ダンジョンに英雄志望と王様志望がやってきた!


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作:エヴォルヴ
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だから三人で走り続ける。その2


 ヴィジル・ガロンゾ

 Lv.1

 

 力 :G255→G296

 

 耐久:H101→H160

 

 器用:F399→E452

 

 敏捷:G255→G263

 

 魔力:I0

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

【】

 

 

 

 

 

「おおん……?」

 

 思わず変な声が出た。だって、そうだろう? トータル160くらい成長しているのだ。夕刻、ダンジョンから帰還した俺達がヘスティア様にステイタス更新を行ってもらっていたが、やっぱりおかしい気がする。いつもこのくらい伸びている、と言われたらそれまでなのだが……それでもここまでの成長はおかしくないか……? このくらいの成長は他の冒険者もするのだろうか? 

 

「ベル君とヴィジル君は今最高に成長期なんだろうね。なぜかは分からないけど」

 

「「成長期……」」

 

 前にも聞いた気がするが、成長期とはいえ、ここまで成長するものなのか? 

 

「ま、成長するのはいいことだよ! 君達ならすぐにでもランクアップしそうだね!」

 

「それはそれで何かあれな気がしてならない」

 

「ズレ、だっけ……お義母さんと叔父さんが言ってた」

 

 ランクアップした時、精神と肉体のズレが生じるらしい。それを直すためには格上と戦うことが一番だというが、ランクアップしてからの格上となると……やはりミノタウロスだろうか。縁があるな、ミノタウロス。そのうちお前をステーキにしてやるから待っていやがれミノタウロス。

 

「うーん、納得はできないけど、とりあえずこの話は一旦終わりにして、そろそろ行くか」

 

「うん。神様、準備できてますか?」

 

「もちろんさ! サポーター君も待ってるだろうし、早く行こうぜ!」

 

 今日はシルさんが働いている店で食事会。美味しかったらアルフィアさんとザルドさんも連れていきたいと考えている。店名は確か、豊穣の女主人。リリルカが集めてくれた情報によると、冒険者と一般市民の評判がどちらも高いお店として知られているそうだ。俺達はそういう店にあまり行かないからなぁ。初めての店、ワクワクしている。

 

「お待たせ、リリ」

 

「いえいえ、そこまで待ってませんよ」

 

 日が沈み始めた頃、【ヘスティア・ファミリア】ホームの教会前で変装して待っていたリリルカと合流した俺達は、シルさんと会った場所に向かっていく。

 

 夜になっても、オラリオの活気は全く変わらない。一日の仕事を終えた労働者が、ダンジョンの探索から帰還した冒険者が、今日の締めくくりだと言わんばかりに酒盛りをして笑っている。二日酔いで死屍累々になっていないか不安になるな。禁酒令、なんて出していた国もあるくらいだし、酒というのは凄まじい魔力を持っている。規制はしたくないが、王様になったら色々考えないといけないなぁ。

 

 人混みが絶えないメインストリートを歩きながら、豊穣の女主人を探して歩く。早朝と違って賑わいが凄まじく、記憶との差異で混乱しそうになるが、リリルカの案内もあって、夜の街を何とか抜けていくと────二階建ての酒場に到着した。

 

「おお……凄く立派な酒場じゃないか」

 

「火蜂亭と双璧を成すと言われているくらい人気の酒場ですからね」

 

「火蜂亭?」

 

「真っ赤な蜂蜜酒とハニーパイが絶品という酒場です。リリはお酒が苦手ですが、あのお店の蜂蜜レモンなら飲めます」

 

 リリルカはお酒に対してあまりいい思い出がないからな。火蜂亭か……今度顔を出してみるのもいいかも。お金を貯めないといけないと決めてるから、散財するのは良くないが。

 

 そんなことを考えながら、入り口から店内を覗いてみると、まぁまぁの賑わい振り。カウンターの中で料理や酒をお客さんに振舞う女将さんらしき女性や、てんてこ舞で店中を駆け回る猫人(キャットピープル)の女性二人。他の従業員もだが、身のこなしが一般人っぽくないように見えるのは俺だけ……? 

 

「昼間はカフェとして経営しているようですね」

 

「ああ、通りでこじゃれた感じがすると思ったら……」

 

「これ、一人で入るのって中々勇気がいるよね」

 

「まぁ、疚しいことは無いんだし、堂々と来店しようじゃないか!」

 

 ヘスティア様の言う通りだし、堂々と来店。

 

「ベルさんっ、ヴィジルさんっ」

 

「「やってきました」」

 

「はい、いらっしゃいませ! お客様四名はいりまーす!」

 

 酒場って人数も言うのか。……確かに人数が分かっていればどこに通すとか考えやすいし、当然と言えば当然……なのか。

 朝に出会った時と同じように迎えてくれたシルさんに案内されて、『予約席』の札が置かれていたカウンター席に通される。……女将さんと向かい合う感じで、邪魔されないで食事を楽しめる場所だ。かなーり融通されている気がするな。

 

「アンタらがシルのお客さんかい? ははっ、冒険者の癖に可愛い顔してるねぇ!」

 

「「可愛いは余計です」」

 

「何でもアタシらが悲鳴を上げるほどの大食漢だそうじゃないか! じゃんじゃん食べていきなよ!」

 

 誰だそんな話をした人は。確かにたくさん食べはするけど、節度はあるぞ、俺達。

 

「ベル君、ヴィジル君、もしかして釣られたのかい……?」

 

「ヘスティア様、このお二人に限ってそのようなことは────あり得ますね」

 

「「この信用度よ」」

 

 信頼されていて涙が出るね、本当に。

 

「とりあえず注文するか……お、パスタ大盛できるじゃん。フライドチキンあるぞフライドチキン」

 

「んー……揚げ物はあんまりかなぁ。だったら丸焼きの方が……あ、果物も結構あるんだ」

 

「結構ありますねぇ。あ、ブドウだ」

 

「うぅん……よしボクは決めたよ! 三人はどうだい?」

 

「決まりました」

 

「同じく」

 

「リリも決まりました!」

 

 全員決まったので注文を開始。俺はミートパスタの大盛、ベルは丸鶏の半身焼き、リリルカは果物盛り合わせとカルパッチョ、ヘスティア様はシチュー。

 

「酒は?」

 

「「「「ジュースで」」」」

 

 酒はなぁ……あんまり得意じゃないのだ。こう、苦いというか……まだあの味を楽しめる人間性を獲得できていない。

 ドンッ、と木製のジョッキに注がれたジュースがカウンターに置かれ、料理もできた順に片っ端から置かれていく。……パスタ、皆で分ける前提で大盛にしたが、中々だなこりゃ。何でミートボールの他にステーキも乗ってるんだよ。これで600ヴァリスは恐らく安い。

 

「じゃあ、今日も一日────」

 

「「「「お疲れさまでした!!」」」」

 

 ジョッキをかち合わせて乾杯して、ジュースを一口。うーん、混ぜ物がない間違いなく果汁のみの味。パスタもそうだが、他の料理も美味しい。ステーキは柔らかいし、鶏肉もパサついていない。果物もさっきまで冷やされていたのか、冷たくて心地よく、シチューは具材が口の中でホロホロと砕けていく。これで合計が大体3000ヴァリスくらい……まぁ、高いけど手間暇かかっているのなら、これくらいが妥当だろう。

 

「楽しんでますか、皆さん」

 

「「「「楽しんでます」」」」

 

「ふふ、それはよかった」

 

 挨拶もそこそこに、シルさんは俺達の輪に入って話を始める。この豊穣の女主人がどんなお店なのかとか、ここで働いていると色んな人達が来て色んな色を見せてくれるのが面白いだとか、色んなことを教えてくれた。

 

「皆さんは全員同じファミリアなんですか?」

 

「ええ、まぁ。リリはまだ入っていないんですけど」

 

「そのうち加入する予定だけどね! サポーター君なら大歓迎さ!」

 

 いい神様に巡り合えたと、本当に思う。まさかアストレア様のファミリア以外全滅するとは思っていなかったが、ヘスティア様に出会うために全滅したのかもしれない。人の出会いも重力、という言葉があるらしいが、本当にそうなのかもしれない。

 楽しく食事をして、会話に花を咲かせていると、突然十数人以上の規模での来店があった。話し声からして、予約のお客さん────────

 

「あ」

 

「【ロキ・ファミリア】……」

 

「ロキのとこの子達か……」

 

 入ってきた冒険者全員というわけではないが、第一級の冒険者ばかり。これが、最高峰……あれ? でもアルフィアさんとザルドさんの方が強いんだっけ? ゼウスとヘラ。やっぱり強いぜ最高峰。ところでヘラ様、最近ベルへの手紙の量が増えましたね。ディアーナお祖母ちゃんもそうだけど、どんだけ孫大好きなんですか。

 

「そういえば女将さん聞いてくださいよ」

 

「あん?」

 

「先日のダンジョンでミノタウロスに会ったんですよ、上層で」

 

「……へぇ? 戦ったのかい?」

 

「ここの三人で」

 

 元冒険者というだけあって、やはり冒険者の話は興味があるようで、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべて俺達を見る女将さんのミアさん。この人もきっと強いんだろうなぁと思いつつ、あの日のことを思い出してカラカラと笑って話を続けた。

 

「最初は逃げたんですけどね、ふと思ったんですよ。ここで逃げたらうちの先生にぶっ殺されかねないって」

 

「地獄のブートキャンプが始まる気がしてならなかったよね……」

 

「間違いなくモンスターの群れに放り込まれましたね」

 

「どんだけ厳しいんだいアンタらの先生とやらは」

 

 厳しさこそが愛情表現です、とは言えない。多分不器用な愛情表現ということは間違いないのだが。

 

「それでですね、いいとこまで行ったんですよ。一応。けど、後詰めの仕方が悪くて……」

 

「【ロキ・ファミリア】の人に助けてもらったんです。その際にヴィジルは目にミノタウロスの血が入って悶絶してましたけど」

 

「もはや芸術と言えるくらいのトマトソース仕立てでしたね」

 

「あんなクソ不味いトマトソースは被りたくないね!」

 

「心臓に悪いけど、帰ってきてくれたからモーマンタイさ。でも、無茶し過ぎはダメだぜ、三人共」

 

「「「善処します」」」

 

 無茶のしどころというのが人生には存在するらしいので、無茶できるところはとことん無茶させてもらう。心労をかけさせるのは良くないんだけど、冒険できない冒険者が強くはなれないだろう。王様になる、英雄になると豪語しているなら。

 

「こうして帰ってきて、こんなに美味しい飯が食えてる! 俺達は勝者ってやつだ」

 

「最後に生きてる人が勝ち組ですよ」

 

「勝てば官軍って言いますしね」

 

「ははは! いいじゃないか、アンタ達! 気に入ったよ!」

 

 ドンッ、と注文していない特大ステーキが置かれる。……え? これ、食っていいものなの? 

 

「こいつはサービスさ。面白い冒険者三人へのね」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

 やったぜ、特大ステーキだ。これは食べ切らないと失礼だな。

 

「凄いですね、三人共。格上に挑むなんて」

 

「まぁ、夢に向かって走るなら、それくらいできないとですしね」

 

 柔らかいステーキを四人で分け合って食べていると、【ロキ・ファミリア】の宴も凄まじい盛り上がり方をしていることに気付く。混沌とし始めているあの宴を見て楽しそうだなぁと思う前に、混沌とし過ぎてああいう盛り上がり方はしたくないな、という気持ちが勝つ。

 

「そうだアイズ! あの話聞かせてやれよ!」

 

「あの話……?」

 

 ふと、【ロキ・ファミリア】の灰色髪の獣人……狼人(ウェアウルフ)? 何だっけあの種族。狼ってことは分かるんだけど……いや、狼か? 犬人(シアンスロープ)の可能性も無きにしも非ずだぞ? まぁ、とにかく、獣人の男性が我らが団長が懸想にしている女性、アイズ・ヴァレンシュタイン氏に何やら話をせがんでいた。

 

「あれだって、帰りのミノタウロス! 何匹か取り逃がした最後の一匹! あれを仕留めた時にいたトマト野郎とその仲間!」

 

 お? お呼びか? だが忘れないでほしい。トマトソース仕立てだからトマト野郎ではない。

 

「ミノタウロス……って、確か、17階層で出くわして逃げ出していった?」

 

「それそれ! 俺達が泡食って追いかけた牛野郎共!」

 

「いたわね、そんなのも」

 

「それで、いたんだよ、いかにも駆け出しの命知らずって感じの三人組が!」

 

 ああ……だからあの時ミノタウロスが上層にいたのか? となると向こうの落ち度で、死んでいた人がいたかもしれないということ? 死人に口なし、とはよく言ったものだが、このオラリオで皆が憧れる最強派閥【ロキ・ファミリア】が自分達の落ち度で誰かを危険に晒したのを酒の席で話題にする、というのはどうなのだろう……ま、生きてる我々がとやかく言うことではない……いや、本当か? 本当にとやかく言うことではないか? ギルドに報告すべきことではないのか? そこんとこどう思いますディアーナお祖母ちゃん。……今度の手紙の話題はこれにしようか。

 

「弱ぇくせにミノタウロスにギャーギャー騒ぎながら挑んでたんだよ、そいつら!」

 

 そんなに騒いでいただろうか? ……騒いでいたかもしれない。

 

「それで、そいつら助かったん?」

 

「アイズが仕留めたからな。そん時ミノを細切れにしたんだがよ、思いっきり血を被って悶絶してたやつがいたんだよ!」

 

 誰だそんな馬鹿みたいなことしたやつ。………………俺じゃん。

 

「それでよ、そいつらにアイズが声かけたら、また何か騒いでどっかに行っちまって……うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのっ!」

 

 お礼言わなかったっけあの時? 言ってたよな? ……いや、言ってなかったかも? どうだったかな……あ、ステーキがいつの間にか無くなっている……! はっ、リリルカとベルが満足気に食ってやがる……!! まぁ、俺にはまだミートパスタがある────無くなっているだと!? 仕方あるまい……女将さんちょっとパスタおかわり! 

 

「色々言われてるけど、いいのかい、三人共?」

 

「まぁ、ほら……酔ってる人達の言葉に一々目くじら立ててたら……ねぇ?」

 

「あれがお酒の魔力かぁ……」

 

「【ソーマ・ファミリア】よりはマシですね」

 

 こちとら笑われるような夢抱えて生きてるんだ。というかリリルカよ、いきなり闇を露出させるなよ。怖いわ。

 

「雑魚は雑魚で身の程を弁えろってんだ」

 

「ベート、飲み過ぎだ。呂律も回っていないぞ」

 

「うるせぇよババア! この程度まだ問題ねぇっての!」

 

 そういう慢心が二日酔いを生み出すのだとザルドさんが言ってたぞ。ほら、アルフィアさんを見てみろ、凄く優雅に飲んでるぞ。今は黒い砂漠にいるけど。

 

「そういえばお三方は、何か目標があって冒険者になったんですか?」

 

 突然、シルさんがそんなことを質問してきた。目標……まぁ、目標はある。嗤われるだろうけど、それでもなりたいと願い続ける将来というやつが。

 

「僕は……英雄になりたいんです。誰かの涙を拭える、誰もが笑顔になれる英雄に」

 

「俺は王様になりたい。誰もが笑顔でいられる国を作るのが、俺の夢です」

 

「リリはそんなお二人を支えたいと思ってます。リリを暗がりから連れ出してくれた二人の隣を歩きたいんです」

 

 そんな夢を後押ししてくれたヘスティア様や、なれると言ってくれた人達のためにも、俺達は夢を叶える。どれだけ嗤われようと、この夢を叶えると決めたのだ。嗤いたければ嗤えばいいさ。

 

「というわけで、ダンジョン行きたいんですけどいいですか神様!」

 

「え!? ううん…………条件付きでなら構わないよ」

 

 断られるかと思ったんだけど、そんなことは無かった。どんな条件を課されるのかと思っていた俺達に下された条件は────

 

「朝食の時間までに帰ってくること! あと、無傷でね! それが守れるなら行っていいよ! あと、アドバイザー君達のお叱りは覚悟しておくんだぜ!」

 

「っしゃあ、行くぞベル、リリルカ!」

 

「ありがとうございます神様! 行ってきますね!」

 

「やってやりますよ! あ、ヴィジル様、今回はヴィジル様が前衛でお願いしますね! リリは司令塔になります!」

 

「これは勝ち、だな? あ、言い忘れてた。シルさん、女将さん、ご馳走様でした! また来ます!」

 

 代金を全部カウンターに置いて、店を飛び出す。俺はハルバードを自在に使えないから、虚飾の王と合わせてサブの武器を用意しなければならない。んー……拳でいいか? あ、でもちょっと前に買ったブロードソードがあったか。それを使おう。

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 ギルド、その片隅。早朝、仕事が始まったばかりで、冒険者も来ていないギルドの中に、彼女達はいた。

 

「エイナ、そちらの資料を少し貸していただけますか?」

 

「あ、はい。ソフィ先輩、そっちの資料貰えますか?」

 

「分かりました」

 

 エルフとハーフエルフ。どちらも美しい容姿をしており、間違いなくギルドでも人気が高い受付嬢であることが分かる。ハーフエルフはエイナ・チュール、エルフはソフィ。現在行っている仕事は、担当の冒険者────ベル・クラネル、リリルカ・アーデ、ヴィジル・ガロンゾの三人に行ってもらうテストの問題作成である。

 

 この作業をするにあたり、二人が頭を悩ませたのはあの三人がとんでもない速度でマッピング、階層攻略を行っていることだった。とにかく早いのだ。卒倒したくなる勢いで階層を制覇して駆け抜けていく。しかも教えれば教えるだけ、成長するどころか進化しているのではないかと疑うような応用もしてみせる。しかもヴィジルに関しては見たこともない武器を持ってダンジョンに飛び込んでいく。エイナとソフィ、担当は2:1と人数的負担はエイナに軍配が上がるが、未知を秘匿しなくてはならないという精神的負担については、ソフィに軍配が上がる。そろそろ息抜きをしなくては爆発しかねない。

 

「ふむ……小竜(インファント・ドラゴン)、キラーアント……」

 

「どちらもあの三人が倒した経験のあるモンスター、ですね……」

 

「「はぁ……」」

 

 頭が痛くなる。あれがまだ冒険者になってから数ヶ月しか経っていない冒険者と、サポーターを専門としていた少女なのかと思ってしまう。

 

「お互い、苦労しますね」

 

「ええ。ですが、彼らの担当になると決めたのですから、これくらいは」

 

 思い出すのは、ギルド職員の中で行われた賭けの内容。あの二人がどれだけ長く冒険者を続けることができるかというものだ。誰もが長持ちしないと言ったが、ソフィとエイナは違った。あの二人と、その付き添いで来ていた一人の少女の目は、間違いなく生きる意志に満ちているものだったのだ。ヒューマンよりも長く生きるエルフだからこそ理解できた、空に浮かび、闇を悉く焼き尽くすかのようなエネルギー。彼らから放たれるそれを感じた時、二人は突き動かされた。そして、その夢を応援すると決めたのである。

 

 だからこのくらいは苦にもならない────そう思った矢先のことである。

 

「エイナ、ソフィ、あんたらにお客さんよ」

 

 来客。ギルドが開いて間もないこの時間に誰だろう。

 嫌な予感がしながらも、受付嬢のローズに返事をして受付カウンターに向かうと、件の三人がいい笑顔で立っていた。

 

「「「ちょっとダンジョン行ってました! 夜中から今まで!」」」

 

「「そこに直りなさい!」」

 

 問題児、しかも強者。それがエルフ二人の担当する冒険者三人組であった。

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