発達障害のパートナーに苦悩?カサンドラ症候群について精神科専門医が丸わかり解説

ASDなど発達障害を抱える方のパートナーによくみられる状態として、昨今よく耳にするようになったカサンドラ症候群。一体どんなものなのか、そしてその問題点とは?精神科専門医が解説していきます。
藤野智哉 2024.12.10
読者限定

カサンドラ症候群とは、自閉スペクトラム症(以下ASD)のパートナーとのコミュニケーションや関わりにおいて困難が生じ、ストレス反応として不安や抑うつ、不眠など様々な症状が出るものとされています。聞いたことがあるでしょうか?

最近ではASDに限らず他の発達障害や特性を持つ人のパートナーなどにおいても症状を訴える人が増えてきましたが、実は精神科医が診断する「病気」ではないとされています。

とはいえ、発達障害に限らず精神疾患を抱える患者さんのご家族は、症状への理解の困難さ、将来への不安や明るい見通しの立たなさなどからしんどくなってしまうことが少なくなく、こういった名前がつけられることでそこに世間の目が向けられることは必ずしも悪いことではありません。

では、なぜ病気とされないのか?何が問題なのか?

カサンドラ症候群が取り上げられる際は、症状を来した当事者の苦悩にフォーカスされることが多く、あまり悪い面には触れられません。多くの場合そういった記事を読むのは苦悩をしている方でありそういった情報を求めてはいないからです。

しかしこの記事は苦悩し、「自分はカサンドラだ」と主張している人にこそ読んでほしい記事です。カサンドラを無条件で肯定し「あなたは悪くないんだと」甘言を垂れ流す記事ではなくこの記事をフラットな気持ちでぜひ一度しっかり読んでみてください。

また前提としてASDの特徴などの知識があるとより理解しやすくなります。こちらは過去記事にまとめてありますのでぜひご覧ください↓↓↓

***

このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。この記事は無料登録で読めます。有料登録をすると毎月2本の有料記事に加え、なんと過去記事も全て読み放題になります。

そもそもカサンドラって?

カサンドラ症候群という名称はギリシャ神話のカサンドラの名前に由来しています。

カサンドラは神アポロンに愛され予言の能力を与えられましたがその愛を拒絶したため、誰にもその予言を信じてもらえなくなる呪いをかけられました。予言についていくら訴えても誰も信じてくれない、理解をしてくれないこのカサンドラの状況が、パートナーとの関係において理不尽な状況に追い込まれているのにその辛さを訴えても誰からも理解してもらえない、信じてもらえない人々の状態像と重ね合わせられ名付けられました。

どんな人がカサンドラ症候群になるの?

もともとカサンドラ症候群はASDの患者さんのパートナーがきたすものとされてきました。

ASDの患者さんの中には興味や感情の共有の苦手さ非言語的コミュニケーションの苦手さを持っている人が多くいます。

そもそもASDで問題となるような特性の強さはグラデーションがあり、社会生活をする上では大きな困難をきたさない人から日常生活の中で日々困難を抱え苦悩している人まで様々います。ただ、社会生活では問題にならない程度の特性であってもいざパートナーとして一緒に生活をしていくことになると話は別です。共同生活では興味や感情の共有が強く求められることや、非言語的なコミュニケーションを用い理解を促進する場面というのは多くあります。

そういったことから昨今ではASDとして診断がついている方だけでなく、そのような特性を持つ人のパートナーであったり他の発達障害の方のパートナーでもカサンドラ症候群ではないかと訴える人が増えてきています。

またASD自体が3対1程度の比率で男性に多いとされていることから、カサンドラ症候群も必然的に女性に多くなると考えられます。ただASDの男女比に関しては、男性の方が生活の中で症状が顕在化しやすく気付かれやすいだけで、潜在的にはそのような特性を抱える女性やそのパートナーとしてカサンドラ症候群に苦しんでいる男性も実はもっといるのではないかという話もあります。

どんな症状が出るの?

カサンドラ症候群ではパートナーという一番身近な、本来信頼し合える相手との情緒的交流において難を生じ、分かり合えず、またそれを他者に相談しても十分に理解をしてもらえません。

そこから生じる孤独感や悲しみ、不安は強いストレスとなり当然様々なストレス反応を生じ得ます。本症候群に限らず人はストレスがかかると抑うつ気分倦怠感不眠、身体的不調などの様々な症状が出ますからその症状の存在自体は否定されるべきものではありません。

ではカサンドラ症候群という概念の一体何が問題なのでしょうか?

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2422文字あります。
  • カサンドラ症候群の問題点
  • まとめ

すでに登録された方はこちら

10コメント
アバター画像
この記事はメールアドレスを登録している読者限定です。本文の内容に触れる際はご注意ください。
ccc
2025.04.16 14:27

問題点を読み、「パートナーのせいでカサンドラになった」と言っていた友人のことを思い出しました。

そのパートナーさんのことを知らないのですが、少なくとも私を含む複数人が、かつて彼女の気まぐれで他責的な言動に振り回されていたので、それを聞いてもピンと来ず、ポカーンとしたものでした。

(失礼ながら、それは逆では?と思うくらいに)

キャッチーな言葉に引っ張られて、本質に向き合う機会を失ってしまったのかもしれません。自戒を込めて、心に留めておきたいと思います。

続きを読む
iroria
2024.12.17 15:39
サポートメンバー

「カサンドラ症候群」は、イギリスの精神科(発達障害)の女医の方が命名したものです。

2010年前後頃にこの方のウェブサイトで紹介されました。

これは「病気や症状」ではなく、発達障害を持つ定型家族が陥る「状況」を分かりやすく

説明するためのものです。

知的障害を伴わない発達障害(自閉症スペクトラム)を持つ方は、周囲から「普通の人」

もしくは「人当たりの良い礼儀正しい人」などと見られがちで、家庭の中とは全く違う・・・

と言いますか、毎日一緒に過ごしている家族にしか見る事ができない「深刻な問題」があり、

それを周囲に相談しても「あなたの考えすぎでしょ?」と言われてしまい、理解を得られず

孤立してしまう【現象】を言うものです。

私も実際、娘が小1の頃から担任の先生に、娘の顕著な問題を相談しましたが

「お母さんの考えすぎ」「そんな事言ったら御子さんが可哀想」などと、逆に

非難されました。その先生方が新担任になって1~2か月すると、必ず

「お母さんの話は大袈裟ではないかもですね・・・」等という話を必ず言われました。

そしてやっと娘が小4の時の担任の先生が(この先生も最初は私を非難してましたが^^;)

娘の問題を理解してくださり、夏休みに学校でwiscのテストをして下さいました。

結果、IQは高いものの、深刻な度合いの高機能自閉症+ADHDと判明しました。


カサンドラ症候群は病名でも病気の症状でも全くありません。

「誰にも理解されない状況」に陥っている状態と、発達障害の家庭内での特性などを

一言で説明できるようにした用語のようなものですよね。

続きを読む
アバター画像アバター画像
読者限定
この時期気をつけたい!?適応障害と五月病について精神科医が解説
サポートメンバー限定
患者さんとの恋愛って実際あるの?精神科医がその実態について解説。
読者限定
不眠の嘘ほんと。薬を飲む前に知っておきたい対処法を精神科専門医が解説
サポートメンバー限定
男性の産後うつってホントにあるの?精神科専門医が丸わかり解説
読者限定
なぜうつ病が良くならない?症状が改善しないときに疑ってみるべきことを精...
サポートメンバー限定
マインドフルネスって一体何?精神科専門医が解説
サポートメンバー限定
殺害予告されたからグランドキャニオン来た話
サポートメンバー限定
うつ病と不眠の関係って?精神科専門医が解説