帰り際に気になっていたことを聞いてみた
「そういえば暗黒期って何か知っているか?」
ピタッとアストレアファミリアのメンバーが止まる。
「…暗黒期が何か知らないの?サウィル」
神妙な顔でアリーゼが聞いてくる
先ほどまで太陽の様な笑顔を浮かべていた顔には今までみたことのない陰が差していた
「俺をだまして殺そうとしてきたアスラってやつがそう言ってたのを思い出したんだ」
「アスラ…!そうやっぱりあいつらだったのね」
「ええ、暗黒期もアスラもね。まず暗黒期について教えて上げる」
「今のオラリオはかつてないほど不安定で、悪党が大手を振って歩いてるの。少し前まではそんなことなかったのに」
「原因はオラリオを代表する2大ファミリアの失墜よ。それからというもの闇派閥が勢いづいて治安が悪化し続けているのが現状なの」
「悪党を抑止していた重石がなくなってしまったって訳だな」
「けど!そんな時代は私たちが終わらせてみせるわ!なんたって私たちは正義の女神アストレア様の眷属だもの!だからサウィルは安心して借金返済に励むといいわ!」
いつもの明るい笑顔でサムズアップしてくる
思わず目をそらす
「そうか…立派だな、あんたらは」
大義に燃える瞳はあまりに眩しくてとても直視できなかった
「それで、アスラはどんなやつなんだ?」
話しを変えるとアリーゼは少し難しい顔をする。
「アスラは闇派閥の冒険者よ。けど名前だけじゃ個人を特定できないの。」
俺は思わず首をかしげる
「闇派閥の冒険者なのは分かるのに、個人は特定できない?どういうことだ?」
「アスラはアスラ・ファミリアの冒険者の名前なんだ。あそこの主神は変わり者で、恩恵を刻む条件として眷属の名字を捨てさせて自分の名前に統一させているの」
「なるほどな」
「ちなみにアスラ・ファミリア自体はそこまで大きいファミリアじゃないわ。恐喝、窃盗、非冒険者の殺人。刹那的なチンピラの集まりって感じね」
「じゃあすぐに潰されるんじゃないか?」
「いまギルドはより大きな闇派閥に目を光らせるので手一杯なのよ。だからアスラ・ファミリアみたいな中小ファミリアの蛮行は見過ごされてるのよ。」
「ごろつき集団に構ってる暇はない、というわけか」
「そ!だから私たちが強くなってそういう奴らは一掃しないといけないの!お腹減ったから帰りましょう!」
「了解した」
そのまままた歩きだしたアストレア・ファミリアの面々に続いて迷宮の出口へ歩きだした
「…ならいつか自分で落とし前はつけさせてもらう」
「帰ったぞバロール」
「うむ!よう帰った!」
貨幣がずっしりと入った革袋を投げ渡す
「はいこれが報酬」
「ぬおおお!これなら思ったより早く独立が叶いそうではないか!!誉めてつかわす!」
はしゃぐバロールから再度革袋を受け取りその中から2割ほどをテーブルにだす
「これはアストレア・ファミリアを間借りしてる分の家賃だ。」
「むむむむ仕方あるまい!許す!」
「お前が今まで穀潰ししてた分の食費も入ってるけど寛大な御心に感謝します、バロール様!」
「嫌味か貴様ッ!」
更に革袋から6割ほどを出しテーブルに置く
「これは俺の治療費だ」
「高い!!」
「聖女の治癒魔法を使ってもらったらしいからな。アストレア様に建て替えて貰えなかったら利子もついてたところだ」
革袋を投げ渡す
バロールが受け取った革袋は随分と━━痩せたようだ
愕然とするバロール
「な」
「なんじゃとおおおおおおおお!?」
「うるさいですよバロール様」
「ほとんど持ってかれたんじゃが!?」
「でも無くなった分返済はされてる訳だから堪えてくれ」
「ぐぬぬぬた、確かにこれで返し終わったのなら業腹だが」
そして、と前置きする
「これで治療費の50分の1を返済したことになるな」
「な」
耳をふさぐ
「なんじゃとあおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「うーん」
アストレア・ファミリアとの合同パーティが結成されてから早3ヶ月がたった頃、サウィルは自室の床に寝転がりながら唸っていた
手にはバロールから渡された【ステイタス】の写しが
サウィル・エスリン
Lv.1
力:B 786 → B 795
耐久:A 816 → A 820
器用:D 566 → D 568
敏捷:B 755 → B 760
魔力:I 0
《魔法》
《スキル》
【
【
【
「伸び悩んでるな」
魔法が覚えられず魔力が伸びないのはいい。
いや、決して良くなどないが、まあいい
しかし他の数値の伸びが悪くなってきているのはゆゆしき問題だった
そして問題は他にもある
視線を移すとそこにはカーペットがわりに敷かれる『ライガーファングの毛皮』
そしてその奥にはいくつもの壊れた短剣と手甲が転がっていた
サウィルはポツリと呟いた
「そろそろちなんとした武器、欲しいなー」