米カリフォルニア州、「トランプ関税」の停止求め提訴 州では初

米カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事

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米カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事は16日、ドナルド・トランプ大統領による一連の関税措置の差し止めを求める訴えを起こしたと発表した。州政府がトランプ氏の「相互関税」をめぐって提訴するのは初めて。

トランプ氏が打ち出している全世界を対象とする関税政策は、国際貿易を覆すもので、各国からの反発や株式市場の乱高下を招いている。

トランプ氏は「国際緊急経済権限法」(IEEPA)を根拠に「相互関税」を発動している。IEEPAは、アメリカの安全保障や外交政策、経済に対する異例かつ重大な脅威に関して大統領が緊急事態を宣言した場合、それに対処する権限を大統領に与えるというもの。

カリフォルニア州は訴状で、関税をめぐってはトランプ氏にこうした権限がないとしている。

カリフォルニア州の経済規模は世界第5位に相当し、製造業と農業生産で米国最大のシェアを誇る。

「相互関税」は国際貿易の不均衡に対処するためのものだと主張してきたホワイトハウスは、「アメリカの産業を衰退させているこの国家非常事態」に対処し続けていくとし、ニューサム氏の提訴を一蹴した。

「ギャヴィン・ニューサムは、カリフォルニア州でまん延する犯罪、ホームレス、高値への対策に注力する代わりに、わが国の恒常的な貿易赤字という、国家的非常事態にようやく対処しようとしているトランプ大統領の歴史的取り組みを阻止することに時間を費やしている」と、ホワイトハウスのクシュ・デサイ副報道官は述べた。

「先頭に立って訴える」と州知事

ニューサム氏と、カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官はこの日、同州で最も生産量の多い作物の一つであるアーモンドの農園で記者会見を開き、提訴について発表した。

世界のアーモンド供給量の82%近くはカリフォルニア産だ。同州はアーティチョーク、イチジク、オリーブ、クルミ、レーズンの国内唯一の生産地でもある。

ニューサム氏は、同州は関税の「不相応な影響」を受けているからこそ、先頭に立って、現在ほとんどの国に10%、中国には145%の関税を課している、トランプ氏の関税措置を訴えるのだと主張した。

「それが我々の考えだ」、「だからこそ、我々は4000万人のアメリカ人を代表して主張している」と、ニューサム氏は述べた。

ニューサム氏の提訴は、トランプ氏がIEEPAを根拠に関税を発動したことに異議を唱えるもの。訴状では、今回のような関税を発動するためにIEEPAが大統領に権限を与えた事例はなく、関税を課す権限は議会にあると主張している。

訴状ではまた、ジョー・バイデン前政権が学生ローン返済を一部免除するとした措置について、連邦最高裁判所が無効とする判断を示したことを複数回引用。前政権の動きは大統領権限の「変革的拡大」だと裁判所が指摘したことに言及した。

ニューサム氏は、最高裁に「一貫性」があるのなら、今回の訴訟はカリフォルニア州にとって「勝利が確定的」なものだと述べた。

議会の調査によると、IEEPAが関税の発動に適用されたことは過去に一度もない。

トランプ政権の関税をめぐって提訴した州はカリフォルニア州が初めてだが、中小企業公民権団体が起こしたいくつかの訴訟も同様に、トランプ氏の大統領権限に異議を唱えている。

1月の大統領就任以降、トランプ氏は関税をめぐる発表を繰り返している。

トランプ氏は、アメリカへの輸入品に対する関税は、国内の消費者に米国製品の購入を促し、税収を増やし、国内での巨額投資につながるとしている。

これに対し、製造業を米国内に戻すのは複雑で、何十年もかかる可能性があり、その間、経済が低迷することになるとの批判の声が上がっている。

トランプ氏はまた、一度発表した関税措置の多くを後退させている。

アメリカが9日に、貿易相手国約60カ国に対する「相互関税」を発動した数時間後、トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で新しい計画を発表。「相互関税」に報復措置を行わなかった国々に対し、引き上げ措置の一部を90日間停止し、「10%の相互関税」の適用を認めると発表した。

同時に、中国がアメリカの輸入品への関税を84%に引き上げると発表したことを受け、中国からの輸入品に対する関税を125%に引き上げた。