黒髪赤目のエルフは恐れられる。
他種族ではなく同じエルフから
その集落には黒髪赤目のエルフが生まれた。
そのエルフの親は彼の髪と眼を見るなり名前を付けるより先に村長に差し出した。
そうして彼はその村の共有財産になった。
村の隅に繋がれトラブルや盗みがあれば彼のせいとして罰する大事なスケープゴートになった。
「寒い…」
時刻は真夜中季節は冬ろくな衣服も身につけていない齢10歳の体を容赦なく蝕む
「ああでも今日は今年一番の星空だ」
枷を付けられた少年に出来ることは多くないせいぜい身体三つ分ほどの半径を移動する程度。何もできない、何もすることが許されない少年は空を見るのが好きだった。
「自由に空を飛んでみたいなぁ」
ポロッと願いが口から零れる。子供じみた夢を見る
「いつかあの星の向こうまで行ってみたいなぁ…」
「じゃあ行こうよ!今日!」
独り言のつもりが声が返ってくる。恥ずかしさを感じながら振り返ると同年代の金髪のエルフが立っていた。その手には鍵束が握りしめられていた。
「リオン?その鍵は?」
リュー・リオン、その少女は集落で唯一少年と親しく話す存在だった。少女は少年の境遇を悲しみ怒り、夜中抜け出しては少年と語らい外の世界の話や文字を教えてくれていた。
「盗んできた!一緒に外に逃げよう!そんなに自由になりたいんでしょ!?」
「…でもそんなことしたらお前ももうこの集落に、」
「知らない!知ってるけどいいんだ。あなたをこんな風に扱うこの集落にもエルフの掟や潔癖さも、もう私には耐えられない。私は自由になりたい。あなたを自由にしたいの
サウィル、名前のないことを知ったリューが付けた少年の名前。それは少年に与えられた最初のものであり財産だった。
言うやいなやリオンはサウィルの枷を外しにかかる
「ありがとう。…リオン」
「呼び捨てにするな!私の方が一歳年上ですからこれからはリュー姉さん、リオン姉さんと呼ぶように!」
「それだけは嫌だ」
「何で!?」
手枷と足枷、最後に首枷を解かれ少年は自由を手にした。
少年は立ち上がると二歩三歩と足は進め鎖の長さの外に踏み出した。
手を広げ空を仰ぐ
「サウィル?」
「これが自由か」
息を吸い込み吐く星空は変わらず照らしていた。
「リオン」
「なに?」
「森の外には何があると思う?」
「エルフ以外の人。そしてエルフだけじゃない街。サウィルがいじめられない場所!」
「それはいいな。とても楽しみだ」
そして少女と少年は駆け出した。自由への夢と期待に胸を膨らませて
「それで行く宛はあるのか?」
先を駆ける少女は振り替えり微笑んだ
「オラリオへ行きましょう」