「はっ..はっ...はっ..!」
走り曲がり飛び越えながらカイルスは走り続ける。
後方からはブラッドサウルスが障害物などお構いなしに迫りくる。
(馬鹿か俺は!?ゲルマンさんが食われそうだったからって俺に何ができるってんだよ!!)
そんな後悔をしながらも足を止めることなく走るカイルスだったが徐々にその差は縮められていく。
(ステータスはもちろんだが何より体格が違い過ぎる!!無理だって!!)
そんなカイルスの分析は正しくもうブラッドサウルスの荒い息遣いが真後ろから聞こえてくる。そして背筋に凄まじい悪寒が走り咄嗟に横に飛びのくと、先ほどまで自分のいた位置にブラッドサウルスの顎が喰らいついていた。
直前に迫った死を感じ更に恐怖を覚えたが再びブラッドサウルスに背を向け走り出す。
(考えろ...考えろ...このまま逃げてても埒が明かない。けど普通に戦って勝てる相手でもない...秘密兵器も通じるかどうかは全く分からないし...)
思考と足の両方をフル回転させるカイルス。
(映画でデカいやつを倒すセオリーは崖から突き落としだけど、残念ながら近くにそんな高所は無いからな...なら方法は一つしかない...!)
思考をまとめたカイルスはそれまでがむしゃらに逃げていたが明確な意思をもって走り出す。
♦♦♦
逃げ続けたカイルスはとある建物の前で足を止める。そこは老朽化が激しく取り壊し予定のそこそこの大きさの館だった。
荒くなる息を整えながら此方に迫りくるブラッドサウルスに向き合う。
その真っ赤な双眸と向き合い全身に鳥肌が立ち足がガクガクと震えるが、それでもブラッドサウルスと向き合い機を伺う。
ブラッドサウルスが走りながら顎を開き、血に濡れた牙が此方を切り裂かんと真っすぐ迫ってくる。
50M
まだだ...
30M
まだだ...!
10M
まだだ...!!
そしておおよそ3Mに来た瞬間
いま!!!
カイルスは再び真横に大きく飛びのきブラッドサウルスは勢いを殺しきれず思いっきり館に突っ込む。轟音を立てながら館は突然の大きな来訪者に耐えきれず、凄まじい音を立ててブラッドサウルスを柱や天井が埋め立てていく。
「ギャオォォォォォォ!!!」
悲鳴のような雄たけびにような方向を上げながらブラッドサウルスの姿が消えていく。
カイルスは跳ねる心臓を抑えるように胸を掴みながら館が完全に崩れ去るまで動けなかった。そしてカラカラとかすかな音を最後に辺りが静寂に包まれる。
カイルスは恐る恐る崩れた館に近づく。
かつて館だった物からは気配も物音も感じない。
「や、やった...!俺が...俺がこの化け物を...!」
そう喜んだ瞬間瓦礫の山から漆黒の尾が飛び出しカイルスを捉える。
幸運だったのは盾が館のほうを向いていたこと。
幸運だったのは尾の先端がギリギリ届く位置であったこと。
その幸運がカイルスを生かしたのだ。
盾に直撃した尾はそのままカイルスの身体をギリギリで捉えカイルスの身体が後方に吹き飛ばされる。
「がっ...!?」
受け身も取れず思い切り背中から地面に叩きつけられ肺の中の空気が全て吐き出される。そして空気を再び取り込んだ瞬間腕と上半身に耐えがたいほどの苦痛が襲い掛かる。
「ぎっ...あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
自然とカイルスの腹から苦痛を伴う悲鳴が上がる。
(痛い!!痛い痛い痛い痛い痛い!!!死ぬ!!死ぬって!!!)
思考の全てを前世含めて一番の痛みが支配する、涙が溢れ地面をのたうち回ってしまう。
そんな中でも涙で滲む視界に瓦礫の山を押しのけながらブラッドサウルスが再び姿を現す。その姿は多少の傷を負ってはいるが深手とは程遠い姿だった。
そしてブラッドサウルスの双眸が此方を捉える。その視線には先ほどまでの獲物を見るような視線から怒りの視線へと変わっていた。
(おわった...しぬんだ...くわれるんだ...)
痛みに朦朧とする頭が絶望と諦観に支配される。
(そう...しぬ、しぬしぬしぬしぬしぬ。もういちどなににもなれないで...)
そう薄れる意識と共に眠りにつこうとしたとき。
『
声が聞こえた
男なのか女なのか大人なのか子供なのかわからない、そんな声が聞こえた。
『全てを諦め地に這いつくばり、甘んじて残酷な運命を受け入れる...それが望んてた二回目の人生か?』
そんな問いかけに■■の頭がだんだんとハッキリしてくる。
(...ふざけんな)
身体に心に魂に灼熱の感情が沸き上がっていく。
「ふざけんなぁ!!!俺はまだ何もやってねぇ!何も救えてねぇ...
稲妻のように呼び起こされた意識と共にカイルスはまだ無事な拳を地面に叩きつけふらふらとしながらも立ち上がる。
ブラッドサウルスも瓦礫から完全に抜け出しカイルスの前に立ち塞がる。
「俺は死なねぇ、本物の
ひしゃげ砕けた盾を引きはがし投げ捨てる。
「かかって来いよ暗黒ティラノサウルス!てめぇが誰に喧嘩売ったのか思い知らせてやるよ!!」
爆発するような怒りと共に、今無謀にも