【特別編】中小機構が「売上は補助金交付の条件ではない」と回答――では、なぜ支給しないのか?
2025年4月某日、私たちは事業再構築補助金の不交付方針について、
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)、中小企業庁、および事務局運営を受託する株式会社パソナに対し、正式な抗議および質問書を送付しました。
質問をするに至った問題事象は以前のこちらの投稿にございます。
【第8回】補助金は「売上」で判断されるものなのか?
https://note.com/happy_shrew832/n/na68da1c74273
その結果、中小機構および中小企業庁からは書面による回答がありました。
しかしその内容は、制度と現場運用の大きな矛盾を示す極めて深刻なものでした。
「売上発生は交付条件ではない」――中小機構が明言
中小機構からの公式回答には、以下のような一文が明確に記されています:
「売上発生が補助金交付の条件となっているものではありません。」
これは補助金制度の執行者による、制度運用上の重大な公式見解です。
ところが、私たちが支援している事業者に対しては、実地検査員や事務局職員が口頭やメールで次のように言ってきました:
「売上がなければ補助金は出せません」
「販売実績が確認できない限り、審査は進められません」
つまり――
実地現場の判断と中小機構の制度的見解が真っ向から食い違っているのです。
支援事業者はすでに要請通り事業を開始・販売も実施済
この事業者は、実地検査後の是正指示に従って以下のことを実行しました:
補助対象施設での製造活動の実施
販売イベントへの急きょの出店と売上発生
材料費支出の証憑および販売代金の入金記録の提出
これらの活動はすべて検査員および事務局の求めに応じて実施されたものです。
にもかかわらず、Jグランツ上のステータスは依然として動かず、補助金確定の通知もなされていません。
中小企業庁の回答は「関与しない」の一点張り
中小企業庁からの回答は、次のような内容でした:
本補助金は中小機構が主体となって実施する事業であり、個別の審査状況等に係るご質問には弊庁から具体的な回答はいたしかねます。
制度の所管官庁であるにもかかわらず、
「審査は中小機構の責任だから」「我々は関知しない」という姿勢です。
しかし、そもそも補助金の交付決定や執行基準は中小企業庁の所掌であり、交付規程や要綱の最終決定権限を持っているのは行政です。
責任を中小機構に“完全委託”し、問題が起きたときに**「実施は中小機構、知らぬ存ぜぬ」**とする態度は、制度設計者としてあまりに無責任です。
パソナからは一切の回答なし――それでよいのか?
補助金事務局を運営し、検査・差戻し・審査保留といった事務実務を担っているのは株式会社パソナです。
今回の支援事業者における補助金支給の遅延や保留について、最前線で対応していたのは事務局職員であるにもかかわらず、正式な抗議に対しては一言の回答もありませんでした。
上記のような問題発言の有無やどのような審査基準で発言しているかについても期限までにノー回答です。
公的業務を請け負っている企業として、
また、実地検査という事実上の処分的判断を下す立場にあるにもかかわらず、
書面回答すら寄越さないという対応は、制度への信頼を著しく損なうものです。
誰がこの不交付の責任を取るのか?
整理すると:
〇中小機構「売上は条件ではない」
👉制度運用の“名義上の正義”を主張
〇中小企業庁「中小機構に聞いてください」
👉所管官庁としての責任を放棄
〇パソナ(事務局)「回答なし」
👉現場運用の真相は不明のまま
この構図では、誰も正面から責任を負おうとしないまま、支援事業者だけが宙づり状態に置かれています。
そしてその間にも、人的・金銭的コストを負担し続けているのは現場の事業者です。
このままでは制度が腐ります
本件は単なる1件の交付遅延ではなく、
現場対応の裁量逸脱
指導名目の実質的処分化
所管・実施・事務委託の責任分解の曖昧化
という、**制度の設計上の根本的な問題を突き出している案件です。
今後、同様の支給保留・取り消し・差戻しを受けている全国の事業者に対しても、
この「誰も責任を取らない構造」が適用され続ける限り、制度の信頼性は崩壊していくでしょう。
公開の是非について(補則)
本記事に含まれる情報は、すべて:
正式な抗議書に対する公的機関からの文書回答
支援事業者が公に実施した補助事業の内容
回答の有無という事実関係
に基づくものであり、公益性の高い内容であるため、
note・Xなどを通じて公開・周知することは妥当であり、制度健全化の観点からも文書を公開しました。
最後に:私たちは問い続けます
「誰が本当に補助金を止めたのか?」
「売上を条件としたのは制度設計か、現場運用か?」
そして、
「この制度は、誰のための制度なのか?」
水掛け論の様なこの責任の転嫁合戦に
私たちはこの問いを、今後も投げかけ続けていきます。
一つひとつの事例が変化の契機になると信じて。
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