森の肉の怪物


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作:ななば
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オラリオへ続く道



ついつい筆がのって、3話目の投稿です


 

 

 

 

 

ずっと前、この仕事に就きたての頃。

一組のエルフ達を助けたことがあった。

アルヴの王森から離れて、ポーションかなんかの素材を集めに来たのだろう。

森林の奥まで進んで行って、数匹のモンスターに囲まれていた。

モンスターに苦戦し、傷だらけになっていく姿を見て。

 

 

────助けようと思った。

 

 

 

もしかしたら、助けることで感謝されると思ったのかもしれない。

自分の友だちになってくれると思ったのかもしれない。

 

「────はっ!」

「ギァアア゛!?」

 

 

「…ふぅ────さ、もう大丈夫だよ、モンスター達は全員────」

 

モンスターを斬り倒して。

直後、僕は()()()()

 

 

 

 

助けた筈の、淡い期待を持っていた────エルフ(同胞)達に。

 

 

 

「?へ、……な、なんで?僕、モンスターじゃない、よ?」

なんで……なんでお前(薄汚い肉)なんだ!!

 

 

 

 

「なんで俺達を助けたのが、お前なんだ!?"薄汚い肉"のくせに、俺達に恩を売ろうとでも思ったのか!そうなんだろ!」

 

ち、ちょっとバルファ君…私達は助けてもらって……

 

「リア、こいつは"薄汚い肉"なんだぞ!モンスターと同じ怪物達だッ!!」

 

「……ぁ、う、うん

 

「絶対に()()()()()!お前が俺達と"同じ"エルフとして受け入れられるなんて────絶対、無いからな!!」

 

ごめん、なさい……シア君……

 

 

 

 

 

こんな事になるなんて、思ってなかった。

だって────関係ないのだから、同じエルフとか、そうじゃないとか。

"同じ"とか、"違う"とか。

人を助けることに、その人の考えも、その人の人種も、関係ないのだから────だから、()()()()()()()

僕が助けたって、誰が助けたって。

 

 

でも、そうじゃなかった。

誰が助けたっていいけど、"怪物(ぼく)"は、ダメだったみたいだ。

 

 

 

この日から僕は、より意識するようになったのかもしれない。

僕の異端の力を────僕と他の人との壁を………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、……ううん……」

「あ!起きた、シア君ー!朝だよ、清々しい朝だよー!」

 

目線を声の方に向ければ、女神が居る

茶髪の少女の女神。

 

(夢じゃなかったのか────)

 

てっきり僕の見た都合の良い夢だと思っていた、あんなに優しくしてくれる人が僕にいるはずないと、考えていたから。

 

「あ、そうだ!君のために朝食を用意したんだよ♪……朝食にしては、ちょっとヘビーだけど……」

ひとしきり嬉しそうにした後、気まずそうにした女神。

 

「とにかく!食べてみて」

それを見て、唖然とした。

そこにあったのは、肉────正確に言えば、丸焼きにされた鹿だった。

 

 

 

「ご、ごめんよー私狩りは他の神の手伝いをしてたから得意なんだけど、料理の方はどうもからっきしで────ってえええ!?」

 

 

 

「ぐ、う゛、うっぐ……」

 

 

 

いつの間にか、涙が溢れていた────おかしいな、涙なんてずっと前に流し切った筈なのに……

 

 

「そんなに嫌だったかい!?」

(しまった!……そういえばエルフってお肉食べないんだっけ……)

 

 

「違う!!誰かに……ご飯つくって貰うの、初めてで……」

 

 

「……あ、そっか…うん、好きなだけ食べて良いんだよ、好きなだけ…」

 

 

その朝食は、今までに食べたどんな物よりも美味しかった。

なにも味付けなんてされてないのに、少し、しょっぱく感じた。

 

 

 

「……よかったぁ───うん、うん!」

 

 

少女の女神もその様子を見て、地面に水溜りができるほどの涙を流した────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────と言う訳で、私はオラリオに行きたいんだよッ!!

「そ、そうなのか?」

 

女神が言うには、世界の中心の街、オラリオにはダンジョンがあって、未知があって、娯楽があって、────なんというかとにかく凄くてすごいらしい。

 

「私はオラリオでファミリアを建てて、子供達を眷属にして、それから────」

 

「わかった、とにかくやりたい事が沢山あるんだな」

「そうなんだよっー!」

「じゃあ…頑張って」

「うん!!私頑張ってオラリオまで────ってちょっと待て────!!」

「へ?……なに?」

「へ?……なに?───じゃ無くて!!一緒に行くんだよ!」

「誰と?」

「君とだよ、君と!!」

 

 

はえ?

 

 

 

「え、僕と?嘘でしょ!?」

「嘘じゃないさ、もう君に恩恵も刻んじゃったし」

 

 

 

いつの間に!?

確かに今日は身体がなんか違うというか、軽い感じがしたけど、知らないうちにこんな事になってるなんて────

 

 

 

 

「君の話を聞いて、決めたんだよ────君と一緒にオラリオに行くって」

「でも、僕がオラリオに行ったところで英雄になんてなれない…それに!僕の異端の力が知られたら…また────」

 

「いーや、なれるね!私という一人の女神が言うんだ、間違いない!!それに君はとっっても綺麗な心を持ってるんだもん、オラリオで受け入れられない筈がない!」

 

「僕の心が綺麗だなんて、────エルフ達を助けようだなんて微塵も思ってないのに」

 

「────嘘だね

 

「……え?」

 

「神は嘘を見抜けるんだ、微塵も助けようなんて思ってない───なんて、随分大きな嘘をつくもんだね?」

「大体、助ける気がないならとっくにこの森林から逃げ出していた筈だよ、仕事も、何もかも投げ捨ててね」

 

「そ、それは!……王森のエルフ達が怖くって────」

 

「君、このままだとその怖いエルフ達に殺されるよ?」

「身体は死ななくても、心が死ぬ────恐怖に支配されてこのままずっと一人ぼっちでモンスターを狩るんだよ?」

君、このままでいいの?」

 

 

ガツンと、頭を殴られたような気がした。

 

 

 

 

 

「良いとは、思っていない……此処を離れたい」

「離れればいい」

「友だちだって……つくりたい」

「オラリオで沢山つくればいい────」

でもッ!!……僕は、怪物で、"薄汚い肉"で!!────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う────違うよ、シア君」

「君は、女神────女神ハルティアの誇る一番目の眷属だ」

「決して、怪物なんかじゃない────怪物だなんて、言わせない」

 

 

 

綺麗な、瞳。

嘘偽りなんてひと欠けらもないような────愛と優しさによってのみ造られた暖かな言葉だった。

 

 

 

あ、ああああ。

 

 

 

 

 

 

最初から、こんな仕事したくなかった。

前よりはマシだと、自分のことを騙し続けてた。

人に傷つけられるのも、怪物に傷つけられるのも、痛くて、苦しくて堪らなかった。

 

 

 

「うん……うん、辛かったね……」

 

 

 

 

 

オラリオに行っても、怪物だと言われるじゃないかと思った。

そうしたら、もっと苦しくなるだけだから。

最初から諦めて、行かない言い訳をしてた。

 

 

 

 

ねぇ、()()()()()()

 

 

 

 

「ハルティア様は、僕のことを見捨てない?」

「見捨てるわけないよ、私の大切な子供だもん、見捨てるわけない」

 

 

 

 

「…ハルティア様、僕────オラリオに行きたいです!!

 

 

 

「うん、うん!!────一緒に行こう!!シア君!!

 

 

 

 

ああ、きっと────此処から歩み出すんだ。

────オラリオへ続く道、その一歩を。

 

 

 

 

 

 







◼︎女神ハルティア
ついに名前が明らかになった女神様
シア君とハルティア様は無事オラリオに辿り着けるのか。

◼︎二人組のエルフ
男はバルファ、女はリア
バルファは父親からシアの話を聞き、悍ましく思う。
リアも当初はシアの事を悍ましい存在だと思っていたが、助けられて自分の認識を疑う様になり、シアに対して罪悪感でいっぱいになっている。
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