補助金コンサルの覇者がまさかの倒産!ー北浜グローバル経営の栄光と破滅ー【第0話:プロローグ】
1.崩れ落ちた“絶対的王者”
2024年5月24日、補助金業界に激震が走ります。
補助金コンサルの最大手「北浜グローバル経営株式会社」(以下、北浜G)が突如として倒産。着手金の払い損で放り出された顧客。給料未払いで解雇された従業員。多額の未入金で連鎖倒産の危機に直面した外注先。潜在的な債権者は3000名近くにも上りました。
カリスマ経営者として知られた代表も、押し寄せた多数の債権者を前にただ力なく頭を下げるのみ。返済に回す資産は社内にほぼ残されておらず、負債総額28億円の大半が未回収に終わる壮絶な倒産劇となりました。
しかし、その直前まで補助金業界における北浜Gの存在感は圧倒的でした。
従業員数名の小規模企業が中心とされる補助金コンサル業界において、異例とも言える300名超の従業員。最盛期には売上35億円に到達し、大阪梅田の超一等地「梅田ツインタワーズサウス」に拠点を構えていました。
その実績は、"補助金コンサルの覇者"と呼ぶにふさわしいレベル。
2022年には大型補助金である事業再構築補助金の採択数が1000件超に達し、業界平均で5割とされる補助金採択率も6割超を安定して推移。
メガバンクを含む約80もの金融機関と提携し「北浜Gに任せておけば大丈夫」が金融機関の合言葉になるほどでした。
メディアでも紹介された、飛ぶ鳥を落とす勢いのコンサル企業。しかも専門は経営不振の中小企業に対する"事業再構築補助金"のサポート。まさに事業再生支援のプロ中のプロともいえる北浜Gの突然の倒産。
――誰もが予想しなかったあっけない結末でした。
2.企業調査のプロも驚愕―急成長の闇―
北浜Gの顛末は、ビジネス誌や調査機関によって徹底的に分析されました。特に、文春オンラインに掲載された帝国データバンクの記事では詳しい内容が明らかにされ、書籍化もされています。
一見、完璧に見えた北浜Gの栄光。しかし、調査が進むにつれて、これまで数多くの倒産企業を見てきた帝国データバンクですら呆れるほどのお粗末な実態が明らかになります。企業調査のプロはこう結論しました。
「本店を一等地に移転した経営判断が最大の誤り」
「身の丈を超える案件数を受託してオーバーフロー」
「矢継ぎ早の人員補充で教育・研修が追いつかない」
――以上は、世間に流布した北浜G倒産の全体像です。
これらは概ね事実です。ですが、北浜Gは倒産企業にありがちな経営ミスを繰り返すだけでなく、異質な側面もありました。
3.自己紹介
私自身、縁あって北浜Gと関わり、そして経済的にも精神的にも大きな被害を受けることとなりました。倒産から1年近く経ちますが、無責任な経営陣にはいまだに強い憤りを持っています。
とはいえ、私は北浜Gの実態をある程度知ることができる立場にあり、企業が栄光を極めた後に破綻するという稀少な物語を見ることができました。
そんな関係者の一人として、北浜Gの倒産をよくある失敗譚で終わらせたくありません。
企業破綻の経緯を社会の共有財産として残すため、そして私のモヤモヤした気持ちを解消するため、少しだけ皆様にお付き合い頂きたいと思います。
4.駆け抜けた補助金バブル
北浜Gの本当の主役は、経営判断ミスを繰り返した経営陣ではなく、現場で地獄を見続けた従業員たちでした。
経営陣に足を引っ張られ続け、補助金の矛盾に悩みながらも「コロナ禍で苦しむ中小企業を助ける」と青臭い理想に燃えた彼ら。
これは、ちょっと…いや、かなりポンコツな経営陣と、現場の従業員の悲しくも少しだけ笑える物語です。
もしかしたら、倒産企業の予兆や経営改善のヒントを見出すきっかけとなるかもしれません。また、補助金やコンサルの光と闇も伝えていきたいです。
とはいえ、小難しいことよりも、理想と現実の間で奮闘した現場の従業員の姿が少しでも皆様の記憶に残れば幸いです。
5.次回予告&今後の展開
ここから先は、北浜Gの内部に深く切り込み、以下のテーマで倒産の舞台裏を掘り下げていきます。
1.脅威の補助金工場―名もなき派遣戦士たち―
2.そして倒産へ―人材軽視の成れの果て―
3.消えたコンプライアンス―利益と倫理の狭間―
4.総合コンサルへの野望―勝算なき戦いの代償―
5.「頼朝像」の行方―企業の社会的責任とは―
次回は、北浜Gを飛躍させた最大の要因である”派遣社員”の存在を詳しく解説する予定です。帝国データバンクも把握できなかった彼ら。北浜Gに与えた彼らの影響とは――。
なお、以下の記事は、私が直接的に見聞きした内容に、信頼できる人物の話やニュースなどの客観的情報を混ぜて構成したものです。
私見や批判がにじみ出る部分や、身バレ防止のため意図的に曖昧にしている部分もありますが、なるべく客観的に記載するように努めます。また、書き手の記憶違いもありますが、そこはご容赦を。



コメント