書き溜めもたまったことで次回予告を復活させます!
僕自身結構楽しみにしていたんですよ。
Side =?=
暗闇に沈む夜の街を月明かりを頼りに歩く。
けれど、それの届かない場所が、この町に、この世界には必ず存在する。
その場所に足を踏み入れれば、本当に頼りになるのは自身の感覚だけだと認識することが出来る。
夜闇は、その者の強さを明確に映し出す。
俺は迷うことなく歩き出す。
このイカレた世界で、イカレたことをするにはもう数人の忠実な部下か、同等の立場にいる相棒が欲しかった。
だから、俺は情報屋から聞きだした賭博場。
所謂裏カジノと言う奴に向かっていた。
この世界には確かにアイテムの譲渡や金の受け渡しなんかは可能だ。
それを、賭博に使われるシステムは、より厳格に強制的に行わせる。
現実の脳味噌にあの機械が付いているならイカサマは通用しない。
それを裏カジノと言うのにはいささか語弊があるのかもしれないが、そんな場所には決まって常勝者がいる。
絶対に存在していると思っていた。
――こちら側の人間であり、才能を持った人間を。
階段を下り、扉を開けると、狭い空間に十人にも満たないプレイヤーたちが卓を囲んでいた。
戦っているのはその半数程度。
オレが入ってきたのを無視して、カードをひっくり返し、勝者が決定したようだ。
「カァーーーーーーッ!!!!なんで勝てねえ!」
「いっつもこうだ!ちまちました賭け金の時は負けるくせに……」
「大一番になりゃすぐコイツの独壇場だ!」
「ホントはイカサマしてんじゃねえか?」
負け犬が在り来たりな捨て台詞を吐く。
(なるほど、期待通りの腕前だな。……ただ)
「イカサマなんて無いよ。自分のイカサマは自分の脳が知っている。それをこの世界の『神』は常に見ているんだから」
チップをかき集めるのは常勝者の証である中央の椅子に座る男。
安物のマスクをするその表情は半分隠れてしまっているのだが、露出した顔の半分だけでも、彼がここにいることへの場違いな雰囲気は一目見たときから気付いていた。
――幼い。幼すぎる。
それも、椅子に深く座っているから更に身の丈は低く、背凭れに付けられた赤いマットの先が見えるくらいだ。
足を組みながらテーブルに両足を乗せ、指を組んで顔を下げる仕草は、まるでここを仕切る歳食ったボスの様。
白みがかった金髪。
グレーの瞳で俺を一瞥すると、椅子に手をかけて立ち上がった。
その風貌に、一種の恐怖を俺は感じていた。
(違う、これは武者震いだ)
目の前の男の背丈はオレから見ても見下ろせるほどに小さい。
ナーブギアの仕様年齢制限はあったはずだが、それにしても男は小柄だった。
まさか、こんな奴が密かに話題になりつつある強運の持ち主であることに、この世界のイカレ具合に心が疼いていたのだ。
「えっと、自分と戦いに来た人ですか?」
フードに隠れた俺の顔を見上げる奴の顔。
その眼の奥に、何か強い欲を感じ取った俺は、不敵に笑った。
間違いなく、コイツは本物だ。
――俺と同等。いや、それ以上の欲望を持っている。
「いや、少し外で話そう」
「そうですか、戦わないのなら自分もちょうど帰る所でしたので」
彼は残された奴らの方に振り向くと、満面の笑みを浮かべて言い放った。
「また、御会い致しましょう。それでは」
悔しそうな、憎しみの目を向ける負け犬どもに目もくれず、少年は扉を開けた。
「あ、すいません。ちょっとそこのお店で食事をとりたいのですが、良いですか?」
「ああ、構わない」
流石に賭博場で戦っているだけあって、初対面の人間への対応、肝っ玉も十分。
まだまだ何かを隠し持っていそうなその姿に、オレは笑いを隠せ無かった。
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「じゃあ、ここでいいですかね」
少年も自身が呼び出されたことにただ事ではないと判っているのか、足を運んだのは転移門のある場所とは対極の位置にある噴水広場。
ただ、こんな深夜の時間帯に、存在するのは俺達二人のみ。
「食べます?」
そう言って、少年はとても夜に食べるモノとは思えないほど巨大なホットドッグを両手一つずつに取り出した。
「いや、いい。俺は話に来ただけだからな」
「そうですか」
そっけなくそう返すと、少年は大きく口を開いて、両手にある両方のホットドッグに被り付いた。
まるで飲み物でも飲んでいるのかと言うほどの速さで、咀嚼音が消えた。
「それじゃあ、手早く済ませましょうか」
「そうだな」
手に持った食べ物だけを見て、少年はそう言い俺も彼には目を向けず、口を開いた。
「お前、見たところ餓鬼じゃねえか、何であんな賭博場に居やがった」
大きな飲み込む音の後で、息を吸う音が聞こえた。
「その答え、既に自分の手にあるじゃないですか」
「そりゃ一体……」
少年の方に目を向けると、先程も見たとおり巨大なホットドックが、もう半分ほど無くなってしまっているが少年の両手の上に置かれていた。
「……まさか」
「そうです、自分は、ただお腹の減った時に食べ物が食べれればそれで良いんですよ。元々そのためにこの世界に来たようなモノですから」
そう、仮想世界でいくら物を食おうが現実世界には何の影響は無い。
それは、まさしく今俺が成そうとしていることと同じ原理だ。
「それで、あいつらから金を巻き上げてたってことか」
「はい。自分、ここぞと言う時は悪運強いので」
さて、どう言葉を繋げれば、コイツを引きいれることが出来る?
「とんだ悪食野郎だな」
「金は食らうモノですから」
「自分は、美味しくても不味くても、本能に従いただ食らうだけなんですから」
放り投げたホットドッグを大口を開けて丸呑みにした奴の姿を見て、俺の脳裏に一つの電流が走った。
まさに外道、気違いにも程がある提案だ。
だが、これをもしもコイツが呑めば、コイツも大概の野郎だ。
フードを外して、俺は奴の方を向いた。
不敵に笑い、心に直接語りかける。
「じゃあよ、人を食ってみたくはねぇか?」
そう、現実世界で決して味わえることのない食物。
この世界では、それが可能なのだ。
「……バカなの?」
その在り来たりな言葉の中に、彼の上半分しか見えない表情に、確かな好奇心を感じた。
まだだ、まだ安心するのは早い。
「興味はあるだろ?この世界では何をやろうと確認が出来るわけがない。例え、誰かをぶっ殺したところで、現実世界で本当に人が死んだなんて誰もそれを確認する術が無いんだからな」
「確かに、そうだね」
「だから、俺と一緒に来い。最高のショウを見せてやる」
立ち上がり、奴の姿を正面から見た。
賭博場で戦っているからある程度肝が据わっているのか、幼いながらも俺の言っていることが冗談ではないと解っていながら、恐怖の感情を見せることは無かった。
数秒の沈黙の中、少年はウィンドウを動かし右手に握られたのは一枚のコイン。
(なるほど、欲しいモノは勝って奪えってことか。言い度胸だ、流石悪食ギャンブラーだな)
「ルールは簡単。コイントスです」
表に製造日を示すその月の植物が彫られ、裏は鋼鉄城アインクラッドの全体像が彫られている。
「自分が投げますから、手に握った時に表か裏か選択。当てた方が勝ちです」
「当然、イカサマは無しだな」
「自分、ギャンブラーですから。それともコインはそちらのでもいいですよ?」
言葉運びが非常に上手い。
伊達に狡賢い大人連中から勝ちを拾ってきた訳じゃねえってことだな。
「時間が惜しい、始めろ」
「はい」
瞬間、軽やかな金属音を上げて金貨が回転しながら宙を舞う。
よって、俺達二人の視線はそのコインに注がれる訳だが、俺は決して奴から目を離さなかった。
この勝負は賭博場で行われるシステム外のギャンブル。
――何でもアリ、だ。
それにコイツが仕掛けて来た勝負だ、何らかの策があるに違いない。
そして、奴はあくまでも『普通』に、左手でコインを握り、右手の甲に手でコインを隠すように置いた。
「それじゃあ、あなたからどうぞ」
まだ、何かをする様子は見えない。
いや、もう既に、それが終わっているんじゃないか?
「……もし」
「……あ?」
「自分が負ければ貴方について行きます。貴方のお陰で興味が湧きました。ですが、自分は自分なりの方法を探します。……ですが」
「貴方が負ければ、貴方を何としても攻略組に突き出します。貴方のことですから、前科とかあるんじゃないですか?」
ポーカーフェイスを貫いてはいるが、声色には僅かに勝者の余裕が感じられた。
本当に、容姿に年齢の合わない奴だ。
無駄に察しが良い、加えて食べ物にしか興味のなさそうな奴には不必要にも思われる曲刀から凄まじい何かを感じる。
(魂まで食らうつもりかよ、この餓鬼は……)
だが、そうでなくては困る。
ゲーム序盤で、こんな愉快な展開を味わえるとは思ってもみなかった。
俺にとっては嬉しい誤算でしかないのだがな。
「さあ、選んでください」
――どうせ、そのマスクの下で嗤っているんだろう?
――けどな……
「裏だ」
「じゃあ表で」
そう、少年は左手で抑えた手を上げようとする。
そして、その指が金貨に掛けられた……。
――刹那。
俺はその左手を握った。
ポーカーフェイスの奴の眉が、一瞬だけ動く。
やはり、人間ならこういった仕草は反射的に起こってしまうモノだ。
それは、自分の仕掛けた巧妙なまでの罠が完全に暴かれた時。
「悪いな、この手は俺が上げさせてもらうぜ」
少年は何も言わない。
指を掛けていたコインはそのまま右手の甲に落ち、姿を現した。
――コインの柄は、鋼鉄の城。
「お前、握った瞬間に手の感覚で表か裏か判ってやがったな」
そう、だから一度コインを手に握ったのだ。
その一瞬はコインを取った人間だけに来る絶対的なアドバンテージ。
殆ど自然な動きであるからこそ見過ごしやすいのだが、それが逆に不信感を生んだ。
「流石にこの勝負には確実な勝利を望んだか。……それが敗因だったな」
俯いて顔の見えなくなった少年にそう告げると、コインを手から引っ手繰った。
「それじゃ、早速来てもら――」
「いえ、寧ろこれくらいには気付いてもらわないと、例え負けてたとしても後ろからぶっ殺してましたよ」
顔を上げた少年の顔にマスクは無かった。
この世界が現実であると解っていても、奴の顔は三日月型に大きく裂け、捕食者の表情を俺に向けていた。
「随分と腕には自信があるんだな、ギャンブラー」
「そりゃ大勝負には負けたことは無いからね。ま、その時は本当に運で勝負してたからだけど」
ウィンドウを動かして、少年はまたも食べ物の入っている袋を取り出した。
それを一気に逆さまにして中身を呑みこむように頬張った。
パッケージを見る限り、金平糖のような甘菓子だと思うのだが。
少年は顔を前に向けると、凄まじい音を立てて口の中の食べ物を噛み砕いた。
何度も何度も、三十秒程で食事が終わるのを、俺は突っ立ったままじっと見ていた。
「それじゃあ、一個いります?」
そう言って、さっきの袋を差しだした。
袋が消滅してないと言うことはまだ中に食べ物が入っている証拠だ。
俺はそれを受け取ると同じ様に袋を逆さにし、中に残っていた最後の菓子を手に取った。
「これで、今日から自分らは仲間です。宜しくお願いしますね《PoH》さん」
初めてニヤリと嗤ったその顔に、俺も奴の前で初めて一息を吐いた。
「元々解っていたのでしょう?自分が貴方のことを知っていることを」
「流石だな《悪食》」
「いえいえ、何せ金も、食い物も、情報も、武器も、命も――」
「全て食らい尽くしてこそ《
「よし、それじゃあ行くぞ。愉快な舞台へ、イッツ・ショウ・タイム!」
「ははは、期待してますよ。
Side =シンディア=
「SAO開始から初のPKプレイヤー《ジャック=ガンドーラ》ね」
「おっ、やっぱりシンちゃんも興味がおありな口カナ?」
「いやー、流石に攻略組でも無いわたしなんて一目見ただけで卒倒しちゃうかもね」
今、わたしがいる場所は第十層主街区《コーム・サンクテュル》。
その転移門近くのカフェでお得意さんであるわたしの情報屋、《鼠》のアルゴと共に呑気にコーヒーもどきの飲み物を飲んでいた。
第十層が攻略されたと聞いてアルゴに最新の情報を聞いていたところなのだが、まさか玲がそんな事をしているなんてね。
――何個か用意していた答えに見事的中したからいいんだけど。
それは良いとして、今のわたしの力は本来なら攻略組でも問題の無い力なのだが、今はまだ隠しながら行動している。
もちろん、それはアルゴにもばれていないし、《はじまりの街》で使って以来一度も本気は出したことが無い。
兎に角、今のわたしは自由気ままに過ごすことを生業としているのだ。
「そういやシンちゃん。最近入った耳よりの情報があるんだけど、どうダ?」
けれど、そんな日常に少しくらいスパイスがあったっていいのではないか。
「へえ。面白そうな顔して、どうしたの?」
「他のヤツに《聞き耳》で聞かれてるかも知れないから、耳打ちで伝えるヨ」
そう言って、顔を近付けると、僅かに聞こえた声を一語一句聞き流すこと無く記憶する。
「《ルクスリア・ゴールド・ルナシリーズ》獲得クエスト……ねぇ?」
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まさかのPoH視点。
口調とかほぼ全部妄想ですね。
どうして彼視点に切り替えてやらなかったのか…。
コイントスのイカサマですが僕はよくやりましたね。
十円玉とか結構やり易いんですよね。
玲以外の視点で書くといつもの調子が戻ってきた感がありました。
冬休みにも入るんでもっと頑張りますか!
だが、次回はめっちゃ苦労しました《LGL》獲得クエスト其の壱です。
クエスト考えるの辛いっす。
【次回予告】
(あー、今日も楽しいなー!)
――その数、実に七つ。
――そもそも、正義の定義とは別にあることをわたし達は知っている。
――所謂、民衆にとっての『希望』だ。
次回をお楽しみに!それでは。