変更
・オリ主の年齢を17→16
それは、上条達が天野俱佐利を救い出すために最終決戦に立ち向かうのと同時刻。彼女達も同じくして今回の黒幕を叩くために行動していた。
今回の騒動を引き起こしたマッドサイエンティスト木原幻生。彼には脳波の調律で獲得した
更には、最新鋭の科学兵器を駆使することは勿論、純粋な心理戦だけでも学園都市の闇を生き抜くことが可能な妖怪。そんな学園都市の重鎮を相手に少女三人で挑まなくてはならない。
心理掌握の真の所有者である食蜂操祈と、彼女と同じく常盤台中学の生徒にして
この異色も異色のスリーマンセルで、あの木原幻生を打倒しなくてはならないことに加えて、彼女達の敗北は学園都市の行く末さえ左右するものになる。
幻生の権謀術数が張り巡らされた暗闇こそが彼女達の戦場。敵の強大さと厄介さを鑑みれば、表で戦っている上条達と引けを取らない鉄火場だ。その戦いは高位能力者である彼女達であっても掌握することは難しくなる。
───だからこそ、彼女達がこうして唖然とすることも当然のことだったかもしれない。
「…………ねえ、これはどういうことなのかしらぁ?」
そう声を上げたのは食蜂だった。彼女達が助けに入るまで木原幻生を相手に一人で立ち向かっていた彼女は、木原幻生の妖怪の如く内面を読み透かす目と、現在所有している力の強さを身を持って知っている。だからこそ、目の前にあるこの状況を飲み込めないでいた。
だが、そのことで彼女を責めることは出来ない。ここに居る人間の誰もが予想だにしなかった事態に遭遇してしまったのだから。それこそ、誰が想像出来るだろうか?
───まさか、対峙するために乗り込んだビル型の施設の中で、木原幻生が既に事切れていたなんて。
木原幻生は目の前で起きている様々な事象に狂気的な笑みを広げていた。
「ヒョーッッ!!まさかまさかまさかまさかッ、これ程だとは想定してなかった!!
興奮による興奮。脳の血管がその湧き出る高揚感によって、千切れるのではないかと思うほどの歓喜が彼を襲っていた。
「彼女に干渉している
彼らの介入によって破格の観測となるのは期待はしていたが、代わる代わる集まる別種のデータが全て最高品質だとは誰が思うだろうか!
これ程の高品質なデータが一回の実験で複数集まることなどそうは無い!間違いなく天野くんの尽力によって科学は更なる領域に足を踏み入れることが可能となるッ!」
現在、幻生の下に集められるデータは彼であっても十分の一も理解出来ないものばかり。
それは、『非科学』を取り扱う魔術サイドの人間でも、世界有数の卓越した知恵者達が頭を突き合わせなければ、答えの取っ掛かりを導き出すことすら不可能な事象の数々なのだから当然のことだ。
今の木原幻生が置かれている状況は四則演算すらまともに出来ない子供に、フェルマーの最終定理や特異点定理を証明しろと言われているものなのだから。
人間は理解不能だと判断した物を、異物だと認識して理解しようとすることを止めるものである。だが、彼は『木原』である。
科学分野が発展する度に生まれ落ちる副産物の一種であり、「純粋な科学の一分野を悪用しようと思う時に、その一分野に現れる実行者」、それこそが木原一族だ。
だからこそ、彼は立ち止まらない。それが、科学の外にある『非科学』だとしても、いずれ科学に落とし込み技術として活用する。無理難題も理解不能も彼からすれば宝の宝庫でしかない。
一を知れば百を知るためにあらゆる手を尽くしてしまうのが『木原』の宿命なのだから。
だが、それが全ての『木原』が望むことなのかはまた別の話。
『あ、あー、テステス、私の声が聞こえてますー?まあ、この私が調節しているので聞こえないなんてことある訳も無いんですけど、そこは様式美というか、先生風に言うならロマンがあるってところです。いやんっ、私ったら先生の真似をするだなんて大胆っ♪』
女性の声が突如スピーカーから流れてきた。それは、食蜂のように管理権限があるのではなく、ハッキングによる無断使用。
その声に対して木原幻生は先程までの気分の高鳴りを限界まで抑え、スピーカーから流れる声の主に向けて声を返した。
「ふむ、ようやく登場というところかな?アレイスター君の小飼。だけど、状況把握はもちろん対応も含めた全てが遅れていると言わざるをえないねぇ。それに加えて、この状況で代理を向かわせるなんて少々大きく見積り過ぎていたかな?」
『くすくす、あなた程度が先生の相手をして貰えるとか思ってたんですか?それは些か期待し過ぎでしょうに。余り分不相応なものを
「脳幹君も八十辺りの年齢の筈だったんだがねぇ。人間とは違う犬だからか、そこの辺りも含めると同じ様に判断すること自体間違っているのかな?
……けれど、やっぱりこの状況はどう見積もっても合理的には程遠いねぇ。彼の言うロマンかとも思ったけどこれは流石におかしい。彼は僕達と違って人の脳ではなく、犬の脳を拡張して人と同等の知能を宿しているだろう?」
人と同等の頭脳を持つゴールデンレトリバー。それは、木原一族の始祖達が生み出した科学の結晶でもあったのだ。だが、ここで重要なのはその正体では無い。
「ならば、脳が犬をベースにしていることで
木原幻生は既にこの声の主が誰なのか理解している。彼女が学園都市はもちろん木原一族の中でどのようなポジションに着いているかも。
「だとするなら、外に居る天野くんの対応に追われているのかな?『非科学』はアレイスター君の中で最優先に対処しなくてはならない事柄ということだね。
そうだろうと思ってはいたけど、この街の創設者であるアレイスター君は『非科学』の知識も有しているようだ。なら、『非科学』によって度重なる進化を遂げた天野くんであっても、アレイスター君ならば何かしらの手を打つことは不可能ではないと言うことだね」
『非科学』に手を伸ばすこの街の闇の中を歩んできた妖怪は、隠された秘密をその頭脳と知識によって一つ一つ暴いていく。
「ふむ、……もしかすると、脳幹君が死神とも呼ばれている理由は、アレイスター君が有している『非科学』の知識を活用しているからかな?
それならば、『科学』の範疇でしか生きてこなかったこの街の科学者は、どうやって殺されたのか理解することすら出来ずに死んでしまうことだろう。アレイスター君が彼を重宝するのも分かるというものだ」
『……あーあ、勝手にこっちの領分まで来ないで欲しいのですけど、そこら辺全くわかってねえんだろうなぁこのジジイ。分不相応ってさっき言ったばかりなんですけど。
螺子が外れた年寄りの相手をするって若者にとっては地獄なんですけど、その機微程度は理解して欲しいんですよねえ』
苛ついた声がスピーカーの向こうから流れてくる。これは隠すことに意味があることではないという意思表示だ。木原唯一からすれば統括理事長・アレイスターの都合などどうでもいい。それどころか、自らが尊敬する木原脳幹を手足のように扱うあの『人間』に対して、嫌悪感すらあるのだから当然だ。
そして、ここまで個人の力で答えを導き出した『木原』に、下手な誤魔化しなど何一つ意味が無いことを、同じ『木原』である木原唯一は理解していた。
「だとするなら、やはり脳幹君は期待外れとしか言いようがないねぇ。『非科学』の存在を知りながらそれを解明しないなんて科学者としては落第もいいところ。
未知があるのならば率先して解析してこそ科学者のあるべき姿だよ。直前で足を止めた木原脳幹君はそこで科学者としては死んでしまった。アレイスター君に尻尾を振るだけの獣に成り下がってしまったんだねぇ。
いやはや、『木原』の科学者が零落する様を見ることになるとはとても残念だよ」
それは、いつも木原幻生が教え子達に向けて評価するときのような口調だった。出来の悪い生徒を酷評する落胆を隠さない声音。
そんな木原幻生の言葉を聞いた木原唯一の口から、彼女の感情がそっと溢れ出た。
『死ね。お前程度が先生を語るな。物の分別も理解出来なくなった老害風情が』
多才能力。
心理掌握。
その強大な二つの力を有している木原幻生を倒す方法はそうそう在るものではない。それこそ、複数人の高位能力者を手の平の上で転がすことなど今の彼ならば朝飯前なのだ。
彼が辿り着こうとしている『非科学』の魔術サイドの人間であっても、今の木原幻生を打倒することが可能な者が果たしてどれ程居るのだろう。
しかし、この学園都市という科学の総本山であれば、不可能を可能にするゲテモノなど数多く生まれている。
「となれば、木原唯一が私に命令を飛ばしてくるっていうのも道理かな。それが一番効果的なのは間違いないし。そもそも、木原相手じゃその程度の反則なんて反則の内にも入らないだろうしね」
そのように述べるのは、地上から遥か彼方になる宇宙空間に浮かぶ衛星『ひこぼしⅡ号』の主、
時代錯誤な長い黒髪に
彼女が居る『無重力生体影響実験室』と銘打たれたその『檻』は、地上に居る学園都市の大人の都合によるものが大きく、その頭脳を棄てるには惜しいが近くに置くのは御免被るという理由からだ。
長い宇宙空間という軟禁生活の果てに地上の生活が不可能となってしまった彼女は、自分しか居ないその『檻』の中で地上で起きている様々な事柄を嘲笑する。
だが、それも二十分も経てば話は変わる。天埜郭夜は宇宙空間という特殊な環境下によって少女漫画のように変容した自らの身体を動かして、地上との連絡手段である通信機に近寄った。
「……んん?おいおい、幾ら何でも時間が掛かりすぎだろ。仮に木原唯一の奴が同じ『木原』である木原幻生とのやり取りを楽しんでるにしても、予定時刻よりここまで遅れて未だに命令の一つも飛んで来ないものか?
アイツの話しの口調はマイペースそのものではあったが、仕事に関してはドライで正確なイメージだったんだけどなあ?
あのアレイスターが他の人間よりも近くに置いてあることから有能なのは間違いない筈なんだが」
見た目の可憐さとは縁遠い粗野な物言いをする天埜遊郭は、通信相手であった木原唯一について思考を回す。
あの統括理事長が一定の評価をする人間ならば、ここで指示を遅らせるなどと言うミスはまずしない。木原幻生の言動によって感情的になったとしても、逆に殺意を研ぎ澄ませ冷徹に確殺の一手を講じていくだろう。
ならば、何故このようなことが起きている?天埜郭夜は今起きている事態を俯瞰して一つの結論を導いた。
「さては、木原幻生に出し抜かれたな?」
「………………………………」
木原唯一は手元にある端末に視線を向けて眉根を寄せる。どれだけタップしても応答が無い。天埜郭夜がここで裏切るメリットは一つもない。
ならば、その要因はあの老いぼれしかあり得ない。
『この僕が衛星からの攻撃に備えていないとはまさか思ってはいないだろうねぇ?君が僕よりアレイスター君に近かろうとも学園都市の闇で生き抜いてきた時間は僕の方が長い。年の功と言うやつだね』
「私が彼女と連絡するための電波の周波数を看破してジャミングしたとでも?それが、一つだけならまだしも私が利用する全ての周波数を抑えるなんて芸当は誰にも不可能です」
仮に出来る者が居たとするならば、学園都市のありとあらゆる情報を
まあ、仮に相手がアレイスターであっても木原唯一ならば裏をかくことも不可能ではないのだが。
『多才能力と心理掌握を手にした僕は、対人戦において限られた者以外は歯牙にもかけない無類の強さを得たと言える。だけど、万能に近しい強さであって決して絶対の強さを得た訳じゃない。
それこそ、多才能力は
そう、今の木原幻生を最も確実に殺す最適解は宇宙空間からの爆撃である。心理掌握が届かない超アウトレンジからの攻撃。これこそが、木原幻生を確実に殺すことが可能な方法なのだ。
『だけど、君の言う通り僕はアレイスター君のように覗き見することはできないから、君の扱う衛星通信の周波数を確定することは不可能だ。
君が衛星から僕に攻撃する手段を止める
「───まさかッ!?」
『「非科学」を利用させて貰ったよ。
木原唯一は上空を仰ぎ見る。そこには今尚空を覆う雷雲が広がっていた。
『電波を阻害する「オカルト」は僕達科学者の前にいつも現れる代名詞といってもいい。僕は天野くんが生み出す「非科学」を解析して一部分ではあるけれど「科学」の内側に落とし込むことに成功していたのさ。
とはいえ、電圧が低ければ衛星との通信をジャミングするなんてことは不可能だったよ。だけど、度々「オカルト」の実験結果が検出されていた天野君であれば、彼女が
それこそ、彼女が生み出したあの巨大な雷雲を利用すれば、大きな電波障害を生み出すことも不可能ではないと、僕は踏んだわけだ』
端的に言ってしまえば木原幻生がしたことは空電による電波障害だ。
空電とは雷放電による電波障害のことであり、雷が発生したところではラジオなどにノイズが含まれるなどの被害を出す。しかし、これで電波を遮断すること自体は不可能と言ってもいい。
雷によって家電などの電子機器が破損してしまうのは、空電による被害ではなく雷サージによるものだ。雷サージとは落雷が構造物の金属導体を伝う現象であり、電子機器が雷によって破損してしまうのはこの過電流によるものである。
空電は大規模な影響を周囲に与えるが直接雷が流れる訳ではないため、前述の通りノイズなどの軽微な影響しか与えることは出来ず、最先端の科学技術を有している学園都市ならば、空電の被害など全て遮断出来て当然なのだ。
それが出来ていない理由など、この男の手によるもの以外にはありはしない。
「……電波障害を引き起こしているのが人工衛星との通信だけに限定されているのも『非科学』が要因であると」
『学園都市に無作為に電波障害を起こしてしまうと、僕の所有する分析機器も使えなくなってしまうからねぇ。明確な数値と数式を理解することはまだ僕にも出来ないけど、この程度のことは今の僕でも実現出来るとも』
「(私が知らない『外』の知識。……なるほど、情報で負けていれば如何なる方法であろうと察知することすら出来ないと)」
木原唯一は『木原一族』を統括するポジションに着いている。それこそ、少し先の未来で起こる『〇九三〇』事件にて、木原数多は
あの木原数多ですら不完全なコピーが限界だったことを考えれば、どれだけ木原唯一が『木原一族』の中でも優秀なのか理解出来るだろう。
そんな木原唯一を出し抜く方法は、彼女が知り得ない『オカルト』の領域以外に道はない。
しかし、相手はあの木原唯一だ。その程度で白旗を挙げるほど甘くはない。
「私が知り得ない知識を有していたとしても、結局は理論として証明出来ない穴だらけの付け焼き刃であることは変わらない。学園都市の中枢に近い私の方が用いる手札が多いことを考えても、詰め将棋よろしく私の勝利は確定している」
『おやおや、分かっていないねぇ。僕の知識は天野君が進化と成長を繰り返す度に、より知識の確度と集積が積み重なっていく。僕が「非科学」の理解を深めていく度に、君の状況は刻一刻と不利になっていくのを忘れてはいけないよ』
学園都市の闇の中で生きてきた『大人』達による、暗闇の中での潰し合いが始まった。
◆作者の戯れ言◆
木原唯一の口調が難し過ぎる件について。
◆前回のサーヴァントメンバーについての説明◆
端的に言わせて貰うと、地球外パワーと隕石に関係のあるサーヴァント達が八竜の呼び水でした。
マハトマUFOのエレナ、ムーンセル(月)管理AIのBB、外なる神の力を持つアビゲイル、隕鉄の剣を持つネロ。
パラPは宝具で持つ剣が賢者の石に用いた魔術礼装であり、その賢者の石がフォトニック結晶(月の内部にある演算装置)と偶然(ここは不明)同じであるため、ムールセル(月)の一部として認識されました。
ムーンセル管理AIであるBBに反応したのならば、パラPの宝具に反応してもおかしく無い筈と考えてのことです。
ちなみに、千年渓谷は『地球外の飛来物』とは全く関係ありません。
それこそ、他のサーヴァントとは違い幻想殺しによって跡形もなく先に消されてますので、そもそも竜の餌にはなり得ないということですね(他の宝具は中途半端に顕現してるので)
※何でパンドラの箱を破壊できたのかはまだ秘密