このキャップの存在を始めて知ったのは、もう四半世紀も前のことだ。1999年、私はフロリダを訪ねたのだが、どこかの球場だったか、当時はマイナーリーグの事務所がレイズ(当時はデビルレイズ)の本拠、セントピーターズバーグにあったので、そこで手に入れたのか、今となっては定かでないのだが、MLBとその傘下のマイナーチームのキャップを網羅したカタログを手に入れた。それを見ている際、ひときわ印象に残ったのがこれだ。
「C」の文字の中に目玉ふたつ並べたロゴのチームの名はルックアウツ。当時はそれが何に由来しているのかわからなかったが、とにかく「欲しい」、つまりこのチームのスタジアムを訪問したいと思った。通販でも買えるかもしれないが、やはりマイナーリーグのキャップは現地に行ってこそ買う価値がある。
その思いは長い間封印されていたのだが、いつの頃からか再び頭をもたげてきて、このチームの本拠、チャタヌーガが、南部、アトランタの近くにあること、「ルックアウツ」のニックネームの由来が、この町の観光地である山にちなんだものであることを知った。アトランタというメジャーリーグシティは、本拠地球場の移転が多いところで、私が「野球旅」をし始めてからすでに2回新球場を建設し、移転している。こういうことをされると、私はその旅、足を運ぶ羽目になるのだが、この夏、人生3度目(実際にはトランジットでプラス数回足を踏み入れている)のアトランタ訪問を決行。ついでと言ってはなんだが、あこがれのチャタヌーガ訪問を果たした。
チャタヌーガは南部・テネシー州に位置する。アトランタとシカゴを結ぶグレイハウンドバスで行くことができる。アトランタから約2時間。町は過疎化が進んでいるらしく、町はずれのバスディーポのすぐ近くにはホームレスのテント街があり、周囲には廃屋が目立つ。この周辺は治安もあまりよろしくないようで、バスディーポの建物内には、チケットかスナックを購入する以外の用で立ち入ることはできない。
町の中心部は再開発が進みなかなかきれいだ。今ではアメリカ有数の観光都市でもあるらしい。町おこしか、クラフトビール製造が盛んで、町中にマイクロブリュワリーがある。
かつては鉄道の要衝だったらしく、町の中心には旧駅の建物を利用したホテル兼文化施設があり、郊外には実際に観光列車にも乗ることができる鉄道博物館もある。
とは言え、この町一番の観光地は、町の南にそびえる通称「ルックアウト・マウンテン」。南北戦争の戦跡でもあるこの山には、勾配率世界一と言われているケーブルカーが走っており、この町を訪ねる人は必ずと言っていいほど足を運ぶ。ただし、私が足を運んだ日は、急な故障な何かで運休となっていた。
マイナーリーグのチームというのは、頻繁にフランチャイズ、親球団、そしてニックネームを変える。しかし、チャタヌーガのチームは、ここにフランチャイズを置いている限りは、この「ルックアウツ」の名だけは変えることはないだろう。実際、このチームは親球団を変えたことがあるが、ニックネームは変わっていない。私が冒頭のカタログを見た時も、現在もシンシナティ・レッズのファームチームだが、その間にドジャースのファームだった時代がある。両軍はチームカラーが違う。だからルックアウツは親球団のそれに合わせてユニフォームやキャップは変えるようだ。このキャップのように現在は、レッズの「赤」をつばの色を採用しているが、球場内にあったポスターを見ると、ドジャース傘下時代は青いキャップだったようだ。但し、チーム名同様、この印象的な正面のロゴマークのデザインは不変である。
「チャタヌーガ・ルックアウツ」という名のチームの歴史は1885年に遡ることができる。非常に由緒正しいチームだ。日本でおなじみの選手としては、元阪神のマット・キーオ、阪神とその前には日本ハムでプレーしたマイカ・フランクリン、元ソフトバンクのクリストファー・ニコースキーらがOBに名を連ねている。
このキャップは、市街の北の端、テネシー川のほとりにある丘の上のスタジアムの売店で購入した。メディアパスのおかげで、ファンクラブ割引で売ってくれた。折からの円安でレートが急激に悪くなっていたこともあり、非常に助かった。
チームスタッフと話をしていると、2000年オープンのこの球場も、まもなく壊して、町の南に新球場を建設するらしい。新球場は、ルックアウト・マウンテンの麓に建てるという。
その暁にはまたこの町を訪ねてみたい。その時は、親球団も変わってベースの色が変わってしまっているかもしれないが。
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