スポーツ界を表現するのに「男らしさのアリーナ(The Arena of Masculinity)」という言葉がある。近代スポーツは、筋力など男性に優位な規範に基づいて発展してきた。
「より速く、より高く、より強く」。オリンピックの価値観はその象徴で、女性が自分らしくあるのは簡単ではない。ましてLGBTQなど性的少数者であれば、なおさらだ。
スポーツとジェンダー・セクシュアリティー研究を専門とする関西大准教授の井谷聡子さん(41)。幼い頃からスポーツや体育のあり方に疑問を感じてきた。高校卒業後、米国にわたり、苦学を重ねて研究者になった。自らのセクシュアリティー(性的指向や性自認)について、旧来の規範に当てはまらない「ジェンダー・クィア」と形容する。
「クィア」とは性的少数者を幅広く含めた概念で、当事者がポジティブな意味で使う言葉。男女二元論にとらわれたくないとの思いも込めている。そんな井谷さんは自らの歩みも振り返りつつ、こう訴える。
「もっと違うスポーツのあり方があるはずです」
高校教諭の両親のもと、兵庫県西宮市で生まれ育った。幼い頃から運動神経がよく、走るのは男子に負けないくらい速かった。小学校低学年の頃、一つ上の兄が野球を始めると、井谷さんも左利きの小さなグラブを買ってもらった。「両親は平等に運動やスポーツの機会を与えてくれました」
だが、兄と同じようにできなかった。当時、地元のスポーツ少年団に男子は小学校の低学年から入れたが、女子は4年生から。さらに野球をしている女子は一人もいなかった。
「野球は男子が前提で、入りたいとは言い出せなかった」とサッカーを選んだものの、長くは続かない。「約100人の部員のうち女子は2人。コーチから基本を教わることもなく、見て見ぬふりといった扱いでした。あの時の疎外感は今もはっきり覚えています」
一方、5年生から始めたバレーボールは楽しかった。2年間夢中になったが、新たな壁にぶつかった。思春期を迎えると、自分の性別に違和感を抱く。
「もともと男子のような格好が好きでしたが、5年生の頃からはっきり認識するようになりました。中学になると『好きな男の子は』といった会話で盛り上がるのに、自分はその中に入っていけない。制服はスカート、体育もブルマ。いくつもの壁があり…
関西大准教授の井谷聡子さん=本人提供
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