夢見るロボット[4]
夢見る頃を過ぎても
関連
夢見るロボット[1]
夢見るロボット[2]
夢見るロボット[3]
「睡眠」であるとか「夢」であるとか、そういったものはAIが外界に対応した内部モデルを構築する初期に極めて重要である。
ある程度、内部モデルが組みあがった状態では、「新しい」体験に遭遇する確率が低くなるためロボットが眠る必要は少なくなる。
ただ、劇的な環境変化を伴う場合には、内部モデルの大幅な変更が必須のため、また睡眠時間は増えるし、夢も見る。
劇的な環境変化とは、まあ、簡単に言えば引越しである。海外に「引越し」た場合などはおそらくかなり下位の層まで内部モデルの変更が必要となるだろう。
くどくど書いたが、なんのことはない。人間と同じである。
ロボット(AI)はどこまで成長したところで出荷すべきか?
ロボットにとっての最初の劇的な環境変化はユーザーのもとに届けられた時である。
これは、どんなロボットでもほぼ同じで、いままで工場育ちだったロボットの文字通りの「デビュー」であるわけだ。
ところで、この時のロボット(AI)の状態は、どういう風であるのが望ましいだろうか?
スイッチを入れたとたんに、「こんにちは、今度こちらにご厄介になるものです。まずは私の名前を決めていただけますか?」などとお辞儀しながら流暢に話すロボットがお好みだろうか? それとも、自分のいる場所がどこかもわからず、うろたえてふるえているロボットのほうが良いだろうか?
好みの問題は抜きにして考えると、まったく無垢の自律型ロボットを育て上げるのは素人サンにはまず無理だろうと思われる。
空の状態でプリミティブセットを持たないAIを育てるのは、骨が折れるし、なにより飽きる。やたら眠りこけて夢ばかり見るくせに、人間の赤ん坊ほどかわいくもないので、育て上げるのは、FMみたいな特別の思い入れのある人間でもないかぎり、まず無理だろう。
そうなると、少しは成長させてからということになるのだが......
三つ子の魂百まで
工場出荷時のプリミティブセットをどうするか、という問題は非常に悩ましい。
量産品であるわけだから、物理的には、どこかで調整したセットをコピーして入れるだけで良いのだが、正直、マルチパーパスのプリミティブセットを(どんな方法であれ)セットアップすることが可能かどうかというのは、現時点では推定のしようもない。
環境モデリング能力を持つ自律型AIを搭載したロボットの場合、最初の環境が非常に重要である。本当はパッケージをほどいた瞬間が最初の環境であるのが望ましいのだが、おそらく、そこまで低レベル状態のロボットを扱える人間(家族?)は限られていると思われる。したがって、ある程度、成長済みのロボットしか販売することはできないだろう。
そんなわけで、普通のユーザーはロボットの初期体験を共有できないことになる。家庭用ロボットの場合に、このことが重大な問題になるかどうかというのは現時点ではわからない。まあ、そういったことが実際に問題になるころには、なんらかの対策は採られているとは思うのだけどね。
FMの場合には一から組み上げるので、別にここらへんは問題にはならない。その代わり、(たぶん)寝てばかりいるわけだけど。