ネウ・フォーネル
ハイ・エルフであり…エルフの中でも秀でた知識と容姿を持つネウは幼少期に見た外の世界が描かれた絵本に魅せられて以降…森の外の世界に強い興味と憧れを抱き続けた…しかし旅に出て世界を見て回りたいというネウの夢を両親は許すわけもなく23歳を迎えた頃…溜まりに溜まった不満と好奇心が限界を迎えたネウは自宅を燃やし…その混乱に乗じて森を抜け出すという強硬手段に打って出た。
そしてついに森を抜け出したネウは念願の外の世界を旅して回った…絵を描くのが好きだった彼は旅をする先々で絶景や人々の暮らしを描き…それを売ってはその金を資金にし次の目的地へと向かった、初めこそは全く売れず野宿をするなんてこともザラにあったが彼には才能があった…旅の先々で売っていたネウの絵はいつしか絵に全く興味のない者ですら一度は見たことがあろう名画として扱われるようになりオークションでは数億ヴァリスで取引されることも多々あった…。
そん事になってるともつゆ知れず…旅を続けていたネウは次の目的地に向かう途中…休憩がてら立ち寄った田舎の村で劇的な出会いをした。
満月が彼を見下ろす真夜中…良いスポットはないかと、絵を描くため村の近くにある森を徘徊していたとき彼は小さな泉に辿り着いた……空から降り注ぐ月光が波1つない水面に反射しその一帯は真夜中の森とは思えない程光り輝いていた…そんな神秘的な光景に魅せられた彼は無意識的に近くにあった岩に腰掛け用紙に筆を走らせていた……どれだけ時間が経っただろうか…夢中で筆を走らせていた彼の耳に足音が聴こえてきたため作業を中断し…意識をそちらに向ける。
「…そこにいるのは誰?」
足音の主もネウの存在に気づいたのだろう…警戒しながら泉の近くにある木々から顔だけをピョコっと出しそんな問を飛ばしてくる…顔は木の枝や葉で見えないが声的に女性だろうか…そんなことを思いながらネウは出来るだけ相手を怖がらせまいと優しい口調で答えた
「あぁ…驚かせてすいません…私は近くの村に宿泊している旅のものです」
「…旅人がこんな夜中に森でなにしてるの?」
「絵を…この美しい泉を描いていました…」
「絵を?」
彼のに嘘がないのが伝わったのか彼女は警戒心を解きゆっくりとネウの前に姿を表した…
美しい…。
彼女見てネウは真っ先にそんな言葉が頭に浮かんだ…腰まで伸びる処女雪のような真っ白な髪に凹凸のしっかりとした体…此の空間はまるで彼女のために存在しているのでは…そう思ってしまう程に水面に反射された月光は彼女の美を際立たせた…まるで本から飛び出してきたのでは無いかとそう錯覚してしまうほどに…
あまりの美貌にネウが目を奪われているのを他所に彼女はネウの隣へと腰掛け製作途中だった絵に視線を落とした…
「!?凄い…まるで空間を切り取って貼っつけたみたい!」
「ふふっ…有り難うございます」
「ね、ねぇ!もう少し近くで見せてくれる?」
「えぇ…どうぞ」
ネウは彼女に製作途中だったら用紙を手渡した
「本当にキレイね…」
彼女はまるで宝石でも見てるかのように目を輝かせ絵を眺めていた
「?…この絵のタッチや色の使い方…既視感が…?貴方もしかしたら凄い画家だったりする?」
「いえ…しかし色々旅先で絵を売っていたのでもしかしたらそこで見かけたのかもしれませんね」
「なるほど…はい、ありがとう」
充分に絵を堪能のたのかネウに絵を返し言葉を続けた
「さっきは失礼な態度をとって悪かったわ…ごめんなさい…」
「いえいえ、夜中の森に男が一人で居たら誰だって警戒しますよ…私の方こそすいません」
「ふふっ、優しいのね…私はリーベルタース【自由】を司る女神よ。あなたの名前は?」
「女神様でしたか…私はネウ・フォーネル…しがない旅人です」
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「あっはははは!それじゃあネウ…貴方外の世界みたさに自分の自宅を燃やしたって言うの?」
「そ、そうですけど…そんなに可笑しな事です?」
「ひぃ〜お腹痛い…貴方自覚がないの?森を抜けるために自宅を燃やすハイエルフとか前代未聞よ…ぷっあっははは」
あの後二人で村に帰ったネウ達は流れで酒場に行くことになり、そこでネウは旅に出る経緯を彼女に話していた
「だめぇ〜笑いすぎて窒息するぅ〜」ゲラゲラ
「…」
森で会ったときの威厳は何処へ行ったのやら…今ネウの目の前に居るのはビールジョッキを片手に机に突っ伏し窒息死仕掛けている美しい女神だった…
「ふぅ…久しぶりのこんなに笑ったわ」
目尻に溜まった涙を指で拭う
「…」
「な、何よ!その可哀想なものを見るような目は!」
「…」ジィー
「見つめないでよ!」
「ふふっ…冗談ですよ」
3割くらいは。
「先程…森であったときとは随分とキャラが違うなと思いまして…」
「むぅ…さっきのは、あの奇麗な泉の雰囲気当てられてたのよ…」
「随分と正直ですね」
「まぁ…キャラが変わったところで私が美しくて奇麗だという事実は変わり無いからね!」
「確かに…キャラが変わったも貴方は森であった時と同じように美しくて奇麗だ」
「……場を盛り上げるための冗談なのに真顔で肯定しないでくれないかしら…余計に恥ずかしくなるわ」
そう言って赤くなった顔を隠すように机に突っ伏す
「…?私は事実を言ったまでですが」
「それが余計にたちが悪いのよ!」
「ふふっ…それより次は女神様のお話を聞かせてくださいよ」
「さっきの会話を"それより"で片付けられるのも癪だけど…いいわよ何が聞きたい?」
「そうですね…どうして下界に降りてきたんですか?」
確かこの町に向かう道中で出会った神様は天界がもの凄くつまらないから降りてきたって言ってたけど、、
「わだしぱじふんのいじで(ベシッ)あだっ」
「食べながら喋らないでください…」
「うぅ…乱暴された」
「人聞きの悪いこと言わないでください…それで…どうして降りてきたんですか?」
「私は自分の意思で下界に降りてきた訳じゃないわ」
「?」
「私…天界から落ちたの…」
「??」
「酔っ払って」
「???」
何を言ってんだこの女神。
「ん……え?…落ちた?酔っ払って?天界から?」
「だからそう言ってるじゃない」モグモグ
え…意味がわかんない…下界に繋がる道ってそんな落とし穴みたいに有るものなの?…しかも何でこの女神はさも当たり前のような顔してるの?
「だ…」
「だ?」
「駄女神じゃねぇか!!」
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「ねぇネウ…私を貴方の旅に連れてってくれないかしら」
「ぐふっ!ゲホゲホ……な、なんですか藪から棒に」
酒場からの帰り道…おもむろに彼女は告げる
「私、せっかく下界に来たのだから世界中を旅しようと決めたの…そして貴方と出逢った…ビビビッてきたの…きっと貴方について行けば私が見たことのないような凄いものを見せてくれる!って……それで…どう?」
彼女は不安そうにネウを見上げる
「きっと辛いことばかりですよ?」
「えぇ」
「場合によっちゃ野宿しなくちゃいけない時もある」
「む…虫は苦手だけど頑張るわ」
「金銭的な都合で一ヶ月近くお酒が飲めなくなるかもしれない」
「うぐっ…それは嫌だけど…それでも貴方となら…乗り越えられる気がする!」
「ふふっ…覚悟はあるみたいですね」
「えぇ!なんたって私よ!」
「それでは改めて…私はネウ・フォーネルしがない旅人です」
「私はリーベルタース【自由】の女神リーベルタースよ」
「末永く宜しくお願いします」
「…それはプロポーズかしら?」
「さぁ?どう捉えてもらっても構いません」
「ふふっ…可愛げがないわね」
この物語は酒カス女神とポンコツエルフが紡ぐ何処かおかしな英雄譚である。