【第30回】<補適法第19条解説>:返還金に利息以上のペナルティから見る交付取消しの“処分”としての意味合いと証拠
前回の記事(第28回)では、補助金返還命令(第18条)がどのような行政行為かを解説しました。
今回はその返還命令に伴って課される、**「加算金」「延滞金」**についてです。
今回も『補助金適正化法解説 全訂新版(増補第2版)』を参考にして解説してまいります。
実はこれらの金銭的負担には、単なる“利息”以上の意味があります。
民法の利息5%を大きく上回る**年10.95%**という数字の意味、そしてこれが“行政罰”に近い性質を持つこと。
これらを理解することで、「返還命令=行政処分」とする私たちの訴訟の主張の正当性も見えてきます。
第19条とは?:返還命令とセットで課される金銭的負担
補助金適正化法第19条では、以下の2つの金銭が定められています:
① 加算金
返還命令に応じて返す補助金額に対して、受領日から納付日までの日数に応じて年10.95%で加算される金額。
② 延滞金
返還命令の納期日を過ぎても返還しなかった場合に、未納分に対して同様に年10.95%の利率で課される金額。
単なる利息ではない:「制裁」としての性格
加算金・延滞金は、一見すると民間契約における利息や損害金に見えますが、その性質は明らかに異なります。
なぜなら──
🔹 民法の利息=年5%
→ これは「損害の穴埋め」という中立的な補填。
🔹 補助金の加算・延滞金=年10.95%
→ 倍以上の利率が設定されている。
→ 解説書でも「制裁的賦課金」であり、行政罰に近い性格を持つとされています文書名補助金適正化法解説 (dai19jou)…。
このことからも、**加算金・延滞金は単なる“返還の利息”ではなく、法に違反したことに対する“ペナルティ”**なのです。
処分性があるという私たちの主張
私たちは今、補助金返還命令が「行政処分である」との主張をしています。
この点について、「補助金は贈与契約だから返還は私法上の問題」という反論があります。
ですが、第19条によって課される加算金・延滞金が罰的性格を帯びた行政的ペナルティである以上、この返還命令は「行政行為」であると考えるのが自然です。
▶ 民法上の贈与契約+利息なら私法
▶ 公法上の制裁金を伴う返還=処分性のある行政行為
→ これは、国による強制的・一方的な措置であり、まさに処分性を有する行政行為そのものです。
私たちの事例:加算金通知の不透明さ
私たちの訴訟の中で問題となっているのは、次のような点です:
加算金の起算日(=受領日)がどこなのかが明記されていない
返還金と加算金の内訳が通知書に記載されていない
しかも、通知元が中小機構ではなくパソナである
このように、加算金・延滞金という強い制裁を課すにもかかわらず、手続が不透明・曖昧である現状は、法的にも社会的にも看過できません。
裁量免除の余地と「やむを得ない事情」
第19条第3項では、加算金・延滞金を「やむを得ない事情がある場合には免除できる」とされています。
にもかかわらず、私たちにはそのような事情を説明する機会も与えられず、一律に課せられました。
このような運用では、本来意図された「公平な補助金行政」とはかけ離れているのではないでしょうか。
終わりに:この金利は、警告であり制裁です
加算金・延滞金の利率(10.95%)は、高利貸しのような金利ではなく、国からの“処罰”です。
返還命令がこれを伴うのであれば、私たちはそれを正当な行政行為として争うことができなければなりません。
単なるお金の問題ではありません。
それは「補助金行政が法に則って運用されているのか」という、もっと大きな問いなのです。
コメント