邪眼の愛し子


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作:じょうじょうじ
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鍛冶師を尋ねて


迷宮の入口にそびえ立つバベル、その上層は神々が住まうVIPルームだが下階層には生産系ファミリアによる武器屋が営まれている

 

「うーん」

 

籠手を見ながら唸るサウィル

サウィルには物の良し悪しを見極める目はなかった

しかしそんな彼でも幾度となく買っては壊し買っては壊しを繰り返せばいい加減学習する

 

「今までの価格帯の籠手だとまた壊して、かえってお金がなくなってしまうな」

 

そもそも一般的な籠手は頻繁に怪物を殴り飛ばすことを想定していないのだから壊れやすいのは当然といえる

 

「ちょっと高いのも見てみるか」

 

普段は行かない上の階の武器屋も見に行く

 

上階の店では今までの樽の中にまとめて雑多に置かれていた店とは違い一品ずつ棚、もしくはショーケースに入っている

 

「お、良さそうな籠手だ」

 

陳列されている品の中で良さそうな籠手を見つける

アダマンタイトの輝きがその頑丈さを物語っている

 

「さていくらだ、ろ…」

 

 

 

 

一分後サウィルは雑多に置かれた籠手から少しでも丈夫そうなものを見繕っていた

 

「借金が2倍になるところだった」

 

先ほどからにらめっこをしている籠手たちを見て嘆息する

 

 

「さっきからため息ばかりついているけどどうしたの?この店の籠手がそんなに不満かしら」

 

急に声かけられ振り返る

そこには赤髪と眼帯が特徴的な女性がムスっとした顔で立っていた

 

「籠手を探してるんだが手の届く価格帯のものはすぐ壊れてしまうからどうしたものかと思案していたんだ」

 

「籠手がすぐ壊れる?どんな使い方してるのよ」

 

「主にモンスターを殴ったりするのに使っているな」

 

「モンスターを殴る?そりゃ壊れるわよ…」

 

今度は隻眼の女が嘆息していた

 

「ならこの店には、いえこのバベルにはお眼鏡にかなう籠手はないわよ。どの籠手も防具であって武具じゃないから」

 

「そうなのか、それは、ちょっと困った」

 

「でも武器を買う手段は店にある物を買うだけではなないでしょう?オーダーメイドなら武具としての籠手も手に入るわよ」

 

「オーダーメイド?しかしそんな金はないからここに来ているんだ」

 

「オーダーメイド専門の職人なら値は張るでしょうけど駆け出しの職人、ここで作品を売っているような職人に頼めばそこまで値は張らないわよ。例えばその籠手にも名前が書いてあるでしょう?店員にオーダーメイドを頼む旨を伝えればコンタクトをとってくれるわ」

 

 

手に持っている籠手に刻まれている名を読み取る

 

 

『椿・コルブランド』

 

「ならこの籠手を作った職人にオーダーメイドを頼みたい。コンタクトをお願いしてもいいか?」

 

「…なんで私に言うのよ」

 

「あなたに頼むのが一番早いと思ったからだが」

 

「私が誰か知っているの?」

 

「?腕利きの店員だろう?親切に説明してくれてありがとう」

 

隻眼の女は脱力する

 

「はぁ…まあいいわ。明日同じ時間にここに来なさい。椿には私が声をかけてあげるから。」

 

そういって隻眼の女性はバベルの上に去っていった

 

 

「…ん?ここの店員じゃかかったのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「サウィル・エスリンという。よろしく頼む」

 

「椿・コルブランドだ!聞いたぞ?籠手だけでモンスターに挑む酔狂な輩だとな!手前にそのための籠手を打ってほしいのだろう?」

 

すごい食いついてくる

 

「そうだ。頼めるだろうか?」

 

 

「良いぞ!ただし!条件をつけさせてもらおう」

 

「条件?」

 

「お前は懐が寂しいとしゅし…店のオーナーから聞いている。なら籠手に使う素材の一部、皮革の類いをお主の方で用立ててくれればその分だけさっ引こう。」

 

「それはありがたい話だ。ちょうど持っているドロップアイテムがあるんだ」

 

「そして二つめ、お主、手前と戦え」

 

 

「戦う?」

 

「うむ。好奇心に任せて様々な武器を鍛ったのはいいが使う機会もなく埃を被っている武器が山ほどあるのだ。それをお主で試させてほしい」

 

「構わないぞ」

 

 

「よし!それでは場所を変えよう!」

 

 

「あ、今から?」

 

 

 

「よし!いつでもいいぞ!」

 

空き地…どうやらヘファイストス・ファミリアの敷地らしいところで向かい合う

椿は身の丈ほどの剣を持っている

そして空き地には他にも槍や鎌、刀や斧などがあちこちに刺さっている

 

「ああ、始めよう」

 

言うやいなや駆け出すサウィル

 

あっという間に距離を詰めるが椿もそれに合わせて剣を振り下ろす

紙一重でかわし胴に拳を叩き込もうとするがひらりと身をかわされる

 

 

(鍛冶師なら戦闘は本職ではないはずなのに軽々と)

 

サウィルはこの試合を長引かせるつもりはなかった

しかし今の動きを見て評価を改める

 

 

「ははは!鍛冶師と侮ったな!」

 

笑う椿

 

そして次の瞬間蹴りが眼前にまで迫っていた

 

「なっ」

 

 

顔にモロに食らい吹き飛ばされる

起き上がるがまぶたから流血しているらしい。片目の視界が塞がってしまう

明らかに次元が違う速さと威力に瞠目する

 

「鍛冶師に吹き飛ばされるのが不思議か?」

 

得意気に大笑しながら槍を手にして突いてくる

その早さは反応するだけでやっとだ。とても反撃などできない

今度は腹に蹴りを食らって吹っ飛ぶ。えづきを堪えながら思案する

 

(この鍛冶師、もしや━━)

 

再び大剣を手にした椿の攻撃から身をかわす

 

 

「手前はレベル2だ。ひよっ子冒険者に負けるつもりなんぞない!実戦経験もステータスもこちらが上手だ」

 

レベル2、明確な格上であることを告げる椿にサウィルは笑った

 

 

「そうか。ありがとう椿」

 

首をかしげる椿

 

「なにを感謝することがある?」

 

 

「お前のような強者を相手にしてこそ」

 

深く息を吐く

 

「限界を超えられるからだ」

 

 

「ほう!」

 

黙って椿は俺にその大剣を振り下ろす

 

「【リグ】」

 

力が満ちる

 

刀身を蹴りで逸らしてアッパー

 

「がっ!?」

 

吹き飛ぶ椿に追撃はしない

 

「【サーマ】」

 

顔の傷が癒え視界が回復する

椿は吹き飛ばされた場所に刺さった斧を引き抜き片手で素振りする

 

「なんだ?急に動きが変わったな!傷も癒えている!どんな手品を使った!?」

 

一人でテンションが上がっていく椿を無視する

 

「【リグ】!」

 

再び活性

同時に飛び出した椿の斧と俺の拳が交錯する

 

「ぐはっ!?」

 

そして崩れ落ちたのは椿だった

振り下ろされた斧は左手の籠手を砕いたものの俺の腕を半ばまで切り裂いたところで止まっていた対して俺の拳は隙だらけだった椿の腹にクリーンヒットしている

 

「【サーマ】…俺の勝ちでいいよな?」

 

「あ、ああ…ゲホッそうだのう」

 

俺の手を借りて立ち上がる椿

パチパチパチと拍手が起きる

見るといつの間にやら隻眼の女性が観戦していた

 

「すごいわね、椿に勝つなんて。あなたまだレベル1でしょ?」

 

「それほどでもない。椿は慣れない武器だったしこっちは奥の手を使ったからな」

 

「急に動きが上がったり傷が治ったあれか?確かに面妖だったな!なにか唱えていたが魔法の類いか?」

 

「いやあれはスキルだ。技に名前をつけると強くなると聞いたから主神と考えた名前をああして唱えている。」

 

隻眼の女が頭を抱えている

 

「まあ、満足してるならいいわ」

 

「主神様、ポーション買ってきてくれんか?」

 

「それが主神に、対する態度?話を聞き付けた時にはこうなると思って持ってきてるわ」

 

 

 

 

「よし!じゃあお主の籠手について仔細を詰めようではないか!」

 

その後お互いポーションを飲んで治癒した後椿の薦めで『火蜂亭』にて話し合うことになった

 

「手前の奢りだ!好きなだけ飲め!」

 

「いいだろう!」

 

目の前の蜂蜜酒を思わず唾を飲む

 

俺は大人になるぞ!リオン!

 

「ええいままよ!」

 

気合いを入れて口をつけグビグビと飲んでいく

体が熱くなるのを感じる

 

「おお、おお!いい飲みっぷりだ!」

 

椿が何か言っているがいまいち要領を得ない

俺の記憶はそこで途絶えている

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん…」

 

目が覚めて伸びをする

清々しい目覚めだ。小鳥のさえずりが心地いい

今日はいい日になりそうな予感がする

 

「ん?」

 

部屋の内装に違和感を覚える

というかいつもとは違う部屋だ

そしてなぜか裸だ

 

「うーむ…」

 

横から声が聞こえる

 

「む、サウィル。おはよう…昨日は楽しかったな」

 

そこには裸の椿が寝ていた

 

「き」

 

「き?」

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

朝のヘファイストス・ファミリアにいたいけな俺の叫び声が響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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