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補助金コンサルの覇者がまさかの倒産!ー北浜グローバル経営の栄光と破滅ー【第2話:そして倒産へ―人材軽視の成れの果て―】

【前回のおさらい】
前回は、北浜グローバル経営(以下、北浜G)が派遣社員を活用して補助金申請を量産する仕組みについて説明しました。ある意味では革命的ですが、コンプライアンス軽視による不安要素が見え隠れしてしまいます。

【今回のテーマ】
今回は、そんな“砂上の楼閣”の補助金ビジネスが絶頂期を迎えた直後に破滅へと転がり落ちるお話です。破綻したビジネスモデルが妥当な末路を迎えることとなり、陰鬱な展開が続きがちですがよろしくお願いします。

1.濡れ手に粟、補助金ビジネス

少し脱線して、補助金ビジネスに馴染みのない方へ、その収益性をかみ砕いて説明します。知名度の低いビジネスですが、「こんなに儲かるの?」 と驚かれるかもしれません。以下にざっくり計算します。

  • 毎月の申請数:月3件/人

  • 採択率:6割

  • 1件当たり補助金額:2000万円

  • 北浜Gの売上:補助額の11%

1人当たり年間売上:3件×6割×2000万円×報酬11%×12か月≒4800万円

なんと、派遣社員1人の売上は年間4800万円ほど!!
ちなみに、個人弁護士事務所の平均年商は3800万円ほど(ソース)らしく、派遣社員で弁護士以上に稼げることになります。これはもう、ビジネスというよりは錬金術の領域です。

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北浜Gは派遣社員にやらせていましたが、仮に正社員を雇っても十分ペイします。これ以上に稼げる商売はそうそうないでしょう。もしあれば、私だけにこっそり教えてください。

・増え続ける派遣社員

補助金バブルの狂熱が生んだイージーすぎるビジネス環境は経営陣の理性を溶かすには十分でした。

「人手が足りない?――じゃあ派遣を増やそう」
「経費増加で赤字に?――じゃあ派遣を増やそう」
「新規提携で受注が増える?――じゃあ派遣を増やそう」
「なにも問題はない?――じゃあ派遣を増やそう」

そんなやり取りがあったかは知りませんが、とにかく人を増やすほど儲かるという軽いノリで派遣社員の数はうなぎ登り。と同時に、彼らが勤務するススペースが必要になり、2022年8月には超一等地「梅田ツインタワーズサウス」への移転が決行されました。この時が北浜Gの絶頂期です。

2.派遣社員の増加が招いた混乱

オフィスを梅田ツインタワーズサウスに移転した後も、北浜Gは派遣社員の増員を続け、最終的には約100名もの規模にまで膨れ上がりました。ここまで人数が増えると、これまで指導を担ってきた北浜国際特許事務所(以下、北浜特許)のスタッフでは手が回りません。

入社半年程度での派遣社員がベテラン扱いされ、新人派遣社員の指導を行うことに。教える側もまだ業務を理解していないため、「先輩、ここどういう意味ですか?」「ええと、自分も分からない…」そんな会話があちこちで。新人がさらに新人を育てる構図が、現場に混乱をもたらします。

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・派遣社員の質の変化

また、派遣会社から紹介される社員の質にも変化がありました。初期に入社した派遣社員の中には、才覚を発揮して正社員に登用された人もいた反面、徐々に派遣会社の紹介基準も緩くなり、「タイピングができない」「ワードやエクセルなんて使ったことない」というPC初心者まで混ざるように。

仕方なく先輩社員が手取り足取りパソコンの基本操作を教えなければならない場面も多々あったようです。その様子はまるでパソコン教室で、とてもコンサル企業とは思えない光景だったかもしれません。

3.大量退職、その裏側

派遣社員の増員を続ける北浜Gですが、新オフィスへの移転後から正社員の退職が続出しました。その中には、初期から補助金事業に携わり続けた北浜特許のスタッフも。いったい、彼らはなぜ会社を去ったのでしょうか?

以下は口コミサイトの情報です。あくまで一部口コミを再編集したもので、事実を断定するものではありません。参考程度にご覧ください。

倒産前の口コミを集約(エンゲージ「会社の評判」)

①給料の安さ
口コミサイトによると、北浜Gの平均年収は正社員でも約430万円ほど。これは日本の平均年収(令和5年時点で約460万円)を下回り、コンサルのイメージからすると物足りない印象を受けます。さらに「福利厚生が皆無」「賞与カットで入社時の想定年収より下がった」といった声も見られました。

②補助金事業の将来性の無さ
北浜Gの主な収益源だった"事業再構築補助金"は、もともとはコロナ対策。コロナ禍の収束が見え始めるにつれて廃止も噂されるようになり、口コミには将来への不安の声が多数投稿されていました。

③経営陣への辛口評価
経営陣への厳しい意見も多く、「従業員の声が届かない」「組織は保守的、トップは数字を見るだけ」「人事評価が経営陣の好き嫌い」などなど…。

④業務の偏りとワークライフバランス
ワークライフバランスに関しては、「定時で帰れる」などポジティブな声がある一方、「社員によっては残業だらけ」との意見も散見されます。マネジメント不全で一部の社員に業務が偏っていた可能性があります。

⑤入社前とのギャップ
「コンサルの仕事を期待して入社したのに、補助金の営業ばかり…」という嘆きも目立ちました。面接時に説明がなかったのか、あるいは話を盛りすぎたのか。いずれにせよ、新人にとってミスマッチな環境だったようです。

4.人材の自転車操業

給料は期待外れ、業務は偏り、仕事内容は想像と違うし将来性もない。なにより経営陣が信用できない…。これじゃ誰だって辞めますよね。

なんと1年で全社員の3割近くが退職しましたが、北浜Gは新規採用に奔走してなんとか穴を埋めました。――いわば“人材の自転車操業”です。これだけ採用するには求人広告費も転職エージェント費用も少なくないはずですが、離職対策にそのお金を既存社員に回せないのでしょうか。

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それでも経営陣だけは10名前後のメンバーが居座り続け、倒産直前まで会社に残っていたのは皮肉な話です。よっぽど居心地がよかったんですかね?

5.始まった経営陣の悪あがき

新人ばかりが増え、ベテランは次々と退職し、さらに北浜特許のサポートまでもが失われる。こうなると、当然ながら一人当たりの生産性はガクッと下がっていきました。
「今までは派遣社員を増やすだけでよかったのに…こんなはずでは…!」
──さすがに焦ったのか、経営陣は“組織力の強化による生産性向上”を突如としてアピールし始めます。

・大量のCCメール、意味のない会議の嵐

「情報共有が大事だ!」と言いだした思えばメールに大量のCCを付けることが推奨。これでメールボックスは関係ない通知だらけです。さらに「ホウレンソウを強化!」と称して、誰も読まない大量の報告書を作らせたり、目的が見えない謎ミーティングを義務化したり…。

その結果は言わずもがな。業務に集中する時間はガッツリ削られ、すでに落ちていた生産性はさらに下落。「これで生産性が上がるわけないでしょ!」とツッコミを入れる間もないほどの付け焼き刃ぶりでした。

・“分業制”という謎アイデア
追い打ちをかけたのが「複数人で1件の申請書を作成する」という分業制。前半・後半に分けて2人で書くことが多かったようですが、複雑な補助金申請書でこれをやると、途中で設定や文脈が変わる“怪文書”が爆誕します。

「複数人で協働さえすれば生産性が高まるんだ!」と主張する経営陣の“謎理論”は、現場を見ていないからこそ言えるのでしょう。協働って、そういうことじゃないんですけどね…。

6.破滅の兆候

そんな感じで粗製乱造が続いた結果、2023年3月公募(第9回)の"事業再構築補助金"では全国平均を下回る採択率36%。「採択されないから売上減 → 次の依頼も来ない」という負のスパイラルに突入です。経営陣は一気にパニックモードが広がりました。

第9回から採択率が急落(日経新聞)

しかし、事情を知るものからすれば予期できた事態でした。すでに2022年に派遣社員を大量入社させたあたりから、いやそれより前から矛盾は山積み、現場の努力でなんとか崩壊を遅らせていた状態です。気づかないのは有頂天の経営陣だけ――というのが真相でした。

・コロナ禍の収束でビジネス環境も一変

2023年5月には、コロナが5類感染症に移行して事実上の収束モードに。
コロナ前提の補助金は廃止も時間の問題で、「そろそろ北浜Gも事業再構築が必要だね(笑)」というブラックジョークが社内では流行。笑えない話ですが、ユーモアに逃げないとやってられない雰囲気が漂っていました。

・経営陣の“無理やりコロナ継続説”

そんな中、経営陣は従業員を集めて「変異株のリスクはまだある!」と力説します。しかし、周りの従業員はほぼノーマスクというチグハグな光景が広がり、説得力はゼロ。まるで「コロナ禍が続いてくれないと困る」とでも言わんばかりに見えてしまうのは気のせいでしょうか…。

7.コピペが仇に?使い回し疑惑

北浜Gの採択率が急落した理由として、「申請書のコピペが原因では?」という意見も社内でありました。"事業再構築補助金"では、まったく別の会社がほぼ同じ内容の申請書を出す悪質な使い回しが問題視されていました。

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第3回の事業再構築補助金の公募要領より

・コピペがバレないわけがない…

今は大学のレポートのコピペが厳しくチェックされる時代。その気になれば申請書のコピペもシステムで見破れます。北浜Gの場合、さすがに悪質な使い回しはないものの、「テンプレ+過去事例のコピペ」が得意技。もし本腰を入れてシステムでチェックしたら、コピペ判定が真っ赤でしょう。

そもそも、北浜Gは全体の1割近い大量の申請を出していました。しかも同じテンプレートの使い回しで文面も似たり寄ったり。審査員には「この書式、さっきも見た…またか!」と映った可能性があります。そんな状況を想像すれば、採択率に悪影響を及ぼすのも不思議ではありません。

経営陣が打ち出した“奇策”とは?

これに対して経営陣の指示は…「見出しに使うカラーを変えてみよう!」でした。いやいや、色を変えてもコピペ感はごまかせませんよね。現場からは「そっちじゃない!」と総ツッコミが入ったとか。これまで北浜Gを支えた“コピペ作戦”も、逆に足を引っ張る要因になってしまいました。

8.運営ともバチバチ!?右往左往

「補助金は採択されればゴール!」ではなく、交付申請という最終チェックが待っています。これが意外とクセ者で、担当者の言っていることがコロコロ変わる、連絡がすれ違ったまま放置される、挙句の果てには「そんな書類なんでいるの!?」と叫びたくなる要求をされたり…。

そんなトラブルに疲れ果て、「採択されたけど、もう降ります…」と辞退してしまう顧客も増えていきました。北浜Gには、交付申請が終わってやっと報酬が入る仕組みなので、これでは売上も逃してしまう始末。不正防止のためか交付申請のハードルは上がり続け、現場は悲鳴が止まりません。

・派遣社員頼みの運営体制…北浜Gだけじゃなかった!?

"事業再構築補助金"の運営主体はパソナ。派遣社員に丸投げして運営していたという話もちらほら聞こえてきます。北浜Gのビジネスモデルが“派遣社員頼み”なら、運営側も同じく“派遣社員頼み”。ある意味では似たもの同士で、ドタバタや連絡ミスの多発も察してしまいます。

ただし、採択の審査自体は専門家がきちんとやっているらしいので、そこはご安心を…とはいえ、“派遣社員同士でやりとりする補助金業務”という構図に、この国の未来を憂いたくなります。

9.さらば派遣社員

2023年6月公募(第10回)では、採択率がついに15%まで急降下。これでは新しい依頼なんて来ませんし、仮に来たところで採択されず売上にはつながりません。

そんな苦境の末、2023年末には派遣社員を全員解雇することに。これまで北浜Gを支えてきたはずの彼らも、まるで厄介払いされるかのように追い出されました。なかには悔しさのあまり涙を流す人もいたとか…。

とはいえ、これは経営陣の計画通りだったのかもしれません。補助金はいつか終わるは自明で、そのとき補助金スタッフは不要になります。派遣社員なら面倒な配置転換などせず解雇すればいい…。もしそんな人材軽視の考えがあったのなら、補助金より先に北浜Gが終わったのも因果応報でしょう。

そして思わぬ救世主…?

派遣社員の一斉解雇後も、売上が激減した会社を救う妙案は見つからず…。
社内では経費削減やリストラが進み、正社員や管理職までもが次々と退職していきました。一方、金融機関から送り込まれたと思しき新しい役員の姿が社内でちらほら見られるように…。

不安を覚える従業員もいる一方で、新しい役員の知的な振る舞いに「他の経営陣と雰囲気が違う!賢そう!」と感激する従業員もいたとか…。金融マンのオーラが、バタバタと焦る他の経営陣とのコントラストを際立たせていたのでしょうか。とはいえ、優秀な役員だったとしても業績は回復しません。

10.そして、終わりの時

2024年5月24日。
最期の日は突然訪れました。急遽開催された全体集会の場で、経営陣が告げたのはあまりにも無慈悲な通告――
「本日で倒産する。君たちは全員解雇。給料も退職金も支払えない。業務はすべてストップし、顧客からの電話には一切出なくてよい」――

あまりの衝撃に、「まさかこんな急に…」と顔をこわばらせる者もいれば、「やはりこうなったか」と呟く者もいました。一方で、「もうこんな仕事をしなくて済むんだ…」と奇妙な安堵すら漂わせる者も。
それぞれが複雑な想いを抱えたまま、北浜Gの栄光を象徴する豪華オフィスから一人、また一人と去りました。

オフィスに最後に残ったのは経営陣とわずかな関係者だけ。最盛期にはグループ全体400名の活気にあふれていた広大なフロアに漂うのは、冷えきった空気と寂しげな余韻。静まりかえったデスクとあちこちに置かれた段ボールが会社の没落を際立たせているようでした。

創設から12年、そして補助金ビジネスで急成長を遂げた最後の3年――短くも波乱に満ちた北浜Gの幕は、あまりに突然のかたちで閉じられました。
なお、北浜Gと二人三脚で事業を進めてきた北浜特許も、巻き込まれる形で数日後には倒産。以降は債権者集会や破産手続きといった後片づけが続くことになりますが、その物語はここでは語りません。

11.次回予告

以上が、私の知る北浜Gの倒産劇の真相です。
ここまでお話ししてきた北浜Gの倒産劇――。確かに、補助金政策に踊らされたりコロナの収束など、外的要因もありました。
しかし何よりも、大元の原因は経営陣の判断ミスの連鎖だったのではないか――そう感じずにはいられません。

とはいえ、今回までほんの一部しか触れていないコンプライアンス上の問題が、実は北浜Gには数多く存在していました。そして、その問題は北浜Gだけではなく、業界全体に深く根を張る病巣でもあったのです。

倒産したから終わり。それでいいんでしょうか?

次回は、北浜Gを取り巻いていたコンプライアンス問題を中心に、より深く突っ込んでいきたいと思います。どうぞお楽しみに――いや、楽しめないほど闇が深いかもしれませんが…。


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