おいおい、冗談じゃないぞ?
シエルさんや、さっき言ったじゃないか。
敵意がなくてもちゃんと報告してくれって
《申し訳ありません。私も声を掛けられるまで感知出来ませんでした。》
はぁ!?
シエルでも感知出来ないってやばくないか!?
《恐らく先程話しに上がってた神ではないかと推測します。》
この世界での超越した存在ならば分からなくても仕方がないか…?
「えっと、ファミリアですか?」
俺がそう問うと彼女は笑顔で答える。
「そうさ!見たところ君はまだどこのファミリアにも属してないんだろ?どうかな?」
グイッと体を近づけて来る。
「えっと、ちょっと待ってください。いきなり過ぎません?それと落ち着いてください」
俺は近付いてきた彼女を落ち着かせて少し距離をとる。
彼女も少し頬を赤らめながら慌てて体勢を立て直しコホンとひとつ咳払いをした
「すまない、夢中になりすぎて周りが見えてなかったよ。それはそうとしてどうだろう?」
「いや、さっきも言いましたけど、いきなり過ぎて、お互いまだ何も知りませんよ?」
「確かにそうだね。よし、少し落ち着ける場所で改めて自己紹介といこうか!」
彼女はそう言うと俺の手を引きとある建物の2階に向かった。
「狭いところでごめんね?今友神に間借りさせて貰ってる場所なんだ。」
彼女は少し申し訳なさそうに言う。
「あ、いえ、それは気にしません。」
「では、改めて。ボクはヘスティアよろしくね」
ヘスティア…ギリシャ神話の神様だったよな?
どうして俺の知ってる神が居るんだ?
「えっと、俺は…私はリムル・テンペストです」
目の前の人が自称なのかどうかは分からないが神と名乗る以上それ相応の態度が必要かと思い一人称を変更してみた。
ただ、自称だったとしても万能感知に引っかからない存在が普通なはずがない。
自称なのかどうかなどどうでもいい。
まずはちゃんと情報を得なければ。
「リムルくんだね?どうだろう?ボクの眷属になってくれないかい?」
この純粋そうな笑顔に裏表があるとは思えない。
もし本当のことを話して大変な事になったとしても帰ればいいだけの話。
この自称神を信じてみるのもありか…
「えっと…ヘスティア様?」
「うん、何かな?」
「なんで俺なんですか?」
「うーん、なんて言うのかな?君を見た時なんかこうびびっと来た…みたいな?」
「いや、なんで疑問形なんですか」
「あはは…まぁこれでも一応神だからね!人を見る目は自信があるのさ!」
ふんすと腕を組みふんぞり返る。
もしこの提案を蹴ったとして正直今の俺を入れてくれるところなんてないだろう。
それが大きなところなら尚更だ。
見たところ眷属とやらは居ないみたいだし。
「ヘスティア様のお誘いを受けてもいいけど」
「けど…なんだい?」
俺は人型から変わってスライムへと元に戻った。
「なっ!モンスター!?」
ヘスティアは驚きのあまり座っていたところから転げ落ちる。
「ま、こういう訳なんだよ」
「えっと…リムルくんなんだよね…?」
「そうだよ、こっちが本当の姿でさっきのは人型。俺は喰ったものの姿になれるんだよ」
「喰ったって…人を食べたのかい!?」
「とりあえず、落ち着いてくれ。ちゃんと話すよ。俺の話を聞いてそれでも眷属にしたいと思ってくれるならその時はぜひお願いしたい。」
俺がそう言うとヘスティアはヨロヨロと立ち上がり先程座っていた場所に戻った。
「わかった、聞かせておくれ」
俺は今までの経緯をヘスティアに話した。
自分が元人間で死んだことでスライムに生まれ変わったことや魔王になったことなどなど沢山話した。
説明途中彼女の顔は百面相かってくらいコロコロ変わって面白かった。
ただ、ヘスティアはとてもいい人だ。
俺の話を冗談と一蹴せず真剣に聞いてくれた。
ただヘスティアが1番驚いていたのはこの世界へやってきたことだった。
「そ、そんな事が起こり得るのか…誰かが力を行使したのか…?いや、でもそんな事したら強制送還されちゃうし…というかそもそもそんなこと出来る奴をボクは知らないし…というかこことは別の世界があるなんて知らないし…」
なにやら1人でブツブツ言っているが考えがまとまるまでは俺は横槍を入れないことにした。
「それにしてもその話が本当ならリムルくんはボクらと同格…いや、それ以上の存在…」
ヘスティアは最初腕を組みながらうんうん唸っているだけだったが気がついたらあぐらもかいて猫背になっている。
身長が大きくないからより小さく見える。
ちょっとかわいい。
「よし、リムルくんの事情はわかった」
そう言うと俺を見据えるヘスティア。
「正直聞いた今でも信じられないが、君の姿が物語っているし、信じようと思うが、ボクの手に余る問題でもある」
「まぁですよね…」
「リムルくん、一応確認なんだけど、この世界を滅ぼしたりとかする気は無いよね?」
ヘスティアの確認は最もだと思う。
突然得体の知れない奴がやって来たら侵略だなんだと言われても文句は言えない。
「もちろん、そんなことする必要も無いしする気もないよ」
「その言葉が聞けて安心したよ。ところでダンジョンに転移したって言ってたけど何階層に転移したかわかるかい?」
「あー、どうだったかな?」
《60階層に転移したと思われます。そしてロキファミリアに出会ったのが50階層です。》
「多分、60階層かな?50階層でロキファミリア?の団体に会ったよ」
「60階層…!?というかロキファミリアに会っただって!?」
ものすごい驚きようだ。
どっちに驚いてるんだろう?
「えっと、何をそんなに驚いておられるので?」
「どっちもだよ!」
「60階層の事そんなに驚くことか?別に強い魔物出なかったぞ?」
皆一撃で消えてったし。
《いまの主様を苦戦させるものが居たならばこの世界はもう消滅しているかと…》
確かにそれもそうか
「リムルくんはやっぱり規格外って事だね。強さに関してはもう気にしないことにした。驚いてたらキリがなさそうだし…」
なんか色んな人に呆れられるというか諦められてるというか別にそんなやらかしはしてない…ことも無いのか…
「あはは…よく言われるよ……」
「それよりもロキファミリアと接触してたとはね」
「何かヤバいのか?」
「いや、単純にボクがロキのことを好きじゃないだけさ。ロキの眷属たちもリムルくんの事は詳しく知らないだろうし暫くは問題ないだろう」
「それよりも、君のことをボクの眷属にしてもいいのか疑問に思ってきたよ。」
「それなんだけどさ、俺はいつかは元いた場所に帰るからずっとは居られない。だから、期間限定的な感じになるんだが、それでもいいか?」
「ボク的には全然いいんだけど、そこじゃなくてリムルくんをボクの眷属にしてもいいのかという所なんだけど」
「ん?ダメなのか?」
「いや、君は一国の主で魔王なんだろ?話を聞く限りじゃ、能力もとんでもないと思うし。言ってしまえばボクらと同格かそれよりも上かもしれない。そんな人を一眷属として迎えていいものかと悩んでるんだよ」
「あ、なんだそんなこと?全く問題ないよ」
「かるっ!本当にいいのかい?」
「全くもって問題ないな。というよりヘスティア様を面倒事に巻き込んですまないと思っているくらいだよ」
「ふふふ、ボクだって全然問題ないぜ!初めての眷属になってくれる子が特殊なのは違いないけど、ボクの誘いに乗ってくれたのはすごく嬉しかったんだ!」
屈託のない笑顔でそう言われ少しむず痒い気分になる。
「なら、これからよろしくヘスティア様」
「よろしくねリムルくん!」
そう言うとヘスティアは立ち上がり俺もスライム姿から人型になる。
そしてお互い手を出し握手をする。
「あ、リムルくん。ボクの事はヘスティアと呼び捨てで構わないよ!」
「え、いいのか?」
「うん、形式上ボクの眷属だけど君はボクと同格かそれ以上の存在だからね。友達みたいな感じで気軽に接してくれよ!」
「わかった、ならそうさせてもらうよ。改めてよろしくヘスティア」
「こちらこそよろしくリムルくん」
《主様が誰かの下につくのはあまり好ましくないですが、ヘスティアなら問題ないでしょう》
シエルからも許し?が出た。
「なら、早速リムルくんにステイタスを刻みたいんだけど…刻めるのかな…?」
「刻む?え、彫るの?」
「違う違う。眷属になった子には
「へー、そんなのがあるのか」
「ステイタスを刻まないと強くならないっていうのがこの世界の常識なんだ。刻むだけで一般人より強くなるし」
「まじか!便利なんだな。でも、何が問題なんだ?」
「いや、今まで人以外にステイタスを与えた例がないから…上手くいくのか分からないんだよ。」
「なるほど。まぁでも刻めなくても問題なく力は使えたから問題ないと思うぞ。だから、実験的な感じで物は試しでやってみようぜ!」
「わかったやってみよう。なら、上の服だけ脱いでくれ。背中にステイタスを刻むから」
俺はそう言われ大人しく服を脱ぎヘスティアに背中を向ける。
「じゃあ、始めるよ」
ヘスティアは自身の指を軽く切り血を1滴垂らす。
すると俺の背中は光り始める。
それと同時にシエルが待ってましたと言わんばかりに、血を吸収し解析を始めた。
血を吸収したことにより光は収束した。
「あれ?何も浮かび上がらない…?やっぱり刻めないのかな…」
ヘスティアは少し落ち込む。
《解析が完了しました。やはり思った通りこのまま刻まれれば主様の能力が丸わかりになっていました。》
まじかよ!危な!!
《もう一度同じことをして頂ければ問題なくステイタスは刻まれますが、改変出来るようになりましたので主様の能力がバレることはありません。それに本来名付けをする事により確立できる魂の回廊ですが、ヘスティアの血を取り込んだことにより繋ぐことがいつでも出来る状態になりました。》
え?
魂の回廊が繋げれるようになっちゃったの?
えぇ…うそぉ…
さすがシエルさん…。
別世界の神にすら干渉出来るとは…流石としか言えないな。
とりあえずはステイタスを刻んでもらわないとな
「あー、ヘスティア?」
「なんだい?」
刻めなかったのがそんなにショックなのか。
「いや、もう一度やってみてもらっていいかな?」
「え、でも…」
「大丈夫!今度は成功するよ」
ヘスティアは訳が分からないと言った感じだが、大人しく俺の言った通りにもう一度行ってくれた。
「こ、これは…!」
その言葉を最後にヘスティアは絶句。
そして、俺の背中にはヘスティアによってステイタスが刻まれたのだった。
リムル・テンペスト
Lv.ー
《基本アビリティ》
力:測定不可
耐久:測定不可
器用:測定不可
敏捷:測定不可
魔力:測定不可
《発展アビリティ》
《魔法》
閲覧不可
《スキル》
閲覧不可
あー、うん。
何にも見れないようになってるね
というか測定不可って
《主様はこの世界の強さ基準を超越しているため弄ることなくエラーが起きました。それ以外の魔法やスキルに関しては少し弄りました。》
だから閲覧不可になってるわけね
「えっと、ヘスティア?とりあえず問題なく刻めたね?」
俺が声をかけるとようやく再起動した。
「なんじゃこりゃ!なんで、ボクが見れないようになってるの!?」
「あー、ごめん。ちょっと見られたくなくて干渉して弄らせてもらった」
「そ、そんなこと出来るの…?いや、出来てるんだよね実際。なんで干渉出来るの…?おかしくない??」
ヘスティアは頭を抱える。
そんなヘスティアを見かねて俺は服を着てヘスティアの方をぽんと叩く。
「あんまり、気にするな!」
俺はいい笑顔でヘスティアに行った。
するとヘスティアは対照的に引き笑いを浮かべながら言った。
「改めてリムルくんの規格外さを思い知ったよ…」
「あはは…」
疲れきった顔のヘスティアに笑うしかなかった。