とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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エルキドゥ来ましたね


142.妖怪事変終幕

『ねえ、ホントに死んでるの?そのジジイは簡単にくたばるような奴じゃないよ?』

 

 警策(こうざく)看取(みとり)が自身の操る能力である液化人影《リキッドシャドウ》に内蔵されたスピーカーを使い、食蜂に向けて問い掛ける。

 

「知ってるわぁ。私が騙されたときみたいに変装した赤の他人って訳じゃないし、これが木原幻生で間違いない。流石の私も何でこんなことになっているのかまでは分からないけどねぇ?」

 

 警策に言葉を返す食蜂は幻生との戦いで、所々体操服が破れてしまい扇情的な装いになってしまっていた。

 普段からしている長手袋と体操服という組み合わせの時点でかなり怪しいものだが、破れた体操服から覗く年不相応なスタイルがやらしさに拍車を掛けてしまっている。

 下手をすればそっち系のオネーさんに見られてもおかしくはないだろう(彼女は中学二年生である)。

 

「むむむむっ、よく分かりませんわね。今回の騒動を引き起こした黒幕である木原幻生を捕まえる筈が既に亡くなっていた……。わたくし達とは関係の無い第三者による打倒ということでしょうか」

 

 ボロボロになった施設を見渡しながら、共に行動する三人の内の一人である風紀委員(ジャッジメント)に所属している白井黒子が、顎に手を当てながら唸る。

 自らと全く関係の無いところで黒幕が都合よく敗北していたなど、不気味以外の何物ではない。

 

「ということで、ぱぱっと心理掌握(メンタルアウト)で幻生がここで誰と何をしたのかを読み取るわぁ」

 

 食蜂はリモコンを幻生に向ける。これが幻生の仕掛けた(トラップ)である可能性もあるにはあるが、ここで足踏みしていても理解出来る訳ではない。

 食蜂は何があったとしても対応出来るように心構えをしながらリモコンのボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひょっ、ひょっ、ひょっ、ひょっ。なかなか面白いオモチャを揃えてるねぇ」

 

 木原幻生は施設の中に入り込んで来る兵器群を、愉快だと言わんばかりに笑いながら破壊していく。

 人の死角に自動で入り込み銃撃するAI搭載ドローン兵器は風力使い(エアロシューター)の能力で打ち落とし、戦車の主砲として搭載される滑腔砲(かっこうほう)を装着された駆動鎧(パワードスーツ)の大群を電撃使い(エレクトロマスター)の電撃で行動不能にする。

 次々と送られる遠隔制御の兵器を捌いていく幻生のその姿は、誰もが想像する能力者の理想形と言えるだろう。人によってはとある緑色の髪をした少女の姿を思い出すかもしれない。

 

 だから、敵も一筋縄ではいかない。

 

 

 ドガガガガガガッッ!!!!と、大量の超電磁砲(レールガン)が隣のビルから発射された。

 

 

 数秒で施設の壁に大きな穴を空けるその破壊力はわざわざ説明する必要もない。だが、開けた穴から砂煙が立ち上るその光景をカメラ越しに見ていたそれは、砂煙から何事もなかったかのように現れる老人に再びカメラのピントを合わせることになる。

 

「───ファイブオーバーシリーズ。学園都市の中枢に近い君なら当然動かせるだろうと思っていたよ」

 

 FIVE_Over.─Gatlring_Railgun.

 カマキリのような兵器の側面に刻まれた名称。それこそ、この学園都市の技術の結晶とも言える最新鋭の科学兵器だ。超能力者(レベル5)の能力を工学兵器に転用し、元となった超能力者を超える性能を持つ軍略兵器として生み出す試みこそファイブオーバーシリーズである。

 第三位の御坂美琴が放つ超電磁砲を、飛距離と弾数を増やすことに成功した工学兵器がこのカマキリのような姿をした兵器だ。

 そのカマキリのような異様な姿に搭載された二つの銃身は、対象を欠片も残さず殲滅する筈だった。木原幻生が生き残った主な要因は彼もまた学園都市の闇の中で生きるものの一人だったということ。

 ファイブオーバーの運用方法を木原幻生も把握していた。だからこそ、(あらかじ)めこの施設を射撃可能な施設には電波(かく)乱兵器を仕込んでいる。

 複雑な行程を踏まなくてはならない最新鋭の兵器に、そのジャミングは致命的だった。その証拠に幻生が元に居たところとは、五メートル近く離れた場所に穴を空けていた。ファイブオーバーで木原幻生を討ち取ることはほぼ不可能と見ていいだろう。

 

 

 

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 木原幻生がその場から後ろに二メートル程下がると、空気使い(エアロシューター)の能力を使い、何も無い空間に向かって圧縮した空気を幾つも撃ち放つ。

 すると、瞬く間に空間の揺らぎと共に幻生の居た場所が抉れていく。

 

「フムフム、これは暗部組織で使われている確か『オジギソウ』という兵器だったかな?見えない程に小型化した兵器を使い対象の細胞を一つ一つ掴み取る殺人兵器。

 人体にだけ作用するものだった筈なんだけど、木原印に改造したと言うところかねぇ。木原の人間がリサイクルとはなかなか興味深い」

 

 ファイブオーバーによる攻撃の最中に散布されたそれを、木原幻生は当然のように察知して回避する。学園都市の闇で生き抜いてきた妖怪は同じ闇の住人の思考を(ことごと)く読み切っていく。

 不自然な程一つ一つ確実に。

 

『……なるほど、それも「非科学」ですか。あなたの持ち得る能力の中に微細な機械を関知可能なレベルの電撃使い(エレクトロマスター)は無い。

 つまり、それは学園都市外の力によるものであると。これを解析するのは面倒なことこの上ないですねー』

 

「こちら側に来る勇気が君にあれば好きにするといいよ。科学の進歩に貢献出来る人材は僕も求めているからねぇ」

 

 狂気を含んだ笑みを広げて木原幻生は木原唯一に言葉を投げ掛ける。これが、ただの挑発でないところが彼のイカレているところだろう。

 

『(有効打となる一手が届かない。やはり、「非科学」という一部分が私の想定を狂わすフィルターである、と。

 その要素さえなければこんな腐れジジイなんて互角の勝負なんてさせずに捻り潰せるというのに。はーっ、やれやれ、枯れた老いぼれのくせして相手にすると鬱陶しいことこの上無い)』

 

 唯一は他のファイブオーバーを出そうかとも考えるが、木原一族の一人にそこまで手をかけてしまうと、あとあと面倒になりそうな展開になりそうだと思考する。

 

『(火力でのゴリ押しは確かに強いんですが、端から見れば脳死でやってるだけに見えるのは当然ですし、万が一にも「非科学」によってコントロールが奪われれば目も当てられないですねー)』

 

 爪を噛みつつ木原唯一は淡々とメリットとデメリットを秤にかけていく。それこそ、「非科学」という未知の部分さえ無ければ、とっくの昔に木原唯一は木原幻生を物言わぬ肉袋に変えているのだ。

 今の現状に苛立ちを覚えるのも仕方ないことだろう。

 

「(……とはいえ、このままでは八方塞がりなのも否めません。第一位や第四位のファイブオーバーも投入することも検討しなくてはいけませんか。

 先生の勇姿も見たいので短期決戦は私も望むところ。さて、まずは『非科学』による危機察知の傾向を割り出すところから始めましょうか)」

 

 だが、木原唯一の思考など無視して戦況は着々と変わっていく。

 

「───ふむ、天野くんの進化が止まりかけているのかな?別種のモノに変化するというよりは尻すぼみしていくような感じだ。()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう言うと、木原幻生は食蜂から奪ったタブレットを使い、とあるコードを打ち込んでいく。木原唯一の攻撃を受けている状況の中で幻生はその全てを打ち込み終わる。

 

「リミッター解除コードで天野くんの進化の促進をする実験を始める。……一万二千通りの内どれが『非科学』を浮き彫りにするのか、今からワクワクが止まらないよ」

 

 狂気に顔を歪めながらも子供のように目を輝かす妖怪は、未知への探求のためにその一歩を踏み出す。『科学(常識)』から『非科学(非常識)』の領域に足を踏み入れる。

 その最大の禁忌へ彼はようやく突入するのだ。

 

 

「科学の更なる発展のためにまだ見ぬ新たな境地へ、人類は今このときをもって再び足を踏み入れる」

 

 

 そして、万感の想いを胸に抱きそのまま木原幻生はタブレットに入力して、───彼はその生に終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふーん、なるほどそういうこと」

 

 食蜂が幻生の亡骸から読み取った情報から、ここで何があったのかを理解する。彼女からすればそれは拍子抜けに感じてしまう。

 

『その様子じゃなんか分かったみたいだね。それじゃあ、事のあらましを私達にも説明してくれるかな操祈ちゃん?』

 

「そうねぇ。端的に言ってしまえば私が優秀すぎたってところかしらぁ?達成(りょく)とか皆無だから余り胸を張れないけどねぇ?」

 

「説明する気あるんですのこの方?それで、どういうことですの?」

 

 白井黒子が呆れつつも問い質す。食蜂自身もまだ飲み込めていなかっただけで誤魔化すつもりはなかったのだが、そう受け取られても仕方ないだろう。

 食蜂はここまで使命感で付いてきた彼女に対して真摯に伝えた。

 

「幻生は心理掌握(メンタルアウト)のリミッター解除コードを使って、天野さんに悪さをしようと画策していたみたいだけど、()()()()()()()()()()()使()()()幻生に記憶を抜き取られる前に、リミッター解除コードと『外装代脳(エクステリア)』の自壊コードの認識を入れ替えてたみたいねぇ」

 

 『外装代脳』は自壊コードを入力すると巨大脳のダメージが保有者に跳ね返り廃人になってしまう危険性があった。本来ならば食蜂に向けてフィードバックが来る筈なのだが、脳波の調律によって保有者となっていた幻生を『外装代脳』は所有者であると誤認し、フィードバックの相手とした。

 要は、食蜂は木原幻生を自滅させたのだ。

 

「……まあ、私にはその記憶がさっぱり無いから実感が難しいけど、幻生の最期の言葉から察するに大きな間違いは無い筈よぉ。その後、幻生の意識が無いから敵対していた人間がどこに行ったのかまでは知らないけどね」

 

 敵対者が幻生の死亡を確認したあと満足して去ったのかは食蜂には預かり知らぬことだ。ここで木原幻生は天野倶佐利に対して手を出すことも出来ずに死んだ。それが事実なのは変わらない。

 

「(それじゃあ、彼女達の治療法も調べないとよねぇ)」

 

 食蜂がリミッター解除コードと自滅コードの認識を変えてまで幻生を倒すことに注力したのは、幻生の頭の中を覗き妹達(シスターズ)に打ち込まれたウィルスデータの情報を得るという理由があった。

 木原印のウィルスであるなら民間の医者が対処可能なレベルを超えている筈だ。

 

 そのような思惑で物言わぬ死体となった幻生の記憶を覗いた食蜂は、その衝撃の事実に驚くしかない。

 

 食蜂は震える唇を動かしながら、背後で幻生の死亡を確認し逃走の準備をしている銀色のボディをした人形人影(リキッドシャドウ)と、それを見て太腿のケースに入れている鉄矢(ダーツ)を数本抜き取り、追跡の構えを取る正義感で荒ぶったツインテールを靡かせる風紀委員(ジャッジメント)の二人を見た。

 いや、正確には人形人影だけにその目は向けられている。それは、遠からず自分と因縁を持つ相手の名前だった。その名前に様々な感情を今まで感じていた食蜂は、水銀を操る本体の少女に向けて尋ねるしか出来なかった。

 

「……あ、あなたが『みーちゃん』……だったの……?」




◆考察◆
 学園都市の能力者について
 学園都市の能力者が何故魔術が扱えないのか。これについて作中では回路が違うとの理由が述べられています。今まで「へー、そう言うものなんだー」と、勝手に納得していましたがそれについて説明できそうな情報を入手しましたので書くことにします。

・超能力者と魔術師では回路が違う。
 これはインデックスが上条の疑問に答えるようにして、魔術を扱う必要な条件であるということを述べていました。では、具体的にインデックスの言うところの『才能』とは何か?


 その答えが『ヒューマンデザイン』


・『ヒューマンデザイン』とは何か。
 1987年に唱えられた、自分の自身がどういった精神をした人間なのかを知るための図表と言えるものであり、使われる用途では性格診断のような占いが代表的でしょう。
 ですが、その起源は神秘的でとある男性がある島で啓示を受けて書き上げた経緯があります。一見オカルト好きの妄想かと思われたこの図表は、なんと現代科学の観点から見ると思わず納得してしまう点が多く見られたとか。
 それこそ、オカルト方面では有名な占星術やカバラ、チャクラなどの要素も組み込まれていますが、同時に現代科学の心理学、遺伝学、ニュートリノ物理学などの要素も取り入れられた、摩訶不思議な図形こそが『ヒューマンデザイン』です。
 そして、特に注目すべきがニュートリノ物理学の要素です。

 ニュートリノとは素粒子の一つ。このニュートリノは超新星爆発によって発生するのですが、実は、『ヒューマンデザイン』の啓示を受けた男性が時期と、大マゼラン星雲で起きた超新星爆発の時期がほぼ同時期なのが確認されています。
 全てがただのデタラメとは言えないのがこの『ヒューマンデザイン』なのです。それに加えてこの『ヒューマンデザイン』を書いた男性は大のオカルトアンチであり、その突然受けた啓示の具体性に戸惑っていたらしく、苦々しく思いながらも使命感で書き上げたというのが実情のようです。

 それでは、先ほど述べたインデックスが作中で述べた『才能』ですが、実は、『ヒューマンデザイン』の項目に入っているのです。
 『自分の強み』、『自分の弱み』、『役割』、『魂の使命』、『基準』など様々な項目を埋めて自分自身をの特性や個性を導き出す『ヒューマンデザイン』。果たして、これは偶然の一致なのでしょうか?
 そして、言っていませんでしたがこの『ヒューマンデザイン』、実は人体の構造に乗っ取って作成されています。それぞれの図形位置が臓器や骨、と照応しているのです。
 自我や個性の生成に肉体が必要条件であるということかもしれませんね。
 そして、問題なのがこの『ヒューマンデザイン』の頭部に描かれているものです。不思議なことにここだけ他の図形と違い、人体を想定したときに距離が余りにも近いのです。
 それこそ、この箇所に二つも入れず他の体の部位へ、照応するような図形を書けば良いのにも拘わらず。
 その決して大きくない部位こそが人体で言うところの頭部にあたります。。

 そして、その頭部にある図形の形が二つの三角形の図形。

 別の役割がそれぞれありますが頭部の部分に二つとも収まっており、実はこの二つは回路で繋がっています。
 三本の線で繋がっているだけなのでイメージが湧きにくいですが、その二つの三角形の図形を物体をイメージしてそれぞれの角を線で結ぶとどうなるか?


 答え、人間の頭部がある位置に綺麗な三角柱が出来上がる。


 作者はこれこそが能力者と普通の人間との差異だと思います。能力者が魔術を扱えないのは生命の樹で想定された人間の構造ではなく、現代科学の理論も取り入れた『ヒューマンデザイン』によって変質した人間だから回路が違う(あるいは、宇宙からの飛来物であるニュートリノによる影響?)。
 能力者のパーソナルリアリティーも、『ヒューマンデザイン』の自我や個性を導く概念による影響だからと考えれば、府に落ちるのではないでしょうか。

◆P.S◆
 ぶっちゃけ次の更新に半年から一年位間が空くかもしれません。もしかすると、一時的に表記を未完にするかもです
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