ダンジョンに鬼の跡目がいるのは間違っているだろうか


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作:頑張る丸
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蘇る男たち


冒険者が集う迷宮都市オラリオ。

その都市の中にはダンジョンの『蓋』の役割を務めるバベルが聳え立ち、『英雄の街』とも謳われる名実ともに世界の中心。

かの地に降り立った神々により恩恵(ファルナ)を授けられた屈強な冒険者たちを中心として回る都市。

 

 

富、名声、力。

 

 

冒険者たちはありとあらゆるものが手に入る代わりに死と隣り合わせの生活を送っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

オラリオより遥か遠方。

 

 

悪天候の中、馬に乗った兵士たちが荒野を駆ける。

 

夜も近くなり、雨や暗闇で視界が定まらない中、彼らは近くの仲間の背を見失わぬように一つの塊となって疾走していた。

 

 

「…っ!敵は!?」

 

 

指揮官と思しき1人の兵士が叫ぶ。

彼はオラリオ外では珍しくレベル2であり、国内では強者であったが、左腕はおかしな方向にひしゃげ、両脚は砕けた鎧の上からでもわかるくらいに鮮血に塗れており、紛うことなき満身創痍と呼ばれる状態であった。

 

 

「…確認できません!ただ先ほど第三部隊の向かった方角にて微かに轟音と叫び声のようなものが聞こえました。」

 

 

ひとまずの安堵。

脅威は自分達とはまったく別の方に行った部隊を襲いに行ったらしい。

あれが高レベルの存在であったことを踏まえても、馬とはいえど随分走った。幸い今はもう空は暗く、悪天候にて霧と雨で視界は完全に遮られている。

 

隊長格の兵士にして言えば、もう小一時間ほど走った先にある小村で安全の保障と回復に努めたいところではあったが、そうは問屋が許さない。隊長自身体はもうボロボロであったからだ。出血も骨折も多くの傷を負っているというのに応急処置すらまともに出来ていない。それどころか雨に濡らされ、体温も奪われるばかり。 いくら傷を負っているとしてもこの部隊で一番レベルの高い自分がこう(・・)なのだ。レベル1の貧弱な兵士たちも体力の限界がきている。

 

 

「速度を落とす。あと1、2K(キルロ)ほど走った先に川がある。そこで野営をする。」

 

 

あと少し。

もう10分もかからない。

上層部からはどやされるかもしれないが、そんなことは今の状況より100倍マシだ。自分たちはついにあの地獄から解放されるのだ。

 

 

――そう安堵して。

 

 

隊長の男の体が馬ごと遥か遠方まで殴り飛ばされた。

 

 

「……ああ――っ!」

 

 

距離は離していたはずだ。

別の獲物を狙っていたはずだ。

視界は遮られていたはずだ。

 

だのに、この化け物は寸分違うことなく自分たちの元へと辿り着き――そして今、隊の希望であった男の命の燈を歯牙にもかけぬと言わんばかりに吹き消してみせた。

 

部隊は崩壊。

もともと100人を超えていたこの部隊は化け物の蹂躙に遭い、20余りほどに数を減らしていた。恐怖と力量差を見せつけられた兵士たちにもはや戦う意志はない。

 

 

「どけぇ!俺は逃げるんだァ!」

 

 

 そう吠えた者から大木の如き拳の一撃に衝突し、全身を粉砕されていく。

 

逃げなければ死ぬ、

だが、逃げても死ぬ。

 

 一体全体、どうしろというのだ。

何が間違っていた?

どうすればよかった?

 

そんなことも考える暇もないほど眼前に釘付けにされる。

死と暴力の権化がまさにその力を振るわんとしてそこにいる。

 

 

雷鳴。

 

 

暗雲と雨霧と夜闇とを切り裂いた白い稲妻が男たちを照らす。

 

 

金色の長髪、

軍服を思わせる黒い装束、

モンスターとも遜色ない巨躯、

 

 

怪物が拳を振るう。

 

  

その様はまるで()のようであった。

 

 

 

 

 

2年後。

 

 

月明かりが照らす暗い部屋にて葉巻きを咥えた男、ブエナ・フェスタが眼前の男に言葉を紡いでいた、

 

 

「世界には熱がある!ゼウスとヘラの作り上げた最盛期然り、前の騒動であのエセ勇者(ブレイバー)がオラリオの冒険者どもに与えた勇気然り、誰かを!人間を!狂わせる熱がある!」

 

 

今自分を焚き付けるのはこの身体の底に眠る熱だと表すように大きく声を張り、語りかける。

 

 

「今の世から見れば俺もあんたも朽ち果てた化石に過ぎねぇだろうさ。だが、俺は諦めねぇ!」

 

 

バン!と木製の机を叩き、次へ次へと言葉を吐き出す。

 

 

「俺はヘラにもゼウスにも、今のオラリオにも負けねぇ最高の熱狂を生み出したい!」

 

 

「だから…乗るぜぇ!あんたの話…。このブエナ・フェスタ生涯最高のネタがある!オラリオを、世界を揺るがす古代の超秘宝(おたから)を俺は持ってる!アレがあれば、俺の夢も、あんたの望みも丸ごと叶う!」

 

 

そんな彼の背後には多くの紙面が所狭しと壁に貼り付けられていた。

 

今時代最高の天才『剣姫』『白兎の脚(ラビット・フット)』。

あるいは現オラリオ不動の英傑たち、ロキ・ファミリアの『三首領』、フレイヤ・ファミリアの都市最強『猛者(おうじゃ)』。

 

他にも英雄に名を馳せるであろう実力者たちが描かれた多くの資料がある。

 

 

「やろうぜぇ…。冒険者の、冒険者による、冒険者のための世界一の祭り。」

 

「―そうだな。そう!」

 

 

「英雄万博だ!」

 

 

闘争が、熱狂が、迷宮都市にて巻き起ころうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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