邪眼の愛し子


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作:じょうじょうじ
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自由の実感


夜が明けるまで走って朝、俺たちは近くの港町についた。

悲鳴を上げる体を引きずって港に向かう。オラリオ近郊の港町メレンまではこの街からの船でいけるらしい

 

「船に乗るのはお金がいるんじゃないか?」

 

「それは…どうしよう」

 

着の身着のまま逃げてきた俺たちには当然お金がなかった。しっかり者のリオンならもしやと思ったがリオンも思いいたっていなかったらしい

 

「よし」

 

「サウィル?」

 

「こっそり乗り込もう。密航というやつだ」

 

「サウィル!?」

 

「いけませんよ密航は犯罪です。バレたらただじゃすみません。お姉さんは許しませんよ。」

 

「誰がお姉さんだ誰が。いやでもしょうがないだろう。貨物に紛れればきっとバレない」

 

「しかし、うう…」

 

金がなくどうすることもできないのはリオンも理解しているようで渋々といった顔でうなずく

 

「わかりました。では船に潜り込むことにしましょう。」

 

その後俺たちは港で水夫たちの話を盗み聞きしオラリオに向かう船と出航時間を突き止めた

船は明日の明朝に出発するらしく前日の夜から行われる貨物の積み込みに合わせて潜り込むことにした

 

 

「よしサウィル、準備はいい?」

 

「いつでもいけるリオン」

 

俺たちは海へ潜り船へと近づいていく

そして船首の下へとたどり着くとリオンは手製の鉤縄を船首に投げて絡ませた。

リオンはよく分からないが大事な大樹を守る守り人の一族として様々な戦闘の訓練を受けていて鉤縄のような小道具にも覚えがあるようだ。空を見上げて呼吸ばかりしていた俺とは偉い違いだ。

絡まり具合を確かめたリオンがうなずくと暗闇に溶け込みやすい髪の俺が登り頭を出して周囲の人影がないことを確かめ乗り込む

合図を出すとリオンもスルスルと上がって来る。

そのまま貨物室の出入り口を発見し首尾よく潜り込むことに成功した。

そのまま貨物室の隅へ腰を下ろせばどちらともなく安堵のため息をつく。

心臓の音がかつてないほど響いている気がした。

思わず胸に手を当て握りしめる。眼を盗み忍び込む悪行への罪悪感とそれ故の高揚感を強く感じていた。

「リオン」

「サウィル?」

「俺は今、生きていて一番『自由』を感じている。」

リオンは何か言いたげだったが黙っていた。

その後しばらくすると貨物の積み込みが途絶え人の足音もしなくなった。

「うまくいったな」

小声でささやくとリオンも緩慢にうなずく

「そ…のようですね」

「どうした?リオン」

途切れ途切れの声を不審がりリオンの顔を覗き込めば顔色が普段にまして青白く唇の色も悪い

「リオン!?」

失念していた。真冬の海に潜ったら普通は凍えてしまう。俺は普段から寒空に野ざらしにされ冷水を頭から被らされることが日常茶飯事だったから鈍感になっていたがリオンは耐えられないかもしれない。

咄嗟に暖をとるため火をつけれるものを探したがここが船内で密航中のことを思い出す。

暖をとるための手段は限られる

「許せよリオン」

「?何を…!?」

俺は服を脱いでいた

そしてリオンに向かいあい腕を広げる

「ほら、お前も」

「私に脱げと!?」

そして抱きつけと!?

リオンは声を抑えるのも忘れて赤面する。

「濡れた服は体温を冷やす。このままだとお前の体は冷えきってしまうぞ」

「ぐ、う、でも…」

リオンもそれしか体を暖める方法がないと分かってはいるがまだ抵抗を感じているのか中々脱ごうとしない。

「やっぱりご高潔なエルフ様には難しかったかな?」

「何を!村のエルフと一緒にしないで!」

もう一押しと挑発してみればリオンぱっと顔をあげ睨みつけた。

そして意を決したかパッパッと服を脱いでいく。

そして体を寄せあった。

「顔を見ないように」

「こちらのセリフです!」

暗闇の中二人は互いの体温だけを感じて朝を迎えた

 

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