「俺が思うにさぁ、【ソーマ・ファミリア】って、酒を全て焼き払えば喧嘩売れると思うんだよな」
あと、ディース姉妹は話し疲れたのかぐっすり寝てる。お前ら第一級だよな?
「まぁ、デメリットの方が大きいからやれないんだけど。裏工作は苦手なんだ」
「うーん……だったら真正面から仕掛けるって感じにする?」
「規模が規模です。難しいでしょうね。それに……
「望むところではあるんだけど、違うんだよな、それじゃあ」
「……やはり大会を開くしかあるまい……」
「それは最終手段ね、ヴィジル」
どうせやることになるんだから、最終手段もクソも無いと言ったらダメだろうか? ……ダメだろうなぁ……最終手段と書いてフィナーレを飾ると読むからなぁ……やっぱり戦いの締めはそれしかない。気に入らないやつを去勢した時の絶叫は祝福になる。黒い神様? まぁ、エリクシールで治されたみたいだし大丈夫じゃないですかね。ショック死していないのは流石神様といったところか? 次会ったらまたハレルヤしてもらおう。
「喧嘩を売られた。俺は買った。副団長が買ったんだ。向こうも買わざるを得ないだろ」
「うーん、どうだろう? 確かに副団長がやらかした、となれば向こうも色々考えるだろうけど……」
「知らぬ存ぜぬで通す可能性が高いですね。ザニス様は腐っても【ソーマ・ファミリア】の団長。リスク管理は────でも、零細ファミリアに喧嘩を売られた場合は、もしかすると……」
油断してこちらの喧嘩を買ってくれる可能性が高いかもしれない。かもしれない、だから確実ではないので低い確率をどうやって高めていくかだ。
「一番いいのはガサ入れだよなぁ……俺達は治安維持系のファミリアじゃないからあれだけど」
「黒に近いグレーでは入れませんからね。告発するとしても時間がかかります」
「ギルドも動くに動けないってソフィさん達ボヤいてたな、そういえば」
黒い噂が絶えない【ソーマ・ファミリア】。しかし、噂は噂。噂がある程度ではガサ入れをすることができない。人の口に戸は立てられぬ、とはよく言ったものだが、尾鰭がついてよく分からない話が生まれたりしているし、正確さに欠ける情報で痛い目を見たことがあるギルドは、結構そういった行動を避けている節がある。何だっけ……【イシュタル・ファミリア】だかそこら辺の人達について色々あったんだそう。
「作戦会議、一旦終了してちょっと情報集めに行くか」
「そうだね」
「分かりました。……とは言っても、情報収集はどちらに?」
「まぁ、リーテイルに行ってみればいいだろ」
目指すは北西メインストリート、通称『冒険者通り』にある道具屋『リーテイル』。あそこはちょっと高いが、質の良い食材が売っていたりするので、たまに利用させてもらっているのだ。あそこに商品を卸しているファミリアや、行商人の人達も中々いい人達ばっかりだし、話をしてみると結構見識が広がるのだ。もちろん市場の人達と話してもそうなんだけど。
留守番はあの二人が居るから大丈夫だろう。そう結論付けていざ、リーテールへ。あそこなら多分、色々情報も集まるだろう。
「そういえばベル、リリルカ。装備の調子はどうよ?」
「うん、凄いよ。ヴェルフ・クロッゾさんの防具。凄く馴染む」
「名前がネックですけどね」
最近、安く防具を買える場所を見つけたとリリルカが話をしていたので、そこに行ったのだが、ベルとリリルカはとある防具と運命の出会いを果たした。ベルは白い鎧『
「ヴェルフ・クロッゾ……魔剣を打てるのでしょうか?」
「クロッゾねぇ……たまに間違えられるんだけど、何なんだあれ」
「クロッゾとは魔剣を打てる貴族の名前です。精霊の怒りを買って没落したと聞きますが……」
魔剣。魔力を使わずに魔法を放つことができる使い捨ての武器。アルフィアさんとザルドさん曰く、並大抵の魔剣は恐るるに足らず、だそう。並大抵の、ということはランクがあるのだろうか?
それはそれとして、クロッゾの魔剣は違う。精霊の力を宿したその魔剣は海を割り、山を消し去る力を持つそうだ。現状持っていても持て余してしまうこと間違いなしの武器だな。そもそも魔剣って高いし、そのくせ使い捨てとなると使いどころが限られてしまう武器……ちょっとどうなんだろうって思ってしまうところがある。
「ま、そのうち挨拶しに行こうぜ。俺、ブーツ欲しいんだよ。ハイキックとかで結構酷使するからさ」
「僕ももうちょっと他の武器とかも欲しいなぁ……手数だけじゃどうにもならないモンスターとかもいたら怖いし」
「リリはククリナイフなんかが欲しいですねぇ。牽制できますし」
花より団子、という言葉があるように、俺達はお酒のような花よりも実用的な装備という団子を選びたい。
「お、着いたな」
三人で【ヘスティア・ファミリア】のホームから歩いて大体十数分。北西メインストリート『冒険者通り』にある二階建てのお店へと到着した。ごつごつとした加工石を使って建築されている見るだけで少しワクワクしてくるお店、『リーテイル』だ。
「お、ポーション。ミアハ様のところのじゃん。ナァーザさん、こんなところにも売り込んでるのか」
「質が良くて飲みやすいですからね。買う人は買うでしょう」
「最近は
苦労したよなあ、あのポーション作りも。俺達だけで限定すると、魔法を使うのがリリルカだけだからちょっと今は需要が薄いが、魔法使いの冒険者としては間違いなく喉から手が出るほど欲しいアイテムというやつだろう。
「お、見ろよベル、リリルカ。楽器修理承りますだってさ」
「わっ、本当だ……高いけど、教会のオルガン、修理したいよね」
「ヴィジル様はピアノ、弾けるんでしたっけ」
「ん? ああ。昔、村に壊れかけのピアノがあってさ……」
植物に囲まれた、誰も来ないような場所に置いてあったピアノ。壊れかけていたものをどうにかこうにか素人なりに修理して、手慰みに弾いたりしたものだ。楽譜は無かったから、村に訪れた吟遊詩人が歌っていたものを思い出しながら。ベルが俺と一緒にピアノのところまで来て、演奏したり、歌ったりしていたっけか。そのうち、村に運び込もうということになって、四苦八苦しながら運び込んで────ディアーナお祖母ちゃんとお姉様達や、村の人達の前で演奏したり……懐かしいな。
オラリオに来てからは一切触れていなかったが、また弾いてみたいなと思う心が少しだけ存在している。
「お、見たことないポーション……何だありゃ」
「多分爆弾ですね。【
「バンバドロ……?」
「バンバドロは村にいた農耕馬の名前だよヴィジル。しかもバンバドロは五世だよ」
硝子よりも強度の高いクリスタルケースを見回しながら、食品が売っているコーナーへと向かう。店の隅にあるそこに行くと────
「た、高い……!?」
「これは、予想以上ですね……ここまで高いとは……」
見覚えのある顔が二つあった。
ブラウンカラーの髪をセミロングくらいで整えているハーフエルフの女性と、薄い紫色の髪を長く伸ばしたエルフの女性。そのどちらもギルドの制服ではない、シックで大人っぽいがそれでいて女性的な可愛らしさも感じさせる服装に身を包んでいたが、あの二人は間違いなく────
「「エイナさん?」」
「ソフィさん、何やってるんですか?」
「「っ!?」」
バッ、とこちらを見た二人の女性。うん、やっぱりエイナさんとソフィさんだった。
「ベ、ベル君とリリちゃんに────」
「ヴィジルさんでしたか。こんなところで会うとは」
うちの担当二人組がこんなところで何をしていらっしゃるのだろうか。しかもここ、お酒のコーナーだし────って、エルフでもお酒は飲むか。俺の発作の種であるあの二人も、お酒は嗜む程度に飲むって言ってたしな。
「三人はどうしてここに?」
「情報収集ですね。その……僕達、まぁ、その……」
「そのうち【ソーマ・ファミリア】に、リリルカ引き抜くために喧嘩売るんッペェ!?」
スパンッ、とソフィさんに打たれた。何で?
「打ったね……! 両親死んでるから打たれたことないのに!」
「唐突なブラックジョーク挟むの止めなよ!?」
落ち着けよベル。こんなの軽いジャブだろ?
「皆俺のお父さんとお母さんが嫌いだったから見捨てたんだ! とか言ってないんだ。軽いジャブだろ」
「止めようね!? アルテミス様達が聞いたら動かない屍になっちゃうから! やらかしてるよね!?」
「謝ったからノーカウントだろ」
「絶対ノーカウントじゃないですよね!? 前に吐血してましたよね、あの人達!?」
ジョークだジョーク。あの頃の俺は若く、幼過ぎたんだ……
「まぁ、とにかくそういうことっす。で、喧嘩売るための口実が欲しいんで情報収集ってわけですね」
「は、はあ……何だか、すみませんでした」
「謝らないでくださいよ。俺のブラックジョークが悪いんですから」
調子が狂うので止めてほしい。んー……この空気、どうやって切り替えようか。────あ、酒があった。
「ところでお二人は何を見てたんです? お酒のコーナーなのでお酒を見てたのは確実ですけど」
「え!? えーと……【ソーマ・ファミリア】のお酒を知り合いに勧められたんだけど……」
「あまりにも高額で驚いていたところです」
「リリルカ、そんなに高いのか?」
「ううん……出回っているソーマは確かに高いですね。六万ヴァリスします」
「「高い!!」」
お酒の需要が高いのは分かっているが、それにしたって高くないか?
「まぁ、本物はもっと恐ろしいですが」
「本物? ソーマって模造品があるの?」
「いえ、【ソーマ・ファミリア】が金の亡者ならぬ酒の亡者になっている理由となっているもののことです。そもそもこちらは失敗作ですし」
「「失敗作っ!?」」
「あらやだ俺達と同じ反応」
「まぁ、驚くよね……」
失敗作ではない本物の
うーむ、そこまで行くと正直、お酒がお酒として成立するための要素が欠落しているようでならないのだが……だって、お酒を飲むのはいつだって誰かを想って飲むもののはずだ。冒険者や労働者だって、自分を労うためにお酒を呑んでいる。そんな、麻薬のようなお酒はもはやお酒じゃない。ただ人を破滅に導くだけの劇毒の類だと、俺はそう思う。
「リリもそれに一度は呑まれました。呑み込まれて、自棄になって……そうしているうちにベル様とヴィジル様に出会いました」
リリルカの知る【ソーマ・ファミリア】は
「呑まれる、とは……?」
「まぁ、一度飲めば分かると思いますよ。失敗作でも美味しいので」
「六万……まぁ、二日分の稼ぎか」
「うん、まぁ、払えない額じゃないね。リリがいなかったらここまで貯まってないけど……」
とりあえず食品もまとめて購入しよう。これに合わせるつまみも買わないと……干し肉とかでいいのだろうか? あ、でもエイナさんとソフィさんって肉食べるのか? ……まぁ、果物とかも買えばいいか。
「お、リンゴ安くなってる」
「ヴィジル、ココナッツ売ってるよココナッツ」
「どう食べるんだそれ────ああ、飲むのか」
「おや、葉野菜が安いですね。ピクルスの分も買っておきましょう」
「お! ヤギのチーズ安いぞ!? シチューにしようぜシチュー!」
((結構家庭的……))
今の時刻は午後二時。帰ってすぐに料理すれば丁度塩梅に出来上がるだろう。あいつらも……多分起きてるだろうし、手伝わせよう。
「ベル、牛乳って残ってたっけ」
「あったはずだよ。胡椒がちょっと足りてないくらいかなぁ」
「買い足すか……」
諸々購入して合計金額七万ヴァリス。まぁ、一万ヴァリス分も食品を買えばそりゃそうなるが、凄い量の食材だ。一週間分の食材を買って魔石を利用した冷蔵庫に放り込んでおく。空腹は敵。ザルドさんが言っていた。今日の献立はシチューとパンとサラダにしよう。ソーマを飲むということで、口直し用の飲み物も────ホームにあるし、準備は整った。酔い覚ましも……うん、買ってあるな。
「よーし、情報収集はあれだったけど帰宅!」
「「えっ」」
「情報収集はやはり酒場で行うべきですねぇ。【ソーマ・ファミリア】の情報は似通ったものしかないでしょうけど」
「ううん……やっぱり
「あの、ちょっとベル君、リリちゃん?」
「ヴィジルさん?」
ん? ……ああ、そうか。ギルドの人をファミリアのホームに連れ込むというのはちょっとあれか……まぁ、うちのファミリア、一応零細だし、大丈夫だろ。
「あ、そういえばお二人は何か苦手な食べ物とかあったりします?」
「え? いや、無いけど……」
「好き嫌いは特に……」
「なら問題ないっすね。やっぱりご飯は大勢で食べるのが一番ですからね!」
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コトコトと煮込まれたシチューと焼きたてのパン、そしてサラダを前に、どうしてこうなった、とエイナとソフィは考えていた。
「これ、栓抜き使うのか……?」
「うーん……?」
「こういうものは栓抜きが多いですけど……あ、引き抜き式のコルクですね。引っ張れば抜けますね、これ」
「ボクもお酒はあんまり飲まないからなぁ……あ、エルフ君達は楽にしてていいぜ!」
原因は間違いなく目の前でどうやってボトルを開けるのかと四苦八苦しているベル、ヴィジル、リリルカの三人だ。そして肩肘を張りたくなってしまう原因は自分達ギルドの人間を快く受け入れてくれたヘスティアではなく────
「ディナお姉様、おつまみの盛り付けはこれでいいかしら?」
「ううん、もう少し少なくてもいいんじゃないかしら、ヴェナ?」
元
「お、抜けた」
きゅぽんっ、という腑抜けた音が鳴った瞬間、広くはないが狭いわけでもない地下室に酒には似つかわしくない独特な甘い香りが広がった。
「涼しい香り……」
「お酒とは思えませんね」
しばらく香りを楽しみ、グラスに少しずつ注がれていく琥珀色の酒が全員分行き渡った後、その場にいた全員がほぼ同時にソーマを口にする。
(うっわ……!)
(これは、確かに……)
グラスを傾け、舐めた程度だったが、エイナとソフィは驚きを隠せなかった。
美味い。美味過ぎる。
舌触り、味、香り、喉越し、その何もかもが凄まじい完成度。
芳香が鼻腔を突き抜けていき、後味が爽やかな痺れるような甘さが何とも堪らない。最後の最後まで、ソーマという酒に意識が翻弄されてしまう。
これはリピーターが絶えないのも頷ける……そう思った矢先。
「ああん……?」
「うーん……?」
「相変わらず、ですね」
リピートしたくなさそうな、不満げな表情を浮かべる三人がいた。
「ううん、やっぱり白ワインが好きね」
「そうね。赤もいいけれど」
「うん、美味しいんだけど……むむむ……?」
いや、三人ではなかった。五人と一柱が不満げな表情を浮かべている。自分の味覚がおかしいのか、と口直しのためにと用意されていた飲み物を飲む。渋みのある濃い茶色のお茶が、酒の味を舌から引き剥がすが────それでも余韻が残っていた。
「このお酒は失敗作、というのはお話しましたよね、お二人共」
「え、あ、うん」
「凄く美味しいお酒、だと思うのですが……」
「ええ、失敗作なのに、美味しいお酒なんです」
これが、どういうことか分かりますよね?
リリルカにそう言われて一瞬だけ考えて、エイナとソフィはハッとして目を見開く。
「そう、これの比じゃなく美味しいのです。飲めば、酔う。泥酔や酩酊、という意味ではなく、酒に、心から、酔う。『心酔』。心の底から酒に酔い、酒に呑まれるのです」
ぞっ、と寒気が襲う。
これが、さらに美味しくなる。先程飲んだ瞬間感じたあの高揚感、未だ舌に残っている酒の余韻。
純粋に心躍った、意識を惹かれた、翻弄されたあの味。
あれ以上がある。それ以上の陶酔感。
「それを飲みたいがために【ソーマ・ファミリア】の連中は金の亡者となっているんです」
「あら、リリルカ? どうしてお金にこだわるの?」
「ヴェナ様、考えてもみてください。お酒造りに限らず、趣味にはお金がかかります」
「そうね。……ああ、だから、なのね?」
「はい。ソーマ様は考えました。お金をどうやって集めるか、趣味を続けるにはどうすればいいのか、と。そし『賞品』を与えることでお金を集めることにした」
それが、
そこまで説明されて、エイナとソフィは気付いた。度々見ていた【ソーマ・ファミリア】の金への異常なまでの執着。あれは酒を求めての行動だったのだ。
「もちろん、依存から解放される人もいます。上級冒険者や、リリみたいにお酒から離れた人、そして────」
「ん? どうしたよ」
「どうかしたの、リリ?」
「それ以上の何かに魅せられている、お酒に屈しないような強い心を持っている人は、全く酔いません」
それどころか美味しいけど美味しくない、挙句の果てには不味いと言ってしまう者もいるかもしれない。リリルカは話をそうして締め括り、シチューを頬張る。
「正直リリはこのシチューの方が好きです。それか、ヘスティア様のクッキーなどの方が断然美味しいです」
「酒じゃねぇじゃん」
「お酒自体が苦手なんです。というかヴィジル様も苦手ですよね?」
「おう。正直楓の樹液直飲みした方が美味い」
「カブトムシみたいだね!?」
とんでもないことを言いだすヴィジルは、グラスに入ったソーマにライムとその果汁を放り込む。その方が美味いと言わんばかりに飲み切った彼は、残っているソーマを見ながら呟く。
「そもそも何も考えてないやつの酒が美味しいわけないだろ」
「何も、考えてない?」
「ああ、そっか。それが違和感だったんだ」
ヘスティアがヴィジルの言葉に納得したように頷き、口直し用のお茶を飲んでこっちの方が美味しいと感じるのもそれが原因かと呟いた。
「誰かのために作ってないんだよ、これ。何も考えず、ただ作りたいから作ってる。飲む人のことなんて全く考えていないお酒だから、美味しいけど美味しくないんだ」
そう言われてみると、そうなのかもしれない。そう思いつつ一口飲んでみるエイナとソフィ。間違いなく美味しいお酒のはずだが、何かが欠けているような気がした。
続いて湯気を上げているシチューを口にしてみる。ホッとする味だ。チーズの風味が効いているし、野菜の甘みや肉のホロホロとした食感が堪らない。何より、作っている人の顔が浮かぶ。思えば食卓に並ぶまで、彼らはとても楽しそうに料理を作っていた。客である自分達のために手間をかけて用意してくれたシチューは、時折自分で作るものよりも美味しく感じる。
「ま、とりあえずソーマについては置いておいて……エルフ君達に聞きたいことがあったんだ」
「何でしょう?」
「私達に答えられることであれば」
「ありがとう。聞きたいことというのはね……」
ごくり、と喉が鳴るのを自覚する。ヘスティアが何を聞いてくるのかと身構えたその時。
「君達、この三人について苦労してないかい?」
「「それはもうしていますね」」
悲しきかな、この三人の担当になるということは、普通じゃいられない。苦労に苦労を重ねる毎日である。また無茶しているのではないか、そのうち中層ギリギリで暴れるようになるのではないかなど、様々な心労を抱えてしまう。また面倒事に巻き込まれているのでは、首を突っ込んでいるのではと気が気でないのが本音であった。