「民泊経営が移住の手段に」――。大阪で中国系民泊急増、SNSに「ビザ取得は簡単」
日本に移住する中国人が急増している。特に目立っているのが、経営者向けの在留資格「経営・管理ビザ」を取得して移住する中国人だ。経営・管理ビザは資本金500万円以上を用意し、事業所などを確保すれば取得できる。中国のSNSでは「年齢、学歴、言葉の厳しい要件はない」などと手軽さを強調し、日本への移住を指南する投稿があふれている。大阪では経営・管理ビザを使って民泊を経営する中国人が相次ぎ、住民からは不安の声が聞かれる。 その実態と背景に迫る。 【画像】移住の方法や体験が投稿されている中国のSNSの画面
■「日本語できなくても問題ない」中国SNS
「日本で暮らすため、民泊を始めたんです」 大阪市西成区の昔ながらの木造住宅が並ぶ天下茶屋地区。中国四川省出身の張華さん(32)(女性、仮名)は2024年2月、リフォーム済みの築50年超の木造2階建てを約3000万円で購入し、民泊経営者として経営・管理の在留資格で滞在している。 中国では日本料理店を経営していた。出張で日本を何度か訪れるうち、日本の文化や生活環境に魅力を感じたという。
移住の方法は「中国版インスタグラム」と呼ばれるSNS「小紅書(RED)」で調べた。飲食店を開きたかったが、SNSには「民泊が簡単」と書かれており、SNSで探した中国人行政書士に頼むと、実際に約3か月で在留許可が下りた。 実際、中国のSNS「小紅書」には、「日本に移住する簡単な方法」として、民泊経営を紹介する投稿があふれている。「日本語ができなくても問題ない」とも書かれている。 張さんが大阪を選んだのは、中国から近く、東京より住宅が安かったことなどが理由だ。日本語は話せず、民泊用の住宅や自宅の購入は中国人の不動産業者に頼んだ。中国や台湾、欧米から観光客が訪れ、経営も軌道に乗り始めている。 長男(6)と2人で暮らす張さんは「日本の暮らしに満足している。いつか飲食店を開き、中国に残っている夫を呼びたい」と話した。
■不動産業者「ミニバブルだ」
大阪で今、「中国系民泊」が急増している。 民泊には、住宅宿泊事業法(民泊法)に基づくものと、国家戦略特区に認められた地域で営業できる「特区民泊」がある。通常の民泊は年間の営業日数が180日に制限されるが、特区民泊は制限がない。 阪南大の松村嘉久教授(観光地理学)が、大阪市内の国家戦略特区制度に基づく「特区民泊」 5587件(2024年末時点)について調査したところ、41%にあたる2305件が、営業者または営業法人の代表者の名前が中国系だった。中国系の特区民泊はコロナ禍後に急増しており、その半数は2022年以降に市から認定を受けていた。