリュー・リオンのヒモだって本当?」

 

「違います」

 

「妾を無視するでない!泣くぞ?」

 

隣で自称大邪神が涙目になっているがどうでもいいので軽く頭を撫でて無視する。そんなことより彼女の勘違いを全身全霊でただす必要がある。これは男のプライドがかかっているのだ

 

「断じて違う」

 

「目、目が怖いよ…わかったよ信じるよ!」

 

「分かってくれたならいい…ところでどうしてそう思ったんだ?」

 

「ライラが言ってた」

 

「通報に感謝する」

 

あいつ許さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この騒乱、対立を生み出されて燻る群衆の雰囲気…間違いなく『アスラ』の好む手法だ」

 

「え…ガネーシャ様?」

 

 

「私が群衆と繁栄の主ならアスラは衆愚と騒乱の主、降りてくる前からアイツとは価値観が全く合わなかったが地上に降りてきてからは特に大きな動きは起こさなかったが…遂に大人しくしていることに飽きたということか?」

 

思い詰めたように呟くガネーシャは普段のアホ…陽気な神物とは別神のようだった

 

「ガネーシャ様…饒舌すぎてキャラが崩壊気味です」

 

「ハッ!?俺がっ!ガネーシャだああああああ!!!!」

 

「もう遅いです」

 

 

 

 

 

 

 

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