「ふむ、もう少し下に降りてもいいかもな」
「え、ホント!?」
「実力のみで言えばな。だが、仲間や装備などの準備をしてからだ」
「こう、順調にダンジョン攻略できてる感じがして嬉しいなぁ」
「ななぁかいそ~っ!?きぃみぃはッ、この前5階層で死にかけたばっかりなのに、なんで7階層まで降りてるのかなぁ~?イクス君も止めなよ!」
「僕、あれから成長してステイタスがいくつか
「はぁ~?そんなすぐに上がるわけ…」
「実際に確認してみろ。そうすればわかるはずだ」
「え、それは…いいの?ベル君」
「それで降りる許可が出るなら!」
ベルを周りから見えないところに移動してから、謝罪を口にしながら確認する
(力と耐久がE…敏捷に至ってはD!?確かにこれなら7階層でも通用する…)
「確認は済んだか?」
「うん。確かにこれなら許可しないわけにはいかないけど…ねぇ二人とも明日は開いてる?」
「ところでなんで私にステイタスを見させたの?」
普通、同じファミリア以外の人にステイタスを見せるのはご法度だ。それを担当アドバイザーとはいえ他人に見せてよいものかと疑問に思う
「あなたなら不利益になることはしないだろうと思ってな」
「それって信頼してくれてるの?」
「さてな。それと明日、私は開いていないので二人でデートを楽しんでくるといい」
「デートじゃないよ!!」
イクスは笑いながら去っていく。その様は年老いた人、またはお節介焼きな神のようであった
デート、…買い物、当日
「おーい、ベルくーん!」
「あ、エイナさん!」
そこには普段見るスーツ姿ではなく私服姿のエイナが駆け寄ってきた
「おはよう、早く来てくれたんだ。私との買い物がそんなに楽しみだった?」
「あ、いや、ぼくは…」
「まぁ、実は私も楽しみにしてたんだよね。で、ベル君。何かゆうことはない?」
(えっと、確かこうゆう時は『とりあえず服をほめろ』ってイクスが言ってたっけ)
「…いつもと違ってきれいに見えます!」
「それっていつもはきれいじゃないってこと?」
「いや、ちがっ、そういうつもりはなくてぇ」
「フフ、別に気にしてないから安心していいよ」
ベルをからかいながら目的地へと歩を進める。一瞬『やはりデートでは?』と
「バベルって冒険者用のシャワールームとか公共施設があるだけなんじゃないですか?」
「そっか、まだ冒険者になって1ヶ月だっけ?バベルはそれ以外にも空きスペースを貸し出ししていていくつか出店しているの」
「そうなんですね。それで…結局どこに行くんです?」
「それはついてのお楽しみだよ」
歩きながら軽い講座が始まる。今回は鍛冶師の話だ。鍛冶師自体は昔からいたが現在の鍛冶師は恩恵により属性が付与された武器や防具を作成できる。その中には絶対に壊れない剣や切れ味が落ちない刀、魔法を引き起こす『魔剣』など。…本来、地上では力を出せない鍛冶女神が壊れないナイフを作ったがあれは例外である。
「目当ては上の階なんだけど、少し寄っていこうか」
エイナはそう言い、ヘファイストスファミリアの店を見て回ろうとしたところ、見覚えのあるロリ女神がいた
「いらっしゃいませー、今日は何をお探しでしょうか、お客様?」
「へ?」
「ベル君っ!?」
「ここで何やってるんですか神様っ。近頃やけに忙しそうだと思ったらバイトの掛け持ちですか?」
「そ、そういうベル君こそどうしてここに…というか誰だい、このハーフエルフ君はっ!?」
「初めまして、神ヘスティア。ギルド所属のエイナ・チュールです」
「ベル・クラネル氏とイクステラ・アーク氏のアドバイザーを務めさせてもらっています」
「へぇー、君が…時にアドバイザー君。君は自分の立場を利用して、ベル君に色目を使うなんてこと…してないだろうね?」
「こ、公私の区別はつけているつもりですが…」
変な邪推してくるのは眷属と一緒なのかなぁなんて考えながらその場を離れていく。まあ、どちらも邪推しているがその動機は全く異なるので一緒にするべきではないのだが…エイナ・チュールにはそんなこと知る由もないのである
「ベル君はヘファイストスファミリアみたいな高級ブランド、自分には縁がないものと思っているでしょ?実はそうでもないんだよ。ここにあるのは新米の鍛冶師の作品でね、安くても実際に売られて評価を受けることが彼らにはプラスになるの。中には掘り出し物もあるんだよ」
「すごい…奥の方も見てきますね」
「待ってよ、ベル君!」
興味の赴くままに店の奥へと進むベル。これがデートなら減点だが、まぁエイナは否定しているし、14の少年には難しかっただろうし、多分ヨシッ。
閑話休題。そしてある一式の装備に目を惹かれる
「あ、いたいた。ベル君、あっちでいいの見つけ…ん?あれ?」
「えいなさん、僕、これにします!」
「ふぅ、ベル君って本当に軽装が好きなんだね」
「す、すいません…」
「いいよ。君がコレって決めたのなら、それでいいと思うよ」
「ありがとうございます」
「…明日もダンジョンに行くんだよね?できればパーティーの人数を増やして欲しいなぁ」
「それイクスにも言われました。」
「うーん、そうだなぁ。サポーターを雇ってみない?何かと効率も上がると思うよ」
「…ちょっと相談してみます」
その後、その他の必需品とちょっとした講義をしてデートを終える
「今日はありがとうございました」
「そうだ、ベル君。はい、これ」
エイナはプロテクターを2種ほど渡す
「私からのプレゼント。ちゃんと使ってあげてね」
「そんな、もらえません!」
「貰ってほしいな、私じゃなくて…キミ自身のために。本当にさ、冒険者はいつ死んじゃうかわからないんだ。戻ってこなかった冒険者をたくさん知ってる。」
それはギルド職員として勤めてきた彼女が実際に体験した話。その言葉の重みはベルに今までの探索を反省させるには十分だった
「それに頑張ってる君を見て、力になってあげたいなって思ったんだよ。だから、ね、受け取ってくれるかな?」
「はい。ありがとうございます」
「ど、どういたしまして…」
「えっと、もう一つのほうは…」
「これはイクス君に渡してね。本当は今日、一緒に装備を見ようと思ったんだけど…だからせめてこれくらいはね」
「きっと、イクスも喜びますよ」
「イクス君、喜ぶのかなぁ…?」
そう言われてイクスが喜ぶ様子をイメージしたが、感謝は述べるが目に見えて喜ぶ姿は思い浮かばず、その不愛想な様に二人してつい笑ってしまう。先ほどまでの気まずい雰囲気は何処へやら、ふたりはいつもっどりの雰囲気のまま別れていくのであった
「ちょっと遅くなっちゃたな…」
「あっ!」
その帰り道、人目が通らない道を歩いていると少女とぶつかる。少女は息が上がっておりその切羽詰まった表情から何かあったのではと想像させる。
「大丈夫ですか!?」
「もう逃がさねーからな!このクソパルゥムがぁっ!」
ガキンッ!
少女を追いかけてきたであろう男の攻撃をナイフを用いて弾く
「ガキ、邪魔だ。そこをどきやがれ!それともそいつの仲間か?」
「ち、違っ…初対面ですっ」
「じゃあ、なんでかばう?」
「え?何で、女の子だからっ?」
「ハァ!?何言ってんだクソガキ…!」
まさに一色触発。男は今にも切りかかろうとしていた
「「止め
そこにはイクスと豊穣の女主人のウェイトレス、リューが立っていた
「街中で剣を交えるとは…穏やかではありませんね」
「ベル、お前はいつもトラブルの渦中にいるな」
「あぁッ!?口出しすんじゃねぇ!とっとと失せろ、このッ…」
「吠えるな」
男が乱入者へと矛先を向けようとした瞬間、濃厚な死の予感が体にまとわりつく。剣を振ろうとした瞬間に体が八つ裂きにされる光景が脳裏によぎり、動きを止める
「ちっ…クソが…!」
分が悪いと感じ男は逃げるようにその場から走り去っていく
「ありがとうございます。助かりました、リューさん、イクス」
「いえ、差し出がましい真似を」
「あ、そうだ、あの子は…あれ、いない?」
「私たちが来たときはお前とあの男だけだったが…誰かいたのか?」
「うん。怖くて逃げちゃったのかな?…それでイクスはなんでリューさんと一緒に?」
「シルと買い出しの途中で遭遇しまして…」
「シルに買い出しを押し付けられ今に至る。ついでに押し付けた張本人はどこかへ行った」
「そ、そうなんだ…」
殺気を当てていたのは実は八つ当たりだったんじゃないかと思ったが怖くて聞くのを止めた。ふたりはそのまま豊穣の女主人へと向かっていった。先に結果だけを言うのならばイクスが帰ってきたのは夜遅く。そのままバイトとして徴収されたのであった
「お兄さん、お兄さん。白い髪のお兄さん。
一人先にダンジョンでイクスを待っているベルに声をかけてくる少女がいた。その少女はフードを深くかぶり身の丈に合わない大きなカバンを担いでいたが、その少女にベルには身に覚えがあった
「初めまして、お兄さん。突然ですが、サポーターを探していませんか?」
「あれ?君は確か…」
「混乱してるんですか?でも、今の状況は簡単ですよ。冒険者さんのおこぼれを預かりたい貧乏なサポーターが自分を売り込みに来ているんです」
「そ、そうじゃなくて。君、機能のパルゥムの女の子だよね?」
「パルゥム?リリは獣人…シアンスロープなんですが?」
そう言いながら少女は、フードを外し獣人の証拠とでもいえる耳をあらわにさせる。確認するために耳へと手を伸ばし触れてみる。本物なのかくすぐったいのか少女が声を漏らす。漏れた声に思わず手を引っ込め謝罪しする
「ご、ごめん、つい…人違いだったみたい」
「いいですよ。でも耳は敏感ですから気を付けてくださいね」
「本当に、ごめんっ!…それで、えっとリリルカさんは、どうして僕に声を?」
「はい、見たところお一人のようでしたし、冒険者さん自らバックパックを装備していらっしゃったので、おそらくは…と」
「あ~、なるほど」
「それでお兄さん、どうですか、サポーターはいりませんか?」
「ごめんだけどもう一人が来てから考えるでいいかな?多分大丈夫だと思うんだけど…」
「お仲間様がいらっしゃるのですね。大丈夫です。それでいつ頃来るのですか?」
「もうすぐだと思うんだけど」
そうあたりを見回しながら探すと、あくびを手で隠しながら身に覚えのある人物が歩いてきた
「もう、遅いよ!」
「すまなかった。…それでその少女は?」
「リリはサポーターです。サポーターはいかがですか?」
「ふむ…なぜ、ウチのパーティに?」
(面接が始まりました!?)
「その、リリは貧乏で、手持ちも心もとなく、それにそこの男性の方にあんなことされたので責任を取ってもらおうと…」
チラッ
ベルが何か慌ただしく言い訳を述べている気がした一切を切り捨てた
「なるほど…それなら受け入れるしかないな。今日1日の働きを見て継続するかを考える。それでいいな?」
「はい、ありがとうございます!」
いつもの探索と違いサポーターが一人増えての探索であったが、リリルカは近づき戦闘に巻き込まれることも離れてカバー範囲外から出ることもなく適切な距離を保ち、戦闘が終わったら落ちた魔石と素材を回収していった
「お二人とも強いですね~!」
「いやいや、リリがいてくれるから戦闘に専念できてたすかるよ」
「いえいえ、これだけのモンスターを、ぜーんぶ足してしまったお二方のほうが、ずーっとすごいです!まぁ、ベル様のと善さは武器によるところも、確かにあるのでしょうが」
「あ…、やっぱりそうだよね。僕もちょっとこのナイフに頼り過ぎかなって…」
「そこは追々だな。だがリリルカのサポートは褒められるべきものだ」
「そ、そんなに褒めても何も出ませんよ!」
道中の探索は普段よりもスムーズだった。サポーターの有無がここまで探索に影響するとはリリルカの優秀さを抜きにしても考慮すべきだった
「時にリリルカ、どこのファミリアに所属している?」
「ソーマファミリアです。」
「今更なんだけど…違うファミリアの手伝いをして大丈夫なの?」
「大丈夫です!ソーマ様はほかの神様たちのことは未来永劫無関心のなので。それでイクス様はなぜお聞きに?」
「スカウトできればと思ってな。まぁウチは零細ファミリアだから入りたいとは思わないだろうがな」
「…はは、誉め言葉だと思っておきます。お二方少し壁のところ魔石の回収を手伝ってもらっていいですか?リリじゃ届かないですから」
「ああ、うん。分かった」
その魔石を回収を最後として今日の探索を終了にした
ベルは今日のことの相談と報告のためにエイナのもとへ訪れていた
「うーん、ソーマファミリアのサポーターかぁ…」
「何かあるんですか?」
「彼らは探索が中心のファミリアで、少しだけお酒も売ってるの。そこまでは普通なんだけど…みんな、どこか必死なんだよね。死に物狂いというか」
「それより、ベル君から見てどうなの?そのリリルカさんっていう子は?」
「はい、とってもいい子でした。イクスにいたっては褒めてましたよ」
「そっか、なら大丈夫かな。あとは君たち次第だね。」
「ありがとうございます。それじゃあ…」
「?ベル君?ナイフはどうしたの?」
ベルが帰ろうと後ろを振り向いたときその腰にある鞘にナイフがしまわれていないことに気が付きその所在を聞いてみれば、いま気が付きましたと言わんばかりの顔をした後、事態に気が付いたのか顔が真っ青になる
「あ、あれ、あれ!?あれ!?お、落としたぁぁあああああ!?」
「30ヴァリスだな」
「えっ!?」
ナイフの売却金額にリリは驚愕した。モンスターを多数屠ったその切れ味に鞘に刻まれたヘファイストスファミリアのロゴ、その要素があればかなりの金額になると踏んだが実際は他者が持ってもガラクタ同然でしかなかった
(冗談じゃない!あれだけのモンスターを倒して刃こぼれしないない業物が、たったの30ヴァリスだなんて!)
(もう一人が持っていた剣のほうを盗んだ方がよかったでしょうか…いや、リリが盗むにしては大きすぎますし、あの人はリリに心を開いてない。まぁ、すぐに心を開いた白髪の冒険者様のほうがおかしいのですが)
(そうだ、鞘があれば…ヘファイストスファミリアのロゴがあれば高値で引き取ってくれるでしょう…)
「待ちなさい、そこのパルゥム。袖に仕舞ったナイフ、それを見せてほしい」
今回の結果に腹を立てながらも冷静に次の算段を考えていると声をかけてくるエルフが一人。もう片方の銀髪のほうは知らないがエルフのほうは昨日、冒険者を殺気だけで撤退させた人物だ。
「あ、生憎ですが、これは私のものです。あなたの勘違いでしょう…」
頬に伝わる汗とわずかに震える声がばれないことを祈りながら、その場を離れるために嘘をつく
「抜かせ。ヒエログリフが刻まれた武器の持ち主など──私は一人しか知らない」
だがそのナイフの特徴はオラリオにおいても珍しく誤魔化すことは不可能だった
即座に路地裏から人ごみに紛れよう表通りに走り出す。万が一を考えて相手が自分を見えなくなった瞬間に細工を施す
「「わっ!」」
「いってててて…ん?リ、リリ!?」
「ふ、ふあ…ベル様っ?」
表通りに出た瞬間、人とぶつかる。それは今日一緒に組みナイフを盗んだあの白髪の冒険者だった。そのすぐ後をエルフと少し遅れてヒューマンの少女が追いかけてくる。だが…
「ん?シアンスロープ?」
ナイフはわざと落とし拾ってる隙に魔法を発動し、証拠はすべて隠した
「あ、ベルさん」
「リューさん、シルさんも。あ、そうだ二人とも!上から下まで真っ黒なナイフを見かけませんでしたか!?」
「これですか?」
「僕の…ナイフ…ありがとうッ!本っ当にっ、ありがとうございますっ!」
ナイフを見つけるや否やリューの手ごとナイフを握り喜ぶ
「あぁ、良かった…神様ごめんなさい。もう二度と落としたりしません」
「見つけたようだな。人騒がせな奴め」
先ほどの声を聴き一緒に探していたイクスが駆けつける
「はは、ごめん。リューさん、これ、どこにありましたか?」
「あった、というより…一人のパルゥムが所持していました」
それを聞いたイクスはベルに説教を開始する。その陰で一人の少女が忠告していたがそれは本人たちにしかわからなかった
「では、私たちはこれで」
「あ、イクスさんはウチを手伝ってくれてもいいんですよ。そうすると私が楽になりますから」
「二度とやらん」
一体何をやらされたんだろうと思ったがイクスは昨日のことを思い出したのか不機嫌になっていたので質問せずに彼女たちを見送ったのであった
「けど、丁度良かった。実はリリのことも探さなきゃと思ってて。えっと、リリ。明日も僕たちとダンジョンに潜ってくれるかな?」
「その前に私からも言わねばならんことがある。」
「え、イクス様どうしたのですか?」
「今日の探索、妙なことを感じなかったか?」
「いえ、特には…強いて言うならモンスターが若干、多かったぐらいでしょうか?」
「そのことについてだ。私はモンスターに襲われやすい体質でな、そのことを明かさず探索に連れてしまい、すまなかった」
「えっ!?」
「なぜベル様が驚かれてるんですか!?」
そう言えばイクスと潜るようにしてからモンスターが多かった気もするがそこまで気にしていなかった。だが、理由があることをそれを今さっき聞き驚いたのだった
「もし、問題ないのであれば明日、今日と同じ場所にいるから来い」
「私は…」
「ベル様、イクス様。改めて、正式に雇っていただきありがとうございます」
「うん、こちらこそよろしくね」
「しかし本当に良いのか?」
「ええ、お二方の実力なら問題なく、逆に稼ぎやすいと判断しましたから」
前回の件で警戒されたかもしれないが、それでもヘファイストスファミリアのロゴのついてる武器が盗れればリターンが大きい。そう考えリリルカは雇用関係を継続することを選んだ
「ところでベル様?あのナイフが見当たらないようですが…」
「うん、今度は落とさないように、グリーンサポーターに収納したんだ」
「そうですか…」
やはりナイフはサポーターに収納され簡単に盗むことも難しくなった。だが、これくらいで済んだのはマシな方だとリリルカはナイフを虎視眈々と狙う
「それより、本当に契約金とかは良いの?」
「ええ、その方が配分もややこしいことになりませんし。それに…その方がお二方には都合がよろしいでしょう?」
最後の言葉は小さく二人には聞こえなかった
「あのさ、リリ。その『ベル様』っていうのは流石に…」
探索の途中、リリから自身の呼び方についてベルは苦言を呈す。
「そういうわけにもいかないんです。リリ達が冒険者様と同格であろうとすることは傲慢です。ベル様がお優しいことは、会ったばかりのリリにもわかっています。けれど、けじめはつけなければいけません」
それに対してリリルカは雇用関係やサポーターとして活動するうえでの考えを話し始める
「もしリリが生意気なサポーターだという風評が流れてしまったら、ベル様以外の冒険者様にまったく相手にされなくなってしまします。どうかリリを助けると思って、受け入れてくれませんか?」
「うーん…イクスはどうなの?」
「現状の雇用関係であるのならば妥当ではあるな。──上層までならばな」
「「?」」
「上層の内ならば比較的危険はないが中層からは危険が跳ね上がる。いちいちそんな下らんことを考えているのならば命はないだろうな」
「はは、じゃあリリには関係なさそうですね。リリは上層だけでしょうし」
その後は特にイレギュラーもなくバックパックに詰めれるだけ詰めて帰還した。
「「39000ヴァリス!?」」
「ゆ、夢じゃないよね!?こんなにお金が入るなんてっ!?」
「お二方でレベル1の五人組パーティを遥かに上回る額を稼いでしまいました~!しかもバックパックがいっぱいになったから帰還しましたが、全然余裕ありましたしもっと稼げるかもですね!」
「二人とも落ち着け…しかし、これは圧巻だな」
「それでは分け前のほうを…」
「はい」
「え?15600ヴァリス?」
「これなら神様に美味しい物をいっぱい食べさせてあげられるかも…!」
「なんで山分けなんて…いえ、リリのほうが取り分が多くないですか!?」
「それは私の提案だ。三人で山分けだと計算がめんどくさいので我々が6、リリルカが4の配分にした」
「それだとお二方一人分だとリリより少ないですよね!?いったいなぜ…」
「僕たちだけじゃこんなに稼げなかったよ。リリがいてくれたからでしょ?全部リリのおかげだよ、ありがとう。これからもよろしくね!」
「明日もよろしく頼む」
(…変なの)
金額の相談もさせずに感謝の言葉をかける。それがやさぐれた心に罪悪感を芽生えさせる。
「きょ、今日も乗り切った…ローン返済のためとはいえ、神のボクを遠慮なく顎でこきつかいおって…それにイクス君用の盾の件もあるし大忙しだよ」
自分から頼んだこととはいえ忙しい日々に疲れ切ったヘスティア。これでもヘファイストスは倒れないように気を付けているのだが…普段ぐーたらなヘスティアには苦行に近かった
「ベル君の気配!」
疲れで頭がおかしくなったのか自身の眷属の気配を察知する女神。これが気のせいならばよかったのだが、偶然かそれとも神ゆえか実際にベルを発見した
──パルゥムの少女と手をつないでるところを
一様、近くにイクスもいるのだが、いまのヘスティアにそれを判断する知能はない
「ベル君の、浮気者ーーー!」
ヘスティアの魂の叫びがオラリオに響き渡るのであった