ダンジョンに英雄志望と王様志望がやってきた!


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作:エヴォルヴ
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そのうち飛鳥文化アタックもやる


 ミノタウロスに会った日から数日後。俺達はいつもの組手を終えてから我らが主神、ヘスティア様にステイタスの更新を行ってもらっていた。

 

「うーん……ミノタウロスと戦ったからなのか、結構伸びてるねぇ」

 

「やったぜ」

 

「エイナさんには怒られたけどね……」

 

「そりゃ怒るよ。さすがのアルフィア君とザルド君も……いや、あの二人は怒らないか」

 

 まぁ、ミノタウロスに出くわしたという報告をした時点で怒髪天だったし……あれがベルのお爺さんと俺のお祖母ちゃんが話していた、ラージャンという存在なのだろうか。雷を吐く筋肉ムキムキマッチョマンなライオンらしいが……いや、エイナさんはそういう存在ではないか。

 

「ところでヘスティア様」

 

「ん? 何だいヴィジル君」

 

「勧誘とかってやらなくてもいいんですかね、うち」

 

「うーん……そこなんだけどね……」

 

 俺達【ヘスティア・ファミリア】の構成員はベル、俺、ベルの御母堂アルフィア(非公式)、ベルの叔父御ザルド(非公式)、暫定リリルカである。リリルカは【ソーマ・ファミリア】の所属ではあるものの、いないものと認識されているようなので、借金の返済が終わり次第うちのファミリア入りが確定している。非公式メンバーの御母堂と叔父御は、元主神からヘスティア様のところなら全然問題なしと言われているそうだ。アルフィアさんの主神には会ったことがあるが、凄くあれだ。そう、凄く強そうで綺麗だった。あの人、ベルのお婆ちゃんってマジ? ……あれ? ということはやはりベルのお爺さんは神様か? 

 

 そんなオーバーパワーなうちだが、二人が非公式な所属なので、零細ファミリアである。ゆえに勧誘などもしなくてはいけないのだが……

 

「道行く人達はマスコットみたいに可愛がってくれるけど、ファミリアに入りたいって人はいないかなぁ」

 

「貰える恩恵は全員同じはずなんですけどね」

 

「そのはずなんだけどねぇ……あと、アルフィア君とザルド君のことを考えるとどうしてもね」

 

「「あー……」」

 

 忘れがちだが、あの二人は黒い神様に唆されてオラリオで色々やんちゃしていた人達だ。過ぎたことだし、被害も少なかったから気にしている人はいないが、心無い連中というのはどこにでもいる。そういう連中の言葉で傷付くような人達ではないが、それでもそういうのは避けたい。ゆえに、勧誘がしずらい。黒い神様め……もう一回最強の大会開かねぇとダメか……? あの時逃がした芸術家気取りというか、狂人気取りも混ぜてハレルヤしてもらわねぇと……ん? あの狂人気取りはもう死んでるんだっけか? 

 

「それに、お金もないまま新しい子を迎えても苦労するだろ? もう少しお金を貯めてから勧誘も考えていこうじゃないか!」

 

「まぁ、一理ある、か」

 

「うん。確かに、焦ることもないかも?」

 

 リリルカのお蔭で稼げているとはいえ、まだまだ貯蓄に余裕があるとは言えない状況。やはり貯蓄……国造りにもきっと貯蓄が必要となってくる。貯めなくては。

 

「おお、ベル君は敏捷が399、ヴィジル君は器用が399になってるよ!」

 

「おお、もう少しで記号が変わるぞ!」

 

「やったね、ヴィジル!」

 

 あの死を覚悟するような訓練は無駄ではなかったんだな、と小さく涙が零れる。アルフィア&ザルドブートキャンプは無駄ではなかった……ゴブリンの群れに放り込まれた時は死を覚悟したが。ベルを見て欲情するゴブリンがいたのを見た時は、お互い震え上がったね。

 

「ところでヴィジル君、銃について色々聞きたいってヘファイストスのとこで買い物してた子が────」

 

「却下で」

 

「そう言うと思ったから断っておいたぜ!」

 

 マジかよ最高だなヘスティア様。

 大方、俺が銃を作る過程で出来上がったクロスボウ(炸薬式)を売ってほしいとかそこら辺だろ。あれは非売品だっての。というか非売品だってことは周知してあるんだよな、ヘファイストス様よぉ……ことと次第によってはあんたにもハレルヤを歌ってもらうことになるぜ……

 

「弁明しておくと、ヘファイストスはちゃんと止めてたよ」

 

「ん、そうすか」

 

「でも諦め切れなかったんだろうねぇ。ヴィジル君の作ったあれはボクから見ても最新鋭の武器だもの」

 

 炸薬式クロスボウγ。α、βは大きすぎてもはや弩。小型化に成功したが、反動とコストが見合わずに没になったのがγである。ベルとリリルカが試してくれたが、近距離では威力が高すぎるし、遠距離では狙いが定めにくい。そんな悲しき武器は、戒めとしてホームに飾っておくかと思っていたのだが、ヘファイストス様が少なくないお金を出して購入していってしまったのだ。なぜだ。

 

「ヴィジルの武器って特殊というか……扱いが難しいもんね」

 

「威力はあると思ってたんだが……ミノタウロスの体は貫通しなかったなぁ」

 

 もう少し改良が必要かもしれないな、俺の銃。……ちなみに俺の武器の名前は【虚飾の王】。王様ってのは見栄っ張りなくらいが丁度いいってことで、虚飾の王という名前を命名した。威力を重視したので、弾数を意識していなかったが、今後は弾数を重視した銃なんかも作りたいところだ。

 

「……よし、終わったよ二人共! 今日の二人のステイタスはこんな感じだ!」

 

 

 

 

 ヴィジル・ガロンゾ

 Lv.1

 

 力 :G255

 

 耐久:H101

 

 器用:F399

 

 敏捷:G255

 

 魔力:I0

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

【】

 

 

 

 

「……うーむ」

 

「スキルに出てこないね」

 

「まぁ、言ってるだけじゃ無理って話か……」

 

 ベルも俺も、ヘスティア様曰く成長期らしいが……スキルの気配は一切存在しない。やはり口に出しているだけではスキルが生まれる余地が無いのだろう。偉業か? 偉業なのか? でも偉業ってレベルを上げるためのものだし……

 

「まぁ、そうポンポン出てくるものじゃないさ、スキルっていうのは」

 

「ですよねぇ……あ、俺はちょっと弾薬作るんで部屋に籠りますわ。ベルはどうする?」

 

「うーん……ちょっと買い出しに行こうかな? さっき戸棚見たら色々少なくなってたし」

 

「あー……じゃあ、俺も付き合うわ。弾薬はいつでも作れるしな」

 

 とりあえず、予備の弾薬を銃に詰めてから買い出しの籠を引っ張り出す。紙袋なんかも貰えるけど、多めに買うから籠を持っていった方が食材が潰れたりしないからいい。

 

「んじゃ、買い物行ってきますね、ヘスティア様!」

 

「うん、いってらっしゃい! 寄り道しないで帰ってくるんだぜ!」

 

 子供じゃないんだから────────いや、俺達まだ14だけどさ。

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

「……ううん……」

 

 買い物に向かった二人の眷族を見送ったヘスティアは、自分用に用意している羊皮紙に書かれたステイタスを確認して悩まし気に唸る。

 

(本当に凄いんだよなぁ、ボクの眷族は……)

 

 ベル・クラネル。【ヘスティア・ファミリア】団長であり、英雄を目指す白髪の少年。

 ヴィジル・ガロンゾ。【ヘスティア・ファミリア】副団長であり、王様を目指す銀髪の少年。

 

(ずっと、本当にずっと変わっていないんだね、君達の夢は)

 

 不変の存在であるヘスティア達、神々とは違う、人間の精神。変質を引き起こすのが、人間という存在の可能性なのだとヘスティアは考える。幼い頃から願い続け、それに向かって走っている二人のステイタスを見比べて、ヘスティアは笑みを浮かべた。

 

 ベル・クラネル

 Lv.1

 

 力 :G255

 

 耐久:H101

 

 器用:G255

 

 敏捷:F399

 

 魔力:I0

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

 ・早熟する。

 ・憧憬、懸想への想いが続く限り効果持続。

 ・憧憬、懸想への想いの丈により効果向上。

 

 

 

 ヴィジル・ガロンゾ

 Lv.1

 

 力 :G255

 

 耐久:H101

 

 器用:F399

 

 敏捷:G255

 

 魔力:I0

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

虚飾の王冠(ヴァニティ・クラウン)

 ・早熟する。

 ・王となるまで効果持続。

 ・理想とする王への想いの丈により効果向上。

 

 

 

 有望そうな【経験値(エクセリア)】を抽出し、スキルとして発現させたヘスティアだが、このスキルが未だ誰も知らないスキルの可能性を感じ取り、秘匿している。ベルも、ヴィジルも嘘が苦手だ。もしもこのスキルを神が知ったら……面倒なことになる。

 神々は基本的に娯楽に飢えているのだ。そんな彼らは『レアスキル』だとか、『オリジナル』だとか……そういった単語に凄まじい関心を向ける。子供すらドン引きするレベルで、全力でちょっかいをかけたがる。ニヤニヤしながら。

 中にはもう契約済みだというのに、引き抜こうとしてくる愚か者すら現れる始末。下界の住民達の方がまだ民度があると言えよう。彼らの夢を叶えてあげるためにも、ヘスティアはこのスキルの存在を自分の胸の中に秘めることにした。……まぁ、そのうち帰ってくるアルフィアとザルドには話すつもりではある。

 

「……よし! ベル君とヴィジル君が帰ってくるまでに少しぐらい夕飯の準備をしておこうかな!」

 

 ザルドに叩き込まれた料理の腕をここで活かす時だと気合を入れて、ヘスティアはキッチンへと向かった。

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