放課後
八幡「これで、終わればいいけど……」
八幡(でも、あれだけ偏執的な雪乃がこれで諦めてくれるとは正直思えないんだよな。もしまだ続くようなら、その時は陽乃さんに相談しよう。あの人は味方ではないけど、雪乃が法を逸脱する前に何とか手を打ってくれるはずだ)
結衣「ヒッキ―!一緒にかえろう!」
八幡「ああ、そうだな……」
平塚「おい、比企谷、ちょっといいか?」
八幡「平塚先生?なんですか?」
平塚「いや、雪ノ下を知らないか?5時間目から姿が見えないと彼女の担任から報告があってな」
八幡「いや、分かんないです……」
平塚「所で八幡、おまえ本当に奉仕部を辞めるつもりか?」
八幡「……はい。もう俺はあそこで活動は出来ません」
平塚「……分かった。めんどくさいとかそういった適当な理由で行ってるわけではなさそうだな。この退部届、確かに受理したぞ」
八幡「はい……」
結衣「平塚先生なんだって?」
八幡「いや、別になんでもねえよ」
結衣「えーなにそれ超気になる!」
八幡「はいはい、さっさと帰ろうぜ」
結衣「あ、うん!」
通学路
結衣「思ったんだけど、この道ってあんまり人いないね」
八幡「ああ、わざわざそういった道を選んで帰っているからな。考えてもみろ。大して仲もよくないクラスメイトと帰り道がずっと同じな状況の気まずさを」
結衣「嫌な話……でも、ヒッキ―らしいね……」
ブロロロ
八幡「電車やバスだと更に最悪だぞ。密室だから基本逃げらんねえし気使って自分だけ座れなかったり、なんなら特に用もない場所で降りるまである」
結衣「そこまでしなくてもいいと思うけど……ヒッキ―なんだか元気だね。もしかしてゆきのんと話を付けたの?」
ブロロロロロ
八幡「……まあな。今後どうなるのかは分からんが」
結衣「そうだ、ねゆきのんに悪いことしちゃった。私も謝らないと・・・・・・」
ガシャン!!!!
結衣八幡「グバア!」
八幡(突然の背後からの衝撃。薄れゆく意識の中、あの日俺を跳ねた黒いハイヤーが目の前に停車したのが見えた……)
千葉県内某所 廃倉庫
八幡「ん……ここは……?」
雪乃「あら、八幡目が覚めたのね。良かったわ。貴方が死んでしまってはこんなことをする意味が無くなってしまうもの」
八幡「えっと俺は……」
八幡(俺は立ち上がろうとするがそれは適わなかった。理由は二つある。一つは全身を走る激痛。その痛みで、俺は車に跳ねられたことを思い出した。第二に俺を阻むのは、後ろ手に回された手錠。牧場で雪乃に使われたものと同じものだろう。わざわざ鉄柱を背に挟んで動けないようにしてある)
八幡「雪乃、これはお前の仕業なのか?車ではねて監禁ってもはや立派な犯罪だぞ!?」
雪乃「八幡、そんなに怒らないで。これは貴方の為なのよ」
八幡「俺のため?」
雪乃「ええ、貴方にまとわりつく虫を始末するにはこうするしかなかったの。もっともこの女もまだ生きているのだけれどね」
つ 結衣「」
八幡「結衣」
雪乃「かわいそう。余程この女に私の悪口を吹き込まれたのね。じゃなきゃ恋人の私を差し置いてそんな反応するわけないもの。不愉快だわ」
八幡「やめろ!結衣は関係ないだろ!」
雪乃「そうね。この女は私たちとは関係のないただの部活が同じだけの取るに足らない凡人。だのに貴方の周りをうろついてあることないことぺらぺらと……」ゲシ!ゲシ!
結衣「イタっ!……ここどこ?あれゆきのん……?」
雪乃「やっと目が覚めたようね。じゃあ制裁を始めるわ」サク
結衣「え?……痛い!刺さった!ナイフ!何で?痛いよ!ゆきのん何するの!!!」
雪乃「たかが足の一本刺されたくらいで大袈裟ね。そんな痛みも耐えられないようではすぐに死んでしまうわよ」サク
結衣「キャアァァァァァアァァ!!!」
雪乃「へえ。なかなかいい声ね。八幡が傾いてしまうのも分かるわ」
八幡「やめろ!やるなら俺にしろ!悪いのは全部俺だろう!」
雪乃「ふふ、次はどこにしようかしら。ねえ由比ヶ浜さん。その無様な脂肪があれば、胸くらい刺されても平気よね?」
結衣「嘘……でしょ……?ねえ冗談なんだよね?止めてよゆきのん!すごく痛いの!早く病院行かないと死んじゃう!誰にも言わないから許して!」
雪乃「質問に答えなさい。今すぐ殺してしまってもいいのよ?」
結衣「うう、ごめんなさい。私の……不様な脂肪があっ…ても、ナイフで胸……を刺されたら死んでしまいます。だから……お願いします……刺さ、ないで」
雪乃「そう、じゃあ心臓を指す前に子宮を潰しておきましょうか。もう二度とヒッキ―に引き寄せられないように」サク!サク!サク!
八幡「やめろおおおおおおお!」
結衣「いやあああ!!!!!助けてヒッキ―!!!!」
結衣「痛いよ……こんなに血が出てる……死んじゃうよぉ……誰か……助けて」
八幡「結衣!ゆいいいいいいいいいい!!!!!」ガチャガチャ
雪乃「無駄よ八幡。貴方にその手錠は破れない。この虫が死滅した後、ゆっくり楽しみましょう」
八幡(まずい……!結衣はさっき腹を刺された。早く助けないと命に関わるぞ……!だけど手錠が外せないのはあいつの言う通り事実だ)
八幡(鍵は手元になく、鎖はちぎれるような強度じゃない……どうする!?俺の何を犠牲にしても構わない。結衣を助けるには、この手錠を外すにはどうすればいい!?)
雪乃「さて、そろそろ飽きてきたわね。ねえ由比ヶ浜さん、もうそろそろ死んでもらえないかしら」
結衣「助……けて………嫌だ……死にたく…………ないよ……」
八幡「クソ!止めろおおおおお!!」ズシャビリ
雪乃「八幡?え?嘘貴方一体どうやって立ち上がって……!!」
雪乃「八幡……貴方……手の肉を無理矢理手錠で引きちぎったの!?」
八幡「いい……加減に……しろよ……」ボソ
雪乃「な、なんで怒ってるの?これは貴方の為にやっていることなのよ!?この女さえ死ねば全部元通りに!」
八幡「いい加減にしろって言ってんだよこのクソアマああああ!!!!!!」ボコ!!!!!!
雪乃「グバア!!!」
八幡「フー……フー……フー……」
結衣「……ヒッキ―?そこにいるの?」
八幡「結衣!しっかりしろ今病院に……」
結衣「ヒッキ―……大丈夫だよ……なんだか痛くなくなってきたの……きっと治ってきてるんだよ」
八幡「そんなわけあるか馬鹿野郎!!しっかりしろ!意識を保て!いま119番に連絡するからな」
結衣「それ……むずかしいよ……なんだかとっても眠いの……」
八幡「そんな、結衣!結衣!」
結衣「ねえ、これって……もしかして罰が……当たったのかな?ゆきのんと……ヒッキ―が……仲良くしているところに……割り込もうと……したから……」
八幡「そんなわけあるか!しっかりしろ!結衣!ゆいいいいいいいいいい!!!!」
十年後
比企谷「んじゃ、いってくる」
小町「お兄ちゃん行ってらっしゃーい」
結衣「あ、待ってあなた!忘れ物!」バタバタ
八幡「ああ、悪い。っておまえなあいい年なんだからそんな風に走るなよ……ただでさえ今は一人の身体じゃないのに」
結衣「えへへ。気を付けるよ!」
小町「ヒューヒュー!朝からお暑いですなあ」
八幡「小町、お前も大学行かなくていいのか?院生だからってサボりまくってると苦労するぞ」
小町「そーだったいっけない準備しないと!」
八幡「じゃ、こんどこそ行ってくるから」チュ
結衣「もう……行ってらっしゃい。気を付けてね」///
八幡(あれから十年の時が流れた……)
八幡(瀕死の重傷を負った結衣はもう助からないかと俺すら諦めたその時、呼んでもいない警察と救急車が倉庫に入ってきた)
八幡(何でもあとから聞くところによると、葉山が俺と結衣が撥ねられて拉致られるところを偶然目撃していたらしい)
八幡(なんともご都合主義的な話だがそんなご都合主義がなければ、今の幸せな生活は訪れなかった)
八幡(俺と結衣は高校を卒業した後、同じ大学に進学し、同棲を開始し、そして俺の就職が決まると同時に籍を入れた)
八幡(ナイフによる子宮の損傷は激しくなかったものの、一度は子供を諦めた俺達だったが、小町や三浦、海老名さんの熱心な勧めによって不妊治療を続けた結衣は、このたびついに子供を授かった)
八幡(雪乃は、あの後警察に逮捕され、医療少年院に収監された。雪ノ下家の権力の影響か、事件が表に出ることはなかった。今は精神病院に強制収容されているらしい)
八幡(今でもたまに思う。俺がもっとうまく雪乃と別れることが出来ていたら、こんな風にはならなかったんじゃないかと)
八幡「おつかれさまでしたー」
平塚「比企谷、ああ、お疲れさん。私ももう上がるところなんだ。だから、その、どうだ、良かったらラーメンでも」
八幡「すいません、嫁が飯作って待ってるんで」
平塚「(´・ω・`)」
八幡(かつての恩師で今の上司、平塚先生、いや平塚学年主任は未だ結婚できていない。誰か貰ってやれよマジで)
八幡(数々の恩がある相手なのであまり無下にしたくないのだが、過去が過去だ。俺は家族以外の女性を自然と避けるようになっていた)
八幡「すいませんそれじゃ」
平塚「結婚……したいなあ……」
比企谷家
八幡「帰ったぞー」
八幡「あれ?結衣?小町?いないのか?」
八幡「また二人で飯食いに行ってるのかよ。本当に仲良いなあいつら」
八幡「こんなことなら主任とラーメン食いに行けばよかった……」
八幡「じゃ、俺も着替えて外で飯食いますかね」ゴツ
八幡「ん?」
小町「」
八幡「小町!どうしたんだしっかりしろ!」
???「あら、お帰りなさい。どうしたのかしらそんなに慌てて。あ・な・た」ニコ
最終回「やはり俺の青春ラブコメは間違っていた」終了
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