〈信仰体験〉 燃ゆる塗装会社の青年社長 2025年4月16日

  • 陰の「大誠実」を尽くし抜く!
  • 「見えない勝負」の中で本物が輝く
目を凝らし外壁に丁寧にコーキングをする加藤さん。その心には「陰徳あれば陽報あり」(新1613・全1178)が輝く
目を凝らし外壁に丁寧にコーキングをする加藤さん。その心には「陰徳あれば陽報あり」(新1613・全1178)が輝く

 【東京都東大和市】家の外壁は、長年、紫外線や雨風にさらされると、悲鳴を上げる。しかし、塗装会社を営む加藤光一さん(40)=区男子部主任部長=の手にかかれば、まあ、なんということでしょう! 依頼主が「まるで新築!」と、声を弾ませる劇的な姿に生まれ変わる。

 幼い頃、父親が借金を残して蒸発した。毎週のように、スーツ姿の男が家に取り立てに来た。小さな胸に焦げ付いた、灰色の感情。オトナが嫌いになった。

 曇天の暮らし。それでも、母・律子さん(65)=女性部副本部長=が笑うと、日だまりが広がった。女手一つで3人の子を育てる。忙しさを分かりながらも、加藤さんは小学校の行事に母の姿がないと、しかめっ面をした。

 反抗期に入ると、素行の悪さがドドドと噴き出る。母は中学校から何度も呼び出しをくらい、頭を下げた。
 自宅で座談会があると、始まる前に、加藤さんはわざと部屋を散らかした。だが、母はササッと部屋を元通りにし、同志に笑顔で「こんばんはー」。いつも母が一枚上手だった。

 加藤さんは、青春の鬱屈した感情をまき散らしながらも、心の中では「いつだって、母ちゃんを尊敬していた」。
 一人で借金を返す母を少しでも助けたいと、16歳の時に塗装会社で働き始めた。

 下積みの4年間は「ハケも持たせてもらえなかった」。足場組み、掃除、養生作業。やっとのことでハケを握れても、親方との腕の差に落胆。悔し涙で食らいつき、26歳の時に、現場の采配を振るう「番頭」を任せられるようになった。
 その間、妻・絵梨香さん(40)=女性部員=と結婚し、3人の子どもを授かった。母と一緒に返していた負債も完済した。

軽やかに足場を歩く加藤さん
軽やかに足場を歩く加藤さん

 職人の意気に燃え、迎えた30代。これまで順風だった仕事の風向きが一転する。会社との方向性の違いから、社長とぶつかるようになった。31歳で独立した。

 波乱の船出だった。営業に行くと、いわれのない悪評が出回っている。契約が立ち消えになり、取引先でボヤ騒ぎがあった時には、疑いの目が向けられた。
 「ふざけんなよ」。幼い時と同じ灰色の感情が、腹の底でうねり出す。酒に逃げ、人を遠ざけるようになった。

 そんな時、男子部の人が訪ねてきた。何度追い返しても、昨日と変わらない笑顔でまた現れる。先輩は池田先生の話をしてくれた。
 あらゆる誹謗中傷の中で、池田先生は全てに打ち勝ってこられた、と。加藤さんは「猛烈に、池田先生を知りたいと思った」。

 学会活動を始め、母から小説『人間革命』を借りた。恩師との不二の物語。ページをめくるたび、行間から熱が伝わってくる。民衆救済の大激闘に心が震えた。
 〈環境ではない。自分です。自分が変わればいいのです〉。池田先生の言葉には、いつも未来があった。

加藤さん㊥は、男子部の輪の中で心を磨いてきた
加藤さん㊥は、男子部の輪の中で心を磨いてきた

 ずっと心につかえていたものがあった。これまで同僚や友人が苦しんでいる時、優しい声をかけながらも、どこか傍観する自分がいた。「そんな中途半端な自分が嫌いだった」

 加藤さんは、池田先生の言葉を人生の道しるべとした。
 〈「大誠実」を尽くして祈る。「大誠実」を尽くして友のもとへ飛び込んでいく。どんな困難な環境や、人間関係の悩みも、「大誠実」によって、必ず打開することができる〉

 ただの誠実ではない。「大」が付く誠実。加藤さんは、これでもかと心を尽くし、これでもかと祈り抜き、それでも「まだまだ」と己を錬磨した。
 無愛想の塊だった男が、突然見せるようになった、ぎこちないスマイルも、日に日に自然な笑顔に変わっていく。

 「『喜』とは、自他共に喜ぶことなり」(新1061・全761)が命に深く根付いた時、仕事の依頼が続々と入るように。一度は切られた取引先からも「うちの材料を使ってほしい」と言ってもらえるようになった。

 塗装の工程には、下塗り、中塗り、上塗りがある。中でも「下塗りは、塗装の生命線」と加藤さん。手を抜けば、仕上がりにムラが出たり、塗膜が剝がれやすくなったりする。最終的には目には見えない部分。そこに「塗装屋の魂がある」と静かに言う。

 牙城会の薫陶で命に刻んだ「冥の照覧」。見えない戦いの中でこそ、本物が輝く。陰の大誠実が、家を長く守り、暮らしを守る。その心で一軒一軒、丁寧に仕事と向き合ってきた。

 今年でこの道24年。業界では「まだまだ若造」と加藤さん。小さな会社は、時代の波をもろに受け、コロナ禍では取引先が倒産するなど、毎年が「勝負の一年」。その中でやってこられたのは「本当に奇跡なんです」。

 そんな加藤さんの隣には現在、長男・光希さん(20)=男子部員=が並び、塗装現場に一緒に立っている。父親として、これからどんな背中を見せられるか。身が引き締まる思いとともに、熱い力がみなぎってくる。
 苦労の中で、ますます輝きを増していく若き塗装工。「見えない勝負」にこだわり、大誠実を塗り重ねる。

長男・光希さん㊧は同じ塗装現場に立ち始めて2年。「伸びしろは計り知れない」と加藤さん
長男・光希さん㊧は同じ塗装現場に立ち始めて2年。「伸びしろは計り知れない」と加藤さん

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