邪眼の愛し子


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作:じょうじょうじ
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第一歩


「頼もーう!」

 

「はい…?ああ神様でしたか。本日はどうのようなご要件でしょうか」

 

「ファミリアの登録に来たんじゃ!名はバロール・ファミリア!闇派閥じゃ!」

 

「はい…?神バロール少々お時間いただいても?お話したいことがございます」

 

「よかろう!」

 

「ではあちらの個室で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごべんなざい…!」

 

「分かればいいんです。ではファミリアとして登録します。」

 

「よろしく頼む」

 

役立たずの主神に変わり諸々の手続を済ませたサウィルはグズるバロールを連れてギルドを出た

 

「多分闇派閥のファミリアは一々ギルドに申請してないと思うぞ」

 

「ぐぬぬ…」

 

「じゃあ、先に帰っててくれ」

 

「どこに行くんじゃ?」

 

「俺は冒険者登録がまだだから残るよ。先に帰っているといい」

 

「ではそうさせてもらうとするかの」

 

「一人で大丈夫か?帰り道わかる?怪しい人にお菓子もらってもついいかないようにな?」

 

「馬鹿にしすぎじゃー!!!」

 

走り去るバロールに手を振りギルドに戻る

 

「冒険者登録をしにきました」

 

「はい冒険者登録ですね。こちらに所属ファミリアと名前をお書き下さい。私の名前はソフィ申します。・・・はい、サウィルさんですね。よろしくお願いします。こちらはギルドからお渡ししているショートソードです。」

 

 

「こちらこそよろしくお願いします。では失礼する」

 

このままギルドに帰ろうと踵をかえすが迷宮帰りと思しき集団を目にして足が止まる。

 

(一層だけなら少し覗いて帰ってもいいだろうか)

 

幸い武器を貰えた所だし使い心地とスキルの試用にいい機会かもしれない

 

いくらか悩んだのち、サウィルの足はダンジョンへと向かっていた

 

 

「気持ちのいい場所ではないな」

 

暗さと湿気に眉をひそめるながら進むと暗がりから人影が現れた

 

「あれが…ゴブリンか」

 

ゴブリンは初め警戒した様子でこちらを伺っていたが、俺の姿がはっきり見える距離まで近づいてくると勢いよく飛びかかってきた

 

「ッ!」

 

ギリギリまで引き付けて身をかわして背後を取ることに成功する

そして無防備な背中にショートソードで斬りつけるが刃が上手く通らずゴブリンを吹き飛ばすにとどまる

 

「クソ、やっぱ上手くいかないな…道具を使うのは」

 

サウィルには一つ自覚している欠点があった

それは道具の扱いが壊滅的に下手だということ

生まれてこのかた枷を付けられた腕では道具を持ったことがなくリオンと逃げ出してから始めてスプーンやフォークを持ったような有り様だった。つまり致命的に道具を使う経験に欠けていた

 

その打撃を背中に受けたゴブリンは前につんのめったもののすぐに振り返りざまに手にした棍棒で打ちかかってきた

飛び退きながら咄嗟に腕で体をかばうがメキリと嫌な音が体内から響く

距離を取って再度剣を構えるが腕に力を込めた瞬間激痛が走り剣を取り落としてしまう。見れば右手の肘あたりが青黒く腫れていた。

 

(利き手で扱えない剣を左手で上手く使えると思えない)

 

再度飛びかかってきたゴブリンを剣を拾わずにかわすサウィル

 

「仕方ない…こうなれば素手だ」

 

ゴブリンとにらみ合い深く呼吸する

すると痛みが収まり手に右手に力が込められるようになったのを感じる。サウィルはそのまま右手をだらんと垂らし左手だけ拳を構える

 

ゴブリンはサウィルの様子を見ると右側を狙って飛びかかってくる。

 

(賢い。想定通りの賢さだ。)

 

サウィルは右手に力をこめカウンターの拳を食らわせる。

ゴブリンは地面をバウンドし壁に激突、塵となった

 

「フー…」

 

戦闘は終わり深く息を吐く右手を開け閉めするが問題なく動く

 

「これが俺のスキルの力…」

 

マントラ、呼吸によって特別な力を得るそのスキルに俺は覚えがあった。

暴行を受けながら俺は無意識に気づけば痛みを感じなくなっていた。

いつのまにか傷の治りが早くなっていた。

数週間の間のまず食わずで生き長らえた。

俺は体が環境に適応していったおかげだと思っていた。

しかし俺は無意識に特殊な呼吸を体得していたのかもしれない

思えば、脱走した夜ろくに運動したことのない身で夜通し走り続けることが出来たこともおかしな話だ。

 

その後は剣は使わず素手で出会うゴブリンやコボルドを打ち倒していき複数体のゴブリン相手にも余裕を持って勝てるほどスキルとステイタスに慣れてきた。

 

「便利なスキルだな」

 

その結果呼吸のリズムと深さを意識的に変えることでマントラで得られる効果を使い分けることが出来るようになってきた

一つはサウィルが日常で無意識に使っていた疲労を抑え身体能力を向上させる呼吸。

二つ目は里でなぶられる時に意識的に使っていた痛みを感じにくくし回復を早める呼吸だ

この二つの呼吸を使い分けることで長時間戦闘を行うことが苦にならなくなってきた。

 

「む、これ以上は持ちきれないか」

 

もともと迷宮に潜る予定ではなかったので魔石を拾う袋すら持ってきていなかった

 

「…よし、帰るか」

 

まだそれほど時間は経っていないし換金して魔石を手放してしまえばバレることもないだろう

 

踵を返し歩き出そうとした刹那身体に走る悪寒に歩みを止め振り返る

振り向いた先には2層への入り口があった

そしてそこから目に止まらぬ速度で跳び出てきたのは、見覚えのない四足歩行の怪物

 

「!?」

 

嫌な汗が止まらない。その怪物は今日出会ったゴブリンやコボルドとは一線を画した雰囲気を纏っていた。とっさに拳を構えるが戦って勝てる気がまったくしない。

 

 

 

その怪物は獅子を思わせる白い鬣を蓄えた虎のような姿をしていた。

その名は《ライガーファング》

15階層━━中層にのみ生息するはずの怪物が1階層に現れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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