誘客の核だったのに…村山の真剣試し切り、痛い中止 文化庁などの銃刀法新見解受け・外国人に「サムライ体験」として人気
居合道発祥の地とされる村山市での居合道体験プログラムを巡り、真剣を使った試し切りが、銃刀法に抵触するとの新たな見解が文化庁と警察庁から示されたため、昨年末から実施できなくなった。「サムライ体験」ができるとインバウンド(訪日客)の人気を集め、2022年度は51人、23年度は93人の外国人が体験。だが今年1月以降はキャンセルが相次ぎ、市は誘客の核を失う大きな痛手を受けている。 プログラムは、居合道を観光面でPRしようと市が市観光物産協会に事業を委託。同協会が県警に体験の可否と実施に必要な手続きについて問い合わせたところ、問題がない旨の回答を得て2017年に始めた。 8千~3万円の体験メニュー3種類のうち、2種類に試し切りを組み込んでいた。最も人気だった「居合抜刀術サムライ体験」は2時間で1人1万3200円から。居合の始祖とされる林崎甚助重信(はやしざきじんすけしげのぶ)を祭る熊野居合両神社(林崎居合神社)に参拝し、併設する村山居合振武館で刀の抜き方、振り方などの基本動作と型の一つ「初発刀(しょはっとう)」習得、畳筒の試し切り―との流れだ。
プログラムは国の「スポーツ文化ツーリズムアワード2020」の特別賞を受けた。近年は“サムライ”になり切れると好評で、特に訪日客の需要が高まっていた。年間体験者は新型コロナウイルス禍の21年度は42人(うち外国人は6人)だったが、その後は22年度が138人(同51人)、23年度は151人(同93人)と右肩上がりで増えた。24年度は12月時点で115人(同77人)。しかし、試し切りができなくなった後は伸び悩んだという。 県警によると、昨年12月に文化庁と警察庁が協議した結果として「観光客などの不特定多数に、真剣で畳筒などを切らせる行為は、許容されない」との見解が示され、全都道府県警に通知文が出された。同協会には昨年末に中止するよう申し入れがあり、試し切りをメニューから外した。 市商工観光課は「観光の目玉だった。市内の他の観光地にも影響が出ており、大変な痛手だ」と話した。矢口勝彦市観光物産協会長も「銃刀法違反になるのなら仕方がない」と口にしつつ肩を落とす。その一方で「試し切りができなくても侍の精神を伝えることはできる。居合道発祥の地として、精神を学べるよう、要望や満足度を聞きながら体験プログラムを磨いていきたい」と話している。
◆銃刀法 銃や刀剣を登録して管理し、安全管理上必要な規定を定める法律。登録を受けた銃や刀剣は、正当な理由がある場合を除いて、携帯や運搬、使用が禁じられている。正当な理由とは、剣道や居合の形稽古や刀匠が状態を確認することなどが該当する。