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<Side:ベル>
僕がサーヴァント?であるらしい藤丸立香…リツカが召喚されたところを見て、一緒に旅をしないかと誘い、オラリオに向けて出発してから数日後。二人は"迷宮都市オラリオ"の門をくぐって、中に入った。
「ここが、"迷宮都市オラリオ"…」
「でっかいなぁー」
一人は憧れを、もう一人はそびえたつ建物…「バベルの塔」を見ながらそれぞれ言葉を口にした。
「ここから始まるんだね…僕の、僕たちの冒険が!」
「うん、そうだね。俺も少しワクワクしているよ。」
「そういえば先ほどの門番さん…ハシャーナさんが言うには、冒険者になるにはまずファミリアに入らないといけないって言ってたよね。」
ハシャーナ・ドルリア。ここ、"迷宮都市オラリオ"の門番を勤めている冒険者らしい。ガネーシャという神様のところに所属している冒険者なのだそうだ。彼には親切にしてもらったのでいつかまた会いたいと思った。でもリツカは「ガネーシャ」という神様を聞いた時に少し苦笑いしていた。なんでそんな表情をしていたんだろう?
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<Side:立香>
(ガネーシャかぁ…神様がいるって聞いてたけど…まさかこんなにも早く見知った名を聞くことになるとは…)
立香はとある疑似サーヴァントを思い出していた。かつて別世界で召喚された「ジナコ・カリギリ」という名の少女を依代とした「ガネーシャ」を。
「ゲームは一日一時間!?そんなことされたら溜まっているゲームを消化するのにどれだけ時間がかかると思ってるんすか!!」
なんて怒ってるガネーシャを思い出して思わず苦笑してしまった。
その後、ベルの言っていること…ファミリアについて、一緒に探そうと提案した。
「うん、じゃあまずはファミリアを一緒に探しに行こう。」
「うん!」
そう言って俺たちのオラリオ1日目は幕を開けたのだった。
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<Side:ベル>
それからしばらくたった後…
「中々見つからないねー…」
二人は様々なファミリアを当たったが、その容姿からか舐められた態度でことごとく門前払いされてしまった。
「まぁね、どこも見知らぬ者を受け入れる余裕なんてないんじゃないかな。」
「そういうリツカはすごいね!あんなにたくさん回ったのに全然へこたれないなんて。」
そうなのだ、オラリオに着いてからたくさんのファミリアにお願いをしに行ったが、冷たくあしらわれても、どんな言葉を吐かれようと、僕と違ってそこまで落ち込んでいないのだ。
「…そんなことはないよ。俺も少し心にはきてるけど、仮にも命を預けるんだからね。そう簡単に見つかるとは思ってないよ。」
落ち込んでるというよりかはどちらかと言えば少し達観しているように見えたのだ。
「そりゃそうだよね、僕も見習いたいなぁ。」
「…ところで、そこにいる方、良ければ出てきてもらえませんか。」
「え??」
リツカは急に誰かがいるようなことを言い出した。…僕は間抜けにも呆けてしまったけど。
「…あはは、まさかそっちから気付くとは思いもしなかったよ。」
すこし苦笑いしながら出てきたのはツインテールの髪形をした美少女だった。
「すみません、昔から視線には敏感でして。」
「いやいや、君が謝ることじゃないよ。元々は僕が覗きをしていたのが原因なんだしね。」
「そ、そうだったんですか。一体何が目的で僕たちを見ていたんですか?」
そう聞くと、彼女は待ってましたと言わんばかりに
「--もちろん、君たちをファミリアに勧誘したいってことさ。」
笑顔でそう言った。
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僕たちは、その人?に言われるがままにその勧誘に乗ることにした。なにせこのままだと宿をとるところだったし、何より相手から誘われるなんてのは初めてだったので拒否する理由がなかったからだ。
「--じゃあ、改めてはじめまして!僕の名はヘスティア!正真正銘の"神様"さ!」
「か、神様だったんですか…はじめまして。僕、ベル・クラネルって言います。」
「はじめまして神様。俺、藤丸立香と言います。リツカと呼んでください。」
「ふむふむ、ベル君にリツカ君か…。」
「ところで神様、今僕たちはどこに向かってるんです?」
「ふふん、聞いて驚け~?これから僕たちが共にする本拠地…"ホーム"に向かってるのさ!あ、見えてきたよ!」
…そこにたたずんでいたのは教会だった。それもしばらく使われていない感じの。
僕は思わず聞いてしまった。
「…あの、ヘスティア様?もしかして、ここですか?」
「…うん、そうなんだよね。実はファミリアと言ってもまだ眷属は誰もいないんだ。数週間前までとある親戚のところに居候させてもらってたんだけど、”いい加減ファミリアを作って私のところから自立しなさい”ってため息交じりに言われちゃって。あはは…」
「でもいいんじゃないかな、見た感じ悪い神様ってわけでもなさそうだし。それにベルも満更じゃなさそうですよ、ヘスティア様。」
「!!本当かい?他にも入れるファミリアは一杯ある。僕にこだわらずに探してもいいんだよ…?」
「僕は構いませんよ。先ほどは失礼なことを聞いて知ってすみませんでした。僕、幼いころから男なら女の子は守らなきゃなっておじいちゃんから教わってきたんです。だから神様を見捨てるなんてことはできませんよ。」
「俺も同じです。いいじゃないですか、一緒にスタートを切れる方が増えるのは俺としても嬉しいですし。」
そう言うと神様は僕たちに少し泣きながら、
「--ありがとう。僕は幸せ者だな。」
と言った。その顔に僕は思わずドキドキしてしまい、少し顔を赤らめたのは僕だけの内緒にしようっと…
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<Side:立香>
「少し汚いけど住む分には問題ないからね。ゆっくりしていってくれ。」
俺たちは神様に案内されながら教会にある隠し部屋に入った。
「うわぁ、僕教会で寝泊まりするなんてのは初めてです!今まで聖職者さんとは縁がなくて…リツカはそういう人いたことある?」
聖職者…そんな人いたかな…あ、いたわ。
「あー、うん。乗り物相手に武器を持ちながら"愉悦。"って言いながら追いかけてくる人と、とある大願を叶える為なら容赦しない人なら知ってるよ。」
と、少し遠い目をしながら言ったら
「そんな聖職者いるの!?」
「僕もそんな人がいるなんて想像できないよ!?」
と二人とも驚いていた。何故だ。
「と、兎に角今日から正式に眷属になるんだ。僕から恩恵を与えなきゃね。どっちからやろうか?」
来た。遂に冒険者になる。俺もそうだが、ベルは俺以上にわくわくしていたので先を譲ろうと思った。
「ずっとなりたかったんだよね?なら先に譲るよ。」
そう言いながら俺はベルに先を譲った。
「ありがとうリツカ。」
ベルは俺にそう言いながらヘスティア様の前に立った。
「じゃあ、ベル君。始めようか、…恩恵の授与を。」