八幡「ああ、雪乃の奴が用事なんだとさ」
結衣「そうなんだ……じゃ、じゃあさ、ヒッキ―、どっか遊びにでも行かない?」
八幡「はあ?なんでそうなるんだよ」
結衣「ヒッキ―どうせ家帰っても千葉テレビ見てるだけでしょ!それに、文化祭の時の約束。ハニトーおごってくれるっていったよね?」
八幡「ぐ……、そういえばそんなものもあったな……」
結衣「うん、これはただの約束なんだから、大丈夫だよ」
八幡(何が大丈夫だというのか)
結衣「そんじゃいこ!急がないと日が暮れちゃうよ!」
八幡「へいへい」
京成千葉中央駅
結衣「さて、着いたよヒッキ―!」
八幡「てか何で京成?千葉に出るならJR使った方が早かっただろ」
結衣「ふっふっふふ、それはね、アレがあるからでーす!」
つパセラ千葉中央駅前店
八幡「パセラ……、前に言ってたハニトーの店か」
結衣「そうそう。千葉駅からだと十分くらい歩かないといけないからね」
八幡「稲毛から京成稲毛までが大体十分くらいだから変わらない気もするが」
結衣「いいの!さあ行くよ。約束守って貰うからね!」
店内
八幡「え、なにここ個室なの?聞いてないんだけど」
結衣「うん。ここレストランっていうよりカラオケ店だからね。優美子や姫奈ともよく来るんだよ」
八幡「そういうことは先に言っとけよ……。俺一応彼女持ちなんだからな」
結衣「だから言ったでしょ、約束だからノーカンだって。あ、ハニトー二つお願いしまーす。ドリンクは飲み放題で」
八幡(手慣れた様子で注文をする由比ヶ浜。その表情に影はない。この程度で元気が出るのならまぁ御の字だろう)
店員(お待たせしました、こちらハニートーストになります。ドリンクはセルフサービスとなっておりますのでご自分でお取りください。ではごゆっくりどうぞ)
結衣「ありがとーございまーす」
八幡「ども……」
結衣「さーきたきた!これ凄くおいしいんだよ」
八幡「うわ、凄いなこれ」
結衣「そう?これはフレンチメープルだから一番普通の奴だけど?」
八幡「これで普通て。スイーツ(笑)は頭おかしいな」
結衣「あー!馬鹿にして!おいしくてびっくりするんだからね!」パクパク
八幡「どれ……お、これ以外と美味いな」
八幡(プロの手によるものなのだから当然だが、文化祭の素人モノよりも格段に洗練されている)
結衣「へへーん!そうでしょ!ヒッキ―のバーカ!」
八幡「何でお前が誇らしげなんだよ……」
結衣「かのん、ひゃくぱーせんと♪」
八幡(ハニトーを食い終わったら、由比ヶ浜がせっかくだしカラオケしていこうと言い出した)
八幡(文化祭の時も思ったがこいつやっぱ歌上手いな……)
結衣「はい!次はヒッキ―の番だよ!」つマイク
八幡「いや、俺お前が知ってるような歌とか知らないし」
結衣「えー別に気にしなくていいよー」
八幡「しょうがねえな……」
♪~
八幡「壁にもたれて一晩中考えてみたんだ自分のこと……」
結衣「わー!ヒッキ―意外と歌上手じゃん!」
八幡「そ、そうか?」
結衣「うん!それに知らない曲だったけど楽しめたよ!」
八幡(まあお前が知ってたら逆に驚くよ、俺が)
八幡(それから二時間、俺達は休憩も挟みつつ交互に歌を歌い続けた)
prrrrrr
結衣「はい、あ、十分前ですね分かりました。はい延長は無しで」
八幡(そんなこんなであっという間に時間は過ぎ、退出十分前になった)
八幡「……なあ、由比ヶ浜」
結衣「なに?ヒッキ―?」
八幡「お前さ、もう奉仕部来ないの?」
結衣「……あはは、なんでそんなこと聞くのかな……」
八幡「だってお前もうずっと顔だしてないだろ」
結衣「うーん、やっぱりさ、行きづらいよ。二人の邪魔しちゃ悪いし」
八幡「別に邪魔だとかそんなこと思わねえよ。雪乃だって、そうだと思うぞ。お前らすげー仲良かったじゃねえか」
結衣「うんそうだね。仲良かったよ……」
八幡「だったら」
結衣「でも行かない」
結衣「だって、行ったら、ヒッキ―のこと諦められなくなるもん」
八幡「……」
結衣「私ね、ヒッキ―のことずっと好きだったんだよ。サブレを助けてもらったあの日からずっと。私、こんな性格だからさ、声をかけるのに一年もかかっちゃったけど。毎日ヒッキ―のこと考えてた」
結衣「初めて奉仕部に行った時のクッキーだって、本当はヒッキ―に渡したくて作ったの。あそこにヒッキ―がいたのは予想外だったけどね」
結衣「私はヒッキ―が好き。でもそれと同じくらいゆきのんが好き。だから、二人には幸せになってほしいんだ……」
結衣「さよならだよヒッキ―。最後にこうして遊べて楽しかった。まあクラスは一緒だから顔は合わせることはあるかもしれないけどね」
八幡「由比ヶ浜、お前って本当に優しい奴だよな。……俺みたいなボッチにも優しくして、こうやって一緒に遊んでくれて、笑いかけてくれて、幸せであれと願ってくれる」
八幡「……ずっと必死だったよ。お前を好きにならないようにさ。お前はただ優しいから俺に話しかけてくれるんだ。勘違いして恥をかきたくなければ大人しくしてろってさ」
八幡「でも、やっぱ無理だわ。俺、お前のことが雪乃と同じくらい好きだ」
八幡「だから、また奉仕部に……」パン!!
八幡「……」
結衣「最低……最低だよヒッキ―。今更何でそんなこと言うの?せっかく諦めようと思ったのに。忘れようと思ったのに。これじゃあ私、ヒッキ―のこと忘れられないよ……」
八幡「……すまん」
結衣「でも、もっと最低なのは、私……だって今、ちょっとゆきのんのこと嫌いになっちゃったもん」チュッ
八幡「……!……」
結衣「えへへ……、ファーストキスだよ?」
prrrrrrrrr
八幡「はい。やっぱり延長します。はい、オールで」
結衣「ヒッキ―、それって……」
八幡「結衣……」
三時間後 雪ノ下自室
雪乃(疲れたわね……父の仕事の同伴なんて姉さんがすればいいのに全くどこをほっつきあるいているのかしら)
携帯「ピロリン!」
雪乃「メール?八幡から」
携帯「すまん小町が風邪をひいた。明日は無理だ」
雪乃「………………」
第三話「由比ヶ浜に一発ぶん殴られたらめちゃくちゃ深い中になった」終了
翌日 比企谷家
八幡(俺は、最低だ……)
八幡(二人の人間を傲慢にも天秤にかけ、結局そのどちらかを捨てることができなかった)
八幡(あの時の京都で、葉山が選ぶことが出来なかったように)
八幡(俺は当事者として、何か選択をするということの意味をまるで分かっていなかった)
八幡(俺は今まで傍観者として、ぼっち故になせる方策で他人の問題を解決してきた。だけどそのどれにおいても強い感慨を持つことはなかった。だって俺には関係のないことだから)
八幡(だけど、今は違う。こうなってしまってはもう、今までのようなやり方はできやしない)
八幡(今の俺には何もできない。これでははちまんではなくダメマンだ)
八幡「それにしてもまさか由比ヶ浜とあんなことになるとはなあ……」
八幡(期待すれば裏切られる。だから期待しない。由比ヶ浜とは住む世界が違うのだ。そう自分に言い聞かせ続けてきた)
八幡(けれど、ふとした瞬間に、あいつの何気ない仕草や言葉で、俺の感情を揺さぶられるのを制御しきれなかったこともまた事実だ)
八幡(あいつの胸、柔らかかったな……)
八幡(由比ヶ浜との性行は、雪乃とのそれとはまるで違うものだった。まず、性器の感触。凶暴な締め付けでもって力づくで精液を奪い取ろうとする雪乃とは対照的に、由比ヶ浜はまるで絡み付くようなくすぐったさでこちらの射精を誘った。
また、初めてだというのに対して痛がりもせず、すぐに積極的に腰を動かすようになった。雪乃より痛みに強いのだろう)
八幡(後戻り、出来そうもないよなあ……)
八幡(昨夜の行為を一夜限りの過ちにしてしまうのは不可能ではない。雪乃のことを思えばそうするべきなのだろうし、由比ヶ浜もきっと承諾してくれるだろう。だけど、俺の心がそれは嫌だといっている)
八幡「やっぱ選べねえわ……」
日曜日 比企谷自宅
八幡「小町ー、飯なんかないかー?」
八幡「ってあれ?まだ寝てんのかあいつ。まぁもうすぐ受験だしな。昨日も遅くまで勉強してたんだろ」
八幡(念のため小町の部屋の前に行ってみたら、起こさないでくださいと可愛らしい文字と若干いらっとする動物のイラストが描かれた紙が扉に張ってあった)
八幡「ま、いいけどな。どうせあいつは風邪ひいたことになってるんだし」
八幡(なんなら家から出られたら困るまである)
八幡(結局この日、俺は一度も小町の姿を見ることはなかった)
月曜日 奉仕部部室
八幡「おっす……」
雪乃「こんにちは比企谷くん」
八幡「あのさ、一昨日はすまなかったな。折角のデートだってのに」
雪乃「あなたが謝ることではないでしょう?小町さんが風邪を引いたのなら仕方ないわ。貴方、妹想いだものね」
八幡「……」
雪乃「デートのことなら気にしなくてもいいわ。マザー牧場は次の休みにしましょう?昨日はそのための買い物にいったの。キャンプって色々準備した方が楽しめるものね」
八幡「買い物か。大変だったんじゃないか?」
雪乃「いいえ、楽しかったわよ。いろいろと有意義なお話もできたし」
八幡「え、誰かといったのか?」
雪乃「ええ、小町さんと」
八幡「……は?」
八幡「え、それってどういう……」
雪乃「あ、間違えたわ。買い物は姉さんと行ったのだったわ。ふふ、いくらさっきまで小町さんの話をしていたからって、自分の姉と未来の妹を取り違えるなんて、我ながら馬鹿ね」
八幡「あ、あはは……お前が間違えるなんて意外なこともあるもんだな。びっくりしたぞ。小町昨日も一日寝てたし、よもや分裂して二人になったのかとぬか喜びするところだったぞ」
雪乃「ふふ、本当に小町さんのことを大事に思っているのね。羨ましいわ。私の姉さんもそんな人だったら良かったのに」
八幡「お前の姉さんもなんだかんだお前のことよく見てると思うけどな。てか、お前ら一緒に買い物するほど仲良かったっけ?」
雪乃「私としては悲しいことなのだけれどね。貴方と今後交際するにおいて私の両親を説得するのは必要不可欠なの。姉さんを誘ったのは、その下準備と言ったところよ」
八幡「なるほどな……」
雪乃「気が進まなかったけれどね。でも、久しぶりに姉さんと昔みたいに話すこともできたし、楽しかったのも本当よ」
八幡「そっか。良かったな、雪乃」
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