新宿区では「11億円の税金」が日本人の負担に…全国で常習化する「外国人の診療費踏み倒し」を放置していいのか
■在留外国人の社会保障をどうすべきか 外国人の医療問題については、かねて自由民主党内でも議論がありました。安倍晋三政権下で激増したインバウンドと外国人実習生制度で日本にお越しになって長期滞在もありえる在留外国人の社会保障どうすんのという議論の中で政策が揉まれてきました。 【図表】在留外国人の国保の未納状況(国籍別) かなりガチで世界に冠たる皆保険制度と、献身的な医療関係者による高品質な医療提供体制は外国人にとっても福音です。安心して日本を訪問し、健康に暮らしたい人たちを日本人・外国人分け隔てなく受け入れる仕組みとして、性善説的に成り立ってきました。 ところが、医療機関窓口での外国人患者による踏み倒しや、国民健康保険への加入問題などが頻発するようになりました。これに対し、自見はなこさんほか自民党議員が外国人向け医療の提言を行い、政府が採用する形で、徐々に、軌道修正が図られていきました。 ■医療関係者から問題提起の声 25年2月以降、通常国会でも国民民主党の玉木雄一郎さんが外国人の高額療養費の扱いについて問題提起し、立憲民主党の米山隆一さんほか、与野党内でも大きな議論となりました。他方、厚生労働省は、なぜか外国人の高額療養費は年間で全体の1.15%、111億円にすぎないという割と強烈な与太話を国会でぶっ放してきたので、医療政策や医療機関の現場からすると「さすがにそれは」ということで、もう少し実態にそった内容を踏まえて問題提起したほうがいいんじゃないのという声があがっておるわけです。 真面目に論じると超絶長くなるので、先に結論となすべき対策について論じたうえで、各論を以下に示したいと思います。本件については、2025年6月度以降の情報法制研究所のコロキウム(談話会)イベントでも政策内容や調査結果も踏まえて論じていく予定です。
■在留外国人の4割強に国保未納疑い 在留外国人は、4割強が国民健康保険を未納となっている疑いがあります(2023年度以降)。 東京都板橋区の調査では、国籍別にみるとウズベキスタン人では86.5%、スリランカ人では79.2%、ネパール人では70.8%という極めて高い未納率が確認されています。さらに、もっとも在留人口が多い中国人でさえも34.3%が国保未納となっており、その未納総額は中国人の国保だけで1億1700万円(23年度)に上っています。 板橋区の例は都内でも納付状況はまだ良いほうとされていますが、同じ割合で在留外国人の国保未納が全国で起きているという仮定で推計した場合、全国の自治体を合算すると年間4000億円以上の国保が外国人によって納付されていないことになります。 国保未納が問題なのは、これらの国保欠損は、すべて自治体が一般会計より法定外繰入金で穴埋めすることになるからです。つまり、国民の納めた税金で外国人が支払うべき保険料が足りない分を立て替えているのです。 東京都新宿区においても単身外国人世帯と世帯主が外国人の世帯では、賦課額20億円に対し納付額は8億7000万円にとどまり、納付率はわずか44%とされています。これは国民が納めた税金で外国人の医療費を保障している状況であり、制度的な対応が急務となっています。 さすがに3カ月以上日本に滞在する外国人の4割以上が、法で定められた国民健康保険の保険料を未納のままにしているのは制度として成り立っていないとしか申し上げようがありません。これは自治体には手に余る問題であり、早急な対策が必要です。 ■解決のために必要な対策とは これらの未納対策として、24年度の報告では13億円もの国保未納(不納欠損)に見舞われているとされる新宿区など一部自治体では、すでに滞納対策課を設置して督促・徴収を進めていますが、自治体レベルだけでは対応が困難です。そもそも、徴収を自治体が進めようとしても、いまの制度下では別の自治体に引っ越されたら追跡できなくなりかねません。 東京出入国在留管理局では、地方入管と自治体が情報を共有し、納付を促進する制度を開始しています。この制度はすでに横浜市、豊島区で実施され、板橋区でも2025年度から導入される予定です。しかし、根本的な解決には、在留外国人は在留資格と厳格に国保納付を紐づける一方、出入国税の引き上げと入国時点での1年以内の外国人保険加入の義務付け、国保加入を入国後1年以上在留する場合とするなどの方策が必要です。 また、外国人受け入れ医療機関も含めて医療費前払い制度や有効なクレジットカードの提示を求めるなど、窓口での診療費踏み倒しを防ぐ制度が必要となります。自治体間の情報共有システムの構築も、転居による追跡困難性を解決する上で重要な取り組みとなるでしょう。