『初音はパパが違うから悲しくないんだ…大事にしてもらってたのに文句ばっかり言ってさぁ！』
もうやめよう？落ち着こうよ私。

『そうやって悲劇ぶって同情集めるの得意だよねぇ…！さきちゃんが好き？嘘！！嘘ばっか！！』
それ以上初音に酷いこと言っちゃダメだって。

『かわいそうな初音！悲劇のヒロイン！でも幸せな子がいないと演じられない！さきちゃんは悲劇の舞台装置！大好き！』
うーーーーわ最っ低こいつ…人間の血、ほんとに流れてる？
─────
下唇を強く噛みしめ、ビジョンに映し出される紫色の瞳から隠れるようにフードを目深に被る。なんであんなこと口にしたんだ。
傷つけてしまった。傷つけたくなんかなかった。初音と……お姉ちゃんとこんなふうに離れたくなかった。
でもそうやって失意に暮れていたある日のこと。お姉ちゃんの立場と、あの家の目論見を偶然知ってしまった私は、気が付けば島を飛び出し東京に来ていた。
私がこの力を授かった意味は、きっとお姉ちゃんを─────亡くなったパパの言葉を思い出し、都会の雑踏の中でそれに重ねるようにつぶやく。

『「大いなる力には、大いなる責任がともなう」』

最近ハマってるんだよね。逆さ吊りでさ、ヘッドホンでHere, the worldのヒップホップRemixかけてブチアガるの。
やっぱまなちゃんパートいいなーさすがのど自慢大会5連覇。これがお姉ちゃんのリリックなのは笑うけど。

ビル風吹く建物の間からお姉ちゃんのマンションの部屋を見る。
カーテン越しでも何してるかわかる。
まーた夜にコーヒー淹れてる…寝れなくなるよ？
姉の健康に良くない行いを心配してると───おっとお客さんだ。
それじゃ、親愛なる隣人としての責務を果たすよ！黒のマスクを被りスウィングで夜闇を駆けていく。

『イーッ！』
「Heyロボグリーンモーティス！こないだ階段から投げ飛ばしたのにもう復活？悪いけどまたTGWにクーリングオフさせてもらうよ！」
グライダーに乗ったこいつはTGWインダストリーが極秘開発した暗殺シューレス忍者地面師ロボだ。
お姉ちゃんの存在は豊川家にとってお家騒動を引き起こす原因となるらしく、こうして毎日暗殺者が送り込まれる。
あの日、その秘密を知った私はスパイダーマンとしてお姉ちゃんを守護る決意を固めた。
それがお姉ちゃんを傷つけたせめてもの贖いだった。

THWiP！ウェブから流した電撃をロボモーティスに浴びせ、地面に叩きつける。
『ヤダヤダヤダー！ケンコウニヨクナーイ！…ガクッ』
「君ロボなのに健康意識高くない？」

さて、あとはこの辺にふんじばっておけばA.B.P.D.が回収するでしょ。
また警備に戻ろう。お姉ちゃんを傷つけようとするすべてから、私がお姉ちゃんを守るんだから。
もう合わす顔なんかないけど、これだけは私の大いなる責任なんだ。
決意を再確認して、お姉ちゃんの様子を窺う。よかった無事みたい。

…んん？お姉ちゃんトルソーなんてひっぱり出してなにやってるんだろ？なんかハァハァしてる？
そういえば昼間、さきちゃんっぽい服しまむらで買ってたけどまさか……あっやっぱり着せた！
ロフトに布団敷いて、さっきのさきちゃんトルソー寝かせて？タオルとローション？あとマッサージ器具？
えっ？なんで服と下着脱いで…うわ！？うわわわ！？おおおお姉ちゃん！？
うわすごっ！いやさきちゃんそんなの生えてないって！変態！けだものだよう！！ママみたいなことしてるって！！
真っ赤な顔を覆った指の隙間から姉の痴態を覗きつつ叫んだ。「ケ、ケンコウニヨクナーイ！」

SHIN Amazing Spider-Uika will return.
一旦おわり

真初華スパイダーマン説来ましたわね…

エアプ真初華であれこれできるのは明日まで！

どういうスレ画なんだよ！

A.B.P.D.(AkaBane Police Department)

母親の痴態を知ってるの酷いな！

おやsumimiは流行るよ

『さきちゃん…なんで……うう…うううぅ……』

「お姉ちゃん…」
部屋に仕掛けた盗聴k…gooberから送られてくる悲嘆に暮れる声をレシーバーが拾う。
お姉ちゃんが泣いている。ムジカ解散によって、同棲していたさきちゃんが何も言わず出て行ったきり、毎晩あんな感じだ。
お姉ちゃんの昔からの夢、叶ったのに…。正直な話、今すぐお姉ちゃんの元に駆けつけて慰めてあげたい。
でも私にその資格などない。仮に会いに行ったとしても拒絶されるだけだろう。

だからここで敵を迎え撃つしかない。私にはお姉ちゃんを害そうとするヴィランから、親愛なる隣人としてお姉ちゃんを守ることしかできない。
鋭い鉤爪とマントで装った黒い影に相対する。
「こんばんは。ここから先はドレスコードがあるんだ。ごめんけどお引き取りいただけるかな？」
「はん…ぶん…こ…」
「？」
「ういちゃんはんぶんこおおおおおおおおおおおおお！！！！」
街灯に照らされて闇に隠された顔があらわになる。sumimiの、お姉ちゃんの相棒が狂気を振り回し襲いかかってくる。

マナウラーの鉤爪が路肩に停めてあった車を両断する。もし当たったら私の身体も半分こだろう。
「まなちゃん！もうやめようよ！落ち着いて話し合おう！」
「まなは…マナは！ういちゃンヲ半分コに死たいノ！………違う違うやだやだやだういちゃんにまなそんなのしたくないやめて！やめてよぉ！！…ハァハァっういチャん半分こにしなキャ」
「まなちゃんもしかして操られてる…？」
お姉ちゃんを消すためにここまでするかTGWインダストリー。

どうにかして正気に戻さないと…なにか手だてがないかウイカムズムズをフル稼働させる。
ふとまなちゃんの首の後ろに不自然な制御チップのようなものがついていることに気付いた。
隙を見てあれを停止させれば…一か八かやってみるしかない。
しかし鉤爪を振り回し、ブラスターで破壊の限りを尽くしている彼女に近づくのは容易ではなかった。

「なんとか近づかないと……ぐあっ！」
ブラスターによるガス爆発で吹き飛ばされ、道路に倒れ伏す。
すぐに顔を上げると、涙を流しながら私に鉤爪を振り降ろそうとするまなちゃんと目が合った。
もう、逃げられない。守れなくてごめんお姉ちゃん──

─ザザッ『さきちゃん…さびしいよお…もうむりたえられないよ…だからこういうときはぁ…』
衝撃でレシーバーのスイッチが偶然入ったのか。お姉ちゃんの声が辺りに響き、まなちゃんはピタリと動きを止めた。

『じゃーん…さきちゃんが落とした髪の毛拾い集めて作った結婚指輪…これを左薬指に💛』
『病める時も…健やかなる時も…妻としてさきちゃんを愛し続けることを誓いますか？…はひぃ💛ちかいます💛』
『あっ！そうだこのへんにさきちゃんが使ったアレが…あった！……それじゃさきちゃん…初夜だね…挿れるね💛んっ💛』

粘ついた水音と獣じみた嬌声が聴こえ始める。
いきなり垂れ流される情事に、まなちゃんは顔を真っ赤にして口をパクパクさせながら固まっていた。
これ今正気なんだろうか…？でも隙ができた。
まなちゃんの後ろに素早く回り込み、チップに指先を当て、なるべく弱い電撃で機能を停止させる。
「ひんっ…」
すぐまなちゃんを抱きとめ息を確認した。よかった…今は眠ってるだけみたい。

お姉ちゃんに助けられちゃった。しかし毎晩聴いて慣れたとはいえ、我が姉ながらママに似てヤバい女だよ…。

その後、近くのベンチでまなちゃんを膝枕して看病していた。
目覚めたとき怖がらせないようにお姉ちゃんの姿を借りた、マスクのない初華として。
「んっ…あれ？ここどこ？なんでまな外で寝てるの？」
「まなちゃん！大丈夫！？なんともない！？えーっと…そう！ここの近くで倒れたんだよ！？」
「うい、ちゃん？…うん、ちょっと、ぼーっとするけどまななんともないよ？」
起き上がりながらまなちゃんが発したその言葉を聞いて、思わず抱きしめてしまう。
「う、ういちゃん！？」
良かった…まなちゃんになにかあったらお姉ちゃんに顔向けできない。いや元から私はできなかったわ。
「ういちゃん今日すごいね…お日さまみたいだね…」
「ハッ！？ごご、ごめんまなちゃんすぐ離れるね！」
「…ううん、まなもうちょっとこのままでいたいな」
「へ？はひぃ…」
まなちゃんの腕が私の身体を強く抱きしめる。さらさらの髪が私の鼻の先をくすぐる。めっちゃいいにおいする…アイドルってすごい。
いや…これはダメだよ。これはお姉ちゃんが作った信頼なんだから…離れなきゃダメ。
でも私…東京に来て以来、久しぶりに人肌に触れた気がする…だからもう少しだけ…。

やっちゃった…お姉ちゃんと同じだよ。なりすまししちゃった…お姉ちゃんに文句言えないよもう。
チップの影響か、まだ顔を赤くしてぼーっとしてるまなちゃんの手を引いてタクシー乗り場まで歩いて送っていた。
「まなちゃんタクシー来たよ。行き先言える？大丈夫？」
「…うん大丈夫。ありがと。ういちゃん」
「あの今日はごめんなさい。なんか変なことしちゃって…どうか忘れてね…」
「え～っ？甘えん坊のういちゃんかわいかったからな～どうしよっかな～？」
血の気が引く。下手したらお姉ちゃんに私のことがバレる。どうしよどうしよと青い顔してると……
「……まなね、怖い夢見たの。でも夢から覚めたとき、まなのこと心配してくれてるあなたの顔見てすっごく安心したんだ」
まなちゃんは震えが残る手で私の頬を触り、太陽のように笑った。
「だからういちゃんには秘密にするねっ」
「えっ？」
「スパイダーマンさんおやsumimi～」
「ぉ…？おやsumimi～？」
そうしてまなちゃんはタクシーに乗り込んで去っていった。
やっぱりまなちゃんはすごいと思った。おやsumimi～をもっと世界に流行らせると胸に誓ったよお姉ちゃん。

おわり！
おやsumimi～

妹が命懸けで戦ってる間シコってる姉…

複雑な関係すぎる…

一周してういまなが帰ってきた

>妹が命懸けで戦ってる間シコってる姉…
ファインプレーだよね💛

>「へ？はひぃ…」
そっくり姉妹過ぎる

おやsumimi～
これは流行る

流行らせないよ。

母の痴態も姉のシコリも把握してるなんてスパイダーマンは過酷だ

初音…初華も連れて帰りなさい…

ムジカは解散させないしおやsumimiは流行らせないよ

このういまなはマスク取ってのキスが似合う

まな純田
M.　J.

戦う理由は悲しい…

まなちゃん良い女だ

本編の小ネタ入れ込みまくってて地味にすごい力作だ…