「お前は生きるんだぞ」
「強くあらんことを。私の好敵手」
ああ、私は……
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「なるほど……1人では無いのですか」
うーん。困ったぞ……流石に何十人も生き返ってしまったらそれ即ちファミリア完全復活という事だ。
私としては、正義の派閥の人間が約束を破ったりはしないと思う。……が、それはそれとして流石にいきなり全員蘇生するのはやめておこう。
「はい……」
このエルフちゃんはとても悲しそうな顔をしている。まあそうだよね……出来るものなら全員と話したいよね。
そうだな……まあある程度私に協力してくれる事を確認してからかな。
「では、一番会いたい人間の名前を教えてください。」
「ーーーアリーゼ。アリーゼ・ローヴェル」
それが、彼女の最も会いたい人物か。さて、死者を蘇生するのは何分ゲームでしかやった事が無いので蘇生は恐らく念じればいいのだと思う。
私はアイテムボックスからケリュケイオンの杖を取り出す。……傍から見ると虚空に手を突っ込んで見えるのはやっぱり目立つね。
アリーゼ・ローヴェル。それが蘇生させる人物の名前。
「どの様な容姿をしていますか?」
「燃えるような赤い髪に、緑の瞳で、見る者に活発な印象を与える顔立ちをしています。」
なるほど……赤髪に緑の瞳ね。ここ本当に現実世界なのかな?カラフル過ぎない?
ーーーさて、まあそれは置いておいて。大体の特徴は分かった。名前と髪の色だけでも分かれば蘇生可能な筈。
が、ゲームで蘇生させる時はかなり派手なエフェクトがあったはず。流石にこんな路地裏で使う事は出来ない。
「分かりました。では、準備をします。私の手を握って下さい。」
そう言うと彼女は一瞬視線を迷わせたが意を決したように私の手を掴んだ。
━━━━━《
私達の姿は夜闇に掻き消えた。
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「ここは……?まさか、転移の魔法?」
「その通りです。」
エルフちゃんは少し警戒したような表情をしている。……私は特に何か仕掛けるつもりはないんだけどな
「……さて、流石にあの様な場所では目立ってしまうのでここまで移動しました。」
そう。ここは私が初めてこの世界に降り立った時の城壁の上である。軽く魔法で確認したが特に誰かが居たりはしない。
認識阻害の結界を張り、準備は完了した。
「ここで見た事は他言無用です。では、始めます。」
私はケリュケイオンの杖を掲げ、頭の中にアリーゼ・ローヴェルの名前と容姿を思い浮かべる。
すると、私の持つケリュケイオンの杖が激しく輝き始め、やがて天に向かって一条の光線を射出した。
ーーー瞬間
天から光の柱が私達の正面へと堕ちてきた。余りの眩しさに私は目を瞑る。
この世界の住人がこの光景を見たらこう口にしただろう。
━━━━━神の送還と。
事実、リューは目を疑っていた。
最初は半信半疑、何なら今もまだ信じきれていない。
死者と会話が出来るスキル……そんな都合のいい代物が、ピンポイントで私の前に現れるなど。
光が掻き消え、光の柱があった箇所には一人の人間がまるで棺の中にいるような体勢で、仰向けになっていた。
服を着ていない、生まれたままの姿だ。そして、その身体に傷はない。四肢の欠損も、火傷も何も。
「ぁ、アリーゼ……」
まるで現実味が無い。幻術を見せられていると考えた方が自然だ。
だが、リューの心が、魂が……目の前の存在をアリーゼ・ローヴェルとして認識している。
まるで歩ける様になったばかりの幼児のように、彼女は歩みを進めていく。
ようやく彼女のすぐ側に辿り着き、彼女は膝を着いた。
話したい事も、謝りたい事も、数え切れぬ程ある。だが、リューはもう限界だった。
話し掛けることも、彼女を起こす事もせず、ただただ静かに抱き締める。
その目からは静かに、涙が零れ続けていた。
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……私の、かつて生きていた時代の両親は、蘇生出来るのだろうか。かつての友人達、家族。
もしかしたら、可能なのかもしれない。この世界には神が実在し、死者の魂は彼らが浄化して、次の人生を歩む為の準備をするのだそう
私の持つこの杖は、その工程に横槍を入れ、強引にこの現世に連れ帰って来ているのか、若しくは、同じ魂の複製なのか。
それは私には分からない。
だが……仮に可能だったとして、私はそうしようとは思えなかった。
もしかしたら別の人間になって生を謳歌しているのかも、何て考えもない訳ではないけど。
まあその場合は蘇生出来ないだろうけど、確かに会いたいとは思う。また話せたら……きっと心が弾むのだろう。
ーーーでも、もう時間が経ちすぎた。彼等の事は私の中でもう過去になってしまっている。
だから、彼等を私が蘇生する事は無い。それにもしこの世界で死別しても尚会いたいと思えるだけの人間と出逢えたなら、それはきっと素晴らしい事だ。
私は静かに蘇生したばかりの彼女の方に視線を向ける。
ーーーああ、美しい。……果たして、私が死んだ時、彼女の様に誰か悲しんでくれただろうか。……少しだけ、羨ましい。
ただ、かつて死別した仲間に再会し、涙を流して抱擁する彼女を、とても美しいと思った。
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ゆっくりと、彼女が目を開く。ふらふらと上体を起こすのを、エルフの彼女が支える。
彼女は瞼を擦り、左右を見渡して最後に、
「ぁ……」
彼女はそれを見て、何かを喋ろうとしたが思う様に声が出ないようだ。
……まあ、当然といえば当然だ。一応、蘇生魔法と違って体力が削れた状態で復活する訳では無い。
むしろ万全の状態になっている筈だ。それはそれとして、恐らく彼女の最期の記憶は自分が殺される瞬間であったはずだ。
トラウマになっている様子はないが、少なくとも、命を落としたその瞬間から彼女はずっと寝ていた様な感覚なのだろう
そして、肉体は完全に再構築されている。まだ恐らく肉体と精神に多少のズレがある筈だ。
積もる話もあるだろうが、まずは身体を休めて貰おう。
「……初めまして、私はミラーナと申します。色々あって混乱されているとは思いますが、少し休むと落ち着くとおもいますので安心して下さい。」
私がそう言うと、彼女はコクコクと頷いた。意識は問題無さそうだ。
リューちゃんの方も、未だに現実味がないのだろう。呆けた顔を晒している。
「リューさんも、少し休みましょう。大丈夫です、今この場には結界が張ってあるので誰も近づいて来ません。」
と、いうことで。
━━━━━ 《
これは本来、簡易的な拠点を創る為の魔法である。が、私の前には大貴族でも住んでいそうな屋敷があった。
城壁の外側に創った筈なのに、それほど城壁と高さが変わらない。……城と呼んでも違和感が無いかもしれない。
……流石にこれは隠しきれないので、私は魔法をキャンセルし、大人しくグリーンシークレットハウスを城壁の下に出した。
彼女達がドン引きしているような感じもするが、まあ気にしない気にしない。
そのまま、彼女達を両脇に抱きかかえて城壁からFly away!
ちなみに、リューちゃんはエルフだし抱き着くの嫌がられるかと思ったけどそんな事無かった。
そのままグリーンシークレットハウス内へ入る。相変わらず外装と室内の広さが違う
今回はごく普通のログハウスタイプだし、再度人避けの魔法を使っているので暫くは大丈夫のはずだ。
室内へと入り彼女達を抱きかかえたまま寝室へと移動。天蓋付きベッドへと彼女達を降ろしてそのまま部屋を退室する。
……アリーゼちゃん裸だけど、まあ後でいっか!
私は空気の読める女なのだ。彼女達も色々と積もる話があるはず。そのまま書斎へとへと移動し、椅子に腰掛けるとふと思った。
ーーー珈琲飲みたいな、と。