第八話
さて、これで雑魚と幹部のほとんどは殺した。やっぱ結界突進は雑魚相手なら有効だ。早さに対応できないやつならぶっ飛ばせる。
…それにしてもやっぱり人を殺しても何とも思わないな。嫌悪感の一つでも抱くかもと思ったが…やっぱりモンスターになったからか?
これがまだ、子供がいるとかなら罪悪感も感じたし、多少の手心もあったかもしれないけど。基本おっさんだし、明らかにクズばっかりだから全く心が痛まねーな。
…まぁ、感想はここまでにしてそろそろ残りを片付けるか。
「ちっ、使えない奴らだ。こうなったらお前の秘晶を手に入れてとっとと帰りたいぜ」
…よくいうよ。めんどくさそうに言っても顔を満面の笑みのくせに。こいつ多分殺し合いとか戦闘を楽しむタイプなんだろう。
持っている武器は、ロングソード一本だが魔法の可能性も忘れないようにしないとな。強化魔法なのか、攻撃魔法かは別にしても危険なのは変わらない。
一先ず相手の出方を伺って…
「オラっ!!」
っ‼︎速い。
俺は男の切り払いをバックステップで回避した。しかし、アイツはすぐさま追撃に空いている左手で殴りかかるのをシールドで受け止めた。
そのまま俺は距離をとる。
幸いな事にシールドは破られはしながったがとんでもない速度だ。おそらくだが瞬間的な速度はあっちの方が上だろう。
「やっぱり防いだよなー。ならもっと上げていくぞー‼︎」
くっ、さっきのは小手調べだったのかさっきよりも速い。しかも攻撃が次から次へと来る。一撃かわしても返しで二撃目が来る。それをかわしても今度は空いてる手の拳が来る。
こんな近くじゃスピードで相手を翻弄できないし、突進もほとんど効果を表さない。噛みつこうとしたら殴られるだろう。
仕方ない。少し強引にでも距離を
(ゾクリ⁉︎)
っ⁉︎何だ?嫌な予感がする。
正直このままだとキツイが…この予感は無視しきれない。一先ずこのまま距離は維持する。
「ちっ‼︎賢い獣だなー」
やっぱり、こいつの前で後ろに下がったら何かあるな。
それが何かはわからないが取り敢えず今のまま距離は取れない。今は、身体強化をして対応しているがそれでも足りない。
さっきから何とか攻撃は回避しているが、足を止めればやられる。さっきは小手調べだから何とかなったが、シールドだと防げない部分にすぐに攻撃するだろうし、バリアならその連撃で破壊される。
今、回避できてるのも反撃よりも回避を優先しているからだ。反撃しようものなら対処されて手痛いカウンターを喰らうだろう。
何とか隙をつく一撃を喰らわせないといけない。
どうする…せめてシールドで隙を作れれば。攻撃手段が何かあれば。何が出来る。
防御ばかりでは…。ん?これならいけるか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちっ思ったよりもずっと厄介だぜ。
主神のバカのせいで大量の借金ができたせいで俺たちにも皺寄せがきたから一攫千金のために、ギルドが出した白いカーバンクルの情報に釣られて、来たがこんなに手強いとはな。
最初は部下どもでも壁際に追い詰めたのならいけると思った。だが、それが間違いだったのはすぐに思い知らされた。
最初の結界を使った突進とかいう普通のカーバンクルがしない攻撃で動揺したところに、次々雑魚どもが爪で切られていた。
何とか一部のマシな奴らが我に返って攻撃したがその攻撃も全て魔力壁によって防がれて、そのまま突進されてぶっ飛ばされた。
そしてすぐにアイツは、弓や魔法使いなんかの後衛を狙い始めた。攻撃をしようにも遠距離攻撃しか脳の無い奴らだ。すぐさま蹂躙された。
ある弓使いは弓を放とうとして弦を切られ、首を噛みつかれた。ある魔法使いは爪で目を切られ、痛みで悶絶したところを着地の足場にされて倒れたところで首を引き裂かれた。
そうしているところを見て逃げようとした奴らが後ろを振り向いたところで今度は、そいつらを狙って殺しを始めた。
「まるで自分の情報を出来る限り無くすためにも見えるな」
そう、こいつは何処かおかしいのだ。本来モンスターなら目の前の人間を襲うはずだ。それは逃げるのが殆どのカーバンクルでも同じだ。
追い詰められば、目の前の人間に攻撃していく。なのにこいつは最初の一撃以降は、厄介な後衛から潰してその後は逃げようとしている奴らを狙っている。
明らかに知性があるかのように動いているのだ。
まるでモンスターの中に人間が入り込んだかのように。
「いや、まさかな」
なんてくだらないことを考えている間に雑魚どもはほぼ全滅した。いや、一部は生きてはいるが足の腱を切られたりして動けないものしかいないから、ほぼ全滅だろう。
(もう壊れたのかよ。アイツがどれくらいなのかもっと見たかったのに。このゴミどもが)
そんなこと思いつつどこかワクワクしている自分がいる。
数年前にレベル5に至って以降、冒険をすることもなくなり、心踊る戦いもなくなった。
その俺がこんなに心を揺さぶられるなんてな。
最初の小手調べは何ともなさげに対処された。
その後の連撃も悉く回避されている。
さっきから奴が張っていた魔力壁…いやもうあれは結界だな。の強度はすでにわかっているし、特性もわかった。ドーム型は範囲を守れる代わりに少し脆めだ。…と言っても俺が最低でも六撃喰らわせないと壊れないが…高速戦闘と連撃は俺の十八番だ。大した手間じゃ無い。
もう一つの板状の結界は、かなり硬い。小手調べで使われてわかったがあれを破るのは俺でも無理だ。
いや、割れはするけど時間がかかりすぎる。それにそんなことせずとも守れる範囲は狭いのだから結界を避けて攻撃すればいい。
それに後ろに下がろうとすれば俺のスキル《追跡者》でさらに速度が上がった攻撃で押し切れる。
だが、こいつは後ろに逃げるように誘導しても俺のスキルを理解してるのか、決して後ろ下がらないようにしている。
と言っても、このままじゃこいつはいずれ回避しきれ無くなって負ける。
…そうそのはずだ。だがこいつの目…何を企んでる。
こいつの目は苦渋を飲む獣の目でも怯えの目でも無い。ただただ隙を伺う捕食者の目だ。
だが、こいつのリーチじゃ…。
と、考え込んでいたのが良くなかったのだろう。久しぶりの本気の速度で戦闘したからか、考えながらだったからか僅かに連撃に綻びができた。
その瞬間も、目の前のカーバンクルを見ていた。しかし、そう瞬きの間に俺の右腕は真っ二つに切れていた。