仮想世界に棚引く霧   作:海銅竜尾

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はい、どーも竜尾です。
なんだかんだで初投稿から三カ月経ちましたね。
と、言う訳でいろいろ集計してみました。
UA数45000突破!
お気に入り件数700突破!
合計PV数200000突破!
本当に感激です。
こう、僕の作品が愛されてるんだなってヒシヒシと伝わってきます。
テンプレな事しか言えないですが読者のみなさん有難う御座います!
引き続き物語をお楽しみください。



彼らの役目

==========

 

それから、俺達は順調にアルンへと足を運んだ。

だが、俺達は何者かに後をつけられていたのだ。

リーファが言うには火属性の使い魔を使ってくるのは間違いなくサラマンダ―の連中であると言う。

もしかして彼女を助けたときに切り捨てた奴らが復讐に来たのかと思ったが、ここまでつけていると言うことは最初から俺達の後ろに張り付いていたはずだ。

シルフの街を出たあの時から……。

追跡も気になるが、目の前に広がる広大な湖の中に架かる橋を見て、ここまでくればこの鬼ごっこも終わりだと思ったその時。

サラマンダーのメイジの放った魔法により、橋の表面から壁が浮き上がり、行く手を阻んだ。

前には壁、後ろにはサラマンダーの部隊、両脇は超高レベルのモンスターの潜む湖。

つまり、二対十二の戦いを俺達は強いられたのだ。

いくらSAOで鍛えていても、戦力差は歴然。

ジャックが攻略組からの総攻撃を危惧していた理由を身を持って知る。

敵は壁役を前に置き、後ろから回復と攻撃の魔法を使う者達に別れ、攻撃を開始した。

俺の攻撃も盾に防がれ、すぐさま回復されてしまう。

リーファは俺の回復だけに専念させているが、やはり回復量が足りない。

無理を悟った彼女は死んででもいいから諦めようと叫ぶ。

途端に、あの世界での光景が蘇った。

 

――最後の戦いで、消えていった最愛の人。

 

瞬間、前に確認しておいた自身の使える魔法の一つを思い出した。

確か、自分の攻撃スキル値によって姿を変えるスプリガンの幻影魔法。

埒が明かなくなったサラマンダーの一斉攻撃をリーファの協力もあり、防ぎきった俺はその魔法を詠唱する。

そしてイメージした。

 

――これほどの人数を蹴散らすにはどうすればいい?

 

――恐怖を植え付けるんだ。

 

――恐怖の存在になるのではなく一人一人心の中に絡みつくように。

 

視界が再び開く。

「「え……!?」」

後ろと前から同時に声が上がった。

想像の象徴はやはり《殺人鬼》。

俺の体格は先程とは何も変わっていない。

ただ、色が変わっただけだ。

影の色と変わりない程に身体は漆黒に染まり、服と肌の判別すらつかない。

代わりに髪の色は全て輝く黄金色になり、瞳の色は血走る赤。

外面だけならただのイメチェンだと思えるだろう。

だが、一番変わったのは俺の思考と覚悟だ。

忘れてしまった感覚を呼び起こす。

『殺す』と言うモノがどういったモノなのか俺は知っていた。

だから、彼らも時間が止まったように思えていたのだろう。

 

――いつの間にか前衛にいた三人が切り刻まれていたことに。

 

「総いn……」

もう遅い。

リーダー格と思われるメイジの懐に俺はもう入り込んでいる。

男は俺を見て何を思ったのだろうか。

上げられ顔には金髪と真っ赤に染まった眼。

不気味なほど黒い身体から放たれる高速の斬撃。

即座に壁役と指揮者を失ったプレイヤー達がパニックに陥るのは必至だった。

視界に映る理解不能な光景に恐れ慄いているのだ。

ゆっくりと身体を起こし、赤い目を向ければ本来感じることのない『死』の到来に身体が震えている。

一歩ずつ歩いて動かなくなったプレイヤーを斬り伏せた。

ここまでくればもう俺の勝ちだ。

一人だけプレイヤーを残して息を吐くのと同時に俺にかけていた幻影魔法は解けた。

その雰囲気の変わりように生き残ったサラマンダーは唖然としていたが。

比較的俺に怯えてなかったヤツを残しておいて正解だった。

リーファも多少動揺したようだが、スプリガンの魔法の特性か何かと勘違いして強く言及はされなかった。

彼女自身認めたくはないのだろう、急に目の前の少年が恐怖の対象に変わってしまったなんて。

サラマンダーには先程PKして手に入れた金とアイテムを渡すと交渉し、代わりにサラマンダーの動向を聞く。

そうして彼を逃がして俺達は世界中のある《アルン》へと向かう一つの中間地点《ルグル―回廊》へ行こうとした。

刹那。

 

「あげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃ!!!!!!!!」

 

酷く懐かしい狂気的な笑い声が湖に響いた。

同時に上がった大きな水飛沫。

二人のプレイヤーと一体の巨大な何かが水面から飛び出す。

見れば、巨大な何かはリーファが言っていた水属性のドラゴン。

雄叫びをあげているその身体に、一人のプレイヤーの両手足首から伸びる紫色の鎖が巻きついている。

ドラゴンは必死にもがくが、四本の鎖は固定された様に微動だにしない。

「これで……終わりだ!!」

もう一人のプレイヤーの手に握られた刀はドラゴンを貫き、水竜の巨体は空中で爆散した。

「嘘……あれって《インプ》と《サラマンダー》でしょ……」

リーファには信じられないと言った光景だろう。

俺達は、あの世界で何度も同じ景色を見て来た。

やはり、この世界に再び彼は降り立っていたのだ。

それに隣にいる悪趣味なバンダナをした刀使い。

どうして彼らが共にいるかは解らないが、とにかく話を聞かなければ。

「あ?」

湖の上で停滞する金髪のプレイヤーが俺達の姿を見付けた。

その顔を見て、俺は間違いないと確信する。

橋の淵に足をのせ、息を大きく吸った。

「キリト君な――」

 

「ジャアアアアアック!!!!!」

 

俺の叫び声は湖を反響して消える。

リーファは不安そうな表情を浮かべている。

「すまない」と心の中で謝罪すると二人が俺達の方へと向かってきた。

腰にぶら下げられた短剣がその姿に似つかわしくない純白の光を放っている。

俺達の近くに着地し、濡れた髪の毛を指で上げると、狂気的な笑みで口を開いた。

「黒一色とは変わらねぇな、キリト」

「お前こそ、あの笑い方どうにかならないのか?」

SAOの頃と全く同じ口調。

懐かしさを感じながら、俺は彼に一番と言いたかったことを口にした。

「この世界でもPKをしてたのは殺人を止められないからか」

「いや、どうせここじゃ人は死なねぇし……一番の目的はテメェを誘き出すためだ」

「……何故だ」

彼の答えには驚いたが、すぐ冷静になる。

 

「昔っから普遍のモノだろ?お姫様を救うのは《勇者》様だからだよ」

 

「どういうことなの……キリト君。それに、この人は?」

その真意は解らなかったが、リーファに肩を叩かれSAOの時と錯覚していた意識を戻す。

「ああ、そういえば紹介してなかったな。コイツは《ジャック=ガンドーラ》。まあ、前にゲームで一緒になった知り合いだ」

「《ジャック=ガンドーラ》……どこかで聞いたような……」

あ、マズイ。

ついアバターネームを全部喋ってしまったが、彼女はジャックのことを知っているのだろうか。

ジャックはニヤニヤしながらリーファを見ているが、数秒考え込んだ末。

「ま、いっか。ジャックさんですね、リーファです。宜しくお願いします」

よかった、彼女は知らないみたいだ。

もしジャックのことを知っていたら……リーファは俺のことを疑い、領地を抜けてまでついてきてくれた彼女を後悔させてしまうところだった。

肩を撫で下ろすと、俺は次にジャックの横の男を指差した。

「で、こっちが《クライン》。同じく俺の知り合いだ」

「宜しくお願いしますねクラインさん」

「おう、よろしくな譲ちゃん。ホントに久しぶりだなキリトよお。あの時以来か」

あの時とは、SAOから還ってきて総務省の男に聞いた情報を下に会いに行った一カ月ほど前のことだ。

彼も、まだ終わらないSAOの悪夢に悩まされていた。

「けど、どうしてお前ら一緒に行動してるんだ?」

「偶然って奴だよ。ジャックにキリトを誘い出すって話を持ちかけられてよ。ここの《グランドクエスト》は相当難しいらしいしな」

「じゃあ、これから《アルン》に向かうんだな」

その言葉にジャックは短剣を引き抜いて答える。

「あ、そう言えば《レコン》からのメッセージて何だったんだろう」

そんなとき、リーファがそう声を上げた。

《レコン》というのはリーファの知り合いの少年で、ここに来る少し前。

ちょうどサラマンダーの追跡に気付いた時にリーファにメッセージを飛ばしていたのだ。

だが、結局何を言いたいのか解らず、サラマンダーとの交戦ですっかり忘れてしまっていた。

「繋がらないなら一度向こうで連絡を取ってきたら?」

俺がそう言うとリーファは少し考え込むように黙った後で手軽なベンチに座ると右手を振るった。

軽く挨拶をして、ログアウトボタンを押したのかその身体から力が抜ける。

「お兄ちゃん!お久しぶりです!」

ここまで黙っていたユイが飛び出し、ジャックの顔の辺りを旋回する。

「《ナビゲーション・ピクシー》か。まるでSAOの続きだなこりゃ」

ジャックはそう言いながら手を顔下まで上げるとユイはその手の甲に乗った。

「そういやさっきの娘も元SAOプレイヤーか?」

「いや、ここで知り合ったプレイヤーだ。それでもかなりの手足れだけどな」

クラインは彼女の顔を一瞥すると何かを悟ったような顔をして呆れる様な視線を俺に向けた。

「なんだよ」

「大変そうだなってっうぉい!」

なんか癪に障ったので殴りかかったが、すんでのところでかわされてしまった。

全く、と心の中でため息を吐くとベンチに座っていたリーファが急に立ち上がった。

どうにも切羽詰まった様子だ。

「キリト君、ごめんなさい」

彼女の口から出たのは謝罪の言葉。

黙って話を聞くと、もうじき《シルフ》と《ケットシー》の間で同盟の調印が行われるのだが、そこにサラマンダーの軍勢が向かっていると言うことだ。

だから、彼女はそこへ向かわなければならない。

リーファとしては、ここで俺を巻き込みたくないのだろう。

俺が急いでいることを彼女も十分に解っている。

まして俺は《スプリガン》だ。

割り込めばさらに事態は混乱するだろう。

けど、ここまで送ってきてくれた恩もある。

「や、俺も一緒に行くよ、もちろん」

「え、え?」

「時間を無駄にしちゃったな。ユイ、走るからナビよろしく」

「りょーかいです!」

ジャックの手から小妖精が肩に乗るのを確認し、リーファの手を握ると歩きながら平行するジャックとクラインの方を向く。

「悪い、少し手伝ってくれないか」

「貸しだぜオイ」

悪い笑みを浮かべたジャックに苦笑いを浮かべながらも同意する。

次の瞬間、状況の掴み切れてないリーファの手を強く握り、俊敏値全快で走り出した。

一気に洞窟を駆け抜け、モンスター達を無視して走り続ける。

本来なら《トレイン》という非マナー行為そのものだが、もう時間もない。

それに、ジャックたちも居る。

洞窟の出口である光が見えてきた。

後ろを振り返ると、ジャックは鎖を展開し、クラインも刀を抜いて戦闘態勢に入っていた。

「すまない、任せたぞ二人とも!」

「おう、任されたぜ!」

直後、視界が真っ白になる。

大量のモンスターとジャックとクラインを残して俺達はカタパルトよろしく飛び立った。

背後で《殺人鬼》嗤う声を聞いたのを確認すると、俺とリーファは飛行速度を高め、調印会場へと急行した。

 

==========

 

俺達がついた時にはサラマンダーの大軍勢が今にも両種族への総攻撃を開始しようとしていた。

俺は単身でその中心に割って入り、自分がスプリガン=ウンディーネ同盟の大使であると盛大な嘘をぶちかました。

この場にジャックがいれば大笑いしていただろう。

そして今、俺達を攻撃すればサラマンダーは四種族を同時に敵に回すことになる。

だが、敵も俺の言うことを易々と信じてくれるほど甘くはない。

そうして前に出て来たのはサラマンダーの大将《ユージーン》。

手に握られた剣の装飾や雰囲気を見る限り、このALOでトップクラスのプレイヤーの一人と言うことだろう。

彼曰く、「大使と言われるからには実力を示せ」とのこと。

「俺の攻撃を三十秒耐えきったら、貴様を大使と信じてやろう」

「ずいぶん気前がいいね」

奴のモノとは違う質素な剣を抜いて構える。

ゆっくりと空中へ浮かび、一対一の環境が作り出された。

ユージーンは剣を斜めに構え、太陽の光を刀身に反射させ俺の顔に光を当てたのと同時に予備動作なく動きだした。

剣で防ごうと即座に腕を動かしたが、奴の剣は俺の剣をすり抜け驚愕こそしたが、身体を逸らして飛ばされはしたものの直撃は免れた。

恐らく、あれがあの剣の特殊能力と言ったところだろう。

なら攻撃させなければいいと連続攻撃を加えるが、ユージーンは的確に両手剣で弾き返していく。

すでに三十秒は立っているのだが、相手は止める気はないらしい。

結局どちらかが倒れるまで戦いは終わらないのだ。

が、さすがに手数の足りないと思った俺は幻惑系の魔法を発動し、リーファの剣を拝借すると再びユージーンの下に向かった。

ユージーンの重突進攻撃は一本目の剣を透過したが、リーファ借りた二本目の剣で俺の身体ギリギリで攻撃を受け流す。

すぐさま俺は二本の剣を大いに振るった。

攻撃の最中、ユージーンは反撃を試みるが透過は連続では使用できず、二本目の剣で弾いてそこからは俺の一歩的な猛攻撃。

驚愕の表情を浮かべた大男の身体はエンドフレイムを巻き上げ、アバター全体が燃え崩れた。

一瞬の沈黙の後、シルフとケットシーたちに拍手と歓声を浴びる。

驚いたことに、サラマンダーまでそのデュエルに大歓声を上げていた。

俺はユージーンの蘇生を頼むとシルフの領主である《サクヤ》と言う女性プレイヤーが蘇生魔法を使ってくれた。

目覚めたユージーンを説得してくれたのはリーファを助けたときに見逃した《カゲムネ》というプレイヤーだった。

彼は俺の嘘に乗ってウンディーネがいたと証言したのだ。

ユージーンは軽い笑みを浮かべると納得してくれたのか、俺が拳を差しだすとゴツンと己の拳を打ちつけ、身を翻した。

彼の後に続いてサラマンダーの大軍勢は隊列を組み直すと遠ざかって行った。

呆れるように声を掛けて来たリーファにあまり状況の掴めていないサクヤとケットシーの領主である《アリシャ・ルー》にシグルドがスパイであると伝えると、彼女はシグルドに対して追放命令を下したのだ。

そして、俺もウンディーネとの同盟がハッタリであると言うと二人は絶句した。

すぐさま二人から熱烈なスカウトを受けたが、リーファが声を上げ、彼女に連れて行ってもらう約束だと説明すると二人も一応諦めてはくれた。

最後に、俺はSAO時代に膨れ上がった大量のコインを二人に渡して、シルフとケットシー同盟が早く世界樹攻略を進められるようにと促した。

二人は「早く戻って攻略の準備を進める」と護衛を引き連れて領地へと戻って行った。

夕焼けが、残された俺とリーファを包んでゆく。

再び「世界樹に向かおう」と言い出そうとしたところで、先に口を開いたのはリーファだった。

 

「【仮想世界のジャック・ザ・リッパー】」

 

その言葉に俺の動きが止まった。

「現実世界でレコンから聞いたよ。あの人はALOでも数々のPKを行ってるんだよね」

俯きながら話すリーファに対して、俺はただ頷くことしか出来なかった。

「そのプレイヤーと前のゲームで知り合いだったってことは……もしかしてキリト君は……」

その後の言葉は続かずに、二人の間に沈黙が流れた。

何を言っていいのか解らない。

もしかしたら彼女の家族もSAOに囚われていたのかもしれない。

そして、あの世界でジャックによって殺されていた可能性もある。

これは彼を最後まで止めることの出来なかった俺の罪でもあるんだ。

どう謝ろうかと考えていると、リーファが顔を上げた。

俺の顔が強張るのを感じる。

そんな俺をリーファは真っ直ぐ見据えて口を開いた。

 

「でもね、もうそんな事は良いんだ」

 

「え……」

思いもよらぬ言葉と、彼女の小さな微笑みにそんな声が出てしまった。

「だって、キリト君は私達を助けてくれた。最強なんて言われてるプレイヤーに一対一で挑んで勝っちゃうくらいに、キリト君はいい人なんだって気付いたよ」

「でも……」

自責の念に駆られる俺の手をリーファは掴んでそのまま羽根を広げて飛んだ。

 

「だから、私は君を世界樹まで連れて行ってあげる!一緒に行こう、キリト君!!」

 

夕日に照らされながら満面の笑みを浮かべる彼女に、本当に優しい子なんだなと顔が熱くなるのを感じながら、羽根を広げて「おう」と答えた。

 

==========




ジャックさん、お久しぶりです。
金髪なんですが種族はやっぱり《インプ》とさせていただきました。
絶剣さんと被りますがそこはしょうがないしょうがない。
今作キリト君の恐怖の対象を考えれば、ジャックを思い浮かべるのは必然ですよね。
そんなわけでこんな形をとりました。

あれ?原作三巻がたった二話で片付いたぞ?
サクサクしすぎで逆に怖いっすね…。

次回をお楽しみに!それでは。
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