「ここは・・・?」
目を覚まして最初に目に入ったのは身覚えのない天井だった。
咄嗟に身を起こした刹那腹部の鋭い激痛で再びベッドに身を預ける。
そこで俺はアスラに刺されて路地裏で意識を失ったことを思い出した。
「あら、目が覚めたのね?おはようございます、サウィルさん。」
「・・・どこかで会いましたっけ?」
「いいえ?でも貴女のことは彼女から聞いてて・・あっごめんなさい自己紹介がまだだったわね。」
胡桃色の長髪が魅力的なその女性は優しそうな笑みを浮かべていた。
「私の名前はアストレア。ここアストレアファミリアの主神よ。」
「!神様でしたか、これは失礼した。助けていただきありがとうございました。」
俺が頭を下げるとアストレアはかぶりを振って答える。
「私はベッドを提供しただけよ?あなたを助けたのは「サウィル!?」」
ドアの方から聞き馴染みのある声が聞こえ振り向くとそこには俺が待ちくたびれさせたであろうエルフの少女が目を見開いて立っていた。
「リオン?どうして」
「もう起きて大丈夫なの!?血は止まってたけど酷い出血であと一歩で失血死だったんだから無理しないで!」
「・・・心配かけてすまない。それに酷く待たせた」
「本当に心配しました!反省して!けど、生きてて良かった…」
「・・・ごめん。また会えてよかった。」
そのまましばらく俺たちは黙って互いの存在を確認するように抱きしめあっていた。
「ごめんなさい、そろそろいいかしら?」
「「あ」」
どれだけの間そうしていたか分からないがアストレア様からおずおずと声をかけられてやっとこっ恥ずかしいことをしていたことに気付き俺たちはいそいそと離れた。
「ごめんなさいね。邪魔したくはなかったのだけれど賑やかな子がくる前に色々話したいことがあって」
「何ですか?」
「ええ実はリオンは昨日からアストレアファミリアに」
「エルフ!起きとるかー!?」
「ああ…遅かったわね」
大声が響きアストレアが頭を抱える
ドアをこれでもかと大きな音をたてて開けて突入してきたのはまごうとことなく━━幼女だった。
「お、起きとるー!!何で誰も教えてくれぬのだ!」
その幼女は金髪の長い髪をたなびかせせわしなく動き回っている。その様はまさしく子供といっていいが彼女が放つえもいわれぬ雰囲気と金色に妖しく輝く瞳、そして目元から広がる紋様が彼女がただ者ではないことを直感させた
「誰ですか?このちんちくりんは」
「ちんちくりんじゃと!?それはこの大邪神にむけての言葉か!」
「大邪神?」
このちんちくりんが?
訝しげな視線に気づくことなく自称大邪神は胸をはり得意げだ
「うむ!我が神名はバロール!邪眼の主にして恐怖の王!大邪神バロールとは我のことよ!」
「聞いたことないな」
「なんじゃと!」
ぐぬぬと歯を剥き出して威嚇めいたことをしてきていたたが急にニヤニヤと笑い始める
「そんな口を聞いてよいのか?妾はお主の命の恩人なんじゃがなぁ…」
「…その節は感謝の言葉もない。ありがとうございます」
非常に癪だがバロールが俺の命を救ったことに間違いはないようだ。確かに意識が途切れる間際のじゃのじゃうるさかった気もする。
「この借りは必ず返す。何かできることがあるならいつでも言ってほしい。甘いお菓子とかあげようか?」
「子供扱いしとるな!?…まあよい、それに借りなど作った覚えはない」
「お前…いや神バロール…」
本当に邪神なのか?
「ただ借金さえ返してくれればそれで…」
「は?借金?」
誰が?俺が?
思考を停止しているとアストレアが申し訳なさそうに口を挟む
「実は私は治療を終えたあなたを引き取っただけで治療したわけではないのよ」
「では誰が治療を?」
「ディアンケヒトファミリアじゃ!大邪神たる妾はかのおっさんと同郷のような仲でな!運び込んで治療させたのじゃ!」
ディアンケヒトファミリアの名は聞いたことがある。確かオラリオ最大手の医療系ファミリアだったはずだ。そこで治療したならばそれなりの治療代は請求されるだろう。
「分かった。それで治療費というのはどれほどの?」
「それが…」
「これじゃ!」
バンと見せつけられる請求書そこに並ぶ0は6個、7個、8個…
「値切りに値切って5億ヴァリスじゃ!」
ムンと鼻高々の様子のバロールと後ろで瞑目して眉間を揉んでいるアストレアを見て俺は否応なしに理解した
このガキ、昔馴染みにふっかけられてやがる…!
「神バロール」
「なんじゃ!」
「あなたは馬鹿だ」
「なんでじゃー!」
リオンの真っ当な指摘に憤慨するロリをよそにサウィルは思いを巡らす
「返すあてがない」
未だに冒険者にもなれていない住所不定無職の身には5億ヴァリスはあまりにも重かった。
いっそ夜逃げしてしまおうかと心中で腹を括っていた所でまたもや得意気な顔をしている幼女に気付く
「返すあてがないよー、って顔をしておるな?」
「…なにか手段でも?」
バロールは大きく頷いた
「サウィルよ、お主は妾のファミリアに入ればよい!」