──ヘスティア・ファミリアが
「親愛なる冒険者同志ご一同。仲の良し悪し入り乱れ酒を酌みかわすのもまた一興。来るもの拒まず、去るもの追わず、この世界一の大宴会、英雄万博にぜひ参加されたし。ガイア・ファミリア団長、ブエナ・フェスタ。」
届いた一枚の招待状を前に呆然としているのはファミリア団長ベル・クラネル。
『剣姫』の記録を遥かに上回る速度でのランクアップに加え、
直近では、フレイヤ・ファミリアとの
「おー!やったな!ベル君!遂にボクたちにも、いろんなファミリアから招待が来るようになったんだぜ!」
「はい。よかったですね。ところで『英雄万博』…って?」
だが、何やら訳知りのような言動を見せたヘスティアも揃って首を傾げる始末。
そんな様子を見ていた
「英雄万博は何年かに一度、不定期で開催される巨大な冒険者のためのお祭りで、魔道具や食べ物、武器に情報など、世界中から珍しいものが集まるのです。」
「ほぇー。なんか凄いんだね。」
「へー。リリはいろんなことに詳しいね。」
「これくらいはサポーターとして当たり前です!というか開催地は毎回オラリオなのでここに生きてる人なら誰でも知ってます。」
純粋な眼差しと称賛にまんざらでもないような、むず痒いような態度を見せるリリルカ。
だが、そこで「ただ…」と不可解な点でもあるかのように語り始めた。
「英雄万博って基本的には『飲んで食べて騒ぎましょう』っていう形で行われるので、主神であるヘスティア様に招待が届くのならまだ分かるんですけど、何故わざわざ特定のファミリアに招待状を届けるのかわからないと言いますか…少なくともリリがソーマ・ファミリアにいた時はこんなことありませんでした。」
「ソーマ・ファミリアにいた時は…ってことはリリは見たことがあるの?」
「はい。記憶に残っているのは2回です。1度はリリがまだ子供のとき。2度目は5年前です。まぁ、リリはあんまり参加できたことはないんですけど…」
ソーマ・ファミリアでの出来事はリリルカ・アーデにとってまさしく思い出したくもない地獄の記憶であったという表現が一番正しい。
食べることに困り、強くもなれず、搾取され、差別され、己の全てを否定され続けた最悪の歴史。
ベルが彼女に手を差し伸べるまで、盗賊紛いのことを続けなければ生きることも困難であった彼女にお祭りを楽しんでいる暇はなかったのだ。
「「リリ/サポーターくん」」
少し俯く彼女にベルとヘスティアが真剣な眼差しを向けた。
リリルカの手を握りベルが言う。
得意げな様子を醸し出し、主神が語る。
「なら楽しもう!今回は!みんなで。」
「みんなで今度は楽しもうじゃないか。ボクの奢りでお祭り特製じゃが丸をご馳走してあげるぜー。」
優しい少年と愉快な主神。
リリルカは改めて自分は心も身も2人に救われたのだと認識して、笑みをこぼす。その様子に2人も満足したのか笑みを浮かべる。
その時、ちょうどノック音が響き、赤毛の男と黒髪の女剣士、金髪の女獣人が部屋に入ってきた。
「おうおう。なんだ?そりゃあ。招待状か?」
「ヴェルフ、命さんに春姫も。」
ベルは豪奢な装飾を付けられた招待状をヴェルフに渡す。
ヴェルフは当初は顰めっ面を浮かべていたが、すぐに何かに納得したような表情をした。
「なるほど、英雄万博か。確かに毎回5、6年周期くらいだからそろそろか。」
「ですね。最近の街々はどこか活気だっているような印象です。」
元々へファイストス・ファミリアあるいはタケミカヅチ・ファミリアの一員として数年前からオラリオにいた2人である。加えて、前回の英雄万博は5年前…暗黒期終焉の年に
「そう言えば、ベル殿は初めてでしたか?」
「はい。僕もヘスティア様もまだここにきてから1年経ってないので。」
『1年経っていない』
この事実に改めてヴェルフと命は若干引きながらも、苦笑いする。
「俺ぁ、一回だけしか行ったこと無いが、あの頃はガキだったから椿に無理矢理連れてかれたな。」
「私はアイシャ様が連れ出してくださり、少しだけ楽しみました。冒険者の皆様も住民の方々もみんな笑っていて楽しそうでした。」
「私はファミリアの皆と遊びに出かけました。特に前回は暗黒期明けだったので人の活気とはこうも素晴らしいものなのかと改めて感心しました。」
それぞれなかなか癖の強い思い出ではあるが、皆の意見は共通して『楽しかった』である。ベルやヘスティアは実に初参加となる大祭り。皆で『楽しむ』…そんな優しげな雰囲気の漂うヘスティア・ファミリアにやはり自分はここにきて正解であったとベルは再認識する。
「なんだったら案内でもしてやろうか?まだ始まっちゃいないが、今回の英雄万博は今までに類を見ない文字通りオラリオ全域を使った超大規模らしくてな。主催のガイア・ファミリアが空き地や売地やらをとんでもない勢いで買い占めたり、賃借りしていってるんだ。ベルは最近バタバタして自由に身動き出来なかったから知らねぇかもしれないが、もう街は祭りの前触れで大騒ぎしてるぜ。」
「ほんとう?じゃあぜひお願いしたいな。」
「任せとけ!」
盛り上がる男2人にヘスティアが身を乗り出して言う。
「そうとなれば、もちろんボクも行くよー!」
「あなたはじゃが丸君のバイトがあるでしょうが。」
リリルカにそう言われて落ち込むヘスティアではあったが…
バイト休止というわけにもいかなかった。
ベルのためとは言え2億の借金を後先考えずに請けたのだ、当然過ぎる結果である。
こうして、ヘスティア・ファミリア(主神除く)によるオラリオ一日ぶらり観光が決定したのであった。
◇
──とあるじゃが丸君の屋台
「じゃが丸君、3つお願いします。」
「どう”じで”だよ“お”お“お!!!」
周囲の視線を気にすることもなく叫ぶ、バイト女神の姿を見たとか見てないとか。
◇
── 2時間後
「さっすが!アルゴノゥト君!やっぱり凄いね!」
「ベル様に近付きすぎです!離れてくださいー!」
サポーターが。
「これ…すごく美味しい。ベルも食べる…?」
剣姫が。
「アイズさんから離れなさい!ベル・クラネル!」
「アイズから離れろ!兎野郎!」
「どうした?ヴェル吉。5年前と全く変わってないではないか!弾が景品に全く当たってないぞ?」
「うるせぇ!あと5発ある…すぐに落としてやるよ!」
「
「兄様ー!一緒に遊ぶにゃ〜!」
「仕事あんだろ!離れろやッ!!」
「中々美味いな…これが東洋の拉麺という食べ物か。」
◇
ベルは思った。
どうしてこうなった…?