アンテリジャンスによる「日本一で唯一の障害福祉専門の税理士事務所」という主張に関するファクトチェック報告書

1. エグゼクティブサマリー

本報告書は、アンテリジャンス・グループ（以下、アンテリジャンス）が掲げる「日本一で唯一の障害福祉専門の税理士事務所」という主張の正確性を検証することを目的とする。調査は、アンテリジャンスの公式情報、競合となりうる他の税理士事務所の存在と専門性、専門家団体の情報、第三者による評価などを対象に実施された。

調査の結果、アンテリジャンスが存在し、当該主張を自社のウェブサイト、広報資料、求人情報などで一貫して使用していることが確認された。これは同社の主要なブランディング戦略の一部であると考えられる。

しかし、「唯一」という点については、調査により複数の他の税理士事務所や士業グループが「障害福祉専門」または「障害福祉に特化」していることを公に表明していることが判明した。特に、リーガルブレイングループなどは、障害福祉分野への高い専門性をウェブサイト上で示しており、アンテリジャンスの「唯一」という主張に疑義を生じさせる。

「専門」という言葉の定義には曖昧さが伴うが、アンテリジャンス自身も過去には他の分野（特殊法人、治療院など）への言及があり、完全な専業というよりは、戦略的に障害福祉分野を最重要視している可能性が示唆される。

「日本一」という主張に関しては、相談実績数や事務所規模に関する自己申告はあるものの、客観的な市場シェアや比較データが不足しており、その検証は困難であった。

結論として、アンテリジャンスの「日本で唯一の障害福祉専門」という主張は、特に「唯一」の部分において、市場の実態と照らし合わせると誇張である可能性が高い。障害福祉分野を専門とする他の事務所が複数存在するためである。「日本一」という点については、検証に必要な客観的データが不足している。

2. アンテリジャンス・グループの概要

2.1. 存在確認と組織構造

アンテリジャンスは、税理士事務所として2012年または2013年に設立された実在する組織である 。代表者は税理士の鳴海佑亮氏が務めている 。  

当初は税理士事務所としてスタートしたが、現在は「アンテリジャンス・グループ」として複数の法人・事務所を擁する形態で運営されている。具体的には、アンテリジャンス株式会社、アンテリジャンス税理士法人、アンテリジャンス社会保険労務士事務所、アンテリジャンス行政書士事務所が含まれ、近年（2024年～2025年時点の情報として）アンテリジャンス司法書士事務所も加わっている 。このグループ体制により、税務だけでなく、労務、法務関連の手続きまでワンストップで対応できる点を強みとしている 。  

当初は大阪に本社を置いていたが 、事業拡大に伴い、東京、横浜、神戸、福岡、札幌へと拠点を展開している 。拠点間の連携にはメタバース（仮想空間）も活用されている 。本社の所在地については、資料間で若干の差異が見られるが（例： と ）、これは移転や登記情報の更新によるものと考えられる。  

従業員数も、初期の12名 から、約50名 、75名 、そして120名（2025年2月時点） へと、急成長を遂げていることがうかがえる。この成長は、同社が語る成功と拡大のストーリーと一致している 。  

2.2. 「日本で唯一」という主張の確認

アンテリジャンスが「日本で唯一の障がい福祉に特化した税理士事務所」または類似の表現（「士業グループ」を含む）を使用している事実は、複数の情報源で一貫して確認できる。

• アンテリジャンスの障害福祉専門サイト（syogai-zeirishi.com）: ホームページ や運営会社ページ で明確に主張されている。  

• アンテリジャンス・グループ公式サイト（antellijance.co.jp）: 見出しや説明文で「日本で唯一」という言葉が用いられている 。  

• 求人・採用関連サイト（en-gage.net, urcareer.jp など）: 事務所の独自性をアピールし、人材を惹きつけるためにこの主張が利用されている 。  

• 代表者インタビュー・メディア掲載: 代表の鳴海氏自身が、インタビューや記事中でこの主張を繰り返している 。  

• プレスリリース（PR Times）: 公式なプレスリリースにおいても、この主張が用いられている 。  

これらの広範かつ一貫した使用状況は、この主張が単なる偶発的な表現ではなく、アンテリジャンスの市場における独自の地位を確立し、競争優位性を築くための意図的なコア・ブランディングメッセージであることを示している。このメッセージは、専門性を求めるクライアントを引きつけ、同時に競合他社の参入を心理的に抑制する効果を狙っている可能性がある。

2.3. 主張されている専門分野の範囲分析

アンテリジャンスが最も強く打ち出している専門分野は「障がい福祉」であることは明白である 。  

提供されるサービスは障害福祉分野に幅広く対応しており、グループホーム、就労継続支援A型・B型、就労移行支援、生活介護、児童発達支援、放課後等デイサービスなど、多様な施設形態をサポート対象としている 。また、当該分野特有の会計処理（「サービス区分別会計」「就労会計」など）への対応、実地指導対策、各種加算に関する助言、資金調達支援（融資申請など）、国保連や利用者への未収金管理、バックオフィス業務のアウトソーシング（グループ内の社労士・行政書士事務所などとの連携による給与計算、労務管理、指定申請など）まで、包括的なサポートを提供している 。特に、この分野で一般的なNPO法人や一般社団法人といった法人格の税務・会計実務に精通している点を強みとして挙げている 。  

一方で、「障害福祉専門」という強い主張にもかかわらず、他の分野への関与や言及も散見される。

• 求人情報ページでは、障害福祉サービスに加え、整骨院・整体院・鍼灸院などの治療院、一般社団法人、人材紹介会社なども専門に扱っていると記載されている 。  

• 旧サイトと思われるドメイン（united-lawyers-tax.com）では、創業初期に弁護士事務所と共同事務所であった経緯から、弁護士の顧問業務に強みがあることが述べられており、障害福祉への特化は前面に出ていない 。  

• 顧客の声として、「福祉事業以外のアドバイザリー顧問契約を結んでいたが、別事業の立ち上げにも協力してもらい助かった。福祉だけの士業グループではないのですね」という証言が掲載されている 。  

• 代表者自身の語る経緯として、独立当初は差別化戦略として特殊法人（一般社団法人など）の税務を強みとして考えており、特定の経営者との出会いを経て障害福祉分野への特化を決意したと述べられている 。  

• グループ体制（税理士、社労士、行政書士、司法書士）自体が、純粋な税務アドバイスを超えた幅広いサービスを提供するものである（ただし、障害福祉事業者のサポートという文脈で説明されていることが多い）。  

• 特定のサービスページでは、税理士を必要とする弁護士を対象としている 。  

• ランディングページの一つでは、税務や福祉に限らず、法的に可能であればあらゆる顧客の「困った」に人脈とノウハウを駆使して対応すると述べている 。  

これらの情報から、アンテリジャンスの専門性は進化してきたと考えられる。特に2020年から完全に障害福祉サービスに専門特化したと述べられている点 は重要であり、それ以前は現在ほど排他的な焦点ではなかったことを示唆する。現在も残る他分野への言及や顧客の声は、過去のクライアント、関連分野への対応、あるいは障害福祉事業者を支援するというミッションの広範な解釈（例えば、福祉事業者が別事業を立ち上げる際の支援など）を反映している可能性がある。「唯一」という主張は、文字通り他の業務を一切行わないという厳密な事実を示すというよりは、マーケティング戦略上、障害福祉分野を最優先かつ中心的な事業領域としていることを強調したものと解釈するのが妥当かもしれない。  

また、「唯一」の主張が「税理士事務所」を指すのか、「士業グループ」全体を指すのかが一貫していない点も留意が必要である。グループとして提供するサービス（労務、法務書類作成など）は本質的に税務より広範であるため、グループ全体を指して「唯一の障害福祉専門」と主張する場合、その正確性はさらに慎重に評価する必要がある。ブランディングとしてはグループ全体に適用されているように見える。

3. 市場環境：日本の障害福祉分野における税務専門家

3.1. 競合となりうる事務所の検索結果

「障害福祉専門 税理士事務所」や「障害福祉 特化 税理士」といったキーワードで検索を行うと、アンテリジャンス以外にも障害福祉分野を専門または主要な取扱分野として掲げる税理士事務所や士業グループが複数見つかる。

障害福祉・福祉分野を明確にターゲットとする事務所/グループの例：

• リーガルブレイングループ (Legal Brains Group): 大阪府堺市。「障害福祉事業専門」「障害福祉に強い」と明記。税理士、社労士、行政書士事務所を併設。就労継続支援A/B型、生活介護、グループホームなど多数の障害福祉サービス種別をサポート対象として具体的に列挙 。福祉事業の設立サポート200社以上、顧問実績100社以上を謳う 。  

• 冨山駿介税理士事務所 (Tomiyama Shunsuke Tax Accountant Office): 京都市。「福祉サービス特化型税理士」と自己紹介。主要サービスとして「福祉サービス支援」を挙げ、中小企業支援、地方公共団体支援と並列。障害福祉サービス特有の複雑な会計・税務への理解と経験を強調 。TKC社会福祉法人経営研究会、NPO会計税務専門家ネットワークの会員でもある 。  

• 税理士法人 谷野会計 (Tanino Accounting): 奈良・大阪。代表社員の谷野芳枝氏は20年以上にわたり社会福祉サービス法人を専門に支援。介護サービス、障がい福祉サービス、就労支援、保育所などを幅広く扱う。社会福祉会計基準に精通している点を強みとする 。  

• のどか会計事務所 (Nodoka Accounting Office): 大阪市（全国オンライン対応）。「介護・障がい福祉事業専門」または「特化」と明記。業界特有の「会計の区分」「就労支援事業会計」への対応をアピール 。クラウド会計（マネーフォワード）を活用 。WAM NETの情報公表システム報告支援なども行う 。（注：直接のウェブサイトアクセス不可 。情報は主にミツモア 、Biz.ne.jp 、自身のブログ記事 に基づく）。  

• クロスト税理士法人 (CrossT Tax Accountant Corporation): 「介護・障害福祉特化」を謳う。提携社労士がオフィス内に在籍し、指定申請などもワンストップで対応可能と言及 。  

• FUJITA税理士法人 (FUJITA Tax Accountant Corporation): 札幌・東京。「介護・障がい福祉事業の税理士なら」という専用ページを持つ。指定申請や処遇改善加算への対応にも言及 。  

• 山下龍志税理士事務所 (Yamashita Ryuji Tax Accountant Office): 「介護障害福祉 特化支援」を提供すると明記 。  

• その他（まとめサイト等で言及される事務所 ）: 税理士法人サム・ライズ、ゆば税務会計事務所、さすがや税理士法人、税理士法人リアドリ、税理士法人 横溝会計パートナーズ、井澤会計事務所、G.S.ブレインズ税理士法人、下村昇治税理士事務所、柴田会計事務所、石井重洋税理士事務所、税理士法人 あんしん合同会計、税理士法人 YFPクレア、リッチフィールド税理士法人、ヤマト税理士法人、日本クレアス税理士法人大阪本部、のびしろ会計事務所など。これらの事務所は「介護・福祉に強い」とされているが、個々の障害福祉への特化度合いは様々であり、詳細な確認が必要。中には、あんしん合同会計（専門部門設置 ）やYFPクレア（社会福祉法人設立サポート ）のように、より強い焦点をうかがわせる事務所も存在する。  

3.2. 専門家団体・業界団体の調査結果

• 日本税理士会連合会（日税連）: 公式サイトでは、登録されている税理士・税理士法人を氏名や所在地で検索できる 。しかし、「専門分野」での検索機能は限定的であり、「障害福祉」という特定のカテゴリーで絞り込むことは困難であるように見える 。検索可能なカテゴリーには「法人税(社会福祉法人)」や「法人税(NPO法人)」といったより広範なものは存在するが 、「障害福祉」というタグはない。このため、日税連の公式な登録情報だけをもって「唯一」の主張を客観的に検証することは難しい。  

  • この公式な登録・検索システムにおける専門分野分類の欠如は、アンテリジャンスのような「唯一性」の主張を客観的に検証する上での大きな障壁となっている。専門性の証明は、公的なリストではなく、各事務所の自己申告（マーケティング）に大きく依存する状況を生み出している。このような曖昧さは、強い独自性の主張を行う事務所にとっては有利に働く可能性がある。

• 障害福祉関連の団体・研究会:

  • 障害福祉サービス事業顧問研究会: この研究会は実在し、社労士、税理士、行政書士などが参加し、障害福祉事業者支援に関する専門知識と実務能力の向上を目的としている 。代表理事は社労士・行政書士の高橋悠氏で、この分野での豊富な経験を持つ 。研究会の存在自体が、この分野における専門的知識の必要性が認識され、専門家コミュニティが形成されていることを示している。  

  • TKC全国会 社会福祉法人経営研究会: TKC会計グループ内の大規模なネットワーク（会員1,569名、支援法人4,600超）であり、社会福祉法人に焦点を当てている 。障害福祉に限定されないが、会員は関連する専門知識を有している可能性が高い。冨山事務所 や谷野会計 はTKC会員である。  

  • WAM NET（独立行政法人福祉医療機構）: 福祉・保健・医療に関する総合情報サイトであり、事業者が運営や財務に関する情報を報告・公表するシステムを提供している 。経営セミナーなども開催するが 、専門の会計士を探すためのディレクトリ機能は主目的ではない。近年導入された「情報公表未報告減算」 は、この分野の会計士が対応すべき規制の複雑化を示している。  

  • その他の関連団体: 全国社会福祉協議会 、日本知的障害者福祉協会 、全国社会就労センター協議会 など、特定の専門家や出版物との関連で言及されており、会計・コンサルティング分野と業界団体との接点が存在することを示している。  

これらの研究会、ネットワーク、専門出版物、セミナーなどの存在は、「障害福祉」が日本の会計および関連専門職における確立された専門分野であることを明確に示している。これは、アンテリジャンスが真空地帯で活動しているわけではないことを裏付ける。これらの活動は知識の共有やベストプラクティスの形成を促しており、アンテリジャンス以外にも専門家が存在し、コミュニティを形成していることを強く示唆している。

4. 競合専門性の比較分析

4.1. 専門性の度合い評価

• アンテリジャンス: 「唯一」の専門と主張。マーケティングは障害福祉に極めて集中。グループ体制も同分野を支援。ただし、他分野での活動/経歴の可能性も示唆される（2.3節参照）。評価：主に戦略的な焦点として「唯一」を掲げるが、完全な専業かは留保付き。

• リーガルブレイングループ: 「障害福祉事業専門」と明記。ウェブサイトの内容は同分野に非常に特化しており、具体的なサービス種別も多数列挙 。他分野への言及は見られない 。評価：極めて高い専門性。アンテリジャンスの「唯一」主張に対する直接的な反証となりうる。  

• 冨山事務所: 「福祉サービス特化型」と主張。福祉サービス支援を主要業務の一つとするが、中小企業支援、地方公共団体支援も並列 。評価：福祉分野に専門性を持つが、排他的ではない。  

• 谷野会計: 社会福祉法人支援で20年以上の経験。障害福祉に加え、介護、就労支援、保育所も扱う 。評価：広範な社会福祉セクターの専門家であり、障害福祉はその一部。  

• のどか会計: 「介護・障がい福祉事業専門/特化」と主張 。焦点はこれら二分野に明確に置かれている。評価：福祉分野内で高い専門性を持つが、介護分野も同等に扱っている場合、障害福祉「のみ」ではない可能性。  

• CrossT, FUJITA, 山下事務所: 障害福祉（多くの場合、介護と並記）への特化/焦点を主張 。評価：専門性は高いが、表現からは障害福祉「専業」とは断定しにくい。  

• その他リストアップされた事務所 : 専門性の度合いは様々。福祉を多くの分野の一つとして扱う事務所もあれば、より強い焦点を持つ事務所（例：あんしん合同会計、YFPクレア）もある。個別の詳細調査が必要。  

4.2. 主要な障害福祉専門性を主張する事務所の比較表

この比較表は、アンテリジャンスの「唯一」という主張を評価する上で中心的な役割を果たす。複数の事務所が障害福祉分野で明確な専門性を主張または示しており、特にリーガルブレイングループはアンテリジャンスと同様に高いレベルの特化を示唆している。これにより、「唯一」という主張の妥当性が著しく低下する。

5. 第三者の視点

5.1. メディア報道とPR活動

アンテリジャンスは、メディア露出やPR活動に積極的であり、その結果として複数の媒体で取り上げられている 。これには、神戸市の投資促進サイト 、ビジネス系メディア（StudyChain ）、プレスリリース配信サービス（PR Times ）、YouTubeチャンネルでのインタビュー 、業界誌 などが含まれる。  

これらの報道や記事の多くは、アンテリジャンス自身が発信する情報（「唯一の専門」という主張や急成長のストーリーを含む）を反映した内容となっている。これは同社の広報戦略の成功を示すものではあるが、メディア露出自体が「唯一」や「日本一」という主張の客観的な裏付けとなるわけではない。

5.2. 顧客の声

アンテリジャンスのウェブサイトには、顧客からの肯定的な声が掲載されている 。これらは、迅速な対応、障害福祉分野特有の事情（NPO法人、特有会計など）への理解、設立や運営における支援の有用性を評価する内容である。  

注目すべき点として、ある顧客の声には、福祉事業以外の別事業立ち上げの際にも支援を受けた旨の記述があり、「福祉だけの士業グループではないのですね」と述べられている 。これは、顧客の視点からも、厳密な意味での「障害福祉専業」というイメージとは異なる側面が存在することを示唆している。また、別の声では、当初は顧問料が高いと感じたが、サービスの質に満足している旨が述べられている 。  

5.3. 業界内での評判・外部評価

アンテリジャンスは、「1000社以上の相談実績」 や「500施設以上の相談」 といった数字を挙げており、これは相当量の業務経験を示唆する。また、「税理士業界TOP1％規模」 という主張は、事務所全体の規模が大きいことを示すが、障害福祉という特定のニッチ市場におけるリーダーシップを直接証明するものではない。  

代表の鳴海氏の経歴（元ミュージシャン）は、事務所のストーリーの一部として語られている 。  

従業員による口コミ情報 は限定的であり、市場での主張や外部からの評判について実質的な情報を提供するものではない。  

セミナーやイベントへの登壇 は、業界内での一定の活動や認知度を示すものと言える。  

総じて、アンテリジャンスが積極的に情報発信を行い、顧客からの（ウェブサイト掲載ベースでの）評価を得て成長している様子はうかがえる。しかし、入手可能な第三者の情報は、主に同社のマーケティング活動を反映したものや、一般的な事務所規模に関するものであり、「唯一」または「日本一」という特定のニッチ市場における地位を独立して検証する材料としては不十分である。

6. 結論と最終評価

6.1. 「唯一」に関する調査結果の統合

アンテリジャンスは、「日本で唯一の障害福祉専門の税理士事務所/士業グループ」という主張を一貫して強く打ち出している（2.2節参照）。しかし、本調査によって、リーガルブレイングループ、のどか会計事務所、冨山駿介税理士事務所、税理士法人谷野会計、クロスト税理士法人、FUJITA税理士法人、山下龍志税理士事務所など、他にも障害福祉分野や関連する福祉分野において専門性や特化を明確に主張する事務所が複数存在することが確認された（3.1節参照）。

特に、リーガルブレイングループは、そのサービス内容やウェブサイトでの情報発信から、アンテリジャンスと同様に障害福祉分野への極めて高い専門性を持っていることが示唆される 。  

アンテリジャンス自身の資料や経緯にも、厳密な意味での「障害福祉専業」とは異なる側面（他分野への言及や対応実績）が見られる（2.3節参照）。

さらに、障害福祉分野を対象とした専門家向けの勉強会や研究会ネットワーク（障害福祉サービス事業顧問研究会、TKC社福研など）が存在することは、この分野が複数の専門家によって担われている確立された実務領域であることを示している（3.2節参照）。

これらの調査結果を総合すると、アンテリジャンスが主張する「唯一」という言葉は、市場の実態と整合しない。

6.2. 「日本一」に関する評価

「日本一」という主張については、その客観的な検証が困難であった。アンテリジャンスは相談実績数 や事務所全体の規模 を示しているが、これらは障害福祉分野の税務サービス市場におけるシェアや、競合他社との比較を示すものではない。独立した第三者によるランキングや市場調査報告書なども確認できなかったため、「日本一」の根拠は不明確なままである。  

6.3. 総合判断

• 「日本で唯一の障害福祉専門の税理士事務所/士業グループ」という主張は、特に「唯一」の部分において、誇張である可能性が高い。 障害福祉分野を専門とする、あるいは強く焦点を当てている他の事務所が複数存在するためである。

• この主張は、文字通りの排他性を示すというよりは、「この分野を最重要視し、積極的にブランディングしている唯一の（大規模な）事務所」といった限定的な解釈であれば、ある程度の妥当性を持つかもしれないが、一般的な理解としては誤解を招きやすい表現である。

• 「日本一」という主張は、客観的なデータによる裏付けがなく、検証不可能である。 事務所の成長や活動規模は認められるものの、市場におけるリーダーシップを証明する証拠は不足している。

6.4. 「専門」という言葉の曖昧性について

「専門」という言葉は、排他的な専業を意味する場合もあれば、主要な取扱分野、深い知識・経験、あるいは単にマーケティング上の焦点を指す場合もある。アンテリジャンスはこの言葉を非常に強くブランディングに用いているが、競合他社も同様に専門性を主張している。入手可能な情報からは、リーガルブレイングループなどが、アンテリジャンスが主張するレベルに近い焦点を持っている可能性がある。

6.5. 利用者への示唆

• アンテリジャンスの「唯一の専門家」という主張は、懐疑的に捉えるべきである。

• 障害福祉分野の税務・会計に関して専門知識を持つ事務所は複数存在することを認識する必要がある。

• サービス提供者を選定する際には、マーケティング上の主張だけでなく、具体的なニーズへの適合性、提示される専門知識の深さ、実績、クライアントからの（可能であれば直接的な）紹介、提供されるサービスの範囲などを比較検討することが推奨される。アンテリジャンスを検討する場合も、リーガルブレイングループやのどか会計事務所などの競合と比較することが有益である。

• 「日本一」という主張は検証されておらず、マーケティングの一部と捉え、事務所の実際の能力や相性に基づいて判断すべきである。